アメリカのインディプロレスの“現在”を伝える連載! アメリカインディープロレス専門通販「フリーバーズ」(https://store.shopping.yahoo.co.jp/freebirds)を営む中山貴博氏が知られざるエピソードを紹介していきます! 今回のテーマは怪物フランケンシュタインのYoutubeです



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カナダ騎馬警察隊はフランケンシュタインの怪物になっていた。

1994年3月20日、ニューヨークのプロレスの殿堂マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)では、プロレスの祭典「レッスルマニア 10」が開催されていた。大会の中盤、第57代王者チームとして、WWE(WWF)タッグ王座の防衛戦を行なっていたのは、カナダ騎馬警察隊をモチーフにしたキャラだったザ・ケベッカーズ(ジャック&ピエール)。

時を経て2019年4月6日、新日本プロレスとROHによる合同興行「G1スーパーカード」が、「レッスルマニア 35」の前日に、MSGで開催された。94年のあの日、タッグ王者ザ・ケベッカーズのピエールとしてMSGのリングに上がった男が、再びタッグ王者として帰ってきた。年齢は51歳になっていた。対戦相手やパートナーとは一回り以上も離れている、いわゆる中年男だ。しかし、その男はその日一番凝った入場シーンで観客の度肝を抜き、また試合中、リング上からパワーボムで場外へ投げられたときには「He's Not Human! (彼は人間じゃない!)」と、その日一番の悲鳴にも似た声援が起こった。

WWFのリングでは騎馬警察隊に扮していた男は四半世紀の時を経て、怪物フランケンシュタインをモチーフとするレスラーに変身していた。怪物の名はピエール・カール・オーレットことPCO。「彼は人間じゃない!」はPCOを称賛する言葉だ。

PCOがオーストリアの巨漢選手ウォルターと戦い、プロレス史に残るような復活劇を遂げたのは、昨年のことだった(『SNSで狂い咲く50歳プロレスラーの遅咲き人生』https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1601542

インディーシーンで引く手あまたに活躍していたPCOに目をつけたのがROHだ。ヤングバックスやCodyらがAEW設立のため抜けることになり、選手層が手薄になっていたが、51歳の中年男はAEW勢が抜けた穴を埋める主要人物の一人として活躍……いや、穴を埋めるではなく、この怪物フランケンシュタインは穴から掘り起こされたと言っていいだろう。

PCOが伝説のモンスターに変身した経緯は、デストロという男との出会いにある。
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