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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「ラピュタ都市伝説〜実在した「天空の王国」記録を検証する」
2019-09-20 07:009999999pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/20
今日は、2019/09/01配信の岡田斗司夫ゼミ「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」からハイライトをお届けします。
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「空中帝国マゴニア」の伝説と謎
【画像】スタジオから いやあ、ということで、1時間10分も過ぎたんですけど、すみません。まだやり残したことがあるので、もう少し無料が続きます。 ごめんなさいね。もうね、『ラピュタ』って、ニコ生ゼミで2回分も語ったから、俺「語ることないわ」と思ったんですけど。ブラタモリ形式で語ったら、まだまだあるんですよ。 ちょっと今から話す最後の話が終わったら休憩に入りますから、もうちょっと待ってください。 『ラピュタ』の都市伝説というのを話したいと思います。 『ラピュタ』の都市伝説として有名なのは幻のエンディングっていうやつですね。 まあ、「幻のエンディングを劇場で1回見た」とか「金曜ロードショーで見た」って言う人がいるんですけど。 これに関しては、謎が解けてます。 (パネルを見せる)
【画像】オーニソプターのパズー © 1986 Studio Ghibli これ、何かというと、宮崎駿がわりと初期の頃に描いた「パズーが、やっと発明したオーニソプター(羽ばたき飛行機)に乗って、シータを迎えに来る」というか「シータのもとに遊びに行くパズー」というイメージボードですね。 宮崎駿は、こういうイメージボードを描いていたんですけど、これが悪いわけですね。これが全ての犯人なわけです。これを見た人は、いつの間にか、記憶の中で繋げてしまった、と。 昔、金曜ロードショーで、『ラピュタ』の放映が終わった後、スタッフリストを流す時に、この絵を写したことがあったらしいんですね。その他にも、いくつかイメージボードを見せたので、そのおかげで「『ラピュタ』には、本編が終わった後に、もう少しエンディングがある」とか「続きのお話がある」という噂が立ってしまったんですね。 人間というのは面白いもので、頭の中で「見た」という記憶を作っちゃうんですね。それで、いつの間にか「別バージョンのエンディングがあった」と言う人が出てきたんです。
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実は、『天空の城ラピュタ』というアニメ自体には、僕が知っている限り、不思議な都市伝説というのはないんですよ。 でも、ラピュタではなく空中帝国の都市伝説なら存在する。冒頭の目次でも話した通り、今日はその話なんですよ。 ジョナサン・スウィフトが18世紀に書いた『ガリバー旅行記』には、小人ばかりの国リリパッド、巨人の住むブロブディンナグ、空中に浮かぶラピュータというのが登場するんですけど。「では、空に浮かぶ王国のモデルとは何だったのか?」という話です。 ジョナサン・スウィフトというのは、あんまり完全な架空の話を書くタイプの人ではなかったんですよ。何かモデルがあって、それをもじって書くというタイプの人なんですね。 では、ジョナサン・スウィフトは、何をモデルに空中帝国を書いたのかというと。ええと、マゴニアっていうのをご存知ですか? マゴニアというのは、9世紀くらいにフランスで信じられていた空中王国なんですね。 「雲の上に土地があって、そこから帆船で地上に降りて、穀物や果物を持ち帰った」という話が、フランス全土で記録されているんですよ。これは、ウィキペディアで調べてみたら、ちゃんと出てきます。 リヨンの大司教……だから、本当にキリスト教的には身分の高い人で、嘘とかを書く人じゃない人なんですけど。その公式記録として「リヨンの大司教アゴバルドゥスという人が、マゴニアから船で降りて来た4人の商人を捕まえて、石打の刑、みんなで石を投げて殺す刑で死刑にした」という話が残っています。 このマゴニアというのは、フランスだけの迷信ではありません。起源956年、アイルランドのクロエラという街にも、「空飛ぶ帆船が降りてきた」という記録が、これも司教が公式な文書に残しています。 空から降りて来た帆船は、錨を降ろして泊まろうとしたんですけども、その鎖が教会のアーチにひっかかって、逆にどこにも行けなくなってしまった。 1人の男が空中の船から降りてきて、なんとか錨を外そうとした。しかし、それを下で見ていたクロエラの街の人達が興奮して男を捕まえようとしたので、司教は市民に命じて「その男を助けてやりなさい」と言った。 すると、男は慌てて帆船まで戻って行って、その後、空中帆船は錨の紐を自分で切って逃げて行った、と。 これも、公式記録として残っているんですね。
・・・
こういう話は、怪しげな話だと言われるんですけど、それが怪しげだとするならば、司教が残した他の話にも嘘とかがいっぱいあるはずなんですよ。 当時の中世の司教が書いた記録というのは「かなり正確なもの」として認められているんですね。もしこれが与太話とか嘘だとするならば、他にも司教が書いた嘘話というのがいっぱい残ってて当然なんです。 そういうのがないのに、なぜか不思議と、こういう話がポコポコと、中世のフランスやイギリスに残されているんです。 空飛ぶ帆船というのは、1211年にも、イギリスのケント州で目撃されているし、18世紀に入った1743年にも、ウェールズで目撃されています。 ウェールズの空飛ぶ帆船は、かなり低いところまで降りて来たようで、雲の間から降りてきた船の底の竜骨まで見えたそうなんですね。 これらの船は「空中に浮かぶ島マゴニアからやってきた」と言い伝えられているんですけども。マゴニアには、雷とか嵐を起こすテンペスタリイという、テンペストのもとになった種族がいると伝えられています。 『天空の城ラピュタ』に出てくるラピュタにも「嵐とか雷に守られている」という設定があることからも、宮崎駿は、このマゴニアとかテンペスタリイの話を知ってるんですよ。 知ってるから、「はい、ラピュタというのは、スイフトが書いた『ガリバー旅行記』が元ネタだっていうけど、そのさらなる元ネタはマゴニアですよ? 皆さんもご存知のアレですね」っていう、例の教養丸出しで書いて、俺達にはわからないっていう、「知るかよー!」っていう、例のやつなんですけども。
・・・
ところが、これが全くの与太話と言い切れないという、1つの証拠じゃないかと僕は思っているんですけど、19世紀になるとパッタリ消えちゃうんですよ。このマゴニアとか空中の帆船の目撃談というのは。 じゃあ、リヨンの大司教やアイルランドやウェールズの司教が目撃して記録したものは何だったのだろう? ただの幻覚ならば、なぜ、大勢の目撃者がいて、司教もそれを見て、わざわざ公式記録に残したんだろうか?
これは1665年の記録です。 (パネルを見せる)
【画像】空飛ぶ帆船の大戦闘 1665年に「空飛ぶ帆船同士の大戦闘」というのが目撃されたんです。この空飛ぶ帆船同士の戦闘を目撃した人達の記録として、1680年に出版されているんですけど。 ひょっとして、この空中帝国マゴニアというのは、実在していて、17世紀半ばに戦争が起きて、お互いを滅ぼし合って消えてしまったのかもしれない。 世界中の山奥とかジャングルとか、あとは、全く船が通ってなかったはずの海底から、時々「なぜこんなところに金貨とか、金属で作った装飾品があるんだろう?」っていう、不思議なものが見つかることがありますよね。 それらは、これまでは「わからない」とか「謎だ」って言われてたんですけど。ひょっとしたら、9世紀から12世紀まで、ヨーロッパの人を恐れさせ、17世紀の空中戦争で滅びてしまったマゴニアの遺産なのかもしれません。
記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
2019/09/01 #297 「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」
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ジブリ特集
岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密
月着陸50周年特集
岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説
岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
岡田斗司夫ゼミ#291:アポロ宇宙船(前編)〜地球が静止した1969年7月21日とアポロ11号の打ち上げ
岡田斗司夫ゼミ#292:アポロ宇宙船(後編)〜月着陸と月面歩行
岡田斗司夫ゼミ
岡田斗司夫ゼミ#287:『アラジン』特集、原作からアニメ版・実写版まで徹底研究!
岡田斗司夫ゼミ#288:映画『君の名は。』完全解説
岡田斗司夫ゼミ#289:NASAとLINEの陰謀、スパイダーマンをもっと楽しむためのガイド
岡田斗司夫ゼミ#290:『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと、『巨人』世界の地理
岡田斗司夫ゼミ#293:『なつぞら』特集と、『天気の子』解説、“禁断の科学”の話
岡田斗司夫ゼミ#294:『千と千尋の神隠し』の不思議な話と、幽霊、UFO、怪奇現象の少し怖い話特集
岡田斗司夫ゼミ#295:終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」
岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
マンガ・アニメ夜話
ガンダム完全講義1:虫プロの倒産とサンライズの誕生
ガンダム完全講義2:ついに富野由悠季登場!
ガンダム完全講義3:『マジンガーZ』、『ゲッターロボ』から始まる映像革命
ガンダム完全講義4:第1話「ガンダム大地に立つ!!」解説
ガンダム完全講義5:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part1
ガンダム完全講義6:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part2
ガンダム完全講義7:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part1
ガンダム完全講義8:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part2
ガンダム完全講義9:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part3
ガンダム完全講義10:第4話「ルナツー脱出作戦」解説
ガンダム完全講義11:第5話「大気圏突入」解説
ガンダム完全講義12:第6話「ガルマ出撃す」解説Part1
ガンダム完全講義13:第6話「ガルマ出撃す」解説Part2
ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1
ガンダム完全講義15:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part2
ガンダム完全講義16:第8話「戦場は荒野」解説Part1
ガンダム完全講義17:第8話「戦場は荒野」解説Part2
ガンダム完全講義18:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part1
ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2
ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1
ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2
ガンダム完全講義22:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part1
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「実は皇居と同じ大きさ〜言ってはいけないラピュタの謎」
2019-09-19 07:009999999pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/19
今日は、2019/09/01配信の岡田斗司夫ゼミ「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」からハイライトをお届けします。
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ラピュタ遺跡その2です。完全再現、2500年前の空中帝国ラピュタという話を、ちょっとしてみようと思います。 映画の中でムスカがシータに言うんですけど、ラピュタが捨てられたのは700年前です。シータやムスカの祖先たちは、700年前にラピュタを捨てて地上で暮らし始めました。その後、無人になったラピュタは、誰にも知られずに雲の中をさまよっていたんですね。 では、ラピュタというのは、どんな都市なのか? これを、ブラタモリ風にやってみようと思います。
さっきも話したように、これがラピュタ自体の模型なんですけど。 (模型を見せる)
【画像】ラピュタ模型 700年前に滅んだ空中国家ラピュタなんですけど。このラピュタの大きさって、ほとんどどこにも書いてないんですよ。 ジブリ作品って、たぶん数字が稼げるから、検証サイトはいっぱいあるんですけど、それでも、ラピュタ自体のサイズを書いてる人はほとんどいないんですね。 ありがたいことに、映画の中にわかりやすいシーンがあります。それが、これなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】ゴリアテとラピュタ © 1986 Studio Ghibli ちょっと暗くてわかりにくいんですけど、これは空中戦艦ゴリアテという、軍が持っている最新型の空中戦艦です。それがラピュタに横付けしているシーンがあるんです。 ゴリアテの全長は312mという設定が出てるから、これを見ると、ラピュタの直径って500mくらいに見えるんですよ。 しかし、もし、ラピュタのサイズが500mだとすると、他のシーンと矛盾するんですよね。 その矛盾というのは何かというと、シータとパズーがラピュタに上陸して「あ、池がある」と言って覗き込んて、「うわー」とビックリするシーンなんですけど。なぜ、ビックリするのかというと、実は、それは池ではなかったからなんです。 (パネルを見せる)
【画像】パズーと池 © 1986 Studio Ghibli 上から見て行ってください。ここにシータとパズーが小さくいるんですけども。池かと思った狭い隙間から下を覗いて見ると、ずーっと下まで続いていて、古代の石造りの都市が水の中に沈んでいて、その中になんか不思議な深海魚みたいなのが泳いでいるという、すごい壮大なパノラマの風景があったんですね。
【画像】池の中 © 1986 Studio Ghibli こんな超巨大なビル群が水の中に沈んでいた。つまり、この水深は、どう見ても100m以上はあるんです。これ、果てしなく底の方まであるんですけど。 ということは、もしラピュタの直径が500mだとすると、そんなラピュタの池の中に水深100m以上あるような水中都市というのはどうやっても入らないんですよ。 じゃあ、なぜ、こんなゴリアテのシーンが出ているのかというと、これはもう簡単で、実は、このシーンではゴリアテをわざと大きく描いているんですね。 小さく描いちゃうと「ゴリアテが来た!」っていう恐怖感が出ないんですよ。「ゴリアテに横付けされてしまった! 軍に見つかってしまった!」という緊迫感や絶望感を出すために、わざと絵で嘘をついているわけですね。だから、大きく描いてるんですよ。
・・・
