新宿から15分と利便性の高い街でありながら、閑静な雰囲気の漂う西荻窪駅周辺。個性的なお店が多く、雑誌などにも取り上げられるようになりました。
昔ながらの食料品店やオープンしたてのパン屋さんが並ぶ商店街を進むこと数分でたどり着いたのは、昭和44年に建った12階建マンション。
上層階の一室に住む小林祐太さん宅を訪れると、「掃除が終わってつい、呑みはじめちゃいました」と、缶ビール片手に笑顔でドアを開けてくれました。
勤めていた不動産会社のプロジェクトで自ら設計したリノベーションマンションを気に入り、そのまま購入して住んでいるとか。
名前:小林祐太さん職業:不動産会社コスモスイニシア勤務・リノベーション設計担当
場所:東京都杉並区
面積:41.14㎡ ワンルーム
物件価格:3,000万円弱(月々の支払いは管理費込みで10万程度)
築年数:築49年
間取り図(クリックで拡大)
お気に入りの場所
眺望バツグンのベランダ休日は、ベランダでビールを飲んだり、本を読むという小林さん。取材チームが訪れる直前までも、ベランダに置いたヘリノックスのチェアに腰掛けて和んでいたとか。
都市計画が施行されている西荻窪周辺には背の高い建物が少なく、施工前に建てられたこのマンションのベランダからは、街と空を余すことなく見渡せます。
キッチンに立つ彼女と会話するソファキッチンを望む向きで配置されたソファも、小林さんのお気に入り。
「僕の彼女は料理好きで、よく手料理をふるまってくれます。彼女が料理している間、僕はソファに座り、他愛のない会話をするんですけど、ゆるやかに同じ空間にいる感じがとても好きですね」
キッチンとリビングスペースの間にしきりを設けないことで、コミュニケーションが生まれるんですね。
月明かりのような照明が照らすベッドサイドこの部屋に引っ越す際に新しく買ったダブルベッドの上には、DIY材料やパーツをあつかうTOOL BOXの「ボールライト」(5,800円税別)が吊るされています。
部屋の電球はすべて暖色系をセレクト。ぼんやりとしたあかりが部屋を照らす様子について「月明かりのようにやさしいんです」と小林さん。
この部屋に決めた理由
「南向きで日当たりがいいことです!」と小林さん。
太陽をさえぎる障害物が一切なく、上層階の部屋は外からのぞかれる心配もないため、カーテンはつけないで太陽光を部屋いっぱいに取り込んでいます。洗濯物は部屋干しでも十分に乾くそう。
勤務先の不動産会社・コスモスイニシアで担当したこの部屋を、自分自身で購入することになった理由は……? 詳しくは「リノベストーリー」で!
残念なところ
洗面台とキッチンがせまめリノベ中、洗面台とクローゼットの間にあるコンクリートブロックを壊して、洗面スペースを広げようと計画していた小林さん。
しかし水まわりの工事についてマンションの管理組合と折り合いがつかず、限られたスペースで洗面所を設計することになりました。
「マンションを買う前に、管理組合にリノベについて何かルールがないか聞いておくといいですよ!
あと、料理好きの彼女のために、キッチンがもっと広かったらよかったです……」
自分で設計したテレビ台に、テレビが入らなかった小林さんが設計して、知り合いの工務店に施工してもらった本棚が壁一面に立て付けられています。もともと雑誌好きで、本棚をつくることはリノベの必須条件でした。
ちょうど知り合いからテレビを譲り受ける予定があったそうで、本棚の一角をテレビ台にしようと考えたのですが……
「届いたテレビの幅が想像以上に厚くて、設計した棚に収まりきらなかったんです。こればかりは本当に残念です……」
お気に入りのアイテム
つい触ってしまうキッチンのタイルキッチンには、TOOL BOXの「古窯70角タイル」を貼りました。
素焼きのような質感で、1枚1枚ムラがある愛らしさがお気に入りだといいます。
「なんとも言えない味わいなんです! タイルって細長いものやボーダーのものがよくありますが、このタイルは正方形で、優等生じゃない感じがかわいらしくて……。よく掃除してピカピカにしていますね」
元・漆喰の壁をディスプレイ用トレイに友人へのプレゼントを買うために立ち寄った浅草橋のアンティークショップ・白日(はくじつ)で、偶然見つけた漆喰の壁の破片。
ひとめ惚れして持ち帰り、小物トレイとして活用しています。
もともとは頑丈だった壁が、角が取れてやわらかなフォルムのトレイへ変身。2,500円とお手頃価格だったそうです。
オーダーメイドの酒器以前、行きつけのバーで日替わり店長をしていたガラス作家・飯田桜子さんから購入したもの。
日本酒を注ぐと、ガラスに閉じ込められた箔が星のようにきらめきます。
世界一周を共にしたバックパック小林さんは学生時代に、アジアやインド、ヨーロッパ、中東など世界中を放浪したそう。当時愛用していたのが、ソロツーリストの45Lバックパック。
チャックにロックをかけやすいところや、旅先で目立つ色だったことが、購入の決め手だそうです。
「鍵の暗証番号は、今でも覚えてますね!」と小林さん。
暮らしのアイデア
オンとオフの空間をゆるやかにつなげる小林さんの部屋は41㎡ほどと限られた広さですが、オンとオフがうまく棲み分けられていて、空間を広々見せる工夫もされています。
ベランダ側はベッドやソファなどのリラックススペース。家の中央に、食事や作業をするダイニングテーブルを置きました。
作業スペースを有孔ボードで囲うことで、圧迫感を軽減しつつ、オンとオフの空間をゆるやかに分けています。
「部屋として完全に分けるのではなく、家具の配置でオンとオフを区切りました。
例えば彼女が寝ていて、僕が横で作業をしているとか、別々のことをしていても気配が感じられて居心地がいいです」
DIYできるものは、暮らしに合わせてDIYする「ダイニングテーブルは、リノベで余った材料と、TOOL BOXの金具でDIYしました。1日くらいでできたと思います」
「まだ木材が余っているので、靴箱の段数を増やしたり、バルコニーに花壇をつくったりしたいな」
これからの暮らし
「当面の目標は、ベランダに元からついていたプランターで植物を育てること。パクチーが大好きなので(笑)」
また、この物件の“ゆるやかなしきりのある住空間”というコンセプトは、小林さんにとって実験的だからこそ、新しい発見をしていきたいと話します。
「家具の配置で生活がどんな風に変わるかとか、家具レイアウトも照明の位置も、すでにいろいろ変えてみています。余白を残したので、自分にとって一番いい配置を探る余地がありますね」
仕事が変わったり、家族が増えたり、そんな人生のフェーズの変化に合わせて、部屋もかたちを変えていくのでしょう。
“実験暮らし”がどんな発明を生み出すか、今から楽しみ……!
Photographed by Norihito Yamauchi
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