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  • 小飼弾の論弾 #290 「イーロン・マスクのSNS独裁制、銀行員が貸金庫から窃盗の衝撃、未成年のSNS利用を禁止するオーストラリア」

    2024-12-10 07:00会員無料

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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     今回は、2024年12月03日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年12月24日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/12/03配信のハイライト


    SNS制限と「マスメディア以上に自分のことを信用できる?」

    山路:今日取り上げるネタの一つとして、貸金庫の話っていうのが、後ですることになるんですけど、これ、相当驚いた案件でありまして(笑)。たぶん、新聞記事とかテレビのニュースなんかで報道されている以上にじつは大きな影響のある話じゃないかなということを、後でしようかなと思っているんですけれども。ちなみに弾さんって、貸金庫使ったことあるんですか?

    小飼:大昔に借りてたことはありますね。

    山路:ほうほうほう、実ユーザーの話ということでこの辺り、後で詳しく聞くことにしましょうかね。最初、これも新しいニュースなんですけれども。

    小飼:まさにそれです、

    山路:IntelのCEOが退任したという。パット・ゲルシンガーさんですね、この人かなり有名じゃないですか?

    小飼:です、はい。

    山路:決して技術に通じてない人じゃないというか、技術者じゃないですか、もともと。超優秀な。

    小飼:そうです。だからAMDのリサ・スーまで行くかどうかはわからないんですけれども。

    山路:これ、確かIntelの386とか486のCPUの開発とかに関わって。その後、確かVMwearのCEOもやったんでしたかね、

    小飼:ですね。

    山路:本当にIT業界の中では相当技術のほうにも、経営を両方通じている、

    小飼:でも、ゲルシンガーでもダメだって言ったら、誰を持ってくればいいんだ。

    山路:「Intel切羽詰まってる」ってやつですよね(笑)、これってなんていうか、ゲルシンガーの責任というのはちょっと違いますよね(笑)。なんていうか歴代のCEOが、

    「ジム・ケラーとか引っ張ってくる」(コメント)

    小飼:それはもう無理だろう、

    山路:歴代のCEOが重ねてきたこの失策が、とうとうここまで来たかっていう感じだと思うんですけど。

    小飼:でもゲルシンガーの失策らしい失策ってしてるかな。まぁでも、最新のシリーズがクロックアップしたら、物理的にコカれちゃうっていうのは、これはデカかったよね。

    山路:それもゲルシンガーの責任なのかと言われると、難しいところではありますよね。まずいところで出たでかい問題ではあるんですけれども。いやー、本当この論弾でも何回か言ってきた、一番デカかったと言われるiPhoneのCPUを蹴ったという、

    小飼:ポール・オッテリーニの頃ですね、

    山路:あとはそういう64ビットCPUの移行、

    小飼:いや、だからその時は乗り切ったんですよ。だからそれはけっこうすごかったことで。だから、その時の386互換の64ビットというのはAMDが設計したわけじゃないですか、事実上。いまだ、でもだからAMD64って呼ばれるわけです、ARM64と綴り的に似てるというのが、

    山路:よく空見しちゃいますけどね、

    小飼:困りものなんですけど、それはさておき。

    山路:でも結局のところを突き詰めて言えば、IntelのCPUビジネスがあまりにもうまくいってたが故に、変化についていけなかったってことなんですかね。

    小飼:それはある。いや、だからSunの没落と似てるんだよね。

    山路:Sunってそうだったんですか。ワークステーションのSunですよね。

    小飼:そうそうそう、すごいサーバ向けにすごい美味しいビジネスをしてたら、もうそういうものはLinuxでいいじゃんっていうことになっちゃって。

    山路:そうかそうか、じゃあ美味しいビジネスをやってる時こそ要注意という。

    小飼:そうなんですよ。必ず利益を出し抜くというコンペティターが現れるし、その時どうするかっていう。

    山路:これってあとやっぱりArmの普及っていうのもでかい、それなりに影響あるんですかね、

    小飼:でかいですね、

    山路:ARM64の。

    小飼:このクラスのものでも、Intel入ってなくてもいいじゃんというのは明白になっちゃったからね。

    山路:これってAppleシリコンなかったら、ある意味ここまでIntel CPUの優位性がこんなに早く揺らぐっていうことをみんなが認識することはなかったんですかね?

    小飼:あんまり関係ない。まぁでもAppleシリコンはとどめだね。やっぱりスマートフォンのSoCを抑えられなかったというのが、もうでかい、あまりにでかい。取り返しがつかないほどでかい。どれほど取り返しがつかないかって言ったら、MicrosoftがWindows Phoneというのを作って、Nokiaまで買収したじゃないですか、それでもダメだったというね。だからギリギリ間に合ったのがAndroidなんですよね。

    山路:いやー怖いですね、CEOの判断のその影響の大きさって。いや、すごいわ。いやいや、じゃあということでまたIT関係のちょっとニュース、もう一つ。これはちょっと系統の違うニュースなんですけど、Metaが海底ケーブルを敷設するという。

    小飼:でも、なんでこれ上げたんだろう。っていうのも、もうGoogleはもう散々ケーブルに出資してるわけじゃん。

    山路:Google、自分でそのコンテンツ配信なんかをやってる、MetaもそのFacebookなりInstagramなり持ってるんですけど、これ、そういうところが自前でケーブルを持つっていうのは美味しいんですか?

    小飼:それは美味しいというよりも、こういうことをしないとらサービスが届かないという。その意味ではGoogleやMetaがスターリンクみたいなサービスに乗り出してもぜんぜんおかしくないんですよ。

    山路:Google、そういやなんかの成層圏とかのやつもやってましたもんね。

    小飼:そうそうそう、成層圏プラットフォームとかMetaもやってたじゃないですか。

    山路:それはなんかラストワンマイルであり、あるいはそこに至るまでのそういう物理的なケーブルであり、

    小飼:そうそうそう、

    山路:報道なんかではたとえば一番高くなったパターンで4万キロ引くのに全部で1兆5000億円ぐらいかかるかも、みたいな話あるんですけど。仮に1兆円ぐらいだとして、これって割に合う投資なんですかね。

    小飼:割に合うと思ってるんでしょうね。いや、でも1兆はかかんないだろうな。

    山路:へー。で、海底ケーブルということはもうMetaのコンテンツ流すだけじゃなくて、他の会社なんかも、それ使わせて、みたいなふうに言って、

    小飼:相乗りさせてという。

    山路:そういうネットワーク間で情報をどっちからどっちに流すときの交渉してお金が決まる、

    小飼:ピアリングアグリーメントというやつですね、

    山路:ピアリングアグリーメント、そういうことの事業者の一つとなるということなんですね。

    小飼:というよりも、そういうのってたいてい子会社とか作って、そこに持たせてるけどね。それはさておき。

    山路:大きな会社って通信自体をどんどん手に入れてこうとするじゃないですか、通信の経路自体を。たとえばMetaやGoogleだったら海底ケーブルそうだし、たとえばスターリンクみたいなもんっていうのは本当に最後のところまでやろうとするし、一時期Appleが携帯電話ビジネス、もうそれこそ携帯電話の会社作るんじゃねえかみたいな話なんかもあったような、そういう風になっていくものなのですかね。

    小飼:そういう風にというよりも、とにかく今のITのビジネスっていうのはつながっててナンボなんですよ。別の言い方をすれば、誰かがつなげてなければいけないし、つながってるのであれば別に自分でなくてもいいわけですよ。

    山路:ちょっとこれで不思議だなと思ったのが、GoogleってYouTube持ってるじゃないですか。YouTubeって動画だからすごいこうトラフィック食うと思うんですよね、Metaのコンテンツってそこまでトラフィックを食うんですか? これから食うと見込んでるからこそ、先行的に、

    小飼:ユーザーのエクスポージャーが長いじゃん、こっちのほうが重要なんですよ。だから何ビット、何バイト転送したとかっていうよりも、各ユーザーが何分そこで過ごしてるのかっていうほうが重要なわけですよ。だから、その点ではMetaというよりもFacebookというのは、けっこう強いわけですよ。

