19世紀後半に西洋で生まれたジャポニスムという現象、その中で最も影響力があったのが「葛飾北斎」だった。
米「LIFE」誌で“この1000年最も重要な功績を残した世界の100人”にも選ばれた「北斎」を切り口に西洋近代芸術を読み解く「北斎とジャポニスム」が、10月21日(土)から国立西洋美術館で開催される。
ジャポニスムとは?
背景にあるのは19世紀半ばの日本の開国。多くの西洋人が日本を訪れるようになり、日本のものを自国に持ち帰った。そのことで日本への関心が急激に高まり、また同じ頃に開かれた万国博覧会での日本の展示もそれに拍車をかける。そんな中、芸術家たちは目にした日本美術に衝撃を受け、その表現方法などをヒントに創作活動を発展させた。これがジャポニスムだ。
北斎作品以外にも多くの浮世絵が西洋へ持ち込まれたが、すべてを1人で網羅して描くことができた北斎は特別な存在だったようだ。
「北斎とジャポニスム」のカンケイについては、特設ページで詳しく説明している。鑑賞前にチェックしておこう。
西洋芸術家と北斎の共演が見どころ
「北斎とジャポニスム」では、国内外の美術館や個人コレクターが所蔵するモネ、ドガ、セザンヌ、ゴーガンをはじめ西洋芸術の名作約200点と、北斎の錦絵約30点、版本約60冊の計90点が一堂に会する(出品点数は予定、展示替あり)。
会場では、西洋作家の作品と、それに影響を与えたとみられる北斎の作品を比較し展示する予定。北斎が西洋に与えた影響を実感できる。というか、北斎すごい! と日本人としてちょっと誇らしくなることだろう。
展示内容の一部を見てみよう。
(右)葛飾北斎《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》天保元-2年(1830-31)頃 横大判錦絵 ミネアポリス美術館
Minneapolis Institute of Art, Bequest of Richard P. Gale 74.1.237 Photo: Minneapolis Institute of Art
(左)クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 油彩、カンヴァス 93×73.5cm 国立西洋美術館(松方コレクション)
北斎の描いた松の並木に呼応するモネのポプラの木。
左)葛飾北斎『北斎漫画』十一編(部分)刊年不詳 浦上蒼穹堂
(右)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1894年 パステル、紙(ボード裏打)66×47cm 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)
「踊り子の画家」と呼ばれたドガの研究心を刺激した『北斎漫画』の何げないポーズ。
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山》1886-87年 油彩、カンヴァス 79.3×92.3cm
フィリップス・コレクション、ワシントンD.C.The Phillips Collection, Washington, D. C.
葛飾北斎 《冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二》天保元-2年(1830-31)頃 横大判錦絵 オーストリア応用美術館、ウィーン MAK – Austrian Museum of Applied Arts / Contemporary Art, Vienna Photo: ©MAK / Georg Mayer
『冨嶽三十六景』の富士山を参考にセザンヌは南仏の山を描いた。
メアリー・カサット《青い肘掛け椅子に座る少女》1878年 油彩、カンヴァス 89.5×129.8cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1983.1.18 Courtesy National Gallery of Art, Washington
葛飾北斎『北斎漫画』初編(部分)文化11(1814)年 浦上蒼穹堂
『北斎漫画』が世界へ出るまではお行儀よく描かれた少女だったが、このとおり。
「北斎」を切り口にした日本“発”で世界“初”のジャポニスムの展示。国立西洋美術館が世界文化遺産に登録されてからまだ行っていないという人も、この機会にぜひ訪れることをおすすめする。
北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃会期:2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
会場:国立西洋美術館 [東京・上野公園]
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
http://www.nmwa.go.jp/
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(金、土曜日は午後8時。ただし 11/18は午後5時30分まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし1/8は開館)、12/28~1/1、1/9
[北斎とジャポニスム]