実は、今回用意したこのラピュタの模型というのは、ペーパートイなんですね。超精密にレーザーカットされた紙を重ねて作る模型なんですけど。 これを企画制作している「さんけい」っていう会社の担当者の人と、以前、偶然に話をしたことがあるんですね。 本当に偶然なんですよ。大阪に、日本橋という、秋葉原に次ぐ大オタクタウンというのがあって。その日本橋のど真ん中に、ジョーシンスーパーキッズランドというビルがあるんです。 だいたい5階建てか6階建てくらいで、全てのフロアがオモチャや模型で埋まっているという、もう夢のようなところなんですけど。僕、日本中にいろんなオモチャ屋があるんですけど、たぶん、日本で一番楽しいのは、このジョーシンスーパーキッズランドじゃないかと思ってるんですけども。 そのジョーシンスーパーキッズランドに行った時に、偶然、さんけいさんの「みにちゅあーとキット」の、かなり精密な完成品がいっぱい飾ってあったんですね。 「うわ、すごい!」と思って見てたら、それぞれに時間が書いてあるんですよ。このラピュタの模型だったら「7時間」って書いてあって。さっきの軽便鉄道の模型だったら、だいたい「7時間」とか「8時間」くらいなんですよ。 ところが、それよりちょっと大きい、キキとジジの家とかになってくると、「13時間」とか「17時間」になってきて、『千と千尋』に出てくる湯屋は「170時間」って書いてあるんですよ。もう、目眩がして。170時間(笑)。 『千と千尋』に関しては、湯屋だけでなくて、湯屋の向こうにある時計台とか、あとは街の全てがペーパートイで出てるんですよ。で、それぞれが全部「23時間」とか「40時間」とか書いてあって。 担当者の方から「私、担当なんです」って言われたので、「これは、素人だったらこれくらいかかるけど、慣れてきたらもっと早く作れるんですよね?」って聞いたら、「いえ、かなり慣れている人で170時間です」って言われて。もう本当に、頭がクラクラしたんですけど(笑)。 なんでこんな時間が掛かるのかというと、この株式会社さんけいって、もともとはオモチャの会社ではなくて、建築模型の会社なんですね。 建築模型の会社が「ジブリの建物って面白い」ということで、わざわざジブリに対して「あなたの映画の中に出てくるものを精密な建築模型として再現したい」と企画を持ちかけたんです。 ジブリはジブリで「いや、実は宮崎駿って、映画の中でいっぱい嘘をついてます。正確に作ろうとしても、困ったことが出ますよ?」と言ったんですけど、さんけいさんの方は「いや、それは映画のセットとしては当たり前ですから、そこら辺は、ちょっと話し合って作っていきましょう」と。 ということで、ジブリから資料をもらって「ちょっとここに矛盾があります」と、ジブリ側に質問状を出して、そうして出来たのがこのシリーズなんですね。 なので、実はかなり正確なんですよ。いろんな嘘や矛盾はあるんですけども、それを現実的な部分にまで落とし込んで作っているんです。 何が言いたいかというと、これは、縮尺模型としてかなり正確なんです。 例えば、このラピュタ、真上から見ると、ラピュタの中心にあると思っていたガラスドームが、中心からややズレた位置にあるのがわかるんですね。 (模型を見せる)
【画像】ラピュタ模型 こういうのも、やっぱり模型を作ってみないとわかんないんですよ。
・・・
さて、ここに小さい丸い部分ありますよね? この緑の部分。 (模型の一部を指す)
【画像】ラピュタ模型のテラス この小さい丸い部分が、今回のラピュタのサイズの算出の全ての基礎になります。 この丸い部分は何かというと、パズーとシータが乗っている凧が不時着した、あのテラスなんですね。 というわけで、ここからはブラタモリ形式で「じゃあ、ラピュタのサイズはどれくらいなのか?」というのを測ってみようと思います。
全ての基礎はこのカットです。 (パネルを見せる)
【画像】ラピュタのテラスと凧 © 1986 Studio Ghibli もう数字を色々と書き込んでいるんですけども。墜落した凧の翼の幅に注目してみましょう。 これは翼がひん曲がっているんですけど、実は翼が折れているわけではないんですね。というのは、最後にパズーとシータが乗る時に、パズーが「ワイヤーを張り直せは大丈夫だ」と言ってるので、曲がっているだけで、折れてはいないんです。 この凧のサイズがわかれば、このテラスの直径が、ほぼわかるようになります。 では、この凧のサイズはどれくらいか? 凧のサイズが一番ハッキリわかるのが、このカットなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】アンリとパズー © 1986 Studio Ghibli これは「タイガーモス号の上で、ドーラ家の3番目の弟のアンリがしゃがんでいるところに、パズーが梯子を登って来る」というシーンです。 このコックピットには、後にパズーとシータが2人で乗るんですけど。だいたい子供2人が身体をぴったりくっつけないと乗れないようなサイズです。 なので、この凧のコックピットの幅を、僕は100cm、1mだと考えました。自分でも、「ドーラ一家としては小柄なアンリが、しゃがんでこれくらいの幅になる感じってどれくらいかな?」と思ったら100cm、1mだと考えました。 このコックピットのサイズがわかると、後に翼を伸ばすシーンがあるので、コックピットと翼の比率から凧のサイズがわかります。 (パネルを見せる)
【画像】凧 © 1986 Studio Ghibli この凧、翼長が、なんと12mもあります。かなり大きいんですよ。 翼長12mというのは日本海軍のゼロ式戦闘機とほぼ同じ大きさですね。零戦の翼長が11mだから、それよりちょっと大きいくらいなんですよ。 2人乗りで、パズーが操縦して、動力もない凧を飛ばすには、確かに翼長12mくらい必要なんですね。これくらいの翼の面積が必要。「さすが宮崎駿」って思いました。 僕ね、7mか8mくらいだと思ってたんですけど、でも、2人乗りで、最後、ゴンドアの辺までシータを送っていくとか、いろんなことを考えると、ちょっと苦しいなと思ってたんですけど。この12mというのは良いサイズだと思います。それをワイヤーで固定しているというのもにくいですね。 この12mがわかったことで、これで、クラッシュして翼がやや畳まれている状態の凧が落ちているテラスのサイズがほぼ特定できます。 (パネルを見せる)
【画像】凧のサイズ © 1986 Studio Ghibli クラッシュしているので、この翼の幅を8mと仮定して、僕はテラスの直径を30mと計算しました。 これで、やっとラピュタ全体のサイズに取りかかれるわけです。 ……すみません、こんな話でみんな大丈夫? 本当に、俺はすごい楽しいんだけど(笑)。
(パネルを見せる)
【画像】テラスのサイズ © 1986 Studio Ghibli テラスが直径30mだとしたら、このテラスとラピュタ本体を繋ぐ橋の長さが、おそらく44m。意外なことに、テラスよりちょっと長いだけなんですね。 すると、ラピュタ全景が引きで見えるシーンがあって。 (パネルを見せる)
【画像】ラピュタの半径 © 1986 Studio Ghibli この長さが40mだとすると、このラピュタの中心部からの半径が、ほぼ335mということがわかります。 ここの半径が335mとわかると、ラピュタ回廊まで、つまり一番外側までの半径は、テラスも通路のほぼ20倍というのがわかります。 つまり、ラピュタの半径は880m。ラピュタの直径は1760mというのがわかるわけですね。 直径1.7kmの構造物なんですよ。思ったよりデカいんですね。 では、そんなラピュタが東京上空に現れるとどれくらいのサイズになるのか? (パネルを見せる)
【画像】ラピュタと東京 けしからんことに、皇居の真上に「日本人よ、降伏しなさい」と言ってラピュタが現れてしまった場合、皇居がほぼすっぽり入る大きさなんですね。かなり大きいんですよ。 ちょうど皇居と同じくらいのサイズで「これ、下手したらわざとかな?」と思ったんですけども。 実はこれ、大阪城の上に浮かべても、大阪城の本丸周辺と同じ大きさなんですね。 (パネルを見せる)
【画像】ラピュタと大阪城 つまり、デカい城を作ったら……もともと皇居も江戸城ですから。デカい城というのを作ったら、リアリティを持って考えると、だいたい直径1.7kmのラピュタくらいのサイズになるというのがわかります。 なんかね、この辺はわかりにくいので……いや、「わかりにくい」って、どうやってもわかりにくいんですけど。一応、新宿上空にも浮かべてみました。 (パネルを見せる)
【画像】ラピュタと新宿 新宿上空、アルタ前にラピュタが浮かんでいると、上の方は、もう大久保・新大久保の辺りになって、西の方は都庁まで、南の方は代々木を超えて新宿御苑が半分くらい隠れて、東の方は花園通りですから、ちょうどここら辺が吉本興業の本社がある辺りですね。新宿3丁目の辺りまでも覆ってしまうくらい巨大なのが、ラピュタのサイズです。
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まあ、「ラピュタはやっぱりデカいよな」と思うんですけど。このラピュタは、実は本来のサイズではないんですよ。 さっきも話したように、ラピュタというのは裏側が崩れている。じゃあ、ここが復元されたら、ラピュタは本来の姿になるのかというと、そうじゃない。本来は、これよりももっと大きいんですね。 実際のラピュタというのは何かと言うと。 映画に出てくるラピュタというのは、パズーとシータが散々歩いていたんですけど、住人が生活していた感じのところが一箇所もないんですね。花壇があったり、木が生えてたり、お墓があったりとか、そればっかりなんですよ。 なぜかというと、このラピュタの一番上の部分というのは神殿なんですね。つまり、神様を奉るための場所。ギリシャで言うアクロポリスのパルテノン神殿みたいな神殿構造が、上の方にちょこんと乗っかってるだけなんです。 そして、その下の第1層と言われる、緑がいっぱいある芝生みたいな部分って、王様達の憩いの場、王族の住処でしかないんですね。なので、ラピュタって、これだけだったら、王族しかいられないんですよ。 じゃあ、実際のラピュタというのは、本来どんなものだったのか? 700年前、シータたちのご先祖がラピュタを捨てた時には、このサイズまで縮まっていたんですけども、その下には、さらに第2層に騎士たち戦士たちの住む城下町があって、第3層にはエデンの園と言われる巨大な湖と農園がある自給自足出来るような農園が広がっていて、第4層には一般のラピュタの住人たちが住んでいる、下の世界の人達が訪れることもできるような巨大な構造物がついていたわけですね。 この3層が、すでに失われているわけです。だから、どれくらい巨大だったかというと、これが本来のラピュタの姿です。 (パネルを見せる)
【画像】本来のラピュタ © 1986 Studio Ghibli このイメージボードは、ラピュタの模型とほぼ同サイズになるように拡大しました。 つまり、この神殿構造と第1層の王様が住んでいるところがちょこんと乗っているだけで、ここが1.7kmなんですよ。この下に、これくらいデカいものが付いたまま空中に浮いてたのが、本来のラピュタだったんですね。 で、残っている第1層のみのラピュタのサイズが、さっきも話したように直径1760m、1.7kmです。 じゃあ、本来のラピュタのサイズはどれくらいかというと、この模型を元に換算してみると、直径5.8km、高さに至っては3.7km。ほぼ富士山と同サイズです。 この巨大な世界をブラタモリをしてみるというのは……すみません。これは後半の方で考察していこうと思います。
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2019/09/01 #297 「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「スラッグ渓谷をブラタモリする〜岡田斗司夫のラピュタ語り最新版」
2019-09-18 07:009999999pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/18
今日は、2019/09/01配信の岡田斗司夫ゼミ「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」からハイライトをお届けします。
岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。 サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
じゃあ、ラピュタ遺跡その1、スラッグ渓谷の話に行ってみましょうか。 もう一度、このイメージボードの登場です。 (パネルを見せる)
【画像】スラッグ渓谷 © 1986 Studio Ghibli これが、主人公パズーの住むスラッグ渓谷ですね。
まあ、さっきも話したように、『天空の城ラピュタ』の中には、アニメのシーンの中には残ってるんだけど、パッと見ただけではなんだかわからない、元々のアイデアの残りであるラピュタ遺跡というのがいっぱいあるんですけども。 このスラッグ渓谷を、ブラタモリ形式で見て行って、ラピュタ遺跡を探してみましょう。
「スラッグ」というのは何かというと、「鉱石から金属を精錬するときに出るカス」のことなんですね。金属を精錬する中で、何倍、何十倍ものカスが出るんですけど。
【画像】スラッグ渓谷炭住 © 1986 Studio Ghibli ただ、このイメージボードを見ると、「炭住」って書いてあるんですよ。これ、何かというと「炭鉱住宅」のことなんですね。石炭堀りの人たちが住む、共同住宅のことです。かつて、三池炭鉱や夕張炭鉱、有名な軍艦島にもあった炭鉱住宅というのが、ここにズラーッと並んでいるわけなんですけど。 つまり、初期設定では、スラッグ渓谷というのは、鉱山の街ではなく、炭鉱の街だったんですね。 炭鉱では、石炭の何倍もボタと呼ばれるカスが出るんですよ。石炭の塊みたいなものをとって、それを割ると、その中からほんのちょっぴりの石炭と、その何十倍、何百倍ものボタというカスが出るんですね。 なので、炭鉱の近くには、どこにでもボタ山というのが出来ました。ボタを堆積した山のことです。軍艦島の何が優秀だったのかというと、ボタを全部、海に捨てられたので、ボタ山がほとんどなかったところなんですけど。 『空の大怪獣ラドン』という映画を見たら、幼虫の怪獣がボタ山を登るシーンがあるんですよ。あれ、山のように見えるんですけど、そうじゃないんですね。石炭を掘った時に出るボタが、もう本当に、何百mという高さの山のように積まれている。 炭鉱の周りには、ボタ山という人口の山が出来る。つまり「このスラッグ渓谷の深い谷というのは、実は自然の大地ではなくて、人間が掘り出した石炭のボタ、カスで出来ている」というのが、たぶん、初期の設定なんですね。 だから、こんな無茶苦茶な地形になっているんですけども。
しかし、石炭の炭鉱になるはずが変更が入って、パズーの住む山は、石炭ではなく、銀とか銅とか錫などの貴重な金属を穫るための場所という設定になりました。 かつては、鉱石が豊富に採掘出来た場所。しかし、今や、鉱石はあまり穫れず、スラッグというカスばかりが目立ってしまう。その結果、誰か呼んだか、スラッグ(鉱石クズ)の谷、スラッグ渓谷という呼ばれ方をされるようになったわけですね。
・・・
じゃあ、これをさっきの模型でもう一度見てみましょう。 (模型を見せる)
【画像】スラッグ渓谷模型 この模型、すごくいい加減です。どれくらい、いい加減かというと、裏から見ると新聞紙が見えるくらいです(笑)。 (裏側を見せる)
【画像】スラッグ渓谷模型裏 これ、持つ場所を気をつけないと、ベコベコとヘコむんですよね。今回1回きりしか持たない強度しかありません。 これが、スラッグ渓谷の全体の形です。 実際の谷の深さは、これの2倍くらいあります。つまり、この模型では嘘をついているんですけど。本当は、谷の壁面はこの模型よりももっと高さがあって、山肌にポツポツと家があるんですけど、この谷の底には、街がびっちりと建ち並んでいます。
丘の上の位置には十字路が走っています。 (模型を見せる)
【画像】模型十字路 ここが、街のメイン通りになっているわけですね。 一番最初に、乗っている飛行船が襲われてシータが空から落下するシーンがあるんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】シータ落下シーン © 1986 Studio Ghibli 落ちていくシータの横に、かすかに十文字の光があるんですよ。見えるかな?