    スタッフ:いちおうMetaにはInstagramも入ったりしてるんで、最近Instagramはライブ配信とかでけっこう伸びてきてるので、動画とかですね、インスタライブっていうんですけど、

    山路:なるほど。あとは本当にメタバースみたいなことを将来的にやってくるんだったら、その情報転送量って言うのはかなりのものになるかもしれない。

    小飼:かつてはこういったものというのは、英語で言うところのtelco、要は大手通信業者の仕事だったんですけれども。じゃあ今、誰がお金を持ってるかって言ったら、そういったtelcoではなくてGAFAMなので、もう自らやっちゃってもいいよねという。

    山路:あと最近、特に戦争に関係するところで海底ケーブルが切られるみたいな事件とか起こってきてるじゃないですか。そういう時なんかのことに関しても、防御策とかっていうのを講じなきゃならなくなってくるわけですよね、きっと。なんかすごい、安全保障に露骨に関わってくるような立場に、こういうビッグテックがなってきてんだなというのがちょっとびっくりなところですけれども。
     じゃあもう一つ、IT絡みでこれもタイトルにあって、相当でかいかなと思ったのがオーストラリアが16歳未満のSNS利用禁止法案を可決させたと。これどうですか、たとえばいろんなスマホだったりとか、そういうものの利用に関して前、弾さん、子供に何か使わせる時にペアレンタルコントロールってあんまりいい手段じゃねえよなってことを言ってたじゃないですか。子供がそれはもうある意味自発的に使わせて、親はそこのとこ好きなように時々介入して、それをチェックするとかそういうふうな形であるべきじゃないかってことを言ったかと思うんですけども、もうさすがにちょっとこれ、弾さん的にはSNSとかはどう思います? 子供のSNS利用に関して。

    小飼:子供のSNSというよりも、まずペアレンタルコントロールのようにブラックリスト方式というのはうまくいかないのは見えている。かといって、ネットにアクセスするためのデバイスを全く持たせないというのも、これは無理だと。

    山路:16歳、子供は一律に、

    小飼:いや、だから16歳っていうのは適切かどうかというのは置いといて。

    山路:この法案自体に関しては弾さんはわりと肯定的?

    小飼:肯定的というよりも、否定するにはちょっとSNSのレピテーションが低すぎるなと。

    山路:もうなんか悪評だらけになってきちゃったなという、SNSに対して。

    小飼:そうね。

    山路:世間的な。

    小飼:どの程度、行動に自由があるのかというのはその行動によって、どれくらい衝突事故が生じるかっていうのと関係あるんだよね。道交法というのは自家用車が走り出して、初めて意味をなす法律なんですよね。たぶんSNSの制限というのも、それに通じるところがあると思う、だからいずれは免許とかが必要になるのかね。

    「子供の前に親のSNS利用を教育すべきやろ」(コメント)

    小飼:まさにその通り、まさにその通り。

    山路:16歳とかだけじゃねえだろ、子供だけじゃねえだろっていう。

    小飼:母子をプリウスで撥ねたのは、

    山路:もういい歳というか、

    小飼:そうです、大人ですからね。

    「半年ROMってろって学習方法じゃダメなんかね」(コメント)

    山路:って、じゃあその半年ROMったかどうかをどう審査するかですよね。

    小飼:いやー、だからどこをROMってるかだよ。

    山路:ははは。

    小飼:そうだよ、NHK党とかのページを半年ROMってたら、むしろたまったもんじゃないですよ。嘘を嘘と見抜けなければ、ネットはやっていけないって言った人がいますけど、その人にしてからがぜんぜん見抜けてないじゃん、fusianasanじゃん。いや、この法律でうまくいくかどうかというのは置いておいて、衝突件数が増えれば規制法というのが生えてきてしまうというのは、もうありとあらゆる分野で出てきたことで、その意味ではSNSに対してこういう規制が出てくるというのは、むしろ遅すぎたとすら言えるんじゃないでしょうかね。

    山路:今のSNSって本当にグローバルにつながってしかもそれがフラットにつながっている。超高速道路にいきなり三輪車で走り出すみたいな、そういう怖さがあるのかなと、

    小飼:その一方でエコーチェンバーが簡単にできちゃうわけです。そこも面白い現象ですよね、全世界につながっているんですけれども、実際それぞれのユーザーがつなげている部分というのは本当に狭い部分なわけですよね。マスメディアは信用できないと言っているけど、そういうお前はマスメディア以上に信用できるのかという、そういう自問自答すらしていないわけですよ。だからさ、お前らさ、マスメディア以上に自分のこと信用できるの?

    山路:親こそ、子供に限らず親もSNS使う資格があるかどうか見たほうがいいんじゃないのっていう意見もあると思うんですけど、じゃあたとえばSNSを使う資格って、誰がどう判定したらいいんですかね?

    小飼:まぁそこに戻ってくるんだよね。一体そんなことができるやつがどこにいるのかという。

    山路:それこそたとえばXとかが人の投稿前に、この投稿ってちょっとやばい投稿じゃね? みたいなことをある程度アドバイスするとか、そんなことが事業者ごとにある程度やることはできるかもしれないけども、結局、何がいけないのか、誰がどうするのかって何をどうして決めたらいいんですかねと、本当にわからなくて。

    小飼:いや、だけれども、今のままでいいよっていう人はむしろ少数派だと思います。

    山路:そうですね。

    小飼:どういう風に制限したらいいのかっていうので、総論賛成、各論反対というやつでしょうね。

    山路:これ、ちなみに今回のオーストラリアの法案だと、YouTubeはいちおう除外はしてる、教育なんかのコンテンツも上がってるっていう意味で。

    小飼:そもそもSNSって、どれがSNSに相当するのですかっていうのだって、曖昧な質問なわけです。

    山路:メーリングリストはSNSじゃないのかと言われたら(笑)、

    小飼:そうそうそう。

    山路:別にね、仮にインスタとかXとか使わせないようにしても、メーリングリストでやり取りしてやっぱりハブにされたりとか、そこで問題は起こるとは思うので。なんか本当に、世界とそのまんまつながってるメディアっていうのを、どう人間のこの限られた脳みそで扱えるようにするかっていう話だと思うんですけどもね。

    小飼:いや、でもむしろ問題は世界とつながってるということよりも、世界とつながってるにもかかわらず、簡単にエコーチェンバーの、外へのつながりを断ってしまうっていう、そっちのほうが深刻なんです。要はマスメディアは信用できないっていう、その感覚のほうがヤバいんですよ、むしろ。世界とつながってるっていう意識を持ってる人たちというのは、むしろSNSに気おされない人たちなんですよ。

    山路:なるほどな。じゃあ、ちょっと今誰が何の権利でどう決めていくんだみたいな話をしたんですけども、

    小飼:(コメントを見ながら)SNS検定(笑)、

    「企業のプライベートガバメント」と「マスクの政府効率化省」

    山路:SNS検定、なんか変な利権ができそうな匂いがプンプンしますけどもね。
     これ、ライフカードっていうクレジットカードあるんですけど、それがインターネットウォッチファウンデーションかな、インプレスのじゃないですけど、インターネットウォッチファウンデーションっていうのに加盟したと。それは自体ははあっていうことなんですけれども、ここのとこで書かれているのが、そういうライフカードを使っている事業者に載っているコンテンツがよろしくないと判断したら、止めますよっていうようなことを明言してたりする、つまりクレジットカード会社がサービスの検閲にまで踏み込んでるっていうのは問題じゃないかっていうのが今話題になってたりすることなんですよね、このニュースで。

    小飼:いや、だけれども、じゃあどんなマーチャントでも受け入れて、それがたとえば違法な商品だった、マーチャンダイズだった場合というのも、善意の第三者として見逃すというのであれば、問題なんだけれども。でも、実際のところ、どんな場合でも善意の第三者として許してくれるわけではないわけですよね。そうでない限りは、どんなマーチャントはOKで、どんなマーチャントならNGっていうのを決める権利というのは当然、カード会社のほうにあるわけですよね。

