-
ニャンとも言えない加藤一二三伝説 Vol.57
《本文》《本文》1.将棋まつりを振り返る本日は、若干季節外れの話題にはなるが、「将棋まつり」のことをまず振り返ってみたいと思う。将棋界のファンイベントのひとつに、日本将棋連盟と各地の百貨店が主催する「将棋まつり」という催しがある。たとえば、長野県長野市にある長野東急百貨店で開催される「長野東急将棋まつり」には長年出演してきた。催しは豪華な出演者による充実した内容でありながらも、基本的には入場無料となっている。そしていずれの会場に於いても、プロ棋士同士またはプロ棋士と愛棋家の著名人との席上対局ならびにプロ棋士による大盤解説、プロ棋士による指導対局、書籍サイン会などが主な内容となっている。「長野東急将棋まつり」は、会場は広かったが連日多くのファンが詰めかけ、将棋を楽しんだ。改めて思うが、来場者は皆さん紳士的な態度で、それでいながら楽しげな様子で、半日、あるいは一日ものあいだ百貨店におられたが、このイベントは将棋界にとってもありがたいことであった。私自身、席上対局(お好み対局とも呼ばれている) も度々指したが、今も鮮やかに記憶に残るのは、対大内延介九段戦、対丸田祐三九段戦、対木下浩一六段戦などである。丸田九段は長野市の出身で将棋まつりの責任者でもあった。1919年生まれの丸田九段は、95歳となる現在なお御健在であるが、丸田先生が引退後に席上対局を一局戦ったことがある。闘い終わって丸田九段が、「加藤さんは馬力があるねえ」と云われたことが思い出深い。 -
ニャンとも言えない加藤一二三伝説 Vol.56
《本文》1.コンピューター将棋将棋の催しでかなり続いた事柄に「高校将棋選手権戦」がある。東京都世田谷区にある昭和薬科大学は、授業に将棋を取り入れた。昭和41年頃から始まっている。その関連として「高校将棋大会」が始まった。授業は日本将棋連盟の棋士が担当し、大会にはいつも、指導のために私も出席した。全国大会の鹿児島県選のため鹿児島市に行ったこともある。あるとき、世田谷の大学での大会終了時に同大学のオーケストラが、プロテスタント賛美歌であり、カトリック教会でも唄われることの多い「また逢う日まで」を演奏したのには大変感心した。教育に将棋を結びつけたのは極めてユニークな試みであったとおもう。スイスでは高校で音楽、美術、チェスが選択科目になっているそうである。さて近頃頻繁に話題にのぼるのが、コンピューター将棋である。私はヒーローズ社の開発した将棋アプリ「将棋ウォーズ」を用いた芸能人の将棋大会の模様を、テレビのBS(衛星放送)にて放映するという企画に参加し、これまでに2度の収録に参加した。御覧になってくださった読者の皆様も多いこととおもう。番組での私の役目は、芸能人の「将棋ウォーズ」による対局を大盤解説することであった。 -
ニャンとも言えない加藤一二三伝説 Vol.55
【お詫びと感謝】日頃よりわたくしのブログマガジン「ニャンともいえない一二三伝説」を御購読いただいている皆様には、心より深く感謝申し上げます。本年4月より入院等の事由により、更新不定期となり、皆様には御心配ならびに御迷惑をおかけする事態となりましたこと、皆様には臥してお詫び申し上げます。その間、絶えず暖かい御声援をお送りくださり、首をながくして、更新を楽しみにお待ちくださいました皆様には、心より厚く御礼申し上げます。皆様の御期待に添えますよう、今後は定期配信をさせていただく所存です。どうか今後とも、かわらず御愛顧賜りますよう、心より御願い申し上げます。《本文》先日7月29日のこと、ふと思い立った私は、夕刻から千駄ヶ谷の将棋会館へと出掛けた。自宅のある三鷹から千駄ヶ谷までは電車で30分かからない距離である。その日はちょうど、第62期王座戦の羽生善治四冠への挑戦者を決める挑戦者決定戦を、丸山忠久九段と豊島将之七段が指していることがわかったので、私は迷わず主催の日本経済新聞社の控え室に行った。そしてかなりの時間、進行中の熱戦をその場に居合わせた若手棋士と研究した。“若手棋士”と書いたのは、盤をはさんで和やかに検討している相手を、そのときじつは知らなかったからである。名前を知らなくても私たちは息があって、手際よく答えを出して行った。程よいところで相手が立ち上がって「お茶を入れましょう」と気遣って云ってくれたところで私は遠慮して、控え室をあとにした。その後わかったことだが、このとき一緒に検討していたのは、佐々木勇気五段であった。調べてみれば、彼は16歳1ヶ月でのプロデビューを飾っているが、これは加藤、谷川、羽生、渡辺に次ぐ史上5番目の年少記録となっている。また彼はプロ入り後のインタビューで、「連勝記録を塗り替えたい」とも意欲的に語っている。ちなみに連勝記録の歴代1位は、神谷広志八段が1987年に樹立した28連勝の大記録である。さらに、この日の勝者である豊島六段と佐々木五段はともに、中学2年4月に奨励会の三段に昇段しているが、これは史上最速タイ記録とのことである。
1 / 20