【画像】シータと地上の光 © 1986 Studio Ghibli それが、次のカットに切り替わると、このスラッグ渓谷の十字路になっているんですね。 まあ、「この十字路に落ちている」というよりは「スラッグ渓谷にまっすぐに落ちていますよ」ということなんですけど。それは、このカットの背景に、かすかに見える十字の灯り、パズーが走って買い物に行っている商店街の灯りが見えることからもわかります。
もう一回、模型の方を見てください。 (模型を見せる)
【画像】スラッグ渓谷模型十字路 十字路のある商店街の位置がここです。パズーの家がこの辺で、パズーがシチューを届ける親方がいる鉱山の穴がここです。 パズーは自分の家からこの穴に働きに行って、その後「晩飯を買ってこい」と言われたので、この道をガーッと降りて、十字路に行ってシチュー買って、またガーッと来た道を登って、鉱山へと戻ったわけですね。
・・・
【画像】商店街 © 1986 Studio Ghibli 映画の中では、十字路がもう一度アップになったと思ったら、ソーセージか何かを揚げるか炒めるかしている店が映って、次にパズーがシチューを買う店というのが映ります。 (パネルを見せる)
【画像】ソーセージの店 © 1986 Studio Ghibli【画像】シチューの店 © 1986 Studio Ghibli これが、まあ、さっき話した十字路のある商店街の辺りの風景なんですけど。 ここで注意してほしいのは「夜も遅いのに、お店屋さんが開いている」ということなんですね。 これは「パズーが行った時間が夜といっても、まだ早い時間だから」ではないんですね。かなり夜も遅い時間に行ってるんです。 これ、なぜかと言うと、鉱山というのは、世界中の鉱山、どこでもそうなんですけど、24時間、人が働いているものなんですね。1日3交代制で昼夜を問わずに働いている。 なので、鉱山の街というのは、どんな店も、だいたい24時間営業なんですよ。そりゃもう、本屋であれ、オモチャ屋であれ、メシ屋であれ、飲み屋であれ、映画館であれ、キャバレーであれ、喫茶店であれ、全ての店が24時間営業なんです。 なので、こういうふうに、いつも賑やかな街なんですね。
パズーは、そんな賑やかな街を走り抜けるんですけども。よく見ると、こうふうに、道の傍らにうずくまっている人とか、寝ている人がいるんですね。 (パネルを見せる)
【画像】寝ている人 © 1986 Studio Ghibli これは、宮崎駿らしい街の描写なのかというと、そうではなくて。景気のいい鉱山の街では、こんなことは絶対にありえないんですね。 例えば、軍艦島の記録のフィルムとかを見てもわかるんですけど。軍艦島というのは本当に24時間営業で、その上、そこで働いている人は、当時の大卒の給料がだいたい3千円とか5千円だった時代に、8万円くらいの月給を貰っていたんです。 それだけの給料をもらっていた炭鉱夫は、こんな街の端っこで寝たりはしないんですね。とにかく、みんな元気がいいし、こんなふうに道端に倒れている人がいたら、それを助ける人が現れて、次の飲み屋に連れて行ってくれるという、本当に景気のいい場所だったんですけど。 スラッグ渓谷というのも、かつて街が発展して24時間営業の店がどんどん増えていた時期はそうだったんでしょうけども、今では、もう、そうではなくなってしまったというのが、ここから見て取れるわけですね。
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パズーは、そこで落ちてくる女の子を目撃して助けに走ります。 (パネルを見せる)
【画像】走るパズー © 1986 Studio Ghibli 鉱山の穴があるところに女の子が落ちてきて、パズーが「わあ! なんだ!?」って言って走り寄る。 これ、シータと反対側に走ってるように見えて、実は、こちら側に回り込んで、この大滑車の横を走り抜けて女の子を受け止めようとしてるわけですね。
さて、この鉱山の穴、異常にデカいです。たぶん、直径50mくらいあります。 鉱山のこの直径50mの穴は、深さも50m以上あります。そんな穴の底から、さらに簡単なエレベーターで、だいたい垂直に800mくらい降りた所に採掘場があります。 このエレベーターの降下速度というのは、もうほとんど自由落下と同じで。下に降りるまで、乗っている人の足が宙に浮いている状態だったそうです。炭鉱で働いていた人の証言をDVDとかで見ると「手すりを真っ白になるまで握りしめるくらい怖い」そうですね。本当に自由落下の速度で落ちるから。そうやって恐怖に耐えながら、底まで降りるそうです。
この巨大な中央のプーリー(滑車)は、そのエレベーターの巻き上げ機です。パズーが親方に「お前、やってみろ」と命令されたのがこれの操作ですね。 カンカンという音が鳴ったんだけど、親方は手を離せなかった。「パズー、お前がやってみろ」「えっ?」「慎重にやれ!」と言われて、パズーが握ったレバーというのは、蒸気エンジンでこの滑車を回してエレベーターを巻き上げる装置なんですね。 800mの深さを、だいたい、10秒とか20秒くらいで上がってくるという。もう本当に、スカイツリーよりも高速のエレベーターなんですよ。ブレーキのタイミングを間違えたら全員即死なんですよね。 当時、本当に炭鉱の記録でも、「エレベーターの操作を間違えたせいで全員死亡」という事故がよくあったくらいですから。だから、パズーは緊張してたんですね。親方も、それくらい手が離せなかったから、パズーのことを見込んで「こいつなら、やれるだろう」と思ったわけです。
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さて、エレベーターで穴の底から上がってきた男たちは、さっそく、獲ってきたサンプルを地質学者に見せます。 (パネルを見せる)
【画像】地質学者 © 1986 Studio Ghibli このおじさんは炭鉱掘りではないんです。まあ、ちょっとバイザーみたいなのを着けているんですけど、この虫眼鏡で掘った鉱石を見てるんです。いわゆる、地質学者というやつですね。 しかし、彼がサンプルを見ても……この石の間に入っている模様みたいなものを見ているんですけども。それを見ても、銀はおろか、錫さえも見えない。つまり「ハズレだ」ということですね。
親方は、もう本当にがっかりして、窯から蒸気を抜きます。 (パネルを見せる)
【画像】窯と蒸気 © 1986 Studio Ghibli 親方がレバーを引くと、窯からブッシューッと蒸気が広がるんですけど。 この「諦め切って蒸気を抜く」というのは、こういう仕事をやっていない人にはなかなかわかりにくいんですけど。蒸気を抜くと、窯の圧力というのは一瞬で下がっちゃうんですね。ここから先、蒸気機関で動く機械というのは、一切動かなくなるわけです。翌朝、また1時間くらいかけないと、窯の蒸気というのは上がらない。 小説版の『ラピュタ』(宮崎駿・亀岡修『小説 天空の城ラピュタ〈前篇〉』 アニメージュ文庫 徳間書店)を読むと、「パズーが1人、早起きして、窯に火を入れて、床掃除をして全身汗まみれになって、脱いだシャツを絞ったら汗が水のように落ちるくらい時間を掛けて掃除すると、ようやっと窯の温度が上がってくる」という描写があるんですけど。それくらい高価な石炭を焚いて焚いて焚きまくって、巨大なボイラーの中に蒸気を貯めていたわけですね。 その全ては「この新しい坑道の中から、まあ、銅とはいわない。銀とはいわない。せめて錫くらいは見つかるだろう」と思ったから。だからこそ、みんなで夜勤して、わざわざ弁当も買いに行かせて、力を合わせてやっていたのに、それがダメだったわけです。 ということで、みんな諦めて、散々、窯の温度を上げて貯めていた蒸気を抜いてしまった。ここら辺から、親方達の絶望感というのが見て取れるわけですね。
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この蒸気機関の蒸気というのは、何のために使うのか? さっき見せたような「巨大な滑車を動かして、エレベーターを動かす」というのもあるんですけども、それはあくまでも、ついでなんですね。どちらかというと「まあ、エレベーターがあったら便利だから」というような仕掛けなんです。 実は、蒸気機関の蒸気というのは、何のために発明されたのかというと。そもそもは「汽車を動かすため」でもなければ、「船を動かすため」でもないんですよ。蒸気機関の蒸気というのは、もうひとえに「鉱山の坑道の底に溜まっている湧き水を汲み上げるため」なんですね。 蒸気機関を発明したのは、ワットではなく、ニューコメンという人なんですけど。このニューコメンも発明したのは「坑道の下の溜まっている水を、とにかく抜くため」なんですよ。 本当にね、鉱山の仕事というのは水との戦いで、どんどん水を抜かなきゃいけない。そのために蒸気機関というのが発明されたんです。 炭鉱というのは、深さ15mくらいまでは、まあ、大丈夫なんですけど、15mを超えると、湧き水が最大の問題になってくるんです。 地面の浅い部分というのは、炭鉱でも鉱山でも、あっという間に掘り尽くせてしまうんですけど。産業革命前には、炭鉱の深さも、そろそろ50mを超えて、だいたい100mくらいになってきたんですよ。 そうなると、もう最初の頃は、手掘りの井戸みたいにして、カラカラと手で水を汲み上げてたんですけど、それではもう、どうやってもやりようがなくなってしまった。 なので、ニューコメンという……たしか神父だか牧師だったんだと思うんですけど、まあいいや。この人が発明したのが蒸気機関だったんです。 その結果、「鉱山の湧き水を汲み上げるために、こんなに便利なものはない!」ということで、あっという間に世界中の炭鉱や鉱山に普及しました。 そして、蒸気機関がヨーロッパ中に普及したおかげで、さっき見せたような巨大な滑車によるエレベーター設備と、蒸気機関というのが、鉱山や炭鉱のシンボルみたいになったんです。
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こういう設備が全て出来た頃、この巨大な滑車のエレベーターや蒸気機関の設備が整った頃くらいが、スラッグ渓谷の黄金期です。 渓谷中に、軽便鉄道が敷かれたのも、この時代だと思います。 (模型を見せる:株式会社さんけい みにちゅあーとキット 機関車とオートモービル)
【画像】軽便鉄道模型 これが、スラッグ渓谷内を走っている軽便鉄道の模型です。 でも、実際はこうじゃなかったと思うんですね。これは、宮崎駿が、ちょっと面白く描くために作った嘘で。当時の軽便鉄道の線路というのは、木造じゃないんですよ。 このスラッグ渓谷のモデルとなっているのは、イギリスのウェールズだと言われているんですけど。当時のウェールズは、すでに、こんな木で橋桁を組めるほど木材が豊富ではなかったんですね。産業革命の初期の頃に、木材というのは切り尽くされて、燃やされ尽くされてしまったので、イギリスには、もう鉄しか残ってなかったんです。 なので、世界産業遺産の第1号って、確かイギリスにある鉄橋なんですよね。鉄で作った橋というのが産業遺産になっている。それはなぜかと言うと、「もう、イギリスには、こんな良質な木材がなく、鉄で橋を作るしかなかったという時代だったから」なんです。 だけど、ここら辺で、ちょっと嘘をついてですね、カッコいい木材で作った橋桁の上を軽便鉄道という簡単な鉄道が走るようになっています。 スラッグ渓谷には、この軽便鉄道が、ありとあらゆるところに敷かれています。 (模型を見せる)
【画像】スラッグ渓谷模型線路 これは、スラッグ渓谷の中を走っている軽便鉄道の模式図みたいなものです。このダンボールで作っている線路みたいなのが軽便鉄道なんですけど。この位置に駅があって、ここからかなり縦横無尽に走っています。
【画像】スラッグ渓谷美術ボード © 1986 Studio Ghibli 縦横無尽というのはどれくらいかというと、スラッグ渓谷の美術ボードを見ると……美術ボードというのは、背景さんが背景を描く前に、見本として描かれる絵のことですね。 背景さんというのは、何人ものチームで動いているんですけど、チーム全体に対して「こういうふうに背景を描きましょう」ということで、美術監督が描き下ろす絵のことを美術ボードと言います。この美術ボードを見て、背景のそれぞれのスタッフが「俺が描くのは昼だから、これくらいの光で」とか「俺はこの位置のアップだから、これくらい」とか「朝だから、もっと朝もやが出てている」みたいに調整して描くのが、アニメーションの背景なんですね。 この美術ボードを見てもわかる通り、かなり縦横無尽に軽便鉄道の路線が走っています。
これは、スラッグ渓谷が、単なる鉱山を掘るだけの街ではなく、その精錬から加工まで、ありとあらゆる作業を全部一手に引き受けていた街だったんですね。 だから、街の中に線路を敷きまくっているわけです。あらゆる場所で、加工の作業場や工作設備があるので、この街はもう本当に煙突とか線路だらけの、こういう不思議な構造になっているわけです。 まあ『映像研には手を出すな!』の作者の大童さんが喜びそうな構造になっています。
・・・
このスラッグ渓谷、実はちょっと不思議な部分があるんですけど、わかりますか? スラッグ渓谷には、本来だったら絶対にあるべきものがないんですよね。このような大規模工場の街には、絶対にあるようなものが。 例えば、有名な「パズーがスラッグ渓谷の夜明けにトランペットを吹く」というシーン。 パズーの家は、スラッグ渓谷の一番眺めの良いところにあって、ここでラッパを吹くと、向こうの方から太陽の光が差してきて、朝日がスラッグ渓谷の崖を照らしていく、すごく綺麗なシーンなんですけど。 なぜ、こんな良い場所にパズーは住んでいるのか? この崖の上に本来あるべきものがないんですよ。 あるべきものがない。それが何かは、宮崎駿が『ラピュタ』公開の2年前に手掛けたテレビアニメ『名探偵ホームズ』を見ればわかります。 『名探偵ホームズ』の第11話「ねらわれた巨大貯金箱」という回があって、この中に、スラッグ渓谷とそっくりな場所が出てくるんですね。 (パネルを見せる)
【画像】ギルモアの谷 ©RAI・TMS これはギルモアの谷と言われています。ホームズとワトソンがオートモービルで坂を登ったらビックリ。その下には、ギルモアの谷と呼ばれる、巨大な煙突がズラーッと並んでて、煙をモクモク吐いていて、貧乏人が山のように住んでる工業の街がありました、というやつなんですね。 もう本当に『ラピュタ』のイメージ元になったような作品なんですけど。これ、本当にスラッグ渓谷そっくりなんですよ。 そして、スラッグ渓谷の中からわざと削除されたものがここに描かれています。それが、これです。 (パネルを見せる)
【画像】ギルモアの屋敷 ©RAI・TMS これはギルモアの屋敷なんですよ。カメラが下から上に上がっていくと、最初はスラッグ渓谷の貧乏な家が見えて、そのはるか上方、丘の上に、ギルモアさんという人が住んでいる立派なお屋敷がある。その屋敷の中の黄金の貯金箱がキラーンと輝いているというシーンなんですけど。
【画像】黄金の貯金箱 ©RAI・TMS そうなんですよ。あるべきものというのは、ギルモアの谷を所有するギルモアさんのような、大金持ちの屋敷なんです。 つまり、炭鉱にしても鉱山にしても、実は維持や開発には巨大な資本が必要なんですね。なので、ギルモアの谷の上には、谷全体を見下ろすようにして、金ピカのギルモア屋敷が建っているんです。 しかし、スラッグ渓谷の山のてっぺんには金持ちの家がないんですよ。さっき見せた通り、上の方まで工場でいっぱいで、全然、金持ちの家がない。 だから、パズーも山の上の一等地みたいなところに住めるんですね。 これは、宮崎駿が思いつかなかったから、気が付かなかったから、気にしなかったから、そんなことではないんですよ。たった2年も前に、わざわざ自分で作品を作っているわけですから。『名探偵ホームズ』の中では、丘の上に建つ金持ちの家というのをちゃんとやってるんですよ。 では、これがなぜかと言うと「この谷から、金持ちはいなくなっちゃったから」なんです。「この30年ほどで、スラッグ渓谷は経済的に没落していったから」なんです。 スラッグ渓谷というのは、ギルモアの谷の30年後の世界なんですね。巨大な資本が撤退して、どんどん貧乏くさくなっていった。 パズーが住んでいる家も、周りの家並みからすると、おそらく教会なり公民館なりの施設だったんですよ。そういう場所が空き家になって、水道とかも流れていない丘の上は不便で、暮らしにくいからということで、パズーでも住めるようになっている。そういう場所なんだと思います。
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「スラッグ渓谷は、ギルモアの谷の30年後の世界だ」と言いましたけど、さてじゃあ、そんな貧乏なスラッグ渓谷とはどんなところか? これはパズーの親方のおかみさんです。 (パネルを見せる)
【画像】親方のおかみさん © 1986 Studio Ghibli まあ、巨乳で肩幅も広く体格も良くて、しっかりしたおかみさんなんですけど。実はこのおかみさん、宮崎駿自身が『アート・オブ・ラピュタ』(アニメージュ編集部編『THE ART OF LAPUTA 』ジ・アート・シリーズ7 徳間書店)という美術本の中で解説しているんですけど、この女性、まだ20歳なんですよ。 今、コメントでも書いてた人いるけど、そう。20歳なんです。「15歳で結婚して、すでに子供がいる」という設定で。 つまり、メッチャクチャ結婚が早いんですね。この親方は15歳の嫁をもらって子供を産ませて生きているんです。 これ、なぜかというと「鉱山で生まれ育った第2第3世代が早目に結婚しているから」なんですよね。 早目に結婚して家族を持つ。これは、景気が良かった鉱山街にあるあるの現象なんですよ。昔、景気が良かったから。それくらい昔は儲かったんですね。なので、若いやつは、さっさと嫁を貰って、さっさと独立した。 だって、他で働く10倍とか20倍の給料が手に入るから、もう若いやつが家の中で我慢する必要がないんですよ。「長男しか家を継げない」とか、そんなことではなくて、次男も三男も働いたら働いただけ儲かって、どんどん嫁を貰って、家を建てた。だから、スラッグ渓谷というのは、あんなにひたすら家が増えていったわけですね。 その結果、若い嫁さんを貰うというのが、当たり前の習慣になっている。すごく景気が良かった時代の習慣が、まだ続いているんですね。 こういう鉱山に流れ着いて、鉱山で働くようなやつというのは、世界中の鉱山を回るベテランというのはほとんどいないわけですよ。「あそこに行けば金が稼げるぞ」と聞いた食いつめもの達が集まって、それでも、働きだしてみたら、あまりにも稼ぎがいいから、そのまま定住しちゃったような人ばっかりなんですよね。 だから、金払いもいい。そういう人らは、お金を貰ったら、すぐ遊ぶから、飲み屋とか娯楽施設がどんどん出来るんです。 そして、若いやつは、さっきも言ったように、どんどん独立して、おかみさんみたいな15歳の女の子と結婚する。それが、もう本当に当たり前になっていたわけですね。