    山路:カード会社も訴えられるリスクを背負っているわけですね。

    小飼:だから、そこまでやっぱり言うんだったらさ、フリーダムオブスピーチとかって言ってるマスクがさ、もう一度PayPalを買収して、どんなマーチャントも断らないというふうにしやがれと。

    山路:本当だよ、

    小飼:そういうことですよ、

    山路:Xvideosもちゃんと課金もできるようにしろよと、

    小飼:その通りです。だから、ロリペドコンテンツだろうが、メスであろうが決済させろと、

    山路:メスってメタンフェタミン、

    小飼:それでその取引が違法だとしても、要はPayPal―――って言っちゃいけないんだけど、今やマスクの手にはないわけだから―――でもいずれにしてもマスクがやってる会社というのはもう善意の第三者だから。

    山路:なるほどね(笑)。

    小飼:そうそうそう。free to tradeだと。フリートレードの名の下に見逃せと。そういうのはガンガン裁判で、

    山路:面白い、それやってほしいな、そこまでやってくれるんだったら、

    小飼:そうでない限りは今のところ、唯一保証された、要はこの決済方法はリジェクトされないというのはリーガルテンダー、つまり現金による決済なわけです。現金による決済というのはこれは断れないっていう風に、どこの国もしてるわけです。150ドルって言った場合には、10ドル紙幣を15枚渡されたら、それを受け取ったら支払いが完了、だから決済済みになるというのはどこの国でも多かれ少なかれやってるわけです。

    山路:あれ、キャッシュレスオンリーの店とか最近ちょっとできてきてるけど、あれなんかはどうなんですかね?

    小飼:あれは特例を利用してるのかな、

    山路:なんかたぶん法的なことはちゃんとクリアしてるとは思うんだけれども。

    小飼:だから基本的にはリーガルテンダーによる決済というのは断れないんですよね。だから現金の強みっていうのはそこにもあるわけです。というのか、逆にキャッシュレスにしたかったら、強すぎる規定でもあるんですけど。いや、キャッシュレス決済というのはあくまでもバーチャルキャッシュをやり取りしてるという解釈であればいいのかな。要するにバンクノートではないけれども、リーガルテンダーを電子決済してるというね。どういう法的立て付けなのかというのはちょっとプロに聞いてみないとわかんないんですけど、基本的にどんな業者も、現金による取引というのは否定できないんですよね。

    山路:それにしてもこのクレジットカードの話もそうですし、さっき言ったSNSの話もそうなんですけど、今の世の中の大きなインフラになっているものっていうのが、そこでの判断、何がいい悪いみたいなことを判定するのがどんどん民間企業になっていってませんか。昔だったら、それこそ検閲的なものってある意味、国がまずやるようなことだったりもしたわけじゃないですか。それこそSNSを使うか使わせるかどうか、何歳以上に、そういう判定なんかっていうのも国によるところが、

    小飼:プライベートガバメントになってますよね。

    山路:これの傾向ってたぶん、おそらく今後も続くと思うんですよね、つまり国の法的な仕組みなんかよりもぜんぜん民間企業とかビジネスとか、あるいはテクノロジーの発展のほうが速いから。これってなんか怖くないですかっていう。ある意味どんどん治外法権が増えていくみたいな、

    小飼:あるいは国有化公有化が進むのだろうか、そういう技術に関して。っていうのも、僕がちょっと思い出してるのは、鉄道の推移なんですよね。初めは私企業が勝手に敷いてたわけじゃないですか。それがいったんはがっつり国有化されて、その後少しずつ民営化されるというのはこれ、日本だけのお話じゃないんですよ。なんで今、そういった公的なサービスを私企業がやってて、そこにおける制限というのを、あるいはもっときつい言い方で言うと、ユーザーの生殺与奪というのをその私企業が握ってるかといったら、そのテクノロジー、サービスの実装というのを公的セクターが担ってないからなんですよね。で、じゃあなんでたとえば道交法とかっていうのはちゃんと政府による規制というのが行き渡ってるかって言ったら、確かに道路とかっていうのは政府が敷設してますよね、実際に工事するのは私企業ですけれども、でも工事を発注したり、だからそれを検収したりするというのは政府ですよね。政府にはそういうものに対して、直接手を入れるだけの能力があるわけですよ。でもネットに関しては、そこまでの能力がないんですよね。持たせることは不可能ではないと思うんですけれども。

     
  • 小飼弾の論弾 #289 「トランプ圧勝のアメリカ、私たちへの影響は?兵庫知事選の衝撃、AIデータセンターで産業が変わる」

    2024-11-26 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします。なお、有料のYouTubeのメンバーシップでは、無料部分だけでなく、限定部分の配信もご覧いただけます(YouTubeメンバーシップでは、テキスト配信はございませんのでご注意ください)。

     今回は、2024年11月19日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年12月03日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/11/19配信のハイライト

    • 孫さんはアントレプレナーではなく、インベスター
    • 「神経細胞とイカの刺し身」と「Googleに対して司法省が手を付けるべきなのは」
    • 「マンガ図書館Zとクソマズ宇宙食」と「アメリカの選挙結果について」
    • 視聴者質問「学校の価値」と「安く買収できるようになった選挙」
    • トランプの影響と「法の上の大統領と民主制」
    • 「民主主義で一番いいこと」と「非侵襲な血糖測定」

    孫さんはアントレプレナーではなく、インベスター

    山路:今日さっそく入ってきたニュースから始めたいんですけども。ソニーがKADOKAWAを買収しようとしていると。

    小飼:すいません、こっちのニュースを先にさせてください。というのも、ニコ生がKADOKAWAのサービスである以上、我々もこの話題を避けるわけにはいかないので(笑)。

    山路:これ、まだこれっていうのは協議が始まったということが報道でちょっと出たというだけで、はっきりしたことはどっちの会社からも発表は出てないんですけれども。私個人的にはこれ、筋のいい買収なんじゃねえのと思ったんですけど。弾さん的にどうでしょう?

    小飼:まぁいい救済合併なのかな、

    山路:救済なんだ(笑)、

    小飼:救済でしょ、それは。

    山路:ほう、ほうほうほう。KADOKAWAって傘下にいろいろ抱えてますよね、出版だけじゃなくて、出版社がいくつもあるっていうのもそうなんですけれども。このニコニコのドワンゴもそうだし、あとはVR関係のそういうやつだったりとか、ゲームソフトの会社、チュンソフトとか、あとはフロムソフトウェアとか、そのあたりも抱えてたりとかして。

    小飼:でも、セキュリティがfusianasanだったわけですよね、

    山路:fusianasanっていうのも懐かしい言葉ですけれども(笑)。

    「けものフレンズ復活お願い」(コメント)
    「ソニー、マジで強大なコンテンツホルダーになるな、アニプレもあるし」(コメント)

    小飼:そうだ、アニプレックス、ソニー参加でしたね、そういえば。

    山路:あとCrunchyrollが、

    小飼:Crunchyrollも、

    山路:ソニーがCrunchyrollを持ってますよね。だから、相乗効果ってけっこうあるんじゃないのって思いましたけれども。前々から言ってるように今、日本のアニメってすごい人気高まってるじゃないですか。アニメーターの収入はともかくとしてですよ。アニメ産業全体で見たら、かなり輸出、稼いでたりもするわけだし。

    小飼:北朝鮮がついでに外貨稼いでたりする、

    山路:あれは真面目に働いてた労働って感じしますけれどもね(笑)、違反はあったにせよ。

    小飼:いいことだと思いますよ。だから、こういう形での国際分業っていうのは、

    山路:北朝鮮の話ね、今の、

    小飼:ネット以前には考えられなかったわけですから。でも、いいこともあれば悪いこともあって、ドワンゴがやられたマルウェアというのは海外発ですよね、日本国外から来たものですよね、あれは。

