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ビュロ菊だより 第十九号 「菊地成孔の一週間」
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ビュロ菊だより 第十九号 「菊地成孔の一週間」

2013-02-26 09:00
  • 9

菊地成孔の一週間


2月18日(月曜)
 

 生活時間帯はすっかり元に戻ってしまい(僅か2ヶ月天下だった)、むしろパリ行きに丁度いいやという、ヤケクソをほざくも唇寒し(前回参照)といった態なのだが、まあデスクワークが増えるとこうなる。3Sは1Sになってしまっており(整体のみ)、体重が再び増加中、というより、インナー、アウター共に筋肉が緩んで来ているが仕方が無い。

 ことあるごとに「前回参照」と書いてあるが、そんなもん読みながら参照出来る機能がある訳でもなし、誰もすぐには参照しない事はわかっていながらの事だからして、改めてもう一度書くが、通常営業に加えて

1)HOT HOUSE恵比寿の準備

2)けもののレコーディング準備

3)パリ公演の準備

 という結構な大物が2週間のあいだにクラスタリングするというヤバい週間で、この日もその対応に明け暮れていた。

 (因みに、通常営業の軽減策としてペン大は今週1日だけ、美學校はなしにしてもらっているのだが、10時間削れる訳ではない。というか、時間効率の仕事ではない――その口で言うか前回参照――とはいえ、一日中部屋にいる。仕事で自宅カンズメは楽しき哉ではあるのだが、伊勢丹に行けないのが辛い。その飢餓感のせいかどうか、この日はパリ公演用のテキスト作りに比重がかかった。
 

 パリ公演は、エルブリ閉店&エリザベステーラー追悼、つまり「デギュスタシオン・ア・ジャズ」と「南米のエリザベステーラー」という事で、この2枚のソロアルバムのトラックをパラ(ミックス前の別々の状態)で持ち込み、それをリアルタイムでプレイ&エディットしながら再構築する。というソロパフォーマンスをする事にした(「南米~」の全トラックのうちのバンドネオンの演奏と「恋の面影」の二人のヴォーカルはパリで録音された物で、それらのトラックは明らかにパリの音がしているのだが、そのスタジオはもう無い)。

  なのでせっかくだからこの両作の解説でありながら、そのまま現代詩であるようなテキストを書き下ろして、それを録音してCD-Rに焼き、ひとつの素材としてミックスする事にしたのである。

 書くこと自体にはさほど時間を要しなかったのだが(20分程で書いた)、これを仏語訳し、誰かに朗読させ、録音する。という具体的な作業の段取りも総てやらないといけない。

 という訳で、昨年小泉今日子さんの「大人の唄」でフランス語訳をして下さった「誰がディジーのトランペットをひん曲げたんだ」の翻訳でおなじみ、「粋な夜電波」にも御出演頂いた事もある鈴木孝弥さんに「あけましておめでとうございます」というタイトルで、この件を説明するメールを出す(結果こちらの方がテキスト書きよりも時間がかかった)。

 他にもあれこれ進めていると、あっという間に夜が来て、何か癖になってしまったデニーズ中央公園前店のビーフシチューを石窯パンで。あとガトーショコラ。ショコラは頂き物のストックがまだあるというのに注文してしまう。ビーフシチューとチョコレートは合うのである。と、これは若干だが、スノッブな話だ。

 ビフテキやハンバーグとチョコレートは合わないが、ビーフシチューとチョコレートは合う。自分をスノビスト扱いして喜んだり怒ったりする人々が未だいるが、この最終段落を読む前にこの点に関するスノビズムを指摘した人がいるとするならば、自分に対するウインクぐらいにはなると言えるだろう。
 

2月19日(火曜)
 

 昨日と一転してこの日は用事が多い。先ずは当連載の中の憩いと言われているUOMO用の試写に行く。今回は「リンカーン」である。ワーナーではなく六本木のフォックス試写室である。ここは旧六本木ピットインの近くで、バトゥール(突撃)という優れたビストロカフェの斜向い奥にある。

 
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