またしても!
ものすごく『ひろぐ』をほったらかしたせいで
何の話からどう書いていいのか
まったくわからなくなってしまった!
伝えたい事はいっぱいある!
しかしこうなってしまったからには
伝えなくてもいい事から書き始めてみよう!
まずは機嫌がいい時の「カミさん」に
絵を描かせてみた!
彼女が「超視点画家」である事はもちろん知っているので
たいして驚きもしなかった!
長く見るほどに笑いがこみ上げる超視点画のお礼として
今度は私が絵を描いて
「これが何だかわかるかね?」
と尋ねた!
夫婦による食後のささやかなコミュニケーションだ!
かなりよく描けていると思うのだが
何だかさっぱりわからないと言われた!
そうか!
やっぱり知らないか!
と笑った末に
いざ正解を発表しようという時!
私はこれの名前を知らない事に気づいた!
あれ?
これは何だ?
何という名前だ?
子供の頃の私は
これを大量に持っていた!
プラスチック製で
黄色や緑色や赤色や
いろんな色の物があった!
縦の長さは10cmほどで
奇妙に描いた群島のような部分は
全て穴として抜けている!
これで絵を描くのだ!
プレートの上半分の穴に沿って鉛筆で塗り
それが終わったら
プレートを上下逆にして
もう一方の穴の中を塗る!
長辺の中点にへこみがあるのは
そこに点を打てば上下を逆にした時の基準点になるからだ!
そのようにしてよくわからない二つの群島を塗りつぶすと!
そこにはランボルギーニ・カウンタックや
「ウルトラマン」や「R2-D2」の絵が現れる!
なにしろ私はこれが大好きだった!
そこまで詳しい説明などいらない!
と思う人がいるだろう!
この『ひろぐ』を読む人々の多くが
これを知っているだろう!
だが!
これは何だ!
何という物なのだ!
名前は何だ!
私は黙り・・・
カミさんは呆れ・・・
夫婦のだんらんは寂しく終わっていった!
このまま入浴からの就寝などできるものか!
きっと受験の頃の夢を見てうなされ
4時頃に目覚めてしまう!
私はいくつかのLINEグループを使って
これが何なのかを尋ね回る事にした!
ほどなくいくつもの回答が得られた!
案の定
同世代は誰もがみんな
「いっぱい持ってたけど名前は知らない」
というコメントを並べてきた!
みんな私と一緒で
これを呼んだ事がないのだ!
ところがネット時代の賜物と言うべきか!
むしろ若者たちが
インターネットで上手に見つけた写真や情報をくれた!
これの名は!
「マジックじょうぎ」だそうだ!
聞いてもなお記憶にない!
そんな名前だったか?
いや!
そんな名前で呼んだ事は一度もない!
とは言え何と呼んでいたのかも記憶にないので
これはやっぱり「マジックじょうぎ」なのだろう!
若者達から送られて来る写真を見ているうちに
猛烈に「マジックじょうぎ」がやりたくなった!
両手を握りしめて我慢しなければいけないほど
「マジックじょうぎ」で絵が描きたくなった!
しかし!
今の世の中に「マジックじょうぎ」は存在しない!
我が家の近所にある駄菓子・駄玩具の問屋ストリート
「松屋町」を歩いても
「マジックじょうぎ」は一度も見た事がない!
インターネットで調べてみたところ
現在購入できる似たような物が売られていた!
しかしそれらは
いくつものプレートを使ってより複雑な絵を描く物や
上下の謎の群島を合成せず
普通に1枚のプレートで絵が描けるような物だった!
違う!
違うのだ!
プレートを見た瞬間に何が描けるのかなど
わかりたくない!
難しい絵などいらない!
ちょいと線が足りないぐらいの絵を描いて
それに文句とか言いたいのだ!
もしも今夜寝ているうちにタイムスリップし
目覚めると『スター・ウォーズ』日本公開時の
1979年だったとしたら!
翌年ヒットする
ノーランズの『ダンシング・シスター』を先に歌って
世界中で大儲けしようなどとは思わない!
まっすぐ駄菓子屋に駆け込み
「マジックじょうぎ」をやるだろう!
無一文でタイムスリップしてしまったら
駄菓子屋の前で
「ちょーだーい!
1枚ちょーだーい!」
と唱え続けて子供からもらってやる!
「ちょーだい親父」と呼ばれてもいい!
「マジックじょうぎ」ができればそれでいいのだ!
翌朝になってみると
割と前の晩の事を忘れているのが私だ!