    山路:これ、今回、前回はKADOKAWAグループ全体が狙われたみたいな感じだったんですけど、それこそシステム的につながってくると、もっとより狙われた時の被害もデカくなるみたいなことがあったりするんでしょうか。

    小飼:まぁそうでしょうね、それは芋づる式というやつで。

    「ドワンゴは切り捨てられるかもよ」(コメント)

    小飼:その可能性はなきにしも、いや、でもそんな丁寧なことするかな、

    山路:そんなにめちゃめちゃ収益上がってるわけでもあるまいにって(笑)。だから切り捨てられるかって話もあるかもしれないですけどね。まぁでもそういうライブ配信みたいなものっていうのはソニー側も切り捨てはしないんじゃないかと。

    小飼:まぁでも名前を上書きするっていうのはあり得るよね。あのコニカミノルタの例を見ても。

    山路:ソニーチャンネルみたいな感じの、(ニコニコチャンネルが)ソニソニチャンネルみたいになっちゃう、

    小飼:そうそうそう。ついでに損害保険とかも売るんですよ(笑)、

    山路:ソニー損保の(笑)、グループ会社で。いやー、

    スタッフ:サイバーエージェント傘下になったりとかする可能性はあるかもしれない?

    小飼:そんな金あった?

    スタッフ:いや、Abemaとかの系統があるんで、今のところ。

    小飼:いや、儲かってないじゃん。儲かってた? Abemaって、

    山路:利益が出るようになったかな?

    スタッフ:出るようになったっぽいですね、

    小飼:そんな出るようになった、

    山路:そうですね、大儲けはできてない、

    スタッフ:前回の発表でようやくっていう風には出てました、

    小飼:いや、だからあれよ、だから累損一掃とかそういうレベルであれば、まぁ、ああだけれども。

    山路:これ、以前もソニーってストリンガー会長の時でしたっけ、かなりコンテンツ重視の方向に来て、今回やっぱりKADOKAWAを買収するみたいな話が出るというのは当然コンテンツのIPが狙いなわけですよね、だとしたら。

    小飼:まぁそうですね、

    山路:前、弾さん言ってたじゃないですか、これから必要なのは要は原作なんだと。映像作品を作るにしても、ゲームを作るにしても、核になるアイデアみたいなものが足りてないんだっていう話をしてて。そう考えると悪くない案件かもしれないですよね。

    小飼:厳密には、原作を見つけてはくるけれども、もろ自分のところで育ててるわけではないですよね。そう、だから「小説家になろう」というのは今のところはどこのグループにも。カクヨムははてなだけれども、KADOKAWAも入っているので。まぁでも「小説家になろう」がなんかオウンゴールで今けっこう辛いとかっていう。

    山路:へー、なんか読者層とか執筆層が変わってきたみたいな話?

    小飼:まぁそんなところですね。でもいちおうカクヨムは持ってるわけですし、だからこれであれば、やっぱり丸っとでしょう。

    山路:丸っと?

    小飼:いや要は「ドワンゴは捨てるの?」とか、

    山路:ああ、なるほどね、細かい腑分けするってことじゃなくてってことね。

    「IPで外貨を稼ぐ国になりたい」(コメント)

    山路:まぁそれに関して、アニメに関してはややそうなりつつあるところはありますよね、

    小飼:今回のニュース、吹き上がってんね、かなり。

    山路:吹き上がってるっていうのは株価が?

    小飼:株価。

    山路:おおー。あとその何でしたっけ、a16zでしたっけ、ベンチャーキャピタルの。

    小飼:ああ、はいはいはい。

    山路:マーク・アンドリーセンとかがやってる、そこが最近レポートを発表して、もうこれからアニメだぜ、みたいな。

    小飼:まぁでも、またa16zに関してはまた後で話、

    山路:ああ、そうなの? これとは別にあるんですか?AIの文脈とかそうじゃなくて?

    小飼:えっとね、選挙の文脈。

    山路:ああ、本当に? そうですか、じゃあそれは後で。そういうことでソニーKADOKAWAのやつが今後どうなるか、要注目というところですかねというところで。じゃあちょっとその選挙の話行く前にですね、AIの話とかいくつかやっておきましょうか。現時点でのAIのキラーアプリができちゃったんじゃないかというのがありまして。AIおばあちゃん。

    小飼:いや、まぁそれだろうな。

    山路:(笑)意外に冷静に受け止めましたね、マジ(笑)。とてもいい使い方じゃないですか、これって。誰に迷惑もかけるわけではないというか、迷惑なやつをうまくシャットアウトするというところで。しかもいい具合にハルシネーションが役に立つという。

    小飼:まさに。そうだよな、だからハルシネーションもさ、相手が平野レミとかだと思っていればさ。

    山路:それはまた平野レミに失礼な感じでは(笑)、

    小飼:いや、どっちに失礼なんだろうな、これ。

    山路:一人当たり40分ぐらい時間を浪費させることに成功したっていう(笑)。

    小飼:すごい、人生から40分も。

    山路:そうそうそう、AIおばあちゃんを使うことで。大変な犯罪抑止効果ですよね。これはAI、いい感じの使い方が見つかったってところなんですけど。あとよく言われている、生成AIで生産性向上するぜみ、たいなことを言われている、それに関してほんまかよみたいなことを調べた研究があるんですけれど。これってじつは上位層は、生成AIを使うことでめちゃめちゃ生産性がアップした、研究職で。つまり、もともとなかなか優れた業績を出してた上位10パーセントとか、そういう層に生成AIを使わせると、めっちゃ仕事が(笑)、

    小飼:やっぱりねっていう感想しか出てこないですね、それ。

    山路:結局、AIに仕事を奪われるんじゃなくて、AIを使う人間に仕事を奪われるんじゃねえかみたいな。

    小飼:まぁでも、そもそも仕事を奪う奪われないってさ、本来仕事が面倒い、辛い、要は3Kなものであったら、むしろ率先して手放すものでしょう。だからいまだにそうなってないっていうのがおかしいよね。

    山路:ただ、この研究職とかそういうことに関して言うと、つまりある意味やりたいとか、みんなから尊敬されるような仕事の奪い合いになっているという言い方も、

    小飼:まぁそういうことですよね、そういうこと。

    山路:結局なんか仕事をするのは義務ではなくても、権利というか、あるいは報償になっているという、仕事をすること自体が。今そのトップ層では。

    小飼:いや、トップ層だけではないよ。だからそれを一般化とかしたのが、我らが竹中平蔵君。

    山路:ああー。

    小飼:いや、だからもともと平野だったところに正規非正規という、

    山路:身分制を作り、

    小飼:そうそう、身分制を作りという。

    山路:こういうまぁその生成AIの文脈の中で、例によって孫正義さんはいろいろ大きなことを言って、前回もちょっと話出たんですけど、NVIDIAのチップを使ってAIデータセンターを日本中に構築するぞと。産業を一からリセットするぞ、みたいなことをNVIDIAのジェン・スン・フアンさんとの対談で言ってたりするんですけれど。この孫正義さんの言うAIデータセンターって、そんなにすごいものなんでしょうか。

    小飼:いや、メガソーラーの時と同じじゃない?

