渋谷からも横浜からも約15分、アクセスのよさでも人気の元住吉。駅を降りると「ブレーメン通り」や「オズ通り」といったかわいらしい名前の商店街に、個人店からおなじみの店まで活気ある商店が連なる。面白法人カヤックでプロデューサーを務める兼康さんが暮らすのは、そんな元住吉の駅から徒歩約5分、桜の木が並ぶ川沿いのマンションの最上階。階段を上がると見えてくるのは、屋上に後付けしたかのような部屋がひとつ。ドアを開ける前から期待が高まる。
名前:兼康希望さん職業:面白法人カヤック プロデューサー
場所:神奈川県川崎市
面積:1R 28㎡
家賃:7万9千円
築年数:28年
お気に入りの場所
夕日が見えるリビングスペース玄関を開けてまず目に入るのが、イケアで購入したという白いソファ。ここでは音楽を聞きながら、本を読むことが多いとのこと。背後には植物や料理など趣味関連の本や、波の音がするという楽器がさりげなく飾られている。座ると正面に植物たちを見渡すことができる、絶好のビュースポットでもある。
「横の窓からちょうど夕日が沈むのが見えるんです。前はTVも置いていたんですが、今は寝室へ移動しました」
空をひとり占めできるバルコニー窓を出ると8畳ほどはありそうなルーフバルコニーが広がる。周囲に高い建物がないので、ひらけていてとても気持ちいい。もう少し温かくなって、自立式のハンモックTOY MOCKでくつろぐ時間は最高だろう。夏には多摩川の花火もばっちり見える。
「外なので火鉢もOK。この前はおつまみを炙って友だちとお酒を飲んだりしました。夜の月明りの下でのヨガも気持ちいいですよ」
会話がはずむキッチン部屋のちょうど中心に位置しているのが、オープンなキッチン。カウンターと一体になっているため、会話をしながら料理ができる。
「ここでいつも“キッチン兼康”を開いてくれるんです」と、この日遊びに来ていたご友人。ちなみにこの日の‟キッチン兼康”のメニューはというと、猟師の友人から届いたイノシシ肉を使ったジビエ。なんとも本格的だ。
天窓付きのトイレトイレの色が、白ではなく水色なところもポイント。天井が高いので解放感もあり、明るくて清々しい空間になっている。
「天窓から光が入るので、ここにも植物を置くことができるんです」
この部屋に決めた理由
鎌倉→渋谷→元住吉と引っ越してきた兼康さんが植物にハマったのは、渋谷に住んでいた頃。自然が身近にあった鎌倉をなつかしく思い、部屋に植物を置くようになった。この部屋を選んだ理由も、そんな愛する植物のため。
「植物に欠かせない日当たりのよさと、のびのびと葉を拡げられるバルコニーが決め手です。この部屋の前は渋谷のワンルームに住んでいたのですが、日当たりが悪く植物も元気がなかったので、次は光がたくさん入るところにしようと思っていました」
渋谷の頃から一緒という「サンセベリア・キブウェッジ」もいきいきと葉を拡げている。何度も植え替えをして、だいぶ大きくなったという。
残念なところ
洗濯機が外置きちょっと変わった作りでもあるこの物件。洗濯機をバルコニーに置かなくてはならないため、DIYで囲いを作った。
「囲っていてもすき間から雨やホコリが入ってきてしまうんです。せっかくのドラム式なんですが……」
お気に入りのアイテム
ストウブの鍋とオリーブのカットボードキッチンにはきちんとお手入れされたこだわりの道具が揃う。中でも登場回数が多いのがストウブの鍋とのこと。渋いグレーがキッチンの色合いともマッチし、置きっぱなしでも画になる。武蔵小杉で購入したオリーブのカットボードも、たまに油を塗って大切に使っている。
「ストウブは蓋をして火にかけるだけで、だいたい何でも美味しく仕上がるところがいいですよね。最近のヒットは、新玉ねぎと鶏肉と山椒の煮込みです」
こだわりの調味料とマヌカハニーキッチン後ろの棚には、塩やスパイス、沖縄のピイヤーシ、ディップなどの調味料がスタンバイ。喉の調子が悪い時になめるというマヌカハニーも常備されている。
光量が調節できるライトもともと部屋に付いていたというシーリングライトは、光量の調製ができるタイプ。気分やシチュエーションによって雰囲気を変えることができる。電球に施されたステンドグラスのような模様もかわいらしい。
フィロデンドロン・クッカバラいちばんお気に入りの植物も聞いてみた。この舌を噛みそうな難しい名前がスラスラと出てくるところにも愛を感じる。部屋の植物は、練馬にある名店オザキフラワーパークでよく購入している。
「とくに南国の植物や多肉植物が好きです。一年中緑がいきいきしていて、生命力を感じるので。上手に育てるコツは、ちゃんと見てあげること。毎日観察していると、水が足りてないなとか太陽が足りてないなとか、自然にわかるんです」
自作のドライフラワーてっきり購入したのだろうと思っていたドライフラワーが自作と聞いて驚いた。植物好きが高じて、ドライフラワー教室にも通っているのだとか。通いはじめたばかりというが、センスのよさがにじみ出ている。
暮らしのアイデア
水やりをしやすい工夫約100種もあるという植物。水やりだけでも大変だ。そこで、温室にもなるという棚に並べたり、受け皿を下に置いたり、移動しなくてもそのままの状態で水やりができるようにしている。
キッチン道具は吊るして収納よく使う道具や野菜を吊るすことで、機能的にも使いやすいキッチンに。食器や調味料はカウンター後ろの棚の中へ収納し、カウンターの上にあるのはカットボードぐらい。必要なものにすぐ手が届き、作業スペースはすっきり広々、料理をしたくなるキッチンだ。
見せたくないものはクローゼットへ寝室スペースの壁は、一面クローゼット。見せたくないものはここに収納しているため、外に出ているのは数冊の本と、ところどころに飾られたオブジェぐらい。目に入るのは植物とお気に入りのものだけという理想の部屋づくりを実現している。
これからの暮らし
植物のために選んだというこの物件だが、結果的に人にも心地よい空間になっている。その証拠に、取材日も次々と友人たちが訪ねてきた。光あふれる植物園のような空間、空に近いバルコニー、こだわりのおいしい料理。兼康さんの人柄もあるのだろう、自然に人が集まってくるようだ。
「とても気に入っているので、しばらくはここに住むと思います。植物が多いから引っ越しも大変ですからね。暖かくなったらまず、手付かずのバルコニーを植物だらけにしようと計画中です。それと天井まで届く大きな木をドンと置きたいですね」
Photographed by Miho Fujiki