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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「【ゼミ室通信】手塚治虫にはできなかった実写的演出術 〜『機動戦士ガンダム』より」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「【ゼミ室通信】手塚治虫にはできなかった実写的演出術 〜『機動戦士ガンダム』より」

2018-09-13 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/09/13

    おはよう! 岡田斗司夫です。

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    今日は岡田斗司夫のゼミ室通信をお届けします。
    DMMオンラインサロンの岡田斗司夫ゼミ室では月に1回オフ会があり、ここで質問や相談を受け付けています。

    今日はDMMオンラインサロン【岡田斗司夫ゼミ室通信】から、9/2公開 特別講義をお届けします。

    手塚漫画の手法をアニメに活かした富野由悠季

    前回の「死闘!ホワイト・ベース」でランバ・ラルの精鋭部隊はホワイトベースに乗りこんだけれど全滅、ランバ・ラルも死んでしまいます。それでも、ランバ・ラル隊にはまだ残された者がいて、まだ戦意があったというところで前回が終了、今回の「激闘は憎しみ深く」になります。

    ではシーン1からいきましょう。

    今回シーンという言い方をしてみます。実写映画で撮ったらどういうふうなシーン進行やカット割りになるのかという視点で解説していきます。

    シーン1、いきなり砂漠の夕日から始まります。夕日をなぜこんなデカく描いているのかというと、これ、砂嵐が起きている時の夕日なんですね。だから、ギラギラ光っています。おまけに風が吹いて、太陽がユラユラユラユラしているところから始まります。

    (中略)

    こういう夕日を、なぜ最初のカットに入れるのか。
    これで、ドラマに厚みがでるからです。

    この回は、戦闘前日の夕方から始まって、その夜を描写して、夜が明けて朝になって、いよいよハモンたちの復讐が始まるという構成をとっています。

    最初の1カット目こういう情景描写を入れることで、すごくドラマが深くなる。
    これは、漫画の手法なんです。漫画ってシーンが変わったら、捨てカットみたいに、太陽描いたり、夜描いたりする。読んでいる人に、時間経過を感じさせたり、新しい一日が始まったというのを意識させるための描写です。

    昔、虫プロで働いて、手塚治虫にすごく傾倒していた富野由悠季は、この漫画的な手法を、ごく自然に作品に入れています。これが、本来あるべきであった手塚アニメと言えます。

    手塚治虫さん自身は、コンテを描く時、こういう手法を使うのがすごい下手なんですよ。

    昔、手塚治虫が、アニメ西遊記の監督をやってくれと、東映動画から頼まれたことがあります。手塚治虫は、もう本当に連載中で時間がなかったんですけど、それでも大喜びで行ったんですね。ない時間を割いて絵コンテを描いて、東映動画に見せました。そしたら、東映動画のアニメーターたちが「これではアニメ作れない」と、ボツを出したという話があります。
    自分自身は映画的手法を漫画の中に落とし込んだ人なのに、あんなに好きだったアニメをいざ作ろうとしても、そういう映像的なコンテが全然切れない。

    それなのに、弟子筋の富野由悠季は、ごくごく簡単に手塚漫画っぽいカット割りをポンポンと入れるんです。
    ここらへん、なんか皮肉なもんだなと思います。

    夕日はギラギラ揺れてます。
    こういう時、富野由悠季の頭の中には、「本当だったらこういう実写的イメージがほしいんだけど、これをアニメで再現するには、この手法で」というのがあります。
    本当だったら、猛烈な砂嵐のおかげで夕日がぐにゃぐにゃ動いている。これを、波ガラスを手前に一枚置いて、その波ガラスを、右から左へ動かすことによって、なんとなく砂嵐感で太陽がぐにゃぐにゃ揺れて見える感じを出しています。

    それにプラスして、ギラギラしている太陽というのにも、ひと工夫しています。太陽の絵はセルなんですよ。全く同じ仕上げ処理をした太陽の絵のセルに、エアブラシで縁取りみたいな部分を描いています。そうやって用意した2枚のセルを交互に見せるんです。
    全く同じと言っても、エアブラシだから、2枚の縁取りは微妙に違います。それを交互に見せることで、この太陽がギラギラしている印象を作っています。
    現実のこの風景をアニメで表現したいから、こういうふうに撮影してみようと、ちゃんと落とし込んで描いているわけです。

    機動戦士ガンダム第21話『激闘は憎しみ深く』より。

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