    山路:そうですか(笑)、

    小飼:とにかく今やっておけば、金を引っ張れると。もし引っ張れないっていう風になったら、じゃあちゃんと手放しちゃうと。ARMでもそうしたでしょ。

    山路:はいはいはい。

    小飼:だから、その見極めがすごいですよ、だから投資家なんですよ、孫さんは。インベスターなんですよ、アントレプレナーではなくて。じつは。

    山路:なるほどね。それはじゃあ昔からぜんぜん変わってないという、

    小飼:アントレプレナーではないんです、じつは。だから、泰蔵さんのほうはどっちかというとそっちに近いんじゃないかな、性格的にね。

    山路:弟の孫泰蔵さんということですね。私もちょびっとの間ソフトバンクで社員として働いたこともあるので(笑)。孫さんとエレベーターで乗り合わせたりとか普通にありました。

    小飼:だから、まさにインベスメントの対象だったわけです、出版事業というのは。

    山路:私はさっさと辞めてしまいましたけれども(笑)、

    小飼:そうです、孫さんもさっさと投資の対象というのを切り替えたでしょ。

    「WeWork」(コメント)

    山路:そうそう、あのWeWork、何でしたっけ、名前忘れた、

    小飼:おにいちゃんいたよね、

    山路:ど忘れしちゃったけど、なんでそのビジネスがそんなに素晴らしいと思った? みたいなことを、その孫さんが熱くなって言うと、(コメントを見ながら)あ、アダム・ニューマン、なんかそんな感じの名前、その人ですね、普通のレンタルオフィスやんけ、みたいなことを思ったんですけど、案の定あんま大したことはなかったっていうのはありましたから。まぁ孫さんもけっこう外すときは外すよなというのはあるんですけどね。

    小飼:しょっちゅう外してはいますよ。でも、10回に1度も当てれば十分なので。

    山路:超大金持ちですよね、今。BBモデム配りまくってADSLやったっていうのは確かに慧眼だったと思うし。あと日本で一早くiPhoneを売ったじゃないですか、あれも大成功、

    小飼:いや、まさに。

    山路:それにあれがあったおかげで日本でスマホっていうのが一挙に普及したっていうのはまぁ間違いなくあると思いますしね。

    小飼:そうですね、だからブロードバンドもそうですし、その意味ではちゃんと、通った後が道になってるというのか、肥沃になってるので。

    山路:まぁなんか、口だけの男ではないというところはあるとは思うんですけれども。

    小飼:まぁ巨大なミミズみたいなもの、

    山路:フンが肥やしになるみたいな感じですか(笑)、

    小飼:そうそうそう、

    山路:なるほど、

    小飼:だから『DUNE』で言えば、サンドワームなんですよ。

    山路:じゃあまぁ孫さんの言うようなAIデータセンターの構想っていうのを、あんまりいちいち全部、真面目に受け取って実現可能性をうんぬんかんぬんということを考え始めると、孫さんの手のひらの上で転がされているということになるわけなんですかね。

    小飼:また真に受けるのかーみたいなね。

    山路:まぁそれで動くときもありますからね、確かに(笑)。じゃあちょっとこのAIの関係のことで、これ不思議だなというか、当たり前といえば当たり前のことかもしれないんですけれども。研究者の分析、LLMの中で何が行われているのかっていうのがようやく、ようやくというか分析を徐々に進めているという。LLMのパラメーターみたいなもののところで、脳のようなある意味、領域というのができつつあるんじゃないかみたいな、概念の。当たり前といえば当たり前なのか、

    小飼:それは、いやまぁ、でもそれはどうかなとは思う。確かにLLMに限らず、ニューラルネットワークっていうのは脳というのか、生物の神経細胞がモデルだったわけですよね。だからそのように振る舞うというのは確かなんですけれども、でも配線の仕方というのが違って、同じニューラルネットワークっていっても、いろんなやつが出てきたじゃないですか。畳み込みですとか、

    山路:CNNとか、

    小飼:そうそうそう、あのGANですとか。でも、その中でもLLMというのは一番脳っぽい繋ぎ方をしてますよね。ただ、その繋ぎ込みというのをじゃあシリコンの上ではどうやってやってるかっていうと、エミュレーションなわけですよね。

    山路:ソフトウェア的にっていう、

    小飼:ソフトウェア的に。GPUの各、この場合プロセッサって呼んじゃっていいのかな、まぁPUと呼んでおきましょうね、PUは何をするかっていうと、各ニューロンからの入力っていうのとかまとめて演算するわけですよね。その演算式とかっていうのを、いろいろ変えるとそのニューラルネットワークの個性が出てくるわけですけども。それをメモリに落とし込むわけですよね。でも、メモリなんですよ。だからどうやって神経のつながりというのをエミュレートしてるかっていうと、メモリなんですよね。フラットなわけです。なんですけども、我々の実際の神経というのは物理的な制約がありますよね。脳のあるニューロンがどれだけのシナプスから入力を受け付けて、どこへ出力してるのかというのは物理に決まってるんですよね。おかげで、ずっと省エネルギーなんですけれども、物理的なインターコネクトでやってるので、その辺のところというのは数にも限界が出てくるわけですよね。そう、極端な話、メモリ1個でも、あ、ごめんなさい、失礼しました、プロセッサ1個でもメモリが十分に広大であれば、あと十分な時間があれば、どんなニューラルネットワークでも再現できるんですよ。それを十分な速さでやるためにはどうしたらいいのかっていったら、現在の回答というのはGPUであり、TPUであるんですけども、根本的にやってることっていうのはそういうことなんですよ。

    山路:ここでの脳の領域っていうのは、あくまでも、

    「神経細胞とイカの刺し身」と「Googleに対して司法省が手を付けるべきなのは」

    小飼:おお、素晴らしい、42番の方、

    「松本元先生の功績を感じる」(コメント)

    小飼:その名前を出そうと思ってたところなんですよ。

    山路:この方は?

    小飼:はい、松本元先生、まだ引かないで、まだググらないで。たぶんですね、まとも松本元先生の、日本人にとっての最大の功績というのはイカの刺身を全国で食べられるようにしたことです。

    山路:はー。もしかして液晶とかの人? え違うか、

    小飼:液晶とかの人とはちょっと違うんですけども、じゃあなんでそうなったかっていうと、いや、神経の研究に生涯を捧げた人ですね。最初に何をやったかって言ったら、じゃあリアルの神経を研究しようと。じゃあリアルの神経を研究するには何がいいかと。哺乳類とかの神経っていうのは細すぎるんですね。イカとか頭足類の神経っていうのはぶっといんですよ。なんでぶっといかっていうと、鞘がないんですね。ミエリンというサヤに哺乳類とかの、脊髄動物の神経っていうのはくるまれていて、それを使うと配線すごい細くできるんですよ、それがないんですよ。なので、それがない欠点を補うためにぶっとくするしかない。ぶっとくすると、電極とかを指しやすくなるので、だからこれを飼いたいと。なんだけども、イカはすぐ死んじゃう。「なんでイカすぐ死ぬ」って、なんかラノベのタイトルみたいになってきてるけども(笑)、その理由がわかるまで確か5年かかったんですよね。

    山路:ああー、いわゆる実験動物を整えるために、それだけかかっちゃったわけなんだ。

    小飼:そうです、そうです。判明した理由というのは、要は水槽で飼ってる場合というのはイカの排泄物、要はうんことかおしっことかっていうのもそのまま水槽の中に残るわけですね。だから、これを再摂取しちゃうことで死んじゃう、まぁ尿毒だったわけですよ。それで、要はアンモニアを取り除けばいいんだと。そのおかげでイカの回遊水槽というのができた。

    山路:へええ、それイカの刺身が、みんな食べれるように、

    小飼:で、松本先生の研究室はふんだんなイカの神経を手に入れたわけですね。

    「冷静に考えてもともとの研究、全部止めてイカの養殖やりだしたら狂ってると思うわな」(コメント)

    山路:そりゃ、なかなかマッド入ってますね(笑)。

    小飼:いや、だけれどもすごい、こういうのが急がば回れというやつで、松本先生はじゃあどこまで研究を推し進めたかって言ったら、本当にシリコンで神経細胞を、神経細胞というのか、シナプスとニューロンを再現するところまできてたんですよ。その時に風邪をこじらせて亡くなってしまうという、

    山路:ああ、それはまた。

    小飼:だから、もし生きてたら、本当にノーベル賞に手が届いたんじゃないでしょうかね。本当に生のイカから、シリコンの脳を作るところまで行った方ですから。
     ちなみにですね、その亡くなるほんの少し前の取材記事というのがまだ立花隆が健在だった頃の、『電脳進化論』だったっけな、に載ってますので、ちょっと詳しく知りたい方というのは松本元で。