・・・
スラッグ渓谷は、そういう時代の名残りで習慣だけは残っているんですけど、経済的にはどんどん景気が悪くなってきています。 理由の1つは「掘りやすい深さにある鉱石は、すでに掘り尽くしてしまったから」です。つまり、800mくらい降りて、横穴も2kmも3kmも、下手したら5km10kmと延ばさないと、もう鉱石が獲れなくなっちゃったんですよね。 しかし、さらにさらに深刻な理由が、この地形の模型と、鉱山鉄道の模型の中に隠されています。 なぜ、スラッグ渓谷は、こんなに急速に景気が悪くなってしまったのか? それは、このかわいい素敵な軽便鉄道のせいなんですね。このスラッグ渓谷を縦横に走る路線、このちゃんと出来ている鉄道路線自体が街の寿命を縮めてしまったんです。
これは歴史的な事実なんですけど、19世紀の半ばくらいには、スラッグ渓谷と同じような、山の中にある鉱山がいっぱいあったわけです。石炭だけでなく、いろんな鉱山の街があったんですけど。 そういうところは、だいたい19世紀の半ばくらいに急激にゴーストタウン化しちゃったんですね。 だから、このスラッグ渓谷の悲劇というのは、何もここだけの話じゃないんですよ。別に「石炭とか鉱石が取れなくなったから」という理由だけではなく、こういう山の中の街はどんどん滅びていってしまった。 これは、イギリスだけの話ではなくて、アメリカ大陸でも同じでした。アメリカにある古くからの工業都市というのは、だいたい、山の中とか大陸のど真ん中にあることが多かったですけど。それらは廃れてしまったんですね。 その代わりに大きくなったのが、ピッツバーグとかデトロイトなんです。 鉄鋼の街、スティールタウンと呼ばれるピッツバーグは、オハイオ川の隣にあって、デトロイトはエリー湖とヒューロン湖という2つの湖の間に挟まるようにあるんですけども。 19世紀の半ば、産業革命が進行すると、なんかね、動かすものがやたら重く巨大になっちゃったんですよ。工作機械も巨大なら、作られるものも巨大で。あとは燃やさなきゃいけない石炭も、とんでもない量になったんですね。 なので、鉄道などの陸路でしか運送手段がないような街というのが、どんどんコスト高になってきたんですよ。その結果、水路、水上運送が出来る、川とか海とか湖とかに面した街に工業地帯が移ってくるようになったんです。 もちろん、工業製品を作るためには大量の水が必要だということもあったんですけど、何より輸送の問題が大きかったんですね。 僕は、今年の3月にデトロイトに行って来て、フォードミュージアムというのを見てきたんですけど。そこで案内を直接聞いて、本当にビックリしたんですけども。デトロイトって、自動車の街だと思ってたんですけども、自動車の街になる前に、ちゃんとその準備というのが出来ていたんです。 18世紀の半ばくらい、本当に、ちょうどスラッグ渓谷が寂れてきた時代くらいから、デトロイトという街は、どんどん大きくなってきていた。ガイドのお姉さんが言うには「デトロイトがたまたま湖の近くにあったから」だそうなんです。 その時代のデトロイトというのは、自転車とか、馬車とか、そういう金具とかを作ってたんだけど。技術が発展するにつれて、それらのものが重くなって、運ぶ荷物も、もう何トンもの重みになってきた。それまでは「鉄道で運べばいいじゃん、馬車で運べばいいじゃん」と思ってたのが、もう、船でないと全然コストに合わない時代になっちゃった、と。 だから、デトロイトという街は生き残った。その後、自動車が発明された後にはモータータウンになったんだけども、「それはあくまで結果論であって、まずは水上運送というのがあったからだ」と言われました。その辺、かなりビックリしたんですけど。 この軽便鉄道も「この貨車がいくつ引っ張れるか?」って問題なんですよ。 水上だったら、速度さえ気にしなければ「こういう船を山程つないでタグボートでひっぱる」ということがいくらでも出来るんですけど。鉄道の場合は、こういう機関車をいくら強力にしても、引っ張れる貨車の数には限界があるんですね。 なので、こういう山の中にあるような工業都市というのは、どんどんコスト高になってきたんです。決して「鉱石が獲れないから」という理由だけではなくて、「鉱石が獲れていても、これだけの鉱石を運ぶのに輸送コストが掛かるから」ということで、他所の街に負けてしまう。なので、街がゴーストタウン化してきたわけです。 スラッグ渓谷は、たとえ金属が獲れたとしても、輸送を考えると、採算の獲れない鉱山になってしまいました。 ……すみませんね、なんかこんな社会の教科書みたいなことを(笑)。 でもね、そこら辺をおさえているから、宮崎駿のアニメって、やっぱり面白いんですよね。
・・・
結局、『ホームズ』で描いた時代、オートモビルというのがろくになくて水上運送というのを気にしなかった時代は、金持ちがちゃんと街の近くにいて「オラオラ、支配者だ! この街はワシのものじゃ!」という感じになるんです。 ところが、水上運送の時代になると、このスラッグ渓谷もギルモアの谷も本当に山の中にあるので、こういう街はどんどん寂れていってしまうわけなんですよ。 鉱山は、徐々に徐々に、寂れて貧乏になって、まずは、そういうギルモアの谷のギルモアさんみたいなオーナー達が街から消えます。 谷に自分の名前をつけていたわけですよ。「ギルモアの谷」って。だから、スラッグ渓谷も、たぶん、昔はオーナー一族の名前がついてたはずなんですよね。 でも、鉱山の権利を、もう銀行か何かに売り飛ばして、自分たちはロンドンとかパリとかニューヨークみたいな、新しい産業の街、商業の街へ、さっさと移動してしまった。 こういう人達が、後のロックフェラーとかロイスチャイルドなどの財閥になったわけですね。 しかし、このオーナー一族というのは、ギルモアさんみたいに威張って、みんなを奴隷のように働かせるという部分もあったんですけど、逆に言えば、自分が作った鉱山には思い入れがあったんですね。 なので、そういうお金持ちの一族が持っている鉱山というのは、実は長持ちしたんですよ。段々と効率が悪くなってきても、一族が持っているものだから「これはファミリービジネスだ」というふうに、無理してでも運用しよう開発しようとしてくれた。その結果、生きながらえた鉱山というのは、世界中にいっぱいあるんですけども。 ところが、銀行というのは、そういうオーナー一族と違って、鉱山に思い入れがないんですね。だから、採算が獲れなくなったら、あっという間にやめちゃう。 小説版の『ラピュタ』の冒頭には「親方達が半日かけて街まで出かけて、鉱山の持ち主である銀行と交渉する」というエピソードがあるんですよね。 だけど、交渉には全く手応えがなくて、その代わりに、どこかの田舎に「骨のお化け」のようなものが落ちてきたという話を聞いて帰ってくる。実は、それが、ラピュタから落ちてきたロボット兵なんですけど。そこからお話が始まるという、なかなかにくい演出になっているんですよ。 わざわざ半日かけて街まで行ったのに、「今の持ち主である銀行のやつらは、もう俺達の鉱山を閉める気だ」という親方達の疲れ果てた話と、その中でもちょっとパズーを楽しませようとして「こんな不思議な話があるんだぞ」という、空から落ちてきたロボット兵の話が絡んで、なかなか良い物語の始まりになってるんですけど。 これも、ラピュタ遺跡です。「映画の中で、もうそんなことをやっている暇はない」といって、ブツッと切られちゃったわけなんです。
・・・
というわけで、鉱山の持ち主が銀行だとしても、その銀行も、すでに街に引き上げちゃってるだから、スラッグ渓谷の自治権というのは持っていないんですね。 「ギルモアの谷」だったら、ギルモアさんが支配してて、いろんなことに口出しをする。それはそれで困ったことなんですけど、銀行は銀行でどっかに行っちゃってて、「儲かりさえすればいいから、お前らの勝手にやって」というふうに言って、親方達に完全に自治権を渡してる。 だから、「どっちの方向に坑道を掘ろうか?」というのも、親方達次第だし、「今日の仕事はやめだ」と言ったり、「残業だ」と言って頑張ってしまうのも、もう全部、親方達の胸三寸になってくるわけなんです。 「いつ掘り進めるのか? いつ休むのか?」といのも、自分達で決めなきゃいけない。そういう自治権だけは残ってる。 スラッグ渓谷の「他所者にはわりと冷たく、自分達には自信があって、そして権力には決して屈さない」という男たちの文化の根っこは、スラッグ渓谷が段々と貧乏になって来た時に、自治権だけは自分達で持って、銀行と交渉しながら、自分達で仕事をやっているという、ここらへんの自信にあるんだと思います。 しかし、銀行も、この調子で儲からなければ、廃山、閉山を言い出すに違いないわけですね。 このラピュタ遺跡その1であるスラッグ渓谷に、金持ちが住んでないのは「すでにこの鉱山が美味しい場所ではなくなったから」なんですね。 映画『天空の城ラピュタ』の中で、描かれなかった背景。でも、映画の中をよく見ると、例えば、道の隅っこでしゃがんでるオッサンとか、空中海賊とかと対立して自信満々で立ち向かう親方たちとか、そういう部分に残っている。そんな、ラピュタ遺跡としてのスラッグ渓谷を、ブラタモリしてみました。 スラッグ渓谷には、もう1つ秘密があるんですけど、それは後半の限定の方で……限定でも無理かな? 放課後の方で話すことになると思います。
記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
2019/09/01 #297 「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」
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岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
岡田斗司夫ゼミ#291:アポロ宇宙船(前編)〜地球が静止した1969年7月21日とアポロ11号の打ち上げ
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岡田斗司夫ゼミ
岡田斗司夫ゼミ#287:『アラジン』特集、原作からアニメ版・実写版まで徹底研究!
岡田斗司夫ゼミ#288:映画『君の名は。』完全解説
岡田斗司夫ゼミ#289:NASAとLINEの陰謀、スパイダーマンをもっと楽しむためのガイド
岡田斗司夫ゼミ#290:『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと、『巨人』世界の地理
岡田斗司夫ゼミ#293:『なつぞら』特集と、『天気の子』解説、“禁断の科学”の話
岡田斗司夫ゼミ#294:『千と千尋の神隠し』の不思議な話と、幽霊、UFO、怪奇現象の少し怖い話特集
岡田斗司夫ゼミ#295:終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」
岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
マンガ・アニメ夜話
ガンダム完全講義1:虫プロの倒産とサンライズの誕生
ガンダム完全講義2:ついに富野由悠季登場!
ガンダム完全講義3:『マジンガーZ』、『ゲッターロボ』から始まる映像革命
ガンダム完全講義4:第1話「ガンダム大地に立つ!!」解説
ガンダム完全講義5:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part1
ガンダム完全講義6:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part2
ガンダム完全講義7:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part1
ガンダム完全講義8:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part2
ガンダム完全講義9:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part3
ガンダム完全講義10:第4話「ルナツー脱出作戦」解説
ガンダム完全講義11:第5話「大気圏突入」解説
ガンダム完全講義12:第6話「ガルマ出撃す」解説Part1
ガンダム完全講義13:第6話「ガルマ出撃す」解説Part2
ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「今日のニコ生は、岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話「ガンダム完全講義〜第24回」です!」
2019-09-17 07:009999999pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/17
今日は、岡田斗司夫のコンテンツ情報をお届けします。
岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。 サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
今日の岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話は 9月17日(火) 20:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第24回」
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2019/09/03 マンガ・アニメ夜話 #22 「ガンダム完全講義22:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part1」
ザビ家側の人間ドラマに注目
ガルマ、マチルダ、ランバ・ラルの三人に共通する要素とは
休憩と構成について
富野演出のすごさと「いい女になったイセリナ」
ガルマとイセリナについて補足と次回告知
ザビ家側の人間ドラマに注目
ほい、こんばんは。岡田斗司夫です。 今夜は久しぶり、もう1週分飛んじゃっていたガンダム講座です。
今日はね、ガンダム講座の録画分が長いんですよ。40分くらいあるから、ここではあんまり喋らないようにしようと思います。 これから見せるのは、『機動戦士ガンダム』第11話「イセリナ、恋のあと」の講座なんですけど。ガンダム講座の第22回ということになります。 「イセリナ、恋のあと」はね、もう、あまりにも語りたいから3回で語ってるんですね。前編、中編、後編という構造になってます。よろしくお願いします。 今回の講義は、久しぶりに、イベント会場で講演形式でやってるんですね。DMMの本社にあった、大き目の会議室が借りれたので「結構デカいスクリーンに、画像をポンと映して喋る」ということをやってます。 今回の前編では、冒頭のナレーションを徹底的に解説しているんですけど。やっぱり、『ガンダム』の11話は、この冒頭のナレーションと映像が上手すぎるんですよね。 この中で、初めてザビ家側が描かれるんです。一応、「ガルマ散る」の回で「その時、デギン・ザビ法王は杖を落としたという」ということで、ちょっとだけ出てきたんですけど。初めて、ジオン側の家族像というのが描かれるんです。 もちろん、ドズルにしても、シャアに命令するシーンとしてこれまでにも出てきたんですけど。今回はそういう役割ではなくて、末息子を失ってしまった年老いた父親と家族の話という、かなりドラマ的なことをやってるんですね。 「悲しみに沈む老家長」ですか。まあ、父親がすごく年老いてしまっていて、そんな中、自分の弟が死んだことをチャンスにしようと意気込む長男ギレン。こういう家族間のギャップを描いたものです。
今日は本当に本編が長いので、説明はこれくらいにしたいと思います。 それでは、ガンダム講座、『機動戦士ガンダム』第11話「イセリナ、恋のあと」をお楽しみください。それではどうぞ。
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ジブリ特集
岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密
月着陸50周年特集
岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説
岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
岡田斗司夫ゼミ#291:アポロ宇宙船(前編)〜地球が静止した1969年7月21日とアポロ11号の打ち上げ
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岡田斗司夫ゼミ
岡田斗司夫ゼミ#287:『アラジン』特集、原作からアニメ版・実写版まで徹底研究!
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岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
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ガンダム完全講義1:虫プロの倒産とサンライズの誕生
ガンダム完全講義2:ついに富野由悠季登場!
