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記事 7件
  • <菊地成孔の日記 令和3年1月28日 午後3時記す>

    2021-01-28 19:00  
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     雨である。雨であるだけで素晴らしいのに、雪と混じりつつある。こういうのを淡雪という。重ねて、素晴らしい。淡雪を見ながら日記を書く。明治時代の文豪にでもなった気分である。
     
     大体、10時から11時の間に起床。という、微妙な昼型が定着しつつある。これだと3時に眠くなるので、「真夜中」という時間も楽しめる。先日、DOMMUNEに長時間出て、終わり、一人で外に出た。
     
     僕は渋谷という街が元々苦手だった。やっとここに来て、「少し苦手ではなくなるかな」と思ったのは、テレビなどで盛んに見る、「渋谷の再開発」の様が、とても気に入ったからである。宮下パークには行ってみたい。寿司仲間の間で噂の寿司屋が出ているという情報も入手した。僕は何十年かぶりで、渋谷にワクワクした。それは恋に似ている。恋に似てる何か。
     
     しかし、DOMMUNEがあるパルコ周辺は、その区域の(今の所)外である。だが僕は、外に出た瞬間、踊り出したくなる程舞い上がった。
     
     誰もいなかったからである。
     
     それは映画のセットのようだった。端的に懐かしい。これは、昭和の渋谷だ。60年代、映画の大手5社には全て「日活銀座」「東宝銀座」「大映銀座」といった、屋外型セットがあった、チネチッタにあったヴェネト通りを、フェリーニは「実際のヴェネト通りよりも、私にはセットの方がリアリティがある」と言った。
     
     コンビニがなく、公衆電話がたくさんあり、歩きタバコが吸い放題で、終電を過ぎると、ほとんど誰もいなくなり、やっている店は大通りにはない。そんな光景が、コロナによっていきなり現出した。
     
     それまで7時間以上パルコに閉じこもっていたので、エレヴェーターのドアが開いた時には、声に出して「うわああああああああ」と漏れてしまった。
     
     30分ほどタバコを吸いながら歩き回り(一人も行きあたらなかった)、色々なことを思い出した。僕が通った音楽学校は池尻大橋にあった。僕が教鞭を執っていた音楽学校は渋谷にあった。様々な人と、渋谷を歩いた。常に居心地の悪さを感じながら、胸がときめいていた。
     
     コロナが僕に与えたものは、概ね全て楽しいものだった。しかし、もし、真綿で首を締められるような、誰にでも共感してもらえるであろう閉塞感が、ネガティヴなものとして僕の中に堆積しているとしたら、コロナはこの一瞬を持って、それを全て精算したと言えるだろう。僕には、空気が綺麗に見えた。
     

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  • <菊地成孔の日記 令和3年1月25日 午後1時記す>

    2021-01-25 18:00  
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      ソフトランディングの形で昼型(大体、正午の1時間前に起床、就寝が深夜5時)に定着してきた。とは言え朝型のが絶対に良い。モーニングが食えるし、深夜2時に眠剤なしで眠くなるのは、なにか、刑務所から出て、娑婆に出たような気分である。経験はないが(面会の経験なら山ほどある)。
     
     「次の東京オリンピックが来てしまう前に」「五十年後のアルバート・アイラー」が刊行された。どちらも本当に愛着のある本だ。またしても売れないだろう。今は「生きるのがこんなに辛いのだが、頑張って生きる」という貧弱極まりないテーマで1冊塗りつぶしている本が共感を呼び、とても為になる経営学や生き方やメンタルの守り方などが書いてある本しか売れない。1965年の出版業界に戻りたいとは言わない、2001年の出版業界にも。今が一番良い。今が酷いなら、酷い今が一番良い。
     

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  • <菊地成孔の日記 令和3年1月19日 午後5時記す>

    2021-01-19 21:00  
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      朝型はだんだんと昼型に近ずいている。とまれ、今日は6時半に起床した。人間ドックに行くからである。人間ドッグ(発音の話ではない。いや、発音の話でもあるのだが、「人間犬」だと思っていた)だと勘違いしていたのは遠い遠い昔ではない。しかも、普通の、なんの変哲も無いホットドッグ(パンとソーセージ)を想像しながら「人間ドッグ」だと長年思い込んでいたのだからイマージュとは不思議だ(かなり分かりずらいだろうが、普通のホットドックはホットドッグで、人間ドッグもイメージの中ではホットドッグなのだった)。
     
     もうこの歳になると、何が出てきてもおかしくない。特に今年は、喫煙習慣が戻ってから初のドックであるからして、地雷を抱えている脳も、さほど弱くもないと思っている心臓も、万年花粉症で腫れている喉や鼻に、タバコの甚大な影響によって、あなたに大変な健康被害を起こさせるかもしれないのである。
     