なにかもやもやして
なにかどうしてもやりたい事があったのだが
昨日やりたい事と今日やりたい事は全然違う!
困った事にそれが私だ!
そんな具合に
「マジックじょうぎ」の事が頭から薄れていった頃!
久しぶりに秘境「群馬県」を訪れた!
6月末にまさかの群馬公演を行う
『財団法人親父倶楽部』のプロモーションとして
『後藤ひろひとの傑作デリバリー劇場』
と題したイベントを行いに向かった!
1年ぶりに会う群馬のワークショップ
「伊勢崎大王ファーム」のメンバーは
相変わらず私を歓待してくれた!
そのお礼として
イベント翌日には彼らに
6時間の秘密ワークショップを施した!
実は「伊勢崎大王ファーム」を受講したメンバーの有志が
その後
『ひろぐ』記事タイトルでもあった
『讃えよ自動販売機!』を意味する
「ヘイル・ベンダーズ!」
を劇団名とした即興演劇劇団を立ち上げ
その公演が既に伊勢崎市で大成功をおさめていたのだ!
そんな嬉しい動きをほったらかすわけにはいかない!
私は無報酬の秘密ワークショップを自ら提案し
より上級の即興術を彼らに伝授した!
彼らが舞台でユニフォームとして着用する
オリジナルTシャツの背中には
これがプリントされていた!
そんな即興劇団「ヘイル・ベンダーズ!」の中に
「べいしあ」と名乗る俳優がいる!
群馬県で「べいしあ」という言葉を知らない者はいない!
群馬県民はスーパーマーケット「ベイシア」が
全国にあるものだと思って譲らない!
「滋賀」で言うところの「平和堂」!
「山形」で言う「ヤマザワ」!
「沖縄」の「りうぼう」!
「大阪」の「玉出」!
そんなこんなで群馬のベイシアだ!
「大王!
これを!」
と言ってべいしあが私に差し出した紙袋!
その中を覗いて「しりこ玉」が飛んだ!
こ!
これは!!!!!
なんと!
未開封のウルトラマン・マジックじょうぎだ!
何マニアかは知らないがマニア達の間では
「当時もの」と言われているレア・アイテムで
再発された復刻版などではない!
本物だ!
しかも中には!
「ゴールド(金色)が出たら当たりです」
と箱の表に書いてあるので
金色プレートが出たら
これらのウルトラマン消しゴム詰め合わせがもらえるのだろう!
消しゴム怪獣の姿には見覚えがないが
パッケージを見る限りアニメ作品
『ザ・ウルトラマン』の物だ!
となればこのマジックじょうぎの誕生日は
放映時の1979年と考えられる!
では!
どうにももったいない気がするのだが
1枚だけ開けてみようか!
バレンタインデーの下駄箱に
自分の靴以外の物が入っていた中学時代の緊張を思い出しながら
どきどきに1つ開封してみた!
青だ!
はずれた!
けども!
素晴らしい感触だ!
これだ!
これに触れたかったのだ!
そして!
うん!
わからない!
何の絵なのかさっぱりわからない!
やってみる事にする!
まずは丁寧に片面を!
そして!
上下をひっくり返して!
溝に沿ってぜーんぶ塗りつぶすと!
じゃああっ!!!
(ウルトラマンの鳴き声)
できたぞ!
そう!
このクオリティだ!
ぐだぐだじゃないか!
けどもこれでいい!
これがいい!
これに文句を言いたかったのだ!
一生懸命塗ったのに!
なんだこの簡素化されたファミリーは!
父も母もあったもんじゃない!
だいたいウルトラマンが生まれる前は
父と母は一体何だったのだ!
ああ楽しい!
ああ嬉しい!
かくして群馬の俳優「べいしあ」のおかげで
私の無茶な夢が叶えられた!
この1枚の開封で私は充分にひろいだ!
なので残りはしばらくこのまま保管しておこう!
私は忘れない!
これの名前は「マジックじょうぎ」だ!
「マジックじょ」まで聞くと
世界中の多くの人々が
偉大なバスケットボール選手
マジック・ジョンソンを連想する!
しかし私は違う!
「ロサンゼルス・レイカーズを5度の優勝に導いた
全米バスケットボール史上伝説の選手
マジック・ジョ」
とまで聞いても
私が続けるのは
「うぎ」
の二文字だ!
かくして平和のモニュメント「自販機食堂」にて
遂にその店長と対面した!
平和と自動販売機について語り合ったのであった!
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