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ガンダム完全講義5:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part1
ガンダム完全講義6:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part2
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ガンダム完全講義8:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part2
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ガンダム完全講義11:第5話「大気圏突入」解説
ガンダム完全講義12:第6話「ガルマ出撃す」解説Part1
ガンダム完全講義13:第6話「ガルマ出撃す」解説Part2
ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1
ガンダム完全講義15:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part2
ガンダム完全講義16:第8話「戦場は荒野」解説Part1
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ガンダム完全講義18:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part1
ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2
ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1
ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『天空の城ラピュタ』解説:3つの「ラピュタ遺跡」を掘り返す」
2019-09-16 07:009999999pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/16
今日は、2019/09/01配信の岡田斗司夫ゼミ「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」からハイライトをお届けします。
岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。 サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
ということで、じゃあ『天空の城ラピュタ』の話に行きましょう。 今日は『ラピュタ』の特集です。でもね、内容とかテーマは、2018年の1月7日と1月14日の回で、わりと語り尽くしてるんですよ。
岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
なので、今回は、ちょっと別方向から話してみようと思います。
これは、『ラピュタ』に登場するスラッグ渓谷の、宮崎さんがわりと初期に描いたイメージボードです。 (パネルを見せる)
【画像】スラッグ渓谷 © 1986 Studio Ghibli 今回、話したいのは、このパズーの生まれ育ったスラッグ渓谷の話なんですよ。「そもそも、このスラッグ渓谷というのはどんな場所なのか?」ですね。 『ラピュタ』というのは、もともとは、宮崎さんが、かなり昔にテレビシリーズとして企画していたお話だから、このスラッグ渓谷に関しても、何時間もの、テレビ放送何週間分ものエピソードが詰まっているんですよね。 『天空の城ラピュタ』という作品は、劇場アニメとして作られることになり、カットされてしまったんですけど。本編の中には、そういった「考えたんだけど、カットされてしまった」とか「時間の都合で入らなかった」みたいなアイデアとかエピソードがいっぱいあるんです。 そういうのを僕はラピュタ遺跡って呼んでいるんですけど。ラピュタの中にまだ残っている初期のアイデアが、本編中にチラチラ出てくるんですよね。 そういうラピュタ遺跡について、今回は話してみようと思います。
『ラピュタ』って、すごく話しやすいアニメなんですよ。 なぜかというと、高畑勲がプロデューサーやってたからなんですね。 高畑勲は、『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』でプロデューサーをやったんですけど。イコール、どういうことかというと「宮崎駿にかなりツッコんだ」わけですよね。 例えば、当初はラピュタの全体像が見えなかったところに、高畑勲が「全体像を見せないと話にならない」と説得して、見せるようにさせたとか、そういう高畑勲の考え方がかなり入っているんです。 それ以降、『トトロ』と『火垂るの墓』で、2人がお互い別々に監督をするようになってからは、そんなにキツいプロデューサー的な縛りがなくなってしまったので、宮崎駿としては、高畑勲の目を気にしながらも、わりと自由に作れるようになったんですけど。 なので、『ナウシカ』と『ラピュタ』って、お話としての背骨がすごく強いんです。だから、かなり色々と語れるんですよね。そういう意味では「なぜ、これが入らなかったのか?」という、本編内に残された遺跡を見つけやすい作品になっています。
・・・
今回は、このスラッグ渓谷を説明するにあたって、こういう簡単な地形の模型を作ってみました。 (模型を見せる)
【画像】スラッグ渓谷模型 この谷に住んでいる人にとって、この鉱山というのがどういう場所なのか? なぜ、こういうふうに、街が谷の色んな場所に点々と存在しているのか? 底の方にまで存在しているのか? なんで、こういう鉄道が走っているのか? パズーの家はこのてっぺんにあるのか? この巨大な穴、この鉱山はどうなっているのか? そういういろんな謎が、この地形図を作ったことによって解ける部分もあります。 他にも、スラッグ渓谷の「スラッグ」とは何だろうかという問題もあるんですけども。こういったスラッグ渓谷の話が、今日語るラピュタ遺跡その1です。
・・・
次に、その2は……ちょっとこれ、小さいんですけど、ラピュタ自体の模型ですね。 (模型を見せる 株式会社さんけい みにちゅあーとキット ラピュタ城)
【画像】ラピュタ模型 これが、クライマックスの舞台になっている天空の城ラピュタです。
【画像】ラピュタ模型裏 これを見るとわかるんですけど、この裏側の部分が崩落しています。この不完全さを見て「かつてはどんなすごい城だったのか?」と考えた人もいるんじゃないかと思います。 『ラピュタ』の設定っていろいろ発表されているんですけど、不思議なことに、このラピュタ自体のサイズはどこにも書いていないんですね。 なぜかと言うと、映画の中で、サイズ的に矛盾する描写がいくつもあるからなんです。だから、決めようがない。 しかし、今回の講座では、画面上のいろんな証拠から、ラピュタのサイズを特定することに成功しました。 その結果、「映画に登場するラピュタのサイズは、直径なんと1760mで、東京の中心にある皇居とか、あと大阪城とほぼ同じサイズである」ということがわかりました。
しかし、そんな巨大に見えるラピュタですら、実は、大崩壊した後の姿なんですね。そもそも、このラピュタというのは、2500年前に大空に浮かび、この地上の全てを支配していたはずなんですけど。それは、今の崩れたラピュタではないんですよ。 当時の完全体としては……うーん、どう説明すればいいかな? 「完全体」というと、思わず『ドラゴンボール』で説明したくなるんですけど(笑)。 完全体のラピュタというのは、なんと直径5.4kmで、高さが3.7km。ほぼ富士山と同サイズなんですね。幅としては、富士山の宝永山あたりまでを含めた全て。高さとしては、富士山より100m高い。それが、完全体のラピュタだと考えてください。 そうですね。今のラピュタとかつてのラピュタは「フリーザさまの一番最初に車椅子みたいなのに座っている時と、最終形態くらいの強さの差がある」と思ってくれればいいです。まあ、フリーザ様の例えではサイズの差はあまりないから、言っても無駄ですね。 ラピュタ遺跡その1がスラッグ渓谷だとすると、その2はラピュタそのもの。2500年前に空中に存在した、天空の巨大なラピュタというのを完全再現しようと思います。
・・・
ラピュタ遺跡その3はポムじいさんです。 (パネルを見せる)
【画像】ポムじいさん © 1986 Studio Ghibli このポムじいさん、実は、かなり重要なキャラクターなんですよね。 パズーとシータがスラッグ渓谷の地下で会う、人のいいお爺さんなんですけど。この爺さんの重要性に気が付いている人が、ほとんどいないんですよ。 例えば、ポムじいさんの登場するシーンって、5分もあるんです。124分の映画の中で、まるまる5分あるんですよ。すごく長い。 セリフの分量で言えば、パズー、シータ、ドーラ婆さんに続いて4番目にセリフが多いんです。実は、悪役であるムスカよりも多い。つまり、それくらい重要なキャラクターなんです。 おまけに、このポムじいさんが出て来るシーンは、パズーとシータとポムじいさんの3人しかいない。すごく重要なポイントなんですね。 実は、このポムじいさんこそ、『天空の城ラピュタ』に登場する最重要キャラクターなんです。 宮崎駿は、とにかく124分という尺に収めるために、いろんなお話とか設定とか、登場人物のセリフを削りに削ったんですけど、やっぱり、このポムじいさんの出番は5分以下には削れなかったんですね。 では、そんなポムじいさんというのは、何者で、何を象徴するキャラクターなのか?
これはポムじいさんが登場する、ほとんど最後のカットなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】パズーとポムじいさん © 1986 Studio Ghibli ポムじいさんが残される真っ暗な穴と、パズーが「さあこっちだ!」とシータを誘う地上の光溢れる世界。この何気ないカットで、宮崎駿は何を伝えようとしたのか? ラピュタ遺跡その3は、謎のキャラクター、ポムじいさん。この謎を徹底的に追ってみようと思います。
・・・
あと今日の都市伝説ですね。 毎回毎回、ちょっとした、ちょっと不思議な話や怖い話、都市伝説の話をしているんですけれども。今日の都市伝説は幻の空中帝国についてです。 ジョナサン・スウィフトが18世紀に書いた『ガリバー旅行記』の中に出てくるのが、空に浮かぶ王国ラピュータなんですけど。その他にも小人ばかりの国リリパットや、巨人の住むブロブディンナグというのが登場するんですよ。 この『ガリバー旅行記』というのは、当時、アフリカとかアジアで発見された小さい人種とか、あとは巨人族の骨が次々と発掘されたという事件に大きく影響されてるんですね。 ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』というのは、一応、政治風刺であったり、社会風刺を目的に書かれたものではあったんですけど、決して元ネタがない話を書いていたわけではないんです。 じゃあ、この空中帝国ラピュータというのは、一体どんな元ネタがあったのか? 空に浮かぶ王国というのも、何か現実の事件をモデルにして作られた話だったはずなんです。 では、空に浮かぶ王国というのは何だったのか? これを話してみようと思います。
これは、当時の『ガリバー旅行記』に載ってたイラストなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】ラピュータイラスト 磁石で浮かぶラピュータ。後は、そのラピュータという小さい島の下にある巨大な島がバルニバービという、ラピュタに支配されている島です。 アジアの果て。アジアの東の果てにある謎の国・日本の、さらに東の海に、バルニバービという大きな島があって、その上にラピュータという、直径4.5マイルの空に浮かぶ島が浮いている。 実は、これにはモデルになった実際の事件があるんです。 中世の初め頃、10世紀になる前のフランスでは「雲の上に人間が住んでいる大陸がある」と信じられていたんですね。 「そこに住んでいる人がいる」と、本当に信じられていたし、その目撃談や、それどころか貿易の記録まで、多数残されています。 そんなふうに、歴史上、本当にあった空の上の王国の話とかを、都市伝説として紹介したいと思います。
・・・
あと、今日のプレミアム放送、放課後の時間は、一応、予定としては「岡田斗司夫の妄想劇場」ということで、『ラピュタ2』、『続・天空の城ラピュタ』というのを語ってみようと思います。 実は、本編の中にいっぱいヒントが入っているんですけど。それをちょっと妄想してみる、と。 あと、『ラピュタ』の生まれた場所。宮崎駿が『ラピュタ』のアイデアを考えるために使っていた隠れカフェの正体というのを、まあ、放課後の時間には紹介してみようと思います。
それでは、ここまでが目次です。では、『ラピュタ』語りを始めます。よろしくお願いします。
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2019/09/01 #297 「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」
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ジブリ特集
岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『Dr.STONE』の元ネタ『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』徹底解説!」
2019-09-15 07:009999999pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/15
今日は、岡田斗司夫のコンテンツ情報をお届けします。
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【ニコ生】
『岡田斗司夫ゼミ (無印)』
『岡田斗司夫ゼミ・プレミアム』
今夜のニコ生は、『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』を解説します。 この本は、今『少年ジャンプ』で人気連載中の漫画『Dr.STONE』の元ネタのような本です。
『Dr.STONE』は、「文明がいきなり石器時代レベルに戻ってしまったら、人類は文明を再建できるのか?」というお話です。今の連載では、ドローンを作って飛ばそうとしてますね。理系男子が夢中になって読んでる漫画です。 そんな「何の文明も技術もないところから何ができるのか」というテーマで、『科学文明のつくりかた』とか『世界をつくった6つの革命の物語』という本を見ながら、検証して行きたいと思います。
よくある『Dr.STONE』の検証サイトだったら、「『Dr.STONE』でこんなことが出来てたけど、これは本当に可能なのか?」という方向で検証やっていますよね。 でも、どちらかというと僕は「2〜300人くらいでどんな文明が再建出来るのか?その時の条件というのは何なのか?」という方に興味があるんですよ。 だから、サブテキストとして『Dr.STONE』を使いながら、この2つの本の内容をメインで取り上げて行くつもりです。 久しぶりに、知能指数高めの読書回です。
お楽しみに!
また、前回のニコ生岡田斗司夫ゼミ#298は 「宮崎駿を精神分析できるのが、『風立ちぬ』でも『もののけ姫』でも『千と千尋』でもなく、『ポニョ』である理由」でした。
・表放送 00:00 雑談 03:11 今週の『なつぞら』 15:19 ポニョの心霊スポット 23:40 休憩 26:20 ポニョのモデル 37:40 いつポニョが映画になったのか ・裏放送 53:20 ポニョをテーマで読む 01:18:36 エンディングの答え合わせ 01:34:59 精神分析としてのポニョ 01:41:51 お便り ・放課後放送 01:46:26 『エンピツ戦記』 01:55:47 アニメーションを語る理由 02:03:03 マッチコレクション
表放送+裏放送
表放送+裏放送+放課後放送
明後日(火)の岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話は 9月17日(火) 20:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第24回」
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2019/09/01 #297 「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」
本日の予定
悲観的な『なつぞら』とミラクルへの期待
三度目となるラピュタ解説は、「ラピュタ遺跡」を掘り返す
鉱山を掘るだけの街ではない「スラッグ渓谷」の秘密
凧と模型から算出したラピュタの巨大さ
「空中帝国マゴニア」の伝説と謎
参考文献
次回告知
ポムじいさんがパズーに言った言葉の意味
ブラタモリ「空中国家ラピュタ」と「ラピュタは宇宙戦艦ヤマト」?
「海賊シータ」と「年下のドーラ」
放課後予定と次回予告
ゼミ、マンガ・アニメ夜話 電子書籍販売中!
AmazonのKindleストアで、岡田斗司夫ゼミ、岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話の電子書籍を販売中です(「岡田斗司夫アーカイブ」でもご覧いただけます)。
ジブリ特集
岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密
月着陸50周年特集
岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説
岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
岡田斗司夫ゼミ#291:アポロ宇宙船(前編)〜地球が静止した1969年7月21日とアポロ11号の打ち上げ
岡田斗司夫ゼミ#292:アポロ宇宙船(後編)〜月着陸と月面歩行
岡田斗司夫ゼミ
岡田斗司夫ゼミ#287:『アラジン』特集、原作からアニメ版・実写版まで徹底研究!
岡田斗司夫ゼミ#288:映画『君の名は。』完全解説
岡田斗司夫ゼミ#289:NASAとLINEの陰謀、スパイダーマンをもっと楽しむためのガイド
岡田斗司夫ゼミ#290:『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと、『巨人』世界の地理
岡田斗司夫ゼミ#293:『なつぞら』特集と、『天気の子』解説、“禁断の科学”の話
岡田斗司夫ゼミ#294:『千と千尋の神隠し』の不思議な話と、幽霊、UFO、怪奇現象の少し怖い話特集
岡田斗司夫ゼミ#295:終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」
岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
マンガ・アニメ夜話
ガンダム完全講義1:虫プロの倒産とサンライズの誕生
ガンダム完全講義2:ついに富野由悠季登場!
