「シェアハウス」という言葉をよく聞くようになって数年。住まい方のひとつとして定着してきているようで、みんなの部屋への掲載も増えてきている。今回の取材先も、大学時代の仲間がシェアハウスをしているというお宅。中野富士見町駅から5分ほど、レトロなビルの4階~5階で暮らす4人を訪ねた。
名前:日野達真さん、神谷周作さん、笠井晶弘さん、増田巧さん、職業:建築系(日野さん)、マスコミ系(神谷さん)、商社(笠井さん)、印刷会社(増田さん)
場所:東京都中野区
面積:110㎡ 間取り: 4LDK+S
家賃:19万円
築年数:築37年
お気に入りの場所
4人が並んで座れるリビングリビングにはDIYしたという長いテーブルと長いベンチが置かれる。普段からここで過ごすことが多く、パソコンを持ってきて仕事をする人がいれば、隣でゲームをしている人もいたり、それぞれ自由に過ごしている。
「引っ越してきて間もない頃、東京に遊びに来たフランス人の女の子2人が友だちの紹介でここに泊まったんです。その子たちがたまたま建築を勉強している学生さんだったので、テーブルとベンチ作りを手伝ってもらいました(笑)」
新宿まで見渡せる屋上この物件、外見は賃貸物件がいくつか入るビルだが、室内はまるで2階建て一軒家のようなつくりになっている。そして屋上付き。
取材したこの日は快晴、絶好の屋上日和だ。新宿のビル群の手前に混沌とした住宅街が広がり、これぞ東京といった風景が360度見渡せる。
「アウトドアチェアを持って行って、食事をしたり、ビールを飲んだり、リビング的な感じで過ごします」
しんみりしたい時のベランダキッチンの横にはベランダもあり、裸足で上がれるように木の板が敷かれている。それほど幅が広くないため、ギュッと人との距離が近くなる空間。しんみり相談する時間にぴったりかもしれない。
「元気な時はリビング、落ち込んだ時はベランダにいます(笑)」
この部屋に決めた理由
どういった経緯でここで暮らすことになったのか。ところで4名が着ているTシャツ、そして部屋に貼られたステッカー、この「カレストハウストーキョー」の由来は?
「みんな名古屋の大学の出身で、当時『College st.』っていうイベントサークルを作っていたんです。サークルといっても、飲み会なし、イベントが終わったらすぐ帰宅するっていう、あまりイベントサークルらしくないサークルで(笑)。次第に規模も大きくなり、1000人規模のイベントも開催していました。
そのサークルで一緒だったメンバーがこうして一緒に住んでいます。当時から『カレッジストリート』を略して『カレスト』って呼んでいたので、このシェアハウスも『カレストハウス』になりました」
「カレストハウス」とプリントされたTシャツも作成。胸より少し低めの絶妙な位置が気になる
東京でシェアハウスをすることになった経緯は?
「卒業後は就職したり、大学院に行ったり、留学したり……すでに東京で働いているメンバーもいたりして。去年の春に残りのメンバーが東京に出てくることになり、いいタイミングなのでシェアハウスをしようと決めました」
「実際探してみると、こういった賃貸でシェア可能な物件が全然なくて。最終的に見つかったのが豊洲のタワーマンションとこの物件。タワーマンションはちょっとキャラ的に違うし、ここがいいということになりました。
見つけた時には法人との契約が決まりかけていたところで、早いもの勝ち。まだ東京配属が確定していないメンバーもいたんですが、勢いで契約しました」
残念なところ
雨漏りする「ポタポタ水が落ちてくるなと思ったら、上の階に水たまりができていてびっくりしました。上のベランダの排水が上手くいっていなかったみたいで(笑)」
インターホンが上の階にしか聞こえない「この部屋、以前は大家さんの住まいだったらしく、どうやら主に上の階を住居にしていたそうなんですよ」
お気に入りのアイテム
来客者のサイン入り、ファイヤーキングのベアブリック玄関を入るとドンっと迎えてくれるのが、ビームスで買ったという、ファイヤーキングのベアブリック 1000%。ボディには遊びに来た人に書いてもらっているというサインやメッセージが。書かれている言語もさまざまで、多くの人が遊びにきたり泊まりにきているのだそう。
この共通アイテムとは別に、メンバーそれぞれのお気に入りアイテムと部屋も紹介してもらった。
夫婦茶碗ならぬ友茶碗(日野さん)日野さんが勤める会社では、こうした器類なども扱っているという。この茶碗も会社の試作。安定感のある大きめの高台が特徴的だ。
「4人の茶碗にちょうといいかなと思って、持ち帰ってきました。愛媛でつくられる砥部焼の『くらわんか碗』で、地元の特産品が柄になっています。昔船乗りたちに酒食を販売していた小舟で使われていて、『くらわんか』と言いながら出していたのが名前の由来になっているようです」
日野さんの部屋はとことんシンプル!
