そんな中、都内に「サイクリスト(自転車乗り)にフォーカスした賃貸マンション」があるとの話を耳にしたROOMIE編集部。
それは聞き捨てならぬと、各々が自転車乗りでもあるスタッフ陣で取材へ伺うことになりました。
まるでサイクルショップのような佇まい
東西線、南砂町駅から徒歩15分ほど。葛西橋通り沿いに面した場所に位置する賃貸マンション「LUBRICANT(ルブリカント)」。
まず目を引くのは、まるでサイクルショップのような見た目の入り口。
誰でも自由に使える空気入れが置いてあるだけでなく、左右の大きなガラスディスプレイには、高級そうなピカピカのロードバイクが展示されています。
その佇まいに、「本当にここはマンションなのか……?」と面を食らっていると、本日のナビゲーターでもある長谷工不動産コンセプト開発部チーフの谷野さんが、我々を中へと招き入れてくれました。
谷野さん、本日はよろしくお願いします!
ルブリカントが一体どのような賃貸物件なのか、案内していただきましょう。
サイクリストたちが集まる空間に
さて、考えてみると、住む家を選ぶ条件は本当に人それぞれ。
駅近がいい人もいれば、コンビニの近さは譲れない人、お風呂とトイレは絶対に別、憧れた街に住めるならなんでもいいなど、ROOMIEに携わるなかで耳にしてきたこだわりは、まさに千差万別です。
それで言えば、このルブリカントは“自転車をもっと深く広く楽しめるようになりたい”という条件に応えるためのマンションになるでしょうか。
口でお話するよりも、まずはいろいろと見てもらった方が早いと思います。
そう話す谷野さんに導かれて取材陣が足を踏み入れたのは、1階の共有スペース。ここに入った瞬間、壁に並べられた約50種類ものメンテナンスツールに目を奪われました。
プロショップに置いてあるようなホイールのメンテナンスツールも設置されています。
ここは、入居者された方の共有メンテナンススペースになっています。この壁に揃ったツールは全て自由に使っていただいてOKなんですよ。
自転車を自分でメンテナンスしようとすると、これらのツールは全てでなくても購入する必要が出てきますが、ここに入居してくれるならそこの初期費用を抑えることができます。
そう、私も乗り始めてから気づいたのですが、スポーツサイクルと呼ばれる自転車は購入した後のメンテナンスが必須なんですよね。
周りに上級者がいない場合、用意するツールの選別や必要な知識を得ることに四苦八苦してしまうことも多いので、このサービスは大変ありがたく感じます。
でも、道具が揃っていたとしても自分で整備することが難しい初心者もいますよね。その場合は結局お店に持ち込まなければいけないのでしょうか?
ルブリカントには提携するサイクルショップのコンシェルジュがついているんです。そのコンシェルジュが所属するショップかSNSに『修理希望』の連絡を直接してもらえれば、別途工賃はかかりますが、ここにいたままメンテナンスを受けられます。
部品の交換が必要な場合はお店に自転車を一度持ち帰ってから交換した後、マンションに月2回まで無料で配送してくれるサービスもあるので、初心者の方でも安心していただけると思いますよ。
なんと、自分の手でいじりたい上級者とメンテナンスはプロに任せたい初心者、どちらも満足できる設備とサービスが揃っているとは……。
提供:長谷工不動産
建物裏のスペースに出てみると、自転車の洗車スペースが。水道の奥には車体が倒れないよう保持するフックも備えつけられています。賃貸で自転車を水洗いするのって難しいんですよね……。
まだまだ入り口ですが、サイクリストファーストな環境であることがひしひしと伝わってきます。
トレーニングも存分に!
そんなメンテナンスブースの背後には、最近人気の「Zwift(ズイフト)」をプレイできるトレーニングセットが3台分ズラリ。
ズイフトとは、サイクルトレーニングとビデオゲームが融合した今話題のアプリケーションのこと。モニターを見ながら後輪を専用のマシンに取りつけた自転車をペダリングすることで、バーチャル空間をサイクリングするような感覚でワークアウトを楽しむことができます。
せっかくなので体験させてもらうことに。
オンラインで世界中のサイクリストたちと繋がれるこのセットも、もちろん24時間無料で使用可能。
どうしても賃貸住宅だとローラーの回転音や振動を気にして躊躇しがちですが、ここなら気兼ねすることなく存分にプレイできるってわけですね。
2階に上がってみると
階段を登って、2階のコミュニティラウンジスペースへ。
1階のメンテナンス&トレーニングスペースと違い、シェアハウスのリビングのような、大きなモニターとソファが置かれたくつろげる空間です。
入居者の方達の憩いの場となっているこのスペース。コロナ前は、自転車のプロアスリートによる世界最大のロードレース「ツール・ド・フランス」の解説つき視聴会なども行われていたのだとか!