    「未来を生き過ぎてる」(コメント)

    小飼:いや、本当そうですよ。じゃあ松本元先生はどうやって未来にたどり着いたかって言ったら、ひたすらイカを飼えるようにしたわけですよ。こういうのが基礎研究って言うんでしょうね、本当に。

     
  • 小飼弾の論弾 #288 「AI検索とエージェントで何が変わる?与党大敗で暮らしはどうなる?インサイダー取引から強殺まで相次ぐ金融不祥事」

    2024-11-12 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします。なお、有料のYouTubeのメンバーシップでは、無料部分だけでなく、限定部分の配信もご覧いただけます(YouTubeメンバーシップでは、テキスト配信はございませんのでご注意ください)。

     今回は、2024年11月05日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年11月19日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/11/05配信のハイライト

    • 楳図かずお死去とMacの新ラインナップ感想
    • 「すごい技術」と「すごい技術がテイクオフする」は同じくらい重要
    • 「暗号化したデータを暗号化したまま加工して戻す」技術
    • 視聴者質問「ZEN大学について」と「103万円の壁と給付付き税額控除」
    • 金融関係の不祥事と「政府機関の中でどこが一番腐ってるかといえば」
    • すい臓がん早期発見技術と「旧列強国の賠償」

    楳図かずお死去とMacの新ラインナップ感想

    山路:最初はあんまり楽しくないというか、残念なニュースからなんですけども。漫画家の楳図先生が亡くなられたという、88歳。

    小飼:ついに。

    山路:弾さん、楳図さんの作品で思い入れ、あったりします?

    小飼:やっぱり『14歳』でしょうね。

    山路:チキンジョージ博士。

    小飼:『14歳』も、なぜ『14歳』かって言ったら、それが公の筆筆活動の最後の作品になっちゃったからですよ。それからずいぶん間が空いてるじゃないですか。だから、そこがすごい残念ですね。まだその後も何作も描けたはずなんですよ。だから、ある意味すごい悔いが残るわけですよ。こないだ御歳90歳になった筒井康隆御大とかは、ついこないだまで書いてたわけですよね。この間やっと『カーテンコール』という、これが最後だと本人は思ってるというのを出して、でもそれ以前に大全集出してるからね。たぶん10年後にまた似たようなことするんじゃないかと、生きていれば。

    山路:楳図先生ですけど、2、3年前かな、美術展は油絵だったかな、その展示会を私、見に行ったんですよ。『私は真悟』のある意味、続編的なやつをやってて、

    小飼:333から飛び移れ!

    山路:そうそう(笑)、エネルギーすげーあったと思うんですよね、その時点でも。なんか漫画に対してちょっとわだかまりができちゃったのがすごい残念だなと思う、

    小飼:いや、漫画ではなくてよねだから掲載誌に対して、だよね。心を端折っちゃったやつらがいるんですよ。

    山路:(スライドを示しながら)これ、ぜんぜん楳図さんの絵柄じゃないんですけど、ChatGPTに楳図かずお死去という記事を書いてくれてって言ったら、こんな風に。

    小飼:やっぱりChatGPTに手はどうやって描くんだって言わせるべきでしたね。

    山路:げんこつはこう描くんですよと。

    「80、90で面白い作品で作れるの?」(コメント)

    小飼:って、いや、それこそ何をおっしゃいます、で。いかん、名前が出てこない、

    山路:漫画家さん?

    小飼:うん、富嶽三十六景の、

    山路:あー、広重、

    小飼:違う違う、広重じゃない、広重じゃない、

    山路:あ、葛飾北斎、

    小飼:葛飾北斎だ、葛飾北斎があと90歳ぐらいの頃に、あと10年くれれば俺は完璧な作家になれると、だからもう少し寿命くれと言ってたぐらいなので。いや、そういう才能の持ち主でしたね、明らかに。

    山路:楳図さんも。

    小飼:うん。いや、本当にいつになったらあの絵がすごくなるのを止められるのかっていう。いや、もう本当に、もう昔から怖かったけれども。『まことちゃん』とか怖いほど面白かったし(笑)。

    山路:あの絵柄でギャグをやるっていうのがすごかったですよね。

    小飼:で、あの時代の人というのは現在80代後半とか、90歳以上の超高齢者に今だとなってしまうけれども、でも彼らにも本当に元気バリバリの時代というのがあって、それで彼らが元気バリバリの時代というのは人権何それ? 美味しいの、な時代で『漂流教室』とか本当にそういう時代に書かれてたので。いや、某『ザンボット3』とかで人間爆弾とかやってたというのも。

    小飼:いや、本当に恐竜、ごめん(笑)、『漂流教室』、復刊した時に僕もいただいたんですよ。怖かった、しばらくページめくれなかったです、あれ。

    山路:楳図さんの作品って今、全部電子化されてましたか、あ、でも『わたしは真悟』電子版で読んだな、読めますよね、Kindleとかでたぶん。

    小飼:いや、あれはもともと電子の話だったので。

    山路:確かに。なんていうか、インターネット普及以前にあれが描かれてたっていうのがすげえなって思いましたよ。そんな技術的な知識はご本人、そんなになかったと思うんですけど。イマジネーションがすごかったですね。

    小飼:いや、でもウイルスがでっかくて触手がビョーンって伸びてたというのは、『14歳』の時のウイルスはあれなんですよ。ちゃんと肉眼で見えないはずなのに絵になってたんですけど、それが本当に良かったというのか。いや、でも楳図先生が示したもので一番大きいものというのは、一番強烈なホラーを描けるというのは一番強烈なギャグを描けるっていうのとほぼ同義だと。いや、山上たつひこがまさにそういう。

    山路:ああ、こまわり君描いときながら、そのホラー、羊の、ああ、でもあれは小説、あれも漫画か、違う、あれは違う、山上たつひこ原作や、

    小飼:怖いというのか、でたらめな話もいっぱい描いてますけどね。ギャグでデビューして、まぁその後ですけど、でも、楳図かずおの場合はもう、ホラーというのか、少女漫画というのか、本当に何と言えばいいのかな、漫画が描き捨てられてた頃、単行本として連載作品をリクープするというスキームがなかった頃からもう描いてらっしゃった方なので。

    山路:人の感情の筋をコントロールする術をよく知ってるっていう感じなんですね。

    小飼:でも、それを本当に読み捨て、本当に当時は漫画というのは読み捨てだったんですよね。後世に残す作品ではなかったんですよね。いや、『おろち』あたりでも確かそうだったと思います。

    山路:おお、かなり読んでますね(笑)。

    小飼:どころか『ウルトラマン』とかも描いてたんですよ。

    山路:あー、覚えてる。覚えてます、『ウルトラマン』描いてましたね、楳図さん。

    小飼:そういう描いては捨ての時代から漫画を描いてて、もう絶対頭からこびりついて離れないような、『漂流教室』とかものにした作家でもあるので。消えてしまったというのか、息を潜めてるギャグ漫画家の中の皆さんには、もうぜひミステリーとかでひっそり復活とかしてほしいですね。そう思いません? 岡田あーみんとか、そういう形で復活してくんないかな。

    山路:相原コージさんは、最近うつ病の漫画描かれてて。

    小飼:いや、本当に、でも相原コージ先生はもう初めからそういう才能はあったと思います、よいや、本当にやがて悲しき、というのは。『ムジナ』とかはまさにそうじゃないですか。

    山路:確かに、確かに。

    小飼:いや、だから今一番見たいものというのは榎本俊二のホラーとかね。サスペンスに近いのはあるんですよね。『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』みたいに、もうひたすら斬って斬って斬ってみたいなのはあるんだけど、でも、まだホラーは手をつけてない。

    山路:まぁそれにしても本当に惜しい人を亡くされましたが、でも大往生だったとも言えますけどもね。

    小飼:年齢的にはそうだったけれども、でもあと2、3作、あと『14歳』クラスの連載作品を3作、4作は残せたはずなんですよ、ペースからいって。

    山路:化け物だなぁ、つくづく。いやいや本当になんか惜しい人亡くされましたということで。じゃあ、ちょいと変わってITの関係いっておきましょうか。Macのラインナップが一新されたという。

    小飼:いや、いっぺんにそんなに出されてもっていう感じはしますけれども(笑)。Mac miniはあのついに来ましたね、という。

    山路:ついに? 何が?