ガンダム完全講義3:『マジンガーZ』、『ゲッターロボ』から始まる映像革命
ガンダム完全講義4:第1話「ガンダム大地に立つ!!」解説
ガンダム完全講義5:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part1
ガンダム完全講義6:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part2
ガンダム完全講義7:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part1
ガンダム完全講義8:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part2
ガンダム完全講義9:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part3
ガンダム完全講義10:第4話「ルナツー脱出作戦」解説
ガンダム完全講義11:第5話「大気圏突入」解説
ガンダム完全講義12:第6話「ガルマ出撃す」解説Part1
ガンダム完全講義13:第6話「ガルマ出撃す」解説Part2
ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1
ガンダム完全講義15:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part2
ガンダム完全講義16:第8話「戦場は荒野」解説Part1
ガンダム完全講義17:第8話「戦場は荒野」解説Part2
ガンダム完全講義18:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part1
ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2
ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1
ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2
ガンダム完全講義22:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part1
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『崖の上のポニョ』から、「宮崎駿という病」を読み解く」
2019-09-14 07:00220pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/14
今日は、2019/08/25配信の岡田斗司夫ゼミ「『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病」から無料記事全文をお届けします。
岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。 サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
本日のお題と新しいドリンクボトル、楽しかったギャラクシーエッジ
【画像】スタジオから こんばんは、岡田斗司夫ゼミです。今日は8月25日ですね。 始まる前に、コメントの方を見ていたら、「『アルキメデスの大戦』を見たか?」というのがありました。 見ましたよ。戦艦大和の描写が良かったので、200分の1の大和の艦橋構造物というのかな? ブリッジとか、主砲とか、ああいう部分だけのプラモデルがあるんですけど、影響されてそれを買ってしまいました。 あとは、一応、今週の楽しみにしているのは、タランティーノの新作の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』っていう映画なんですけど。 なんで期待しているのかっていうと、もうそれを言うとネタバレになっちゃうんですよね。 予告編とかを見てる限りは、そこの部分は伏せて宣伝しているみたいだし。知らずに見た人はなかなか幸せだと思います。 あと、「またジブリの特集か」という声がちょっとあがってたんですけど。今日もまたジブリです。 これはもう、ある種の気象被害みたいなもので、「オリンピックをやる時は日本中のテレビがオリンピック特集をやる」というのと同じように「ああ金曜ロードショーでジブリ映画をやるということは、岡田ゼミでも特集をやるんだろうな」と諦めていただければ、ありがたいと思います(笑)。
・・・
今日は、主に『崖の上のポニョ』の話をするんですけども。今日からドリンクボトルが変わりまして、新しくこれになりました。 (優勝トロフィーのような水筒を見せる)
【画像】ドリンクボトル 先週までロサンゼルスに行ってきたんですけど、これはディズニーランドの、映画『カーズ』の世界を再現したカーズランドで売っているドリンクボトルです。 カーズランドの売店でダイエットコーラを頼んだんですけど、その時にコーラの値段と合わせて1000円くらい払うと、こういう特製のカップがついてくるんですね。 以前はDINOCOっていう、『カーズ』の中に出てくるモーターオイルの容器の形をしたボトルを使ってたんですけど。これはピストンカップという、『カーズ』の世界での優勝トロフィーのデザインになってるんですね。 デザインもなかなか忠実で。例えば、ここの部分がちゃんとカーブ描いてるんです。 (カップの一部を指して)
【画像】ドリンクボトル2 これ、車のエンジンの中にあるピストン・シリンダーが、中でこういうふうに動くので、それを模して作られたピストンカップのトロフィーも、こういう曲線を描いているという、理に適った設計になっていて、わりと気に入ってるんですけども。
あとは、もちろん、ギャラクシー・エッジにも行ってきました。いわゆるスターウォーズランドっていうやつですね。 これが証拠写真です。 (パネルを見せる。岡田の顔が大きく写り込んだ写真)
【画像】ギャラクシーエッジ あの、自分で撮ったから、どうしてもこんなふうになっちゃってるんですけども。俺の顔が、ガンと写ってるんですけども。一応、顔の後ろには、ミレニアム・ファルコンのコックピットと胴体が写ってます。この感じを見てください。 出来は良いです。このファルコン、イギリスのエルストリースタジオだったかに組んだ実物大のセットを参考に、そのまま復元しているようなものなので、メチャクチャ出来が良いんです。 やっぱり、デアゴスティーニのデカいファルコンとかを作っていた自分としては、今までにもファルコン号のことを、結構、隅々まで見てきたつもりだったんですけど。それでも「ああ、ここはこうなってたのか!」という驚きがありましたね。
中にも入りました。中に入ると、こんなふうになっているわけですよ。 (パネルを見せる)
【画像】モンスターチェス これはモンスターチェスのテーブルですね。 中も、通路とかハッチが、もうとにかく本当にすごい出来なんですね。 ファルコンの通路って、周りにクッションがドーナツみたいに延々と続いてるんですけど。その中を歩けるようになっていて、本当に感動的だったんですね。 詳しくは、9月のニコ生で、旅行記としてレポートしようと思います。 僕、中に入るために並んだら、たまたま夕方に入ったんですけど、なんか30分待ちくらいでスーッと中に入れました。 このロサンゼルスのディズニーランドでは、一時期の日本の「ハリー・ポッターランドの入場に2時間待ち」とか「トイ・ストーリーランドで3時間待ち」とか、あんな感じじゃなかったんですよ。 「いや、それはひょっとしたら、最近の『スター・ウォーズ』は人気がないのかな?」と、ちょっと嫌な予感はするんですけど。 ただ、もう、出来は良かったので、楽しかったです。
今日は旅行のお土産のプレゼントもあります。その申込み方法は後半に告知しようと思います。 今回は、お土産の数が多いので、いつものように「僕に直接メールを出してください」とかやっていると色々面倒臭いので、投稿フォームみたいなものを用意しました。そこに書き込めばいいだけという形にしてますので、皆さん、後半を楽しみにしていてください。
じゃあ、「今週の『なつぞら』」から行きましょう。
今後の『なつぞら』と「のんの出番は?」
【画像】スタジオから はい、『なつぞら』のお話です。 もう、先週と先々週の2週間分溜まってるんですけども。
先々週の月曜の放送回で、昭和42年、1967年になりました。 主人公のなつは、西荻の新居に引っ越したんですけど。そんな中、『魔法少女アニー』というアニメの作画作業が始まりました。 『魔法使いサリー』のそっくりのアニメです。オープニングの「サリー、サリー~♪」というところに、サリーちゃんがステッキを振って魔法をかけるシーンがあるんですけど、あれと全く同じ作画が出てきて、なかなか笑いました。 そして「早くもこのステッキが商品化される」という話も出てきて、流石だなと思ったんですけど。
そんな先々週の月曜日。なつ30歳。早くも、虫プロや東洋動画以外に、いくつものテレビマンガ専門スタジオが出来ていきます。 (パネルを見せる)
【画像】バケモノくん ©NHK こういう『バケモノくん』というアニメ……これ、もちろん『怪物くん』がモデルになっているんですけど。こういうアニメが始まって、いよいよテレビマンガブームの時代に入っていきます。 いろんなテレビ局、例えば「TBSだったら〇〇スタジオ」というふうに、具体的には忘れちゃったんですけど、テレビ局ごとに自分達の局で流すアニメを外注するためのアニメスタジオが作られ始めて、どんどんアニメが作られるようになりました。
・・・
その中で、成仏していなくなったと思っていたマコさんが再登場して、「マコプロダクションというのを作ったのよ」と、名刺を持ってくるんですけども。 (パネルを見せる)
【画像】名刺 ©NHK この名刺の端っこに書かれている住所、ちょっと薄くて読みにくいんですけど、「東京都 武蔵野市 吉祥寺」と書いてあるんですよ。「おっ、吉祥寺だ」と思ってよく見たら、「吉祥寺 西町」って続いているんですね。 この「西町」というのは、なかなか良いチョイスで。現実の武蔵野市の吉祥寺には、南町、東町、北町はあるんですけど、西町はないんですよ。西に行くと、すぐに隣にある三鷹市に入っちゃいますので。 なので、「武蔵野市 吉祥寺 西町」というのは、なかなか面白いチョイスだと思います。
このマコさんのマコプロというのは、おそらく、西荻にスタジオがあった東京ムービーがモデルになっていると思います。東京ムービーは、後に『ルパン三世』を作る会社ですから。 そんなマコプロが企画提出中の作品が、これなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】三代目カポネ ©NHK なんか、園田健一のキャラクターみたいになってるんですけど、『三代目カポネ』というアニメで。まあ、もう、誰が見ても『ルパン三世』がモデルになっているってのがよくわかる作品ですね(笑)。 この『三代目カポネ』の企画が通らずに、困っているところです。 まあ、実際の『ルパン三世』がテレビ放映されるのは、1971年の秋だから、まだまだ先なんですけども。
当時の東京ムービーは、『巨人の星』のアニメ放映でガッポガッポ儲けた時代なんですね。 なので「大人向けのアニメです」っていくらプレゼンしても、「それよりは『巨人の星』みたいなスポーツ根性モノ、いわゆるスポ根と言われる、血の汗流せ、涙をふくな、みたいな感じで主人公が特訓して特訓して、みたいな企画を持って来てよ」となってしまう。 そんな中で「俺の名はルパーン三世!」みたいな大人のアニメの企画を持って行っても、なかなか通りにくいので、マコさんは苦労しているようです。
・・・
先週、先々週の『なつぞら』は、ハッキリ言って、僕的には、もう本当に面白くなくて。ところによっては2倍速で見てたんですけど(笑)。 妊娠出産の話だったので。そんなドラマはどこの局でも作ってるし、これまでの朝ドラでも散々やっている。そんな当たり前のことをやってもしょうがないんですよ。 今までの『なつぞら』が面白かったのは、なぜかと言うと。 僕は、メジャーにヒットする作品というのは2通りしかないと思ってるんです。1つは「新しいことを当たり前の表現でやる」。または「当たり前のことを新しい表現でやる」。この2パターンしかないんですよ。 新しいことを新しい表現でやっちゃダメなんですよ。それでは過激すぎる。当たり前のことを当たり前の表現でやっちゃダメなんですよ。それでは平凡すぎる。 この『なつぞら』って、表現はひたすら平凡なんですね。もう、ドラマの作りはベタなんです。脚本家さんに、そんなに新しい表現をやれるような力もないし、そもそも朝のドラマというのはそんなもんなんですけど。 ところが「アニメ業界の黎明期を描く」という中味の部分は新しかったんです。つまり、これまでの『なつぞら』は「新しいことを平凡に描いてた」んですよ。 でも、そんな中で「妊娠と出産」とか「母親として育児と仕事とのぶつかりあいが~」みたいに、当たり前の内容を、これまでの『なつぞら』と同じ当たり前の表現でやってたら、それはもう、つまらないんですよ。 そして、つまらなくなると、どうしても役者さんの演技頼みになっちゃうんですね。 テレビドラマというのは、役者の演技に頼り始めたら、もう終わりなんですよ。 演技がなくても面白いシナリオを組めるからこそ、テレビドラマというのが成立するのであって。役者さん自身がそれまで培ってきたキャラクターとか演技とかに頼り始めると、ドラマというのは急に面白くなくなっちゃうんです。
・・・
でも、来週の予告くらいから、またちょっと楽しみになってきて。来週の予告、つまり、明日からのやつなんですけども。
なつの娘のゆうという女の子が生まれて1年後、時代は1970年。 本当は、その前の年にアポロの月着陸があって、『なつぞら』の世界では、今、ちょうど大阪万博のはずなので、もっと日本中が浮かれているはずなんですけど。まあ、そういう描写は今のところありません。 なつは33歳になっています。そんな中、予告編で衝撃のアニメが出てきます。それが、これなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】予告アニメ絵 ©NHK なんか、ボクシングものみたいなんですけど、あまりに絵が下手くそで、よくわからないんですけど。まあ、たぶん『あしたのジョー』だと思うんですね。 ただ、『あしたのジョー』は虫プロで作られるはずだから、なつが関わる作品ではないし、マコさんがやる作品でもないんですよね。 たぶん、虫プロかどっか他のスタジオが、『あしたのジョー』か、『タイガーマスク』か、『キックの鬼』か、どれかをやって「それによってスポ根ブームがやってきた」という流れになるんですよ。 これまで、子供達のテレビマンガを作っていたところから、一気にアニメ業界全体が「これからはスポーツ根性モノだ!」というふうに、大きく流れてきて。 そこでまた「新しい仕事が発生してくる」とか、もしくは「自分達が本来やりたかった企画が通らない」とか「『三代目カポネ』が通らない」とか、そういう話になるんじゃないかと思います。 「『巨人の星』が大ヒットした」というのは、さっきも言った通りなんですけど。この『巨人の星』というのは、1968年に始まったんですよね。 つまり、ちょうどなつが妊娠・出産のために現場をリタイアし、イッキュウさん(夫の坂場一久)も新しい現場に入ろうとしていた頃ですから、彼らには『巨人の星』の大ヒットというのが、あまり身近にわからなかった時代なんじゃないかと思います。
・・・
さらに、予告編には、こんなシーンが写ってたんですよね。 (パネルを見せる)
【画像】なつの娘ゆう ©NHK この女の子は、なつの娘のゆうが成長した姿だと思うんですけど。今週は、まだ赤ちゃんだったんですけど、予告編ではこうなってましたから、3歳か、下手したら5歳くらいになっているんですね。 赤ちゃんだった娘が5歳になっているということは、『なつぞら』の舞台は、来週には1975年まで進むんじゃないかと思っているんですよ。
ただ、75年から先の時代には行かないと思うんですね。 『なつぞら』って、あと5週間あるんですけど。この5週間で描くのは、この1975年までの3年間。ここら辺を集中的に描くんじゃないかなと思います。 なぜかというと、75年から先になってくると、代表的なアニメ作品が、例えば78年の『未来少年コナン』とか、79年の『ルパン三世 カリオストロの城』や、『機動戦士ガンダム』になっちゃうんですね。 この辺りの時代になると、なつの年齢も40歳を超えてくるし、娘のゆうも9歳とか10歳くらいになっちゃうんですよ。そうなると、大きくなりすぎて、母娘の関係を描くのが難しくなってくる。 なにより、『コナン』にしても『カリ城』にしても『ガンダム』にしても、もうビッグタイトルになり過ぎて、なつを主役に出来ないというか、そろそろ問題が起きてくるというか(笑)。
最終回の9月28日まで、あと5週間。 つまり、あと、たったの5週間で、夫である坂場さん、つまり高畑勲の大成功と、『なつぞら』というタイトルにちゃんと繋げるための伏線回収まで一気にやって、おまけに、生き別れの妹・千遥との再会という大団円まで持って行かなきゃいけないんですよね。 なので、僕、すごく期待しているんですけど。
この1975年までの、30代のなつが関わることになるだろうアニメ界の出来事は何かと言うと。 例えば、1971年に東京ムービーが作ることになる『ルパン三世』。劇中では『三代目カポネ』ですか。これが、まあ、たぶん動くんだろうと思います。 あとは、もうその次の年の1972年には『マジンガーZ』が始まります。この時、なつは35歳です。 さらに、1974年、オフィス・アカデミーの『宇宙戦艦ヤマト』。なつは37歳です。 そして、『アルプスの少女ハイジ』。ここら辺が、最後のクライマックスになってくると思います。
・・・
さて、今日の僕の『なつぞら』大予想です。いわゆる「千遥はデヴィ夫人として帰ってくる」みたいな大予想なんですけども。 僕、「のんが出演するんじゃないか?」って思ってるんですよ。能年玲奈ですね。
たぶん、のんの出番は……これ、もう完全に僕の妄想なんですけど。9月4日辺りなんですよ。 で、役柄としては、悪役じゃないかと思うんですよね。 なんで、のんが出るのかと言うと、『なつぞら』のキャスティングには、どうも「これまでの朝ドラのヒロインを全員出す」というコンセプトがあるみたいで、ずーっとその流れで来ているんですね。 なので「これはもう『あまちゃん』もやるだろう」と思ってるんですけど。
ということで、「のんの出番はここだ!」大予想です。 (パネルを見せる)
【画像】のんの出番 僕の予想では、役柄は女プロデューサー。 見た目は、ちょいワルでサングラスをかけています。 そして、決めゼリフは「テーマは愛です」になる。