飾られているのは入居者に配られるルブリカントオリジナルのサイクルウェア
一般的なマンションの場合、共有スペースの有効活用ってどうしても難しいことが多いんです。でも自転車という共通の趣味を楽しむ方々が集うなら話は別だと思っていて。
いまは人が集まりにくい時期ですが、いずれはまたここで自転車の情報共有や雑談、メンテナンスやトレーニングの相談など、入居者の方たちが自然とコミュニケーションを取れるようになってくれたらと思います。
以前は、実際に外部のサイクルコミュニティを巻き込んださまざまな交流イベントをここで開催したり、メーカーのメンテナンスセミナーや試乗会などが開かれたりと、自転車好きからはどんどん認知される場所になってきているそうです。
ラウンジのお手洗いにはチェーンをモチーフにしたロゴが。
住む人目線でマンションの魅力を体験
共有スペースの充実ぶりを確認したところで、次は住まいとしての魅力を探るために、改めてマンション本来のエントランスからお邪魔してみます。
セキュリティドアの前では、自転車のチェーンとオイルのデザインが盛り込まれたルブリカントのロゴと、イベント時に使用するサイクルラックがお出迎え。
しかし、自転車のチェーンをモチーフにしたであろうロゴが随所で見られますが、これにはどういった意味が込められているんでしょうか?
建物名である「ルブリカント」は潤滑油という意味なんですが、それが関係しています。
自転車を前に進ませるチェーンとそれをスムーズにする潤滑油のように、ここがサイクリストコミュニティの助けになればと思ってロゴのモチーフに選びました。
よく見ると、LUBRICANTの「T」で、オイルの液だれを再現しているんです(笑)。
ドアを抜けた先にある突き当りの壁には、建物近辺のサイクルスポットや評判のパン屋さんなどが記されたサイクルマップが描かれていました。
個人的にサイクリングの締めには欠かせないと思っている、銭湯の位置もバッチリ押さえてある!
こうした細かいポイントも、住んでいてワクワクできる大切な要素のひとつ。細かいところまでサイクリストを意識していることが伝わってきますね。
マンション1F(全体)の間取り図 提供:長谷工不動産
とにかくサイクリストファーストな設計
見学させてもらうモデルルームにはエレベーターで移動することになりますが、ここでも驚きが。
自転車をそのまま搭載できるように、一般的なワンルームマンションのエレベーターではありえないほど奥行のあるつくりになっています。
まさか、自転車とそのまま一緒に乗れるなんて!
愛車を担いで階段を上った経験がある人なら、この感動はひとしおでしょう。
廊下も広く、建物内でもストレスなく自転車を運ぶことができるため、あっという間に見学用のモデルルームへ到着しましたよ。
気を使わない玄関~リビングへの移動
それでは自転車と一緒にモデルルームにお邪魔してみます。
部屋のドアが通常より大きめにできているので、後輪をあまり意識せずとも入室できました。
土間風にデザインされた塩ビシートの床材のおかげで雰囲気もばっちり
ドアを開けると、玄関からリビングまでが一直線。段差もないので自転車をスムーズに室内へと運び込むことが可能。
室内には、運び込んだ愛車を掛けるためのミノウラ製サイクルスタンドがデフォルトで設置されています。このスタンドはルブリカントによる特注モデルで、白色に塗られたポールとオリジナルステッカーは他では見られないデザインなのだとか。
壁材には、食器などにも使われている汚れにくいホーロー素材を使っています。マグネットもつくようになっているので、ヘルメットやウェアを掛けておくのもかんたんですよ。
自転車と一緒にくつろぐ部屋
提供:長谷工不動産
間取り自体は約25㎡のワンルームですが、南向きの大きな窓のおかげで開放感があり、あまり狭さは感じません。
このソファに座って自分の愛車をじっくり眺められるなら、晩酌も進みそう。明日洗車してあげようかな、なんて毎晩ニヤニヤしてしまいそうだ……。
収納もついていて、洗面台や、お風呂は普通のワンルームマンションと変わらないつくりになっているのが確認できます。
そして気になる家賃は※9万円台からの設定。広さだけ見れば家賃相場は少し高めですが、それと引き換えに提出されるメリットは、自転車好きにとってたまらないものになるでしょう。
※詳しくはルブリカントHPの空室情報のページをご覧ください。
もちろん出て良く時も超スムーズ!