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  • <菊地成孔の日記 令和3年1月14日 午前10時記す>

    2021-01-14 17:00  
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     まだ朝型は続いている。以前、半年ほど朝型だった時は、緊急事態宣言の前夜からだった。緊急事態宣言が出ると朝型になるのは、単純にライブがなくなるからである。ライブがなくなると、僕の仕事でもっとも深い時間のレギュラーはペン大の一番遅いクラス(~22:00)だが、今月はペン大の授業もないので、食事して入浴して運動して、東宝の60年大を見て、2時に就寝すれば良い。9時に起きれば7時間睡眠である。2月からペン大も始まる予定なので、最短でも今月いっぱい続くだろう。
     
     朝は股関節が一番硬くなっている。厳密には左の股関節だ。事務所位のベランダに出て、手すりに手をかけ、姿勢を正してから、体操のV字開脚、もしくはクラシックバレエのバーレッスンのように、左足のかかとを、ゆっくり上げて、手すりにフックさせ、全体呼吸を繰り返す。全身に気が流れた感覚と、朝の陽光、街のノイズ。流動しながら停止した時間。幸福の定義は

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  • <菊地成孔の日記 令和3年1月10日 午後2時記す>

    2021-01-10 20:00  
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      あれから、一応、とするが朝型が続いている。事務所は南向きで壁面いっぱいがガラスなので、午前9時でも夏のように暑い。人生の友である完全遮光カーテンは黒く分厚く、触ると「アチ」というほど熱を持っている。ついこの間まで夜間に練習やラジオデイズの録音に行くのに全身にホカロンを貼っていたのが病的に思える。
     
     今日もオージーブレイクファストを食べに同じカフェにゆく。メニューも変わらず。ただ、カフェオレのレ(あるいはカフェラテの「ラテ」)をアーモンドミルクに変えてみたら、少なくとも朝食で飲むには思ったよりもエグかった。コーヒーに混ぜるのは豆乳に限る。豆同士だからだろうか。
     
     ここはブックカフェも兼ねているので(事実上「スマホカフェ」「ノートブックPCカフェ」だが)、店内を歩き回っているとダンス・シアター・オヴ・ハーレムの写真集があったので吃驚して手に取る。僕はレオタードフェチだったが、だいぶ

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  • <菊地成孔の日記 令和3年1月8日 午前11時記す

    2021-01-08 16:00  
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      緊急事態宣言が発出もしくは発令されたので(僕はこの宣言に関して、法的にどういう意味で捉えるかが基準になるとはいえ、「発令」のが適正だと思うが、突如として「発出」が出回ったのは、世の混乱を表す兆候だと思うので、様子を見ようと思っている。因みに「発出」は造語でも新語でもないが)、どのぐらい続くかは分からねども、生活を朝型に変えたほうが色々と都合が良いので朝型に変えてみることにした。
     
     とまれ、57年間の人生のうち、50年間ぐらいは夜型だったので、朝型に帰ると言っても、ジャージをニットにするようにはいかない(ジャージをニットにするだけだって大変である)。これは偶然、というよりグルーヴの中から拾い出したもので、継続できるかどうかも分からない。

     昨日(1月7日)に、随分と久しぶりで20時間以上寝た。なぜかと言えば、その前の2日間が小忙しかったからである。通常の日務に、3月を予定しているオ

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  • <菊地成孔の日記 令和3年1月3日 午前5時記す

    2021-01-03 10:00  
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     改めましてあけましておめでとうございます。予定通り、60年代東宝映画ばかり観て過ごしています。何度も書いていますが、僕は60年代東宝ラインズのトップラインであろう「ゴジラ=戦記=特撮=円谷」ラインに全くインポテンツで、先日大文字さんのBSかなんかで「ゴジラ対モスラ(モスラ対ゴジラ?)」をやっていたので観てみましたが、やっぱりインポテンツでした。 
     しかし、こんなもん今更書くに値することかどうか、伊福部の音楽は本当に凄まじく、映画としてはピクリとも勃たない「モスラ対ゴジラ(ゴジラ対モスラ?」でさえ、20小節ぐらいのライトモティーフが流れると大いに興奮しましたし、本当に腰が抜けるほど驚いたのは、同じライトモティーフの繰り返し使用の回数が、興奮してカウントが止まるまで、だとしても30回以上で、それでも全然飽きない事でした。世界ライトモティーフ史上最多でしょう。どんだけの強度かよ。と慄然としま

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