プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は中嶋勝彦を見よう/「プロレスの仕組み」論す!


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中嶋勝彦を見よう/「プロレスの仕組み」論

東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」

追悼“テキサスブロンコ”テリー・ファンク

G1クライマックスに圧倒的な価値観を!

ALL TOGETHERに見えたリアルな関係 

【永田三冠議論百出】全日本プロレスは大丈夫

清宮海斗の「顔面蹴り」と「平和ボケ」

プロレス大賞の選考は毎年難しい

岩谷麻優vsKAIRI IWGP女子王座の勝負論

私が愛した“若獅子”アントニオ猪木

この旦那にしてこの妻あり!! 天龍源一郎を支えたまき代さん

頑固一徹! 追悼・ターザン後藤さん

大谷晋二郎選手の試合中の事故について

『至高の三冠王者 三沢光晴』を書いた理由

新日本プロレスvsノア対抗戦から見えた個人闘争の炎

令和の横アリ大実験!新日本vsノア対抗戦

プロレスと結婚した風間ルミさん

武田有弘☓小佐野景浩 「これまでのノアと、これからのノア」



――
今回のテーマは小佐野さんが解説をやっている東京女子プロレスなんですが、ボクはそこまで女子プロレスは詳しくないですし、東京女子プロレスに至っては今回の両国大会でめて第1試合からメインまで通して見たというくらいの超ぼんやり層です。

小佐野 へえ、この前の両国を全部見たんだ。どうだった?

――
初見に近いのに感想なんか言っていいんですかね(笑)。

小佐野
 やっぱりパッと見た印象も大事だよ(笑)。

――
えーと、なんだろうな。プロレスの世界とは無縁だった女の子たちがたまたま入り込んで頑張っていく姿を応援するというか……昔の全女とは全然違うし、スターダムとも異なる印象でした。こんなことをいうと、なんか怒られそうだな(笑)。

小佐野
 私も東京女子の解説をやるようになってから見るようになったんだけど。東京女子の選手たちってプロレスラーに憧れて入ったわけでなかったんだよね。初期メンバーは全員プロレス志向ではなかった。新しい子たちは東京女子の先輩たちの試合を見て、「プロレスをやってみたい」ってことで入ってくるケースが増えてきている感じなんだけど。

――
初期メンバーは何か他に理由があってプロレスをやるようになったわけですね。

小佐野
 たとえば一番多かったのはアイドルになりたいと。あとはお笑い芸人だったり、プロレスでいろんなことが表現できるんじゃないかと。それで実際にプロレスを始めてみたら、のめり込んでいって……。今回のメインイベントを張った山下実優なんかは強さの象徴として君臨しているけど、あの子だって本当はアイドルになりたかったわけだから。

――
山下実優はけっこう本格派っぽいかんじでしたけど。

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小佐野
 あの子は中学まで空手をずっとやってたんだけど、アイドルになりたいと思って東京に出てきて、巡り巡って高木三四郎と出会い、「ちょっとプロレスをやってみないか」と誘われて東京女子に入った。入団会見では「歌って踊れるプロレスラーになりたい」って言ってね。それがいまやエースの風格が漂ってるわけだよね。その山下からベルトを取った渡辺未詩なんかもアイドルの志向。アップアップガールズ(プロレス)のオーディションを受けたから当然プロレスの仕事もやることは覚悟していたみたいだけど、オーディションでロックアップや受け身をやらされたり、ここまでガッツリ試合をやらされるとは思ってなかったみたいだから(笑)。

――
渡辺未詩こそプロレス向きですよね。あのパワー!!

小佐野
 東京女子の解説仕事を始める前に渡辺未詩の試合を見たんだけど、その試合ぶりから「プロレスが大好きな子なんだろうな」と思ってたわけ。ひとつひとつの技もきっちりしてるし、ソフトボールもやっていて運動神経抜群。プロレスラーになりたくて入ってきた子なんだろうなと思ったら全然違った(笑)。本人はアイドルとしてあまり筋肉をつけたくなかったみたいでね。

――
そうなるとテーマ曲の「チョコっとラブ ME ドゥー (feat. 渡辺未詩)」も深いものに聞こえてきますよね。「みんなプロレスは好きかー?」から始まるのに。これだけプロレスを見てきた小佐野さんがそんな東京女子プロレスの解説をやることにちょっと抵抗はあったんじゃないかなと。

小佐野
 いや、そんなに抵抗はなかったけど、初めはやっぱり歌のコーナーから始まるでしょ。あれを見たときに「ちょっと俺は無理かも……」と思ったわけ。

――
女子プロレスは昔から歌と密接な関係ですよね。

小佐野
 そうだよね。昔だってビューティ・ペアは歌ってから試合をしていたわけだから「やっぱりその系統か」という印象はあったんだけど、初めて見たときの第1試合が鈴芽vs遠藤有栖。両国でタッグのベルトを取った2人のシングルマッチで、有栖のデビュー戦だったわけ。「どんな試合をするのかな」なんて高をくくって見てたら、がっつりグランドから始まって。7~8分の試合だったんだけど、5分まではほぼグラウンドの攻防だったんじゃないかな。

――
ちゃんと基礎を学んでいるってことですね。

小佐野
 いきなりお腹を蹴ってロープ飛ばして……という試合じゃない。「しっかりしているな。誰が教えているんだろう?」って興味が湧いて、これは解説もちょっとやってみたいなと。それでいろいろと話を聞いてみたら、もともと東京女子はマットレスリング、要はリングやロープもないマットの上でスタートしたから、ロープを使わない試合運びを覚えないと戦えないと。そういうルーツがあることを知って納得したんだよね。東京女子の特色でいえば、他のレスラーのマネをしないし、誰かのパクリをしない。なぜならば、みんなもともとプロレスファンじゃなかった。真っさらの状態で始めたから、良くも悪くも他のレスラーの影響を受けてないんだよね。それこそ初めは「プロレスってなんなんだろう?」っていうところから始めている。