「ちなみにフランスからの宿泊客があった時はここが客室になります。僕ですか? 誰かの部屋に潜り込んで寝ます(笑)」
誕生日にもらった神谷ラベルのお酒(神谷さん)お酒とセットのアイテムがなんとも特徴的。ラベルもよく見ると「菊門の粋」
メンバーの誕生日には、他のメンバーで考え、凝ったプレゼントを贈る。神谷さんのお気に入りアイテムも前回の誕生日にもらったもので、名前がラベルになった日本酒。
元は茶室だったという変わったつくりをした神谷さんの部屋。畳の一角には、釜を入れるための炉もあった。
最近始めたキーボード(笠井さん)
最近キーボードを始めたという笠井さん。本体を置く台はDIYしたもので、台の下の引き出しを手前に引くとキーボードが出てくる仕様だ。
「おじいちゃんになった時にピアノとか弾けるとかっこいいかなと思って。目標は、久石譲のSummerです」
メンバー1の几帳面だという笠井さんの部屋は、ひとつひとつのモノの置き方にもルールがあるのだとか。
DTM機材(増田さん)趣味が音楽制作という増田さんのお気に入りは、NativeInstrumentsなどのDTM機材一式。機材が置かれるキッチンとリビングの間のスペースにはプロジェクターもあり、正面の白い壁に映して映画も観ることができる。
いちばん広い増田さんの部屋。家具などは以前の住まいから持ってきたものがほとんどだそう。
暮らしのアイディア
カレストハウスのメンバーはとても仲がいい。誰かが話せば誰かが突っ込んだり、答えに困った時はさりげなく助け船が出たり、もうひとつの家族か兄弟のようにも見える。
しかし気心知れた仲であっても、一緒に暮らすとなるとルールなども必要。カレストハウスでの決まりや工夫などを尋ねてみた。
アプリでメンバーのスケジュールを共有「最初はホワイトボードに書いていたんですが、この方法に落ち着きました」
数人で一緒に暮らす場合、こうしてある程度お互いのスケジュールを共有しておくと安心だ。
靴は1人2段まで「共通の収納スペースである靴箱は、1人2段まで。ここに入りきらない分は自室に置くと決めています」
家賃は部屋の広さに合わせる「それぞれの家賃は、部屋の面積をポイントにして広さに合わせた金額を割り出しました」
きっちり4等分にしてしまいそうだが、これなら後から不満も出ない。
これからの暮らし
「今は別々の会社に勤めていますが、ここを拠点にみんなで何か始めたいと思っています。今もカメラマンの友人が1人滞在しているんですが、興味深い人たちがカレストハウスに集まってきているんで、周りも巻き込んだら面白い事ができるんじゃないかと」(増田さん)
「みんなつくる事に関わる職に就いているので、モノをつくってそれがビジネスとしても成立するような事をやっていきたいですね。ただ、みんな建築をやってたら建築事務所とかつくるんでしょうけど、僕たちは職業もバラバラだし、そこの共通点を模索中です」(日野さん)
「職業も違えば、発想も違うので、そこは面白いんですけどね」(笠井さん)
絶賛模索中だというカレストハウス。取材してみて感じたのが4人のキャラクターの絶妙なバランス。暮らすことに関するチームワークはばっちりなので、きっと何を始めても上手くいく気がする。
「カレストハウス」の名で、何らかのプロジェクトが動き出す時もそう遠くないかもしれない。彼らの日々はインスタグラムでも覗けるのでチェックしてみよう。
Photographed by Kayoko Yamamoto