    小飼:過不足のない。

    山路:一番安いモデルって本当に10万、

    小飼:切ってますね。

    山路:本当に、なかなか買いやすいものになりましたよね。

    小飼:それでいて目いっぱい積めるモデルもあって。M4も単なるM4でなくて、M4 Proでメモリも、メモリ64というのは決して多いほうではないんだけどね、今の基準では。で、ストレージが8TBあって。あと10GbEを、

    山路:ああ、イーサネット、

    小飼:全部詰め込むと70万超えるんだけど(笑)、

    山路:10万ぐらいから70万って、ラインナップ同じ機種で幅ありますよね。ずいぶんこれ、Mac miniとか盛り盛りにメモリとかも積んだら、相当、たとえばローカルLLM動かすみたいなことにも使えたりする、

    小飼:だから、そういう用途を念頭に置いてるでしょうし、さらに念頭に置いてて欲しかったと一部の人たちが強く思ってたのはラックマウント。ヘッドレスで使う用途。

    山路:それに今回のMac miniは適している?

    小飼:どうなんだろうな、というのはスイッチの位置とかさ。

    山路:あのスイッチの位置は大量導入を考えて、ではないですよね(笑)。

    小飼:なんだけども、AWSとかで使ってるM1、M2というのを、一昔前のMac miniというのはやっぱり電源まわりというのはカスタムというのを、自作してたみたいですね、

    山路:もうボディ分解して中身だけ並べとくみたいな感じ、

    小飼:接点の部分というのは。

    山路:そういう用途によってはじつはすごくお買い得なものになっているのかもしれないですよね。

    小飼:(コメントを見ながら)今1Uって言ったら、ちょっとデカすぎるね、Mac Proでもそんなに容積は食わないので。

    山路:まだ発売されてないんですけど、ベンチマークの、

    小飼:そうか、まだ出てないのか。まぁ予約は聞くしね。

    山路:ベンチマークでけっこうM4 Maxとかすごい良好な成績を上げてるみたいな。

    小飼:まぁでもMaxはMac miniにはラインナップないんだ、

    山路:そうですね、これはMacBook Proのほうですね。これ、来年にはMac Studioとか、あるいはMac Proとか、新しいさらにM4の上位バージョンを積んでくるんじゃないかみたいな話あって。

    小飼:M4 Ultraとかね。

    山路:そうそう。

    小飼:いや、今回一番貧乏くじ引いたのはMac Studioでしょ。

    山路:なんかね、早く出してくれと一番上位機、望んでる人もいるとは思うんですけども。なんかMacっていい感じにApple Silicon、Armチップへの移行、だいたいうまく、

    小飼:華麗に、

    山路:やりましたよね。

    小飼:済ませましたね。いや、M1が良かった、なんと言っても。M1の頃はもう何ジェネレーションか費やしたところで、そろそろいいっていうふうな移行をするかと少なからぬ人が、僕も含めて思ってたんですけれども。M1があまりにも良かったので、みんなけっこうエイヤで乗り換えたんですよね。

    「○周年モデルはやめとけ伝説」(コメント)

    山路:確かに、なんかAppleの何周年モデルとか、なんだ、Spartacusとか、あとはなんかG4 Cubeみたいな、

    「それに比べてIntel」(コメント)

    小飼:いや、Intel大丈夫かっていう。

    山路:そこのところで、

    小飼:Intel息してる? 状態になってるっていう。

    山路:CPU業界なんか妙にいろいろ熱い展開が続いて、Intelもそうですし、なんかIntel、Appleが買収するんじゃねえかみたいな噂記事で出てましたけど、

    小飼:それはないな、

    山路:ただSamsungが買収するんじゃねえかとかみたいな記事出てましたけどね。

    小飼:こう言っちゃなんだけど、一番いいのはAMD買ってくれることかな(笑)。

    山路:前回の「論弾」で言ったかな、そうやってAMDとIntel、ちょっとパートナーシップ、命令なんかを揃えようみたいなところでパートナーシップ結んだから、全くないわけでもない、ゼロではないと思いますけどね、可能性。その一方でCPU、Intel x86アーキテクチャーがちょっと伸び悩んでるというか、だいぶ浸食されている中でArmのほうが伸びてるんだけど、ArmとQualcommが大喧嘩しているという話なんですよね。これってどうなるんでしょうと。弾さん的にどう見ます?

    小飼:どうなるんでしょうね。

    山路:要はQualcommがArmからライセンス受けてArmチップを作ってたんだけど、QualcommがNUVIAっていう別の会社、これもArmチップを作ってた会社を買収して、その時のライセンスの更新をしなかったというか、拒否ったのかな? それに対してArmがいやいや、NUVIA買収して、それのことのライセンスに関しては別でしょう、それに関してはちゃんと払えよと言って、Qualcommのほうは払わねえって大喧嘩になっているという話なんですけど。

    小飼:いや、でもIntelも似たようなことをしてるんですよね。Armチップ作ってたところを買って、StrongArmを作って、その後にマーベルという会社にそのIPを手放したということがかつてあったんですけれども。その時にはこれだけのニュースにはならなかったというのは、

    山路:市場規模がぜんぜん違う、

    小飼:も違ったし、もう当時のIntelはそれを次期の主力に育てるとかっていうつもりはもうぜんぜんなくて、もうあくまでもサイドビジネスとしてやってたので。

    山路:これ、ArmとQualcommの喧嘩なんですけども、あと60日だったか、そんなぐらいでとりあえずの何らかの決着をつけないといけないみたいな話になってるらしいんですけど、これってどっちにしても、だってArmにしてもQualcommがArmのチップ作って売ってくれなかったら困るわけじゃないですか、そんなことないですか?

    小飼:どうなんだろうね、Appleもライセンシーだし、みたいな感じなのかな。あとなんだかんだ言ってSnapdragonのシリーズから手を引くというのは考えがたいしとか、そういう考えなのかね、Armの立場からすると。

    山路:じゃあ少々ふっかけてもというか、強く出てもQualcommとしては払わざるを得んでしょって思ってる?

    小飼:そうなのかもしれない、

    山路:でも将来的にQualcommって、じゃあそんなにライセンスのことでガタガタ言うんだったらRISC-Vに移行しちゃうよってことはあり得ないですか?

    小飼:わからん、けどもこの世界のIPというのは意外と強いというのはQualcomm自体が勝者として体験してるからね。かつてIntelがAppleのために、

    山路:モデムチップ?