――なんの知識もなくプロレスラーになるって想像以上に大変ですよね。

小佐野
  どう戦えばいいのか、どうやったら勝利に結びつくのかはまったくわからないで始めてるわけだからね。フィニッシュ・ホールドを教わったとしても、そこにどうやって持っていくのかは最初はわかんないわけだから。

――
最近プロレスデビューした佐々木憂流迦の評価がすこぶる高いですけども、彼はプロレスファンだったからイメージがつきやすい。でも、東京女子の選手たちは手探り。

小佐野
  それこそ未詩に聞いたら「ドロップキックはどっちがやられてるのか最初はわからなかった」と(笑)。

――
よく考えたら、たしかにわかりづらい(笑)。

小佐野
  知っていたプロレス技はジャイアントスイングだけ。それは「めちゃイケ」で加藤浩二がやっていたから(笑)。プロレスで知ったわけじゃないんだよね。

――
渡辺未詩の得意技はジャイアントスイングですね。

小佐野
  彼女はあの技を使いこなせるパワーがあるし、「あとあと他のアイドルを回せることができるかな」という感じでやってみたらしいんだけど。

――いやあ、東京女子を通じて、あらためてプロレスの難しさがよくわかりますね。プロレスファンはあたりまえのようにスリーカウント決着を理解してますけど。

小佐野
 格闘技を何かやってた人と、まるっきり格闘技をやったことすらない人でも差はあるよ。「ロックアップは大事な基本だから」と教わっても、格闘技をやったことがないとまず組むことの意味がわからないだろうし。

――
試合に勝つために戦うけど、相手に致命的なケガを負わせちゃいけないという暗黙の了解もあったりするわけですもんね。

小佐野
 いろいろ勉強していくうちにプロレスが好きになっていった子は多かったと思うんだよね。たとえば上原わかなという大食いアイドルや舞台もやってる子がDDTの「夢プロレス」という企画に参加した。企画の趣旨は自分の夢を叶えるためにプロレスを始める。全部クリアできたら夢を叶えてあげますよっていうことで、べつにプロレスラーにならなくてもいい。そこではアジャコングがプロレスを教えるんだけど、アジャが上原わかなに「アンタのやってることはまったく人の心に響かない。上っ面だと人の心は動かせないよ。私のことをおもいきり殴ってみろ!」と。それでも上原わかなはおもいきり殴れないんだけど、そこを殴らないと殴られるのがプロレスだよね。アジャに抑え込まれて身動きが取れなくされて「今度はオマエが抑えてみろ」とポジションを変えるんだけど、アジャは簡単に返しちゃう。

――
アジャさんは全力で物事に取り組む大切さを教えたんですね。

小佐野
 人の心を捉えるのはどういうことかといえば、一生懸命やる、力いっぱいやる。そうしないと人の心は動かせない……ということをアジャは教えた。上原は「夢プロレス」の卒業試合をやったあとに「これからどうしますか?」と聞かれて「プロレスを続けます」と答えて、いまでもプロレスを続けてるわけだ。

――いい話です!女子プロレスを知り尽くしたアジャさんが親身にレッスンをしてくれるのはありがたいことですね。

小佐野
 アジャは東京女子のことを気に入ってるのか、大きな大会のときは必ず試合に出てくれるんだよね。

――
アジャさんが全女でやっている時代と比べると、女子プロレスのあり方もだいぶ変わってますよね。

小佐野
 そう。いまはあの頃の全女の匂いがまったくしないプロレスだからね。たとえばDDTにジャイアント馬場やアントニオ猪木の匂いがしないと同じかもしれない。それでいえば昔のレスラーからすれば、東京女子の選手は仲が良すぎるように見えるかもしれないね。

――そこも聞きたかったんですよね。全女の抗争はリング外でも激しかったですよね。一線を越えていた。

小佐野
 本当に足の引っ張り合いがすごかったし、私生活でもメンタル強くなければやっていけないし、試合でも何をされるかわからない緊張感はあったよね。

――アジャさんとバイソン木村さんはブル中野に反旗を翻したあとは、巡業バスにも乗れないし、控室も用意されない。それこそ天龍さんと阿修羅・原さんのように電車やリング屋さんのトラックに乗って巡業についていって。

小佐野
 そこは男子も少なからずそうだったわけでしょ。たとえば武藤敬司や蝶野正洋から当時の新日本道場の話を聞くと、とてもじゃないけど美しい青春物語じゃないよ。「アイツ早くやめねえかな」「1人やめて競争相手が減ったぜ」と喜ぶ世界。どこまでいっても競争だから仲良くはなかった。

――プロレスの勝負論の世界でレスラー同士が仲良いわけがないですよね。格闘技の場合、わりとスッキリしてるじゃないですか。

小佐野
 格闘技だと結果で白黒はっきりしちゃうからね。プロレスの場合は「アイツばっかプッシュされて」というふうに感情的になるよね。

――
東京女子の選手の仲はどうなんですか?

・スターダムと東京女子は対抗戦をやらなくていい
・東京女子は初期ジャパン女子?
・東京女子はしっかりとレスリングから
・アイドルレスラーの根性は半端じゃない……まだまだ続く
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