何をやるのかというと、もちろん、こういうのです。『宇宙軍艦ムサシ』(予想タイトル)をやるのではないのかと。 (パネルを見せる。青島文化教材社のプラモデル「合体レッドホークヤマト」のパッケージ)
【画像】レッドホークヤマト 『宇宙戦艦ヤマト』のプロデューサーの西崎義展さん、元・虫プロ商事の社長代理でした。 この西崎さんをモデルにして、「マコさんの元同僚で、マコプロの企画の邪魔をする」という悪役として登場するのがふさわしいな、と。 来週の『なつぞら』では、9月4日か5日、水曜か木曜辺りで、のんが「『ムサシ』のテーマは愛です」って言うに違いないと思います(笑)。
以上、今週の、岡田斗司夫が語る本物より面白過ぎる『なつぞら』のコーナーでした。 どうもありがとうございました。 (パチモンプラモのパネルを指して)
いいよね、これ。このプラモ、欲しいんだけどね。なかなか売ってないんですよ。
『崖の上のポニョ』解説「グランマンマーレ変身の意味」
【画像】スタジオから じゃあ、『ポニョ』の話に行きます。
『崖の上のポニョ』という作品は、宮崎駿の女性観を真正面から描いた、かなりの問題作だと僕は思っているんですよ。 その中には、ちょっと怖い描写もあるんですけど。 このところ、岡田斗司夫ゼミでは、毎週、都市伝説とか、ちょっと怖い話をやっているので、折角だから今日も「ちょっとエロくてかなり怖い『崖の上のポニョ』」という話をしようと思います。
・・・
ポニョの母親グランマンマーレというのは、海の中にいる女神みたいな存在であり、フジモトの妻でもあります。 (パネルを見せる)
【画像】グランマンマーレとフジモト ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT これが、人間の男フジモトというキャラなんですけど。この船の舳先にちっちゃくいるのがフジモトですね。それに対して、グランマンマーレというのは、すごくデカいんですよ。 まあ、おおらかで優しくて、何事にも動じず、母性の塊のような存在です。 フジモトもグランマンマーレにゾッコンで「あの人に会えると思うと、もうドキドキが止まらない!」とか言います。……まあ、その結果、ちょっとドアの建て付けが悪かったということもあって、大災害になるんですけども。 そんなグランマンマーレの初登場シーンというのは、宗介の父親の乗る船小金井丸の下を通るシーンです。 ところで、僕、この映画を3回くらい見たんですけど、『ポニョ』のキャラクターの中で唯一名前が覚えられないのが宗介のお父さんなんですよね。 宗介のお母さんの名前がリサであることは覚えているんですけど、宗介のお父さんは長嶋一茂という声優の名前で覚えてて(笑)。 なぜかというと、この一茂が、もう、一茂っぽさが抜群で良いんですよ。本当に「家にロクに帰って来なくて、頼りない」というお父さんのキャラクターが、一茂っていう感じなんですよ。 なので、すみませんけど、このゼミの中では宗介のお父さんのことは一貫して一茂と呼びますが、気にしないでください。
グランマンマーレの初登場シーンは、宗介の父親・一茂の船、小金井丸の下を通るシーンなんですけど。とんでもなく巨大なんです。 一番最初、一茂が「あっ! あれを見ろ!」と言うと、海の彼方から光る波がやって来るのが見えるんです。 (パネルを見せる)
【画像】海の光 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT まず、海の中に光る波が現れるんですけども。その光る波の中に、よく見ると赤い宝石みたいなものが見える。これが特徴なんですよ。 その光る波が小金井丸の下を通り過ぎる時にわかるんですけど、実は、赤い宝石のように見えたのは、ネックレスなんですね。 つまり、その上に顔があって、ここが首で、ここが胸元。胸元が凄い開いた服を着ていて、いわゆる女の人の身体でいうデコルテという、ドレスとかを着ている時に見える胸元の肌の部分。この胸元のところまで、緩いネックレスがあるんです。 この「赤い宝石の部分が盛り上がってる」というのはどういうことかと言うと、グランマンマーレって海の中をほとんど上を向いて海面スレスレを背泳ぎみたいな感じで泳いでいるんですけど、「おっぱいがデカすぎて、そこだけ巨大な波のように盛り上がっている」ということなんですね。 つまり、「波を蹴立てて巨乳がやって来た!」という……まあまあ、宮崎駿はなかなかに描きたいものを描いてるわけですよね(笑)。 僕、このシーンを一番最初に見た時から、なんか変だなと思ってて。実際に画面を止めて調べてみたら、胸元のネックレスだけ見えたんですよ。「ということは、やっぱり、あれはおっぱいの位置じゃん! すごいな!」と。
・・・
ただ、なんか僕、このグランマンマーレという人が、ちょっと怖いんですよ。 というのも、まあ、このカットの1分後くらいなんですけど、フジモトという人間の前に、彼の妻であるグランマンマーレが、バーッと巨大な頭を出すシーンがあるんです。 ところが、フジモトと手を繋いで話すシーンになると、フジモトと同じサイズにいきなり変身するんですね。 (パネルを見せる)
【画像】巨大サイズグランマンマーレ ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT これ、どういうことかと言うと、一番最初は、フジモトからの報告を聞いているだけなんですね。 この2人の関係は、奥さんの方が旦那を尻に敷いているタイプで。旦那が「こんなことになってしまったんだ、妻よ」と言うと、「ふんふん。まあ、それは良いことなんじゃないの?」というふうに、奥さんが報告を聞く。この時は報告を聞くだけだから、巨大サイズのままなんですよ。
【画像】人間サイズグランマンマーレ しかし、「ポニョが人間になりたいと言い出してる」とフジモトから聞いた時には、聞くだけでなく、フジモトを説得しようとするんですね。「それでいいじゃない。あなた、人間にしてあげましょうよ」と。そうやって、説得しようという時だけは、急に人間大に変身して、フジモトの手を取る。 それまでは、デカいままで、フジモトとすごく距離を置いてたのに、説得する時にだけ人間大になって、急に手を取って触りに来るという。「夫を色仕掛けで説得する」という、なかなか大したタマだなと思うんですけど。そんな、やり手のお姉さんなんですね。 このデカいグランマンマーレが人間大に変身するシーンが、ちょっと僕、すげえなと思ったんですけど。4コマで分解して見てみました。 (パネルを見せる)
【画像】グランマンマーレ変身1 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT 巨大なマンマーレが振り返ると、夫のフジモトと同じサイズに変わるんです。なので、一番最初は上手側(画面左側)にいるフジモトに、視線だけを送っているんですね。 (パネルを見せる)
【画像】グランマンマーレ変身2 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT 次は、この視線の先にいるフジモトから見えている側はそのままで、見えない右側の顔だけが段々と小さくなって行くんです。ここ、映像が手元にある人は、ぜひ、確認して見て見てください。顔の右側だけが、いきなり変身を始めて小さくなりますから。 (パネルを見せる)
【画像】グランマンマーレ変身3 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT その次が、この3コマ目です。このコマになると、顔の左右の縮尺は同じなんですけど、ところが、首から下は巨人のままで顔だけ人間大に縮小し始めているので、首の付根の位置とかが、もう、おかしなことになっている。 (パネルを見せる)
【画像】グランマンマーレ変身4 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT そして、最後、一気にフジモトにガッと身体を寄せる時に、全ての辻褄を合わせるんですけど。まだ、首が長いままになっているという。 こういうふうに、すごく丁寧に、この女の人、グランマンマーレのバケモノ性というのを見せているんです。 本当にね、このシーンを見てると「あれ? 一瞬キャラが崩れたかな?」と思うようになっているんですよ。だけど、こんな重要な女性キャラクターが初登場の時に、それも、振り返りをゆっくり見せるという時に、作画ミスをするはずがないんですね。 この「変身する時に顔の右側から縮み始めて、次に顔だけがすっかり縮んでしまって、首だけが長いような変なプロポーションになって、最後に寄って行く時にグッと全部のプロポーションの辻褄を合わせて行く」というのは、「変身する時に、バケモノな部分を夫にだけは見せないようにしている」ということなんですね。 そして、これを描写することで、観客にだけは、この女性のバケモノ性をわざわざ見せようとしているんですけども。
「足元の花壇」の意味とグランマンマーレの「正体」
【画像】スタジオから このように、グランマンマーレは自由に自分のサイズを変えられるように見えるんですけども。それだけでは説明できない、ちょっと不思議なシーンがあります。 それが、グランマンマーレと宗介の母親のリサが、2人で相談するシーンです。 (パネルを見せる)
【画像】グランマンマーレとリサ ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT もう本当に、映画の最後の方のシーンですね。グランマンマーレとリサが立ち話をしているところを、養老院のおばあさんたちが遠くから「あの2人、ずっと話してるけど、何を話してるのかしら?」と見ている場面です。 この時、2人が何を話しているのか、観客には全然わからないんですよね。 グランマンマーレのサイズも、微妙にちょっと怖い大きさなんですけど。まあ、別に、リサと全く同じサイズじゃなくてもいいと思うんですけど。なんか、この時のグランマンマーレって、ちょっと威圧的な大きさで、怖くて良いんですよ。 この後、ケアハウスのおばあさんたちが「リサさーん!」って声を掛けたら、リサが「はーい」って手を振るんですね。グランマンマーレは視線だけをチラッとよこすだけなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】手を振るリサ ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT で、リサがカメラの方に歩いて来るんですけど。手前にある花壇を避けて歩いて来るんですね。 (パネルを見せる)
【画像】歩いてくるリサ ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT わざわざ手前に花壇があって、それを避ける作画をしているんです。 このシーンの絵コンテを確認しても、やはり「この位置に花壇があって、リサは花壇を避けて斜めに歩く」って指定してあるんですね。 こんな面倒臭いことをしているのには、やっぱり理由があるんです。 では、なぜ、宮崎駿は、この位置に花壇を配置したのか? これね、実はこのカットだけじゃないんですよ。 (パネルを見せる)
【画像】足元の花壇 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT これは、ついにケアハウスに到着した宗介とポニョが、グランマンマーレと会うシーンなんですけど。ここにも、マンマーレの手前の足元に花壇があるんですね。 グランマンマーレは、上手側から歩いて来るんですけど。この花壇が途切れる手前でピタリと止まって、その位置で宗介達とお話をするんです。 このように、グランマンマーレは、絶対に観客に足元を見せないんですよ。
・・・
なぜ、グランマンマーレは足元を見せないのか? なぜ、自由自在に身体を大きくしたり小さくしたりできるのか? なぜ、海の中でこの女の人は光っているのか?
実は、このグランマンマーレの正体というのは、宮崎駿のインタビュー集『続・風の帰る場所』の中に、ハッキリと書いてあるんですね。 (本を見せる)
【画像】続・風の帰る場所 『続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか』(宮崎 駿)
グランマンマーレの正体はチョウチンアンコウだそうです。 「体長が1キロメートルくらいある、超巨大なチョウチンアンコウのバケモノ。それがグランマンマーレの正体だ」と書いてあるんですね。 そんな巨大アンコウと人間の男との異種交配、つまり「違う生物同士が交配して、子供を作る」というお話なんです。 日本でも、例えば『鶴女房』とかがありますよね。いわゆる『鶴の恩返し』。ああいう違う生物との間に子供が出来るお話というのは、民話にはよくあるんですけど。 「そういった異種交配の話こそが、この『崖の上のポニョ』の本質の1つだ」と、宮崎さんは語ってるんです。 それも極めて楽しげに語ってるんです。「異種交配譚なんですよね! アンコウなんですよ! 1キロもあるんですよ!」と、すごく嬉しそうに語ってるんですよ(笑)。 まあ、皆さんもご存知でしょうけど、チョウチンアンコウというのがどんな生物かというと、こんな姿をしています。 (パネルを見せる )
【画像】チョウチンアンコウ これがグランマンマーレの正体なわけですね。 深海魚です。この口には鋭い牙が生えていて、頭から生えている触手の先端の辺りから発光液という液体を放出するので、海の中で光るんです。 つまり、グランマンマーレの女性の形をした部分というのは、この触手の先端部分なんですよ。この部分が女の人の形をしているんですけど、その奥には、超巨大な、大きさが1キロくらいあるグロテスクな深海生物の本体が存在しているわけですね。
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グランマンマーレの本体は、今、言ったように、チョウチンアンコウなんですけど。 現実のチョウチンアンコウというのは、「深海でも光るこの触手で獲物をおびき寄せ食べる」という生物なわけです。 それと同じく、このグランマンマーレというのは「この触手の先にすごく美しい女の人の全身を作って、人間のオスをおびき寄せて異種交配をする」という生物なんですね。 宮崎駿は、さっきの本とか、別のインタビューでも「グランマンマーレには、フジモトだけでなく、何人も夫がいる」って言ってるんですね。 つまり「貪欲で多淫症」というのかな? 「とりあえず、いろんな相手と交配するのが好き」というような性格なんです。さらには「これはもう、その娘であるポニョもそうだ」と言ってるんですけど。 じゃあ、フジモト以外の他の夫はどこにいるのか? フジモトと同じように、世界の海のどこかに住んでいて、グランマンマーレが来るのを待っているのかというと、いや、たぶん違うんですよね。 その理由は「マンマーレの正体はチョウチンアンコウである」というところからもわかるんです。 チョウチンアンコウのオスとメスの交配の仕方、交尾の仕方というのは、かなり特殊なんですよ。 (パネルを見せる。 日テレニュース24 the SOCIAL natureより画像引用)
【画像】チョウチンアンコウのオス ©NNN 「メスに噛みつき一体化するオス」と書いてあるんですけど、巨大なメスの身体に埋まり込んで、寄生するように、オデキみたいになっているのが、チョウチンアンコウのオスなんですよ。 このオスは、メスの身体に埋め込まれていて、すでに組織は癒着して、もう一生、離れられないんですね。チョウチンアンコウのオスというのは、メスの身体に寄生して、そのまま一生を送るんです。 メスは、オスが寄ってくるように化学物質を出すんですけど。チョウチンアンコウのオスというのは、本当にメスの身体の数十分の1という小ささなんです。そんなオスは、化学物質を頼りにメスの身体を探し当てると、その身体のどこかにかじりつくんですね。すると、その瞬間から、オスの組織と循環系というのはメスの身体と一体してしまう。 そこから先は、栄養はメスの血液を通じて得るようになり、目も手足もヒレも他のほとんどの内臓も退化してなくなってしまって、単なる「メスが産卵する時に精子を放出するだけの器官」になっちゃうんですね。メスの内臓の一部になっちゃうわけです。 これが、チョウチンアンコウという生物の特殊なところなんです。 そんな生き物を、わざわざ「グランマンマーレの本体だ」と設定したということは「フジモト以外の夫、オスというのは、全てグランマンマーレの体内に吸収済みだ」ということなんですね。
・・・
じゃあ、なぜ、フジモトだけは吸収されていないのか? 実は、フジモトという男についても、これは『ポニョ』のパンフレットとかガイドブックにも書いてあるんですけど、「『海底2万哩』に出て来るノーチラス号の船員の生き残り」という設定があるんですね。
【画像】1871の壺 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT フジモトが、自分の船の中で海の生命のエキスを抽出しているシーンで、一番古い壺には「1871年」という年号が書いてあるんです。 要するに「フジモトが作った生命の水の中で、一番古い壺が1871年製だ」ということなんですけど。 なぜ、ここだけ具体的な数字を出しているのかというと、「ジュール・ベルヌが『海底2万哩』を出版したのが、1870年だから」なんですね。この『海底2万哩』というのは、ノンフィクションという体で出版していたので、「ちょうどその時期にノーチラス号の沈没事故があった」と書かれているわけですよ。 フジモトは、沈没があった1870年にグランマンマーレに助けられ、そこから生命の水の精製を始めた。だから、最初の壺に書かれた年号が1871年になっているという設定なんだと思います。 この辺の「『海底2万マイル』の生き残りだ」というのは、宮崎駿自身が、裏設定と言いながら、堂々といろんなところで言ってる話ですから、これは確かだと思うんですけど。 こんなふうに、フジモトだけは、グランマンマーレの役に立っている。だからこそ、他の夫のように同化吸収されずに、今も生きているわけです。 なので、フジモトにとってのグランマンマーレは、愛しい妻なんだけど、同時に、自分が役に立たなくなったら、体内に同化してしまうような、恐ろしい存在でもあるんです。 「マンマーレには、フジモトの他にも夫がたくさんいる」と言いながらも、海の中で生命の水を作っているフジモト以外に全く気配を見せないのはなぜかと言うと、おそらく、「他の夫もいたんだけど、もう死んでしまった」か、あるいはチョウチンアンコウをわざわざ設定してるんだから、「マンマーレに同化されてしまった」と考えるのが一番良いんじゃないかと思います。 たぶん、フジモトも、年を取ってこういう作業が出来なくなってしまったら、グランマンマーレの体内に引き込まれて、組織とかが癒着して、同化されてしまうんじゃないか、と。 でも、その時に、フジモト自身がそれを「嫌だ!」とか「怖い!」と思うかは、この世界観の中ではちょっと疑問だなと思うんです。案外、喜んじゃうんじゃないかな?