    小飼:そうそうそう、5Gのモデムを作ったところを、それはQualcommのIPに抵触してるっていうことで、その時はQualcommが勝ってるんですよね。それでIntelは手を引かざるをえなくなって、

    山路:でAppleがなんかそのIntelの通信部門、通信チップ部門を買収してみたいな、

    小飼:そうそう、

    「すごい技術」と「すごい技術がテイクオフする」は同じくらい重要

    山路:なるほどな、もう本当にIT業界どっちもどっちみたいな喧嘩を常に繰り広げてるっていうことではあるんですね。まぁでもいろいろ業界的には影響の大きいことだから、まぁどうなるんでしょうねと。
     次これは日本の話なんですけど、これもITには関わってくるんですが、これなかなか面白い話だなと思ったんですよね。不動産IDと、あと郵便受けに紐付けられた番号ってのを組み合わせて、住所を17桁のIDで表して、宅配なんかの配達をスムーズにできねえかっていうことを実験しようという。

    小飼:いや、でも17桁で足りる? どうなんでしょう、そこは。もちろん人口を考えればぜんぜん足りるんだけれども、でも住所の場合、どうだろうなこれ。

    山路:部屋番号分かれたりとか、あるいはそれこそ、なんか受け取るボックスごとにみたいな可能性ってありますもんね。これ、なんかどうも、

    小飼:17桁とかっていうのではなくて、使用者をまたがった、たぶん各社とも私的なIDというのは多かれ少なかれ使ってるとは思うんですよ。

    山路:じゃあ、そんなに劇的な効率になるかはまだわかんないって感じ、

    小飼:わかんないけれども、でも日本の場合は住所の表記っていうのがちょっとデタラメに難しいですよね。たとえば京都の場合とか。

    山路:なんたら下ル、みたいな、

    小飼:そうそうそう。ざっくりと市区町村、何番地何番でさらにアパートメントであったら部屋番号というのはあるんですけども、ざっくりと。東京都の場合ほとんどそれでつくとは思いますけれども、京都とかね。ken_allの世界ですね。

    山路:郵政省が出しているCSVデータですよね。

    小飼:そうそうそう。

    山路:私あれ、変換してMac用の辞書を作ったことあるんですけど、なんていうか頭のおかしい人が作ったデータ形式ですよね(笑)、なんか。本当にめちゃめちゃ例外が多いというか、処理しにくいCSVで。本当にCSVと言えるのかみたいな感じの、あれは苦労した覚えがありますけども。
     でも、日本ってとにかく住所とかのなんていうんですかね、突合みたいな話っていうのがめちゃめちゃ難しかったりとかするので、その辺のところが多少なりとも改善していくといいかなと思いますけどね。とにかく宅配業者が大変すぎますもんね、今は。
     で、AIの話とかいこうと思うんですが。いろいろAIの、相変わらずバンバン新しいサービスが出て。Githubなんかが自然言語だけでアプリ作れるサービス出してきたりとか。これ、どうです、まだ弾さん的には(笑)、

    小飼:これ最初、自然言語をアプリで生成って僕読んじゃって、え?みたいな、人工言語をアプリが勝手に作ってくれるの?みたいな、

    山路:エスペラント語的なやつを(笑)、エスペラントみたいなの作れると、それは面白いですけど。これは相変わらずまだ弾さん的にはそんな使う気にはならないって感じですか?

    小飼:我々はそんなに要件定義が上手なのか、ということはありますね。過去にあるゲームを自然言語で再実装する、というのは可能だと思うんですよ。『スペースインベーダー』を作ってとか、『パックマン』を作ってとか、『ぷよぷよ』作ってとか。

    山路:だけど今までなかったアプリを作ろうとすると、さあ大変。

    小飼:そうそうそう。それでいったん作られたところで、たとえば『パックマン』だったらパワーエサの位置をここにしてくれとか、あとパワーがかかってる時間というのをちょっと長くしろ、短くしろ、あるいは永遠にしろとか。まぁよくある不死チートをかける。そう、残機が減らないチートをかけるとかっていうのをやる程度というのはできるとは思うんですけれども。
     我々の言語能力というのはじつはそこまで高いのかという。

    山路:あー、なんか結局コンピューターと格闘しながら、自分の中にあるものを形にしていかなきゃならんというか、自然言語でそもそも表現できてるわけじゃねえよという。

    小飼:ただインターフェースにはなると思います。自然言語は。

    山路:じゃあまぁこの自然言語でアプリ作れるからといって、今までアプリぜんぜん作れなかった開発者でない人がもうもりもり自在自由にアプリを作るという風になるわけではなさそうという、

    小飼:ではないでしょうね。やっぱり作っては捨て作っては捨てしないと。でも、それを言ったら自然言語で物語を書く場合というのも、それやるわけですから。

    山路:藤井太洋先生もおっしゃってましたもんね、そもそも人間の脳みそにとってそんな自然なことじゃないんですよ、本を書くのはということを、この前の対談でも。

    小飼:ましてやアプリときたら。

    山路:まだ人間とAIは距離はあるのかもしれないですよね。と言いつつ、このChatGPTがなんとかそのユーザーインターフェース、どんどん距離を詰めようと機能をもりもりと追加して、先週かな、検索機能を搭載してきたと。私、いちおう有料ユーザーなんで使って、まあまあ便利は便利ですよ、今までPerplexityとかで検索してたようなことをChatGPT上でできて、なおかつそれで検索した結果なんかをたとえばこんな指示して、こんな風に整理してくれとか、こんなデータ形式に変換してみたいな、そういうことが一つの画面でできるのは便利かなと思ったんですけど、まあまあ、これですごい検索ビジネス大きく変わるかと言われると、どうなんだろうみたいな。

    小飼:いや、広告が入らない、むしろ我々が快適にそれで感じるとしたら、答えの質が高いというよりも、広告出てこないという(笑)、

    山路:それはあるかもな(笑)、あとなんかとりあえずChatGPTサーチで使っているリファレンスの参照サイトっていうのが、まとめサイトじゃなくて割と信頼のできるマスメディアなのかな、それを優先的に表示するみたいで、「おわかりいただけただろうか?」みたいなやつっていうのはあんまり出てこないっていうのはちょっといいかなと思いましたけれども。
     でも、これって結局、検索が云々というよりもAI企業同士の囲い込みやってるだけなんじゃねえの、という気もしたんですけど。たとえばPerplexityのユーザーとかこっちに引っ張ってこようとか、なんかそういう、全体のパイを広げるというよりはAI企業同士のなんか争いのようにも見えましたけどもね。

    小飼:でもこの後の話でもちょっと出てくるとは思うんですけども、AIって一体どこで金儲けするのかっていうのが、まだ見えてないところがありますね。見えてないところがあるというよりも、まだぜんぜん見えないですよね。

    山路:それのことについて、このAnthropic、そういうAI企業の一つですけども、そこがClaude、AIモデルのClaudeの新しいやつでパソコン操作できるようにしたよっていう、実験的なものですけどね、そういういわゆる最近、こういうのをAIエージェントっていうようになってきてるんですけども、これがすげえことなんじゃねえのと業界では言われてたりもする。

    小飼:じゃあAIエージェントができたとしましょう。我々はAIエージェントに、そもそもお金を払うでしょうか。あるいは払うとして、どういう形態で払うでしょうか。

    山路:うーん。どこの部分でマネタイズする、うーん。たとえばなんかよくデモで出てる旅行計画立てるみたいなやつあったりするじゃないですか。AIエージェントにいろいろ頼んで、そういうのだったら、そこのとこに、旅行会社のところに誘導してみたいな、

    小飼:でも、そうなるのがわかってたら、じゃあ人間の方がAIエージェントを出し抜かない?

    山路:その有料の旅行代理店につながるようなところを回避するように、

    小飼:そうそうそう、予定を作らせておいて、相見積を取らせる(笑)、

    山路:確かにな、やるやる絶対やる(笑)、それ自体をAIにさせるわけですよね。

    小飼:そうそうそう、

    山路:相見積の処理を行わせるみたいな。そうだよな。本当に今のChatGPTみたいに毎月ナンボか取って有料で何かさせるみたいなこと以外で、確かにすごいやりにくいかもしれないですよね。AIエージェント来ても、まだマネタイズは難しいですか(笑)。

    スタッフ:質問です。Yahoo!とかGoogleとかは結局どうやってマネタイズって、やっぱり広告でしたか、

    小飼:広告でした、なんだかんだ言って広告でした。

    スタッフ:あれらのサービスも、当初はやはりマネタイズに関しては苦戦したんでしょうか、初期の頃はわからない、

    小飼:何も考えてなかった、Googleの中の人たちは。この技術すげえだろうと、こんだけすげえ技術なんだから、誰かが買ってくれるはずだったんですよ。よりにもよって、Yahoo!に買ってくれって言ったんですよね。その時Yahoo!が買ってたら、歴史変わってたんですけどね。