プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回はプロレス大賞2025を語ります


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小佐野さんも選考委員を務めた2025年の東京スポーツ新聞社制定のプロレス大賞ですが、上谷沙弥選手が女性レスラー初のMVPを受賞したことが大きなニュースになりました。女性初の総理大臣が誕生した時代の流れもあり、ジェンダーレスの風潮の中で、すんなり決まったという印象を受けるんですが、実際の選考会の現場はどうだったんですか?

小佐野 いや、すんなりは決まってないですよ。結局、各賞を発表したときも票数しか表に出てこないから、1回目の投票ですんなりと上谷に決まったように見えちゃう。でも、投票前に現場では議論を交わしてるんだよね。

――そこの選考過程が目に見えれば、エンターテインメントとしても面白いですね。

小佐野 そこはどうしても誌面に限りがあるからね。現場ではそれぞれの委員の意見も聞きながら進めていく。たとえば今回のMVPの投票結果だけでいえば、竹下幸之介(KONOSUKE TAKESHITA)が0票になったけど、それは各選考委員の意見を聞いたうえでそういう結果になったということだよね。

――女性レスラーのMVP受賞の議論は白熱したんですか?

小佐野 そこまで激しく意見がぶつかり合ったわけではないよね。もっと紛糾しちゃうかな……と思ったけど。

――そこはけっこう意外ですねぇ。

小佐野 やっぱり今年の顔を選ぶうえで、上谷の大活躍はみんな意識するからね。ただ、女性を選んだらプロレス大賞のシステム自体が根底から変わる可能性が非常にあるんだよね。だって、女子レスラーがMVPに選ばれるなら、私は「女子プロレス大賞はいらない派」なんですよ。女子プロレス大賞という特別枠があるほうが差別じゃんって思う。それに女子プロレス大賞をこのまま残すなら、男子プロレス大賞も作らないといけないでしょ。

――いまは女優のことも「俳優」って呼んだり、性差をなくしていく時代ですね。

小佐野 上谷のMVP受賞以前からそういう葛藤があったわけ。今年はいままでのシステムでやって、結果的に上谷がMVPに選ばれた。来年からどうなるかは現時点ではわからない。もしかしたら賞の定義自体を考え直さなきゃいけないし、議論する必要があるかもしれないね。たとえば競技は違うけど、陸上で9秒台で走って世界新記録を出した女子選手がいました。その場合は男子を凌駕してるけど、女子の新記録として残るわけで。他のスポーツだって男子と女子に分かれている。

――プロレス大賞はそこのラインが曖昧だったわけですね。

小佐野 それぐらい女子レスラーがMVPを取るってことを誰も想定してなかったってことだよね。もともとは女子のプロレス大賞はなくて1995年に創設された。途中で「該当者なし」が続いたくらいだから、女子のMVPは現実的ではなかった。でも、いまはヘタしたら女子のほうが世間から注目されちゃっている現実があるよね。

――メディア展開や地上波露出は女子のほうが多かったりするし、そこが上谷選手の追い風になったところはありますよね。

小佐野 「話題性だけでMVPは違う」という意見も当然出るだろうけど、かつての真壁刀義はスイーツで一躍テレビで有名になったりしたけど、ちゃんとレスラーとして活動も加味するからね。

――そこのバランスが上谷選手は非常によかったわけですよね。

小佐野 たしかにバラエティとかいろんな番組に出るプロレスラーは多いけど、「こんな人がいるんだ」って認知されただけで終わっちゃう。彼女の場合、ちゃんと視聴者をプロレス会場に引っ張ってきたんだよね。上谷がブレイクした『鬼レンチャン』なんか見ても、あれはやっぱり応援したくなるよ。プロレスを知らない人が見ても「この子の試合を見てみようかな」ってなったはず。あと『ラヴィット!』にレギュラー出演していれば、知名度は高くなるよね。『ラヴィット!』のスタジオで試合をやったこともすごいんだけど、「女子プロレス23年ぶりの地上波生中継」という打ち出しはどうなんだろう。大会を生中継してるわけではないから。TBSがそういう宣伝するのは全然OKだけど、解釈としては地上波生中継だとは思ってない。

――そこはちゃんと線があるわけですね。

小佐野 それに23年前に生中継されたのはどの試合?って話だし。具体的なものは出てこないでしょ。

――23年前ってことは2002年ですけど、全然覚えてないですね。生中継ってあったかなあ……。

小佐野 全然思い当たらないんだよね。あとTBSでは51年ぶりの生中継ってやつも間違ってる。あれはおそらくTBSが国際プロレスを打ち切った年で計算してるんだろうけど、国際の生中継はもっと前にやめてるから。そのときの国際は日曜日の午後に放送してて生中継はやってないのよ。どこの媒体もTBSの宣伝通りに報じてるけど、そこはちゃんと調べてよって思っちゃったね。

――小佐野さんとしては上谷MVPは悩んだんですか?

小佐野 そりゃあ悩みますよ。「どの選考委員が誰に入れたか」ってことは公に言ってはいけないことになってるんですけど。選ばれる側の上谷も覚悟が必要だし、選ぶほうの我々も覚悟が必要ですよね。女性レスラー初のMVPはプレッシャーになるわけだし、それを背負わせた我々にも責任はあるわけだから。

――これが10年前20年前だったらもっと物議を醸したと思うんですけど、ジェンダーの理解が進んでるから、「認めん!」みたいな声は見かけないですね。

小佐野 ここで頑なに「女子は違うだろ!」っていう風潮もないし、ダントツで印象に残った男子レスラーがいなかったことも上谷MVPの後押しになったよね。

――ボクは竹下幸之介がMVP投票でゼロ票だったことが衝撃で。上谷選手と競ると思っていたので……。

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