岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/03/06
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2017/02/12配信「沈黙 -サイレンス-』を見て、踏んじゃえばいいのにねぇと考えないための教養とは何か」の内容をご紹介します。
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2017/02/12の内容一覧
- オープニング
- 岡田斗司夫のひとりマンガ夜話『CICADA』
- 『CICADA』に仕込まれた仕掛け
- 「事実×事実=嘘」清水富美加と幸福の科学
- 真っ白を黒に染めるのは超簡単! 信仰の完全否定は洗脳される一歩手前!!
- マーティン・スコセッシ『沈黙』は色々な意味で見るべき映画!
- 遠藤周作の原作『沈黙』と映画の違いは?
- キリスト教の本質とは何か?
- マーティン・スコセッシ版『沈黙』は恋愛モノとして撮られている
- スコセッシ版『沈黙』ネタバレ解説
- 弾圧されていた日本人の間違いだらけのキリスト教観
- 踏み絵のポイントは踏んだかよりもどう踏んだか
- 信仰の象徴である神の顔に込められた意味
- カトリックの宗教観を知るならこの1冊スティーブン・キング『呪われた街』
- 歴史のifは無意味? 太平洋戦争日米開戦から大悪手なぜ真珠湾を攻撃してしまったのか?
- 戦争の歴史的評価は視点と切り方ひとつで良くも悪くもなる
- 世界的都市伝説がもし本当だとしたら? オリバー・ストーン『スノーデン』
- スノーデンが護ろうとした正しいアメリカ
- エンディング~次回はワンフェスに行ってきます! ……たぶん
歴史のifは無意味? 太平洋戦争日米開戦から大悪手なぜ真珠湾を攻撃してしまったのか?
今日、DMMサロンのオフ会で井上寿一先生の話を聞いてきたんだけど。その中で、井上さんは、「日米開戦はこうやれば避けられた」って話をしたんだ。先生は「避けられた」って言ったんだよ。ところが僕も含めて、DMMサロンで、聞いている人間は全員、「あれ? こうやれば勝てたの?」っていうふうに聞こえちゃったんだよね(笑)。
その話をちょっとするよ。
まず、井上先生が今日のサロンで話してくれた中で面白かったのが、この本の中にもちょっとだけ書いているんだけど、「日本はシンガポールだけ攻めてればよかったんだ。なんで、ハワイの真珠湾を攻めたんだ? あれがもうすべての間違いだった」っていうのがあって。
軍事的なことをちょっと知ってる人間は、よく「ミッドウェイがまずかった」とか、「宣戦布告の仕方が悪かった」とかさ、あとは、「ルーズベルト大統領は実は知っていたのに、伏せてたからだ」とか、いろいろ言うじゃん。でも、もっと本質的な問題があったんだ。
もともと真珠湾攻撃っていうのは日本海軍の新人の士官に対する演習問題の中でよく出てくる話だった。スタートレックの「コバヤシマル・シナリオ」っていう絶対に勝てない問題があるじゃん? あれと同じようなものとして考えられていたんだ。「もし今、日本が世界と戦うとしたら、どういうふうに攻めるべきか?」っていう演習問題がよく出されていたんだけど、その問題に対して、当時の日本海軍の新人士官が提出する典型的な解答が「真珠湾を攻撃する」だったんだ。そしたら、先輩とか偉い人が一斉に「はい、間違い! はい、間違い! 真珠湾攻撃って一番やっちゃいけないんだよ! なんでかっていうとね……」というふうに、みんなが真珠湾攻撃がどんなに戦略的に間違っているのかというのを散々教えるという儀式があったらしいんだよね(笑)。
要するに、真珠湾攻撃っていうのは、それくらい、当時の日本海軍にの中ではやってはいけないことと考えられていたんだ。
そのはずなのに、なぜ日本海軍はあんなことをやってしまったのか? 井上先生の結論をシンプルに言うと、「当時の陸軍と海軍の対立がそうさせたんだ」と。
陸軍がシンガポールを攻略して、アジアの方でブイブイ言わせていた。それに対して海軍は、作られた時からアメリカを仮想敵国としていた。「いずれアメリカと戦争すると思っていたから」じゃない。実は、軍事においては絶対に、そのジャンルで一番強いやつを仮想敵にするものだからなんだよ。
当たり前だよね。一番強い防具を貫くために武器を開発するのと同じように、陸軍はソ連を仮装敵にしていたし、海軍はアメリカを仮装敵にしていた。別に、ソ連やアメリカが憎かったというわけじゃなくて、地上で最強の陸軍はソ連だから、陸軍はついついソ連を仮装敵にして、すべての戦略を決める。海軍は、自分たちが予算を獲得する時に「でも、アメリカはこんなに軍艦持ってるし!」っていうのを言い訳にして軍費を上げて行こうとする。
「そんなもんだから、陸軍がアジアでぐんぐん戦果をあげて闘っている時に、海軍として何かするといったら、よりによってアメリカに行くしかなかった」というのが井上先生の話にあって。
では、どうすれば良かったのかっていうと、次に「実は、ABCD包囲網はウソだった」って話になったんだよね。
「ABCD包囲網」って何かというと、本の中にも書いてるんだけど、日本が太平洋戦争を始めた理由として高校の教科書に載っている一番有名な話で、ABCDつまり、アメリカ、イギリス、中国、オランダの経済包囲網のことだ。要するに、「このABCD包囲網によって、日本はにっちもさっちもいかなくなった。だから戦争をした」ということなんだけど。
あれは軍部による宣伝だったんだって。「当時、ABCD包囲網なんてものは実質的に存在しなかった」と。それどころか、AとB、アメリカとイギリスは超・仲が悪かった。どっちかっていうと、アメリカと日本の方が仲が良くて、イギリスは嫌われていた。なぜかっていうと、アメリカの国是、つまり、国の成り立ちとして、植民地主義に対しては大反対だったからなんだよ。当時のアメリカが唯一持っていたフィリピンという植民地も、もう第二次大戦の直前には独立を認めていて、「これで帝国主義的な植民地支配はなくなる! でも、イギリスはまだ持ってやがる!」ってアメリカは思っていた。
だから、ヨーロッパでドイツがフランスに侵攻して、次にイギリスと戦っていても、アメリカは第二次大戦にまったく参加しなかったんだよね。なぜなら、第二次大戦には正義がないから。「ドイツとイギリスが戦っていようが、それはお前らの植民地の取り合いだろう? イギリスが持っている膨大な植民地を手放さない限り、俺たちの国のコンセプトである自由貿易とかグローバリズムとは合わないもんね」って、アメリカは考えていたんだって。
それに対してイギリスはどういうふうに考えていたのかっていうと、「植民地を手放すなんてとんでもない!」と。まあ、第二次大戦が終わった時に、イギリスは「これからはもっとエレガントに効率よく植民地を運営しまーす!」って言ってたんだけど。その後、いろんな植民地の独立戦争が始まって、イギリスの国力がどんどん下がっていくわけで、結果的に植民地政策自体が無理筋だっていうことを歴史が証明することになったんだけども。
かような理由で、ABCD包囲網というのは現実に存在していなかったし、機能していなかった。どちらかというとアメリカは、日本よりイギリスの方が嫌いだった。なので、シンガポールだけ攻めてればよかった。という井上さんの話があって。
仮に、日本がシンガポールだけを攻めていたら、日本の軍事行動は「オランダやイギリスの植民地を解放するための戦い」だったんだよな。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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