「女が内緒話をしている時というのは、必ず男にとって……」
【画像】スタジオから さっきの話の続きになりますけども。今までの話からわかる通り、この花壇に隠れて見えないグランマンマーレの足元の部分には、おそらく、本体のチョウチンアンコウに繫がるデカい触手があるんですね。 (先程のパネルにマジックペンで描き込む)
【画像】花壇と触手 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT こういうふうに。おそらく、見えないところに、触手があるんですよ。 リサは、その触手を踏まないようにするために、わざわざ花壇を避けて歩かなきゃいけなかったわけですね。 宮崎駿は、この映画を気持ちよく見ている観客には、こういうことがわからないように描いているんです。触手を隠すためにわざわざ花壇をレイアウトしているわけですから。 この『ポニョ』という作品は、普通に見ている限り、「実は、宗介という少年は、薄気味悪い相手と変な契約をしている」という部分が僕らには見えないようになってるんです。 じゃあ、なんでそんな「グランマンマーレと同じく半魚人のポニョを、ずっと好きでいて、守る」という契約に、宗介は同意したのか? これについて、宮崎駿は「宗介は子供だからだ」と言ってます。「大人にはそんな約束は出来ない。約束したとしても、守れない。それは大人だからだ」と。 よく「子供が大きくなったらどうなるんですか?」って言うんですけど、宮崎駿に言わせれば、そんなもん、答えは1つしかないんです。「子供が大きくなったらつまらない大人になるんだ」と。「子供というのは、みんな、みんな、つまらない大人になる。くだらない大人になる。だから、子供っていうのは素晴らしいんだ」と。これが宮崎駿流のロジックなんです。 でも、宗介は、まだ子供なんです。そして、くだらない大人になる前の子供だからこそ、「一生かけてポニョをずっと好きでいて、一生ポニョを守る」なんて約束が出来る。 子供だから、そんな無茶な約束をするし、子供だから、その約束を守ろうとしてしまう。「だから、宗介の一生は、これから苦労の連続ですよ」と、宮崎駿は言うんです。 (DVDを見せる)
【画像】宮﨑駿の仕事DVD 『プロフェッショナル 仕事の流儀スペシャル 宮崎 駿の仕事』
……あの、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』というドキュメンタリーがあるんですけど。この宮崎駿の特集の中で、本当に「いやあ、彼の一生はこれから大変ですよ。アハハ!」って大爆笑しているんですよね(笑)。
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じゃあ、なんで「幼い宗介が大変な契約をしてしまう」という結末のこの映画を、宮崎駿は「ハッピーエンドだ」と言うのか? あのね、ここからがちょっと面白いところ……というか、僕、ちょっと怖いんですけど。 宮崎駿にとっては、別に、触手が付いていて得体のしれないグランマンマーレだけが怖いわけじゃないんですよ。全ての女は、宮崎駿にとっては、グランマンマーレと同じなんです。 「全ての女はグランマンマーレと同じように怖く、得体がしれなく、でも、強くて美しくて、男は敵わない。だから、一度好きになってしまったら、一生死ぬまで振り回される。それが女である」というのが、宮崎駿がこの映画の中で語っている「女とは何か?」という考え方なんですよ。 例えば、宗介のお母さんのリサとグランマンマーレが話しているシーン。この内容は、一切、観客には知らされないんですよ。すごく遠くで話している描写があるだけでセリフも何も聞こえない。あまりにも不自然なんですよね、このシーン。 ここまで教える気がないんだったら、いっそ話し合っているシーンごとカットしちゃえばいいんですよ。ところが、このシーンって、コンテの時点から、かなり長い秒数を指定されているんです。 つまり、「ここで何を話しているんだろう?」と、観客に想像して欲しいということなんですよ。わからないように作っているんですけど、想像して欲しいんですね。 物語のラスト、宗介達の街は大津波で水没するんです。水没するんですけども、なぜか平和なままなんですね。みんな生きてて、平和なままで、ついに宗介のお父さんであり、リサの夫でもある長嶋一茂が乗る小金井丸まで無事に港に戻って来るんですよね。 もちろん、小金井丸が戻って来れたのは、マンマーレのおかげです。ということは、観客にすら聞かせられないリサとマンマーレの会話は何だったのかというと、おそらく「あなたの夫は生きて返してあげるから、その代わり、あなたの息子を差し出しなさい」というやり取りをやっていたということなんですよ。 なぜかと言うと、このリサという女の人は、息子である宗介の晩御飯よりも、夫との喧嘩の方を優先させる人なんですよ。 子供を乗せているのに、無茶で乱暴な運転をするのが好きな人であって、自分の子供には「ママ」ではなく、「リサ」という名前で呼ばせるような人なんです。 このリサというお母さんは、宮崎アニメの中では、かなり不自然なほどに母親的な部分が少ない。母性は少なめ、女は多めみたいな「母親ではなく、どちらかというと女だ」というふうに描かれるキャラクターなんですね。 そんなリサにとって、誰にも知られないところで持ちかけられた「あなたの夫を返してあげるから、息子を私にちょうだい。でも、安心して。あなたの息子をあなたから取り上げるわけではないの。そうじゃなくて、私の娘があなたの家でずっと暮らすというのでいいから」という、マンマーレからの提案は、案外、良い提案だったんじゃないかと思います。 流石にこんな話は観客には聞かせられない。 でも、「リサとマンマーレが何か内緒話をしている」という雰囲気だけは伝えたい。 そして「女が内緒話をしている時というのは、必ず男にとっての不幸が起きる」という、この世の真実だけは伝えたい。 だから、こんな不自然なシーンになっているわけですね(笑)。
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別に、グランマンマーレだけが、強くて怖くて美しいのではなくて、リサもポニョも、女は全て強くて怖くて美しい。これが、『崖の上のポニョ』のテーマなんですよ。 女は全て、強くて怖くて美しい。だから、俺は、女に対して頭が上がらずに、でも、ゾッコンで、すごく好き。だから、身体を壊すほど働いて、そして、いつかは使い物にならなくなって、捨てられるか、吸収されるかして行くんだろう、と。 そういう運命を知っているからこそ、フジモトの目の下には、いつもクマがある。大人の男の目の下には必ずクマがあるわけです。 「運命を知ってるフジモトにはクマがあるんですけど、そんな運命をまだ知らないから、宗介は健気で元気だ」という話なんですね。 こういうところまで話してから、「はい!」という感じで、このアニメはポンと終わっちゃうわけですよ。 もう、宗介とポニョがキスしたら、ポンっと終わっちゃって。そこからは「めでたし、めでたし」で、世にも楽しげな歌が掛かるわけですね。 「楽しいエンディングテーマ、『ポニョ』の歌をみんなで歌おう!」って。「ポーニョ、ポニョポニョ、魚の子、青い海から、やってきた~♪」というふうに終わっちゃうわけです。
……はい、無料はここまでです(笑)。 『崖の上のポニョ』の解説の第1部でした。
記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
2019/08/25 #296 「『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『崖の上のポニョ』解説:どうして宗介は、ずっとポニョを好きでいる契約に同意したの?」
2019-09-13 07:00220pt岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/13
今日は、2019/08/25配信の岡田斗司夫ゼミ「『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病」からハイライトをお届けします。
岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。 サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
さっきの話の続きになりますけども。今までの話からわかる通り、この花壇に隠れて見えないグランマンマーレの足元の部分には、おそらく、本体のチョウチンアンコウに繫がるデカい触手があるんですね。 (先程のパネルにマジックペンで描き込む)
【画像】花壇と触手 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT こういうふうに。おそらく、見えないところに、触手があるんですよ。 リサは、その触手を踏まないようにするために、わざわざ花壇を避けて歩かなきゃいけなかったわけですね。 宮崎駿は、この映画を気持ちよく見ている観客には、こういうことがわからないように描いているんです。触手を隠すためにわざわざ花壇をレイアウトしているわけですから。 この『ポニョ』という作品は、普通に見ている限り、「実は、宗介という少年は、薄気味悪い相手と変な契約をしている」という部分が僕らには見えないようになってるんです。 じゃあ、なんでそんな「グランマンマーレと同じく半魚人のポニョを、ずっと好きでいて、守る」という契約に、宗介は同意したのか? これについて、宮崎駿は「宗介は子供だからだ」と言ってます。「大人にはそんな約束は出来ない。約束したとしても、守れない。それは大人だからだ」と。 よく「子供が大きくなったらどうなるんですか?」って言うんですけど、宮崎駿に言わせれば、そんなもん、答えは1つしかないんです。「子供が大きくなったらつまらない大人になるんだ」と。「子供というのは、みんな、みんな、つまらない大人になる。くだらない大人になる。だから、子供っていうのは素晴らしいんだ」と。これが宮崎駿流のロジックなんです。 でも、宗介は、まだ子供なんです。そして、くだらない大人になる前の子供だからこそ、「一生かけてポニョをずっと好きでいて、一生ポニョを守る」なんて約束が出来る。 子供だから、そんな無茶な約束をするし、子供だから、その約束を守ろうとしてしまう。「だから、宗介の一生は、これから苦労の連続ですよ」と、宮崎駿は言うんです。 (DVDを見せる)
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『崖の上のポニョ』解説:ちょっとエロくてかなり怖いグランマンマーレの正体」
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今日は、2019/08/25配信の岡田斗司夫ゼミ「『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病」からハイライトをお届けします。
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このように、グランマンマーレは自由に自分のサイズを変えられるように見えるんですけども。それだけでは説明できない、ちょっと不思議なシーンがあります。 それが、グランマンマーレと宗介の母親のリサが、2人で相談するシーンです。 (パネルを見せる)
【画像】グランマンマーレとリサ ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT もう本当に、映画の最後の方のシーンですね。グランマンマーレとリサが立ち話をしているところを、養老院のおばあさんたちが遠くから「あの2人、ずっと話してるけど、何を話してるのかしら?」と見ている場面です。 この時、2人が何を話しているのか、観客には全然わからないんですよね。 グランマンマーレのサイズも、微妙にちょっと怖い大きさなんですけど。まあ、別に、リサと全く同じサイズじゃなくてもいいと思うんですけど。なんか、この時のグランマンマーレって、ちょっと威圧的な大きさで、怖くて良いんですよ。 この後、ケアハウスのおばあさんたちが「リサさーん!」って声を掛けたら、リサが「はーい」って手を振るんですね。グランマンマーレは視線だけをチラッとよこすだけなんですけど。 (パネルを見せる)
【画像】手を振るリサ ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT で、リサがカメラの方に歩いて来るんですけど。手前にある花壇を避けて歩いて来るんですね。 (パネルを見せる)
【画像】歩いてくるリサ ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT わざわざ手前に花壇があって、それを避ける作画をしているんです。 このシーンの絵コンテを確認しても、やはり「この位置に花壇があって、リサは花壇を避けて斜めに歩く」って指定してあるんですね。 こんな面倒臭いことをしているのには、やっぱり理由があるんです。 では、なぜ、宮崎駿は、この位置に花壇を配置したのか? これね、実はこのカットだけじゃないんですよ。 (パネルを見せる)
【画像】足元の花壇 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT これは、ついにケアハウスに到着した宗介とポニョが、グランマンマーレと会うシーンなんですけど。ここにも、マンマーレの手前の足元に花壇があるんですね。 グランマンマーレは、上手側から歩いて来るんですけど。この花壇が途切れる手前でピタリと止まって、その位置で宗介達とお話をするんです。 このように、グランマンマーレは、絶対に観客に足元を見せないんですよ。
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なぜ、グランマンマーレは足元を見せないのか? なぜ、自由自在に身体を大きくしたり小さくしたりできるのか? なぜ、海の中でこの女の人は光っているのか?
実は、このグランマンマーレの正体というのは、宮崎駿のインタビュー集『続・風の帰る場所』の中に、ハッキリと書いてあるんですね。 (本を見せる)
【画像】続・風の帰る場所 『続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか』(宮崎 駿)
グランマンマーレの正体はチョウチンアンコウだそうです。 「体長が1キロメートルくらいある、超巨大なチョウチンアンコウのバケモノ。それがグランマンマーレの正体だ」と書いてあるんですね。 そんな巨大アンコウと人間の男との異種交配、つまり「違う生物同士が交配して、子供を作る」というお話なんです。 日本でも、例えば『鶴女房』とかがありますよね。いわゆる『鶴の恩返し』。ああいう違う生物との間に子供が出来るお話というのは、民話にはよくあるんですけど。 「そういった異種交配の話こそが、この『崖の上のポニョ』の本質の1つだ」と、宮崎さんは語ってるんです。 それも極めて楽しげに語ってるんです。「異種交配譚なんですよね! アンコウなんですよ! 1キロもあるんですよ!」と、すごく嬉しそうに語ってるんですよ(笑)。 まあ、皆さんもご存知でしょうけど、チョウチンアンコウというのがどんな生物かというと、こんな姿をしています。 (パネルを見せる )
【画像】チョウチンアンコウ これがグランマンマーレの正体なわけですね。 深海魚です。この口には鋭い牙が生えていて、頭から生えている触手の先端の辺りから発光液という液体を放出するので、海の中で光るんです。 つまり、グランマンマーレの女性の形をした部分というのは、この触手の先端部分なんですよ。この部分が女の人の形をしているんですけど、その奥には、超巨大な、大きさが1キロくらいあるグロテスクな深海生物の本体が存在しているわけですね。
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グランマンマーレの本体は、今、言ったように、チョウチンアンコウなんですけど。 現実のチョウチンアンコウというのは、「深海でも光るこの触手で獲物をおびき寄せ食べる」という生物なわけです。 それと同じく、このグランマンマーレというのは「この触手の先にすごく美しい女の人の全身を作って、人間のオスをおびき寄せて異種交配をする」という生物なんですね。 宮崎駿は、さっきの本とか、別のインタビューでも「グランマンマーレには、フジモトだけでなく、何人も夫がいる」って言ってるんですね。 つまり「貪欲で多淫症」というのかな? 「とりあえず、いろんな相手と交配するのが好き」というような性格なんです。さらには「これはもう、その娘であるポニョもそうだ」と言ってるんですけど。 じゃあ、フジモト以外の他の夫はどこにいるのか? フジモトと同じように、世界の海のどこかに住んでいて、グランマンマーレが来るのを待っているのかというと、いや、たぶん違うんですよね。 その理由は「マンマーレの正体はチョウチンアンコウである」というところからもわかるんです。 チョウチンアンコウのオスとメスの交配の仕方、交尾の仕方というのは、かなり特殊なんですよ。 (パネルを見せる。 日テレニュース24 the SOCIAL natureより画像引用)
【画像】チョウチンアンコウのオス ©NNN 「メスに噛みつき一体化するオス」と書いてあるんですけど、巨大なメスの身体に埋まり込んで、寄生するように、オデキみたいになっているのが、チョウチンアンコウのオスなんですよ。 このオスは、メスの身体に埋め込まれていて、すでに組織は癒着して、もう一生、離れられないんですね。チョウチンアンコウのオスというのは、メスの身体に寄生して、そのまま一生を送るんです。 メスは、オスが寄ってくるように化学物質を出すんですけど。チョウチンアンコウのオスというのは、本当にメスの身体の数十分の1という小ささなんです。そんなオスは、化学物質を頼りにメスの身体を探し当てると、その身体のどこかにかじりつくんですね。すると、その瞬間から、オスの組織と循環系というのはメスの身体と一体してしまう。 そこから先は、栄養はメスの血液を通じて得るようになり、目も手足もヒレも他のほとんどの内臓も退化してなくなってしまって、単なる「メスが産卵する時に精子を放出するだけの器官」になっちゃうんですね。メスの内臓の一部になっちゃうわけです。 これが、チョウチンアンコウという生物の特殊なところなんです。 そんな生き物を、わざわざ「グランマンマーレの本体だ」と設定したということは「フジモト以外の夫、オスというのは、全てグランマンマーレの体内に吸収済みだ」ということなんですね。
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じゃあ、なぜ、フジモトだけは吸収されていないのか? 実は、フジモトという男についても、これは『ポニョ』のパンフレットとかガイドブックにも書いてあるんですけど、「『海底2万哩』に出て来るノーチラス号の船員の生き残り」という設定があるんですね。
【画像】1871の壺 ©2008 Studio Ghibli・NDHDMT フジモトが、自分の船の中で海の生命のエキスを抽出しているシーンで、一番古い壺には「1871年」という年号が書いてあるんです。 要するに「フジモトが作った生命の水の中で、一番古い壺が1871年製だ」ということなんですけど。 なぜ、ここだけ具体的な数字を出しているのかというと、「ジュール・ベルヌが『海底2万哩』を出版したのが、1870年だから」なんですね。この『海底2万哩』というのは、ノンフィクションという体で出版していたので、「ちょうどその時期にノーチラス号の沈没事故があった」と書かれているわけですよ。 フジモトは、沈没があった1870年にグランマンマーレに助けられ、そこから生命の水の精製を始めた。だから、最初の壺に書かれた年号が1871年になっているという設定なんだと思います。 この辺の「『海底2万マイル』の生き残りだ」というのは、宮崎駿自身が、裏設定と言いながら、堂々といろんなところで言ってる話ですから、これは確かだと思うんですけど。 こんなふうに、フジモトだけは、グランマンマーレの役に立っている。だからこそ、他の夫のように同化吸収されずに、今も生きているわけです。 なので、フジモトにとってのグランマンマーレは、愛しい妻なんだけど、同時に、自分が役に立たなくなったら、体内に同化してしまうような、恐ろしい存在でもあるんです。 「マンマーレには、フジモトの他にも夫がたくさんいる」と言いながらも、海の中で生命の水を作っているフジモト以外に全く気配を見せないのはなぜかと言うと、おそらく、「他の夫もいたんだけど、もう死んでしまった」か、あるいはチョウチンアンコウをわざわざ設定してるんだから、「マンマーレに同化されてしまった」と考えるのが一番良いんじゃないかと思います。 たぶん、フジモトも、年を取ってこういう作業が出来なくなってしまったら、グランマンマーレの体内に引き込まれて、組織とかが癒着して、同化されてしまうんじゃないか、と。 でも、その時に、フジモト自身がそれを「嫌だ!」とか「怖い!」と思うかは、この世界観の中ではちょっと疑問だなと思うんです。案外、喜んじゃうんじゃないかな?
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2019/08/25 #296 「『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病」
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岡田斗司夫ゼミ『会員限定 恋愛イベント』開催日変更と再募集のお知らせ
2019-09-11 12:009999999ptーーーーーーーーーーーーーーーー
『会員限定 恋愛イベント』開催日変更と再募集のお知らせ
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岡田斗司夫の『会員限定 恋愛イベント』の開催日が、都合により10月12日(土)に変更になりました。
申し訳ありません。
というわけで、あらためて参加者を募集します。
既に10月13日(日)で申込まれていた方も、もう一度、申込みをお願いします。
開催日時は、10月12日(土) 14時〜17時
場所は未定。吉祥寺か渋谷あたりになります。
参加費は、500円〜1000円くらい。(会場費により変わります)
当日は
1. 岡田斗司夫による特別講演
2. 参加者同士によるフリートーク
を予定しています。
お申込みはこちらのサイトでフォームに記入お願いします。
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