選べる部屋の内装タイプ
ミラータイプに作られた隣のモデルルームも見せてもらうと、こちらは雰囲気もガラリと変わって、デザイナーズのような内装。
ヘリンボーン模様の床とインダストリアルな壁の組み合わせが、どこかリノベーションされた部屋のような雰囲気を醸しています。
こっちの部屋にはピストバイクやクラシックなフレームの自転車が似合いそう、なんて想像も膨らんできますね。
入居時に空きがあれば、内見をしたうえで部屋タイプを選べるそうなので、実際に見て比べるのがオススメ。
スカイツリーと東京湾に囲まれて
気軽に外へ出られる機会が少なくなっている昨今、ルブリカントでは屋上スペースを開放中とのことで、案内してもらいました。
ここはテレワークのお昼休みにランチを食べに来る入居者さんもいるとのこと。
スカイツリーと東京湾に囲まれた贅沢な眺めで、東京の下町から葛西臨海公園の方まで一望できます。入り口のマップにもあった荒川サイクリングロードもすぐ目の前。
ここから見える街を自分の自転車で縫うように探索できたら、さぞ爽快でしょうね。
川と海がつながる河口近く、楽しそうなお店も探せばたくさんありそうな江東区・江戸川区エリア。自転車を移動手段とする人にとってはなによりの好立地であることが、景色を見ていると伝わってきます。
「新型コロナで軒並み中止ですが、普段は葛西臨海公園の観覧車の夜景やディズニーランドの花火が見えますよ」と、谷野さん。うん、それって考えただけでも贅沢!
立地と自転車人気をキッカケに
取材が終わりにさしかかったころ、どうしても気になったルブリカントが誕生した経緯を聞いてみました。
実は、もともと普通のワンルームマンションを作る予定でこの土地を購入したのですが、一般的なマンションが近隣にも数多くある中で、ちょっと特徴のある物件を建てられないか、といった意見が会社で出たことがきっかけです。
そこで、この立地が持っている利点ってなんだろうと考えたときに、サイクリングスポットである荒川が近くて、ちょうど自転車通勤が浸透してきた時期だったこともあり、じゃあサイクリストに向けた物件にしてみようと決まりました。
なるほど、先ほど屋上で見せてもらったこの立地が、サイクリスト向けの物件が生まれる大きな理由のひとつだったんですね。
サイクリスト向けのマンションと言うからにはつくりだけではおもしろくないので、部屋だけでなく共有スペースなどにもきちんと意味を持たせたかったんです。そこに興味づけをして、本当の意味でサイクリストの方達が楽しめる空間を作るために、自転車業界の方々と協業、オープンイノベーションして今のようなかたちができました。
共有スペースを起点に、まず入居者の方々が混ざり、我々不動産会社も混ざり、自転車メーカーさんもそこに混ざる。そんな風に関わりをどんどん広げて行けたらいいよね、といった発想です。
確かにルブリカントに住んでいるだけで、自転車の魅力、知識、技術がどんどん吸収できる環境ができあがっていきますね。
不動産会社と入居者が直接繋がるための広告活動
普通の賃貸マンションだと、オーナー側の我々は、物件を建ててしまった後は何もすることがないんです。
あとは街の仲介不動産にお願いして入居者の方を呼んでもらう、というのがごく一般的な流れなのですが、ルブリカントではそうはいきません。
この物件を見に来る方全員が自転車に興味を持っているわけではありませんし、案内する仲介不動産の担当者に自転車の知識がない場合、この物件の利点が伝わらないこともあります。
自転車乗りからしたら理想のマンションが、それを抜きにした単純な賃料や立地、広さで判断されてしまうこともあるわけですね。それはあまり幸せになる人のいないマッチングだと感じます。
そうなんです! なので、作り手である我々が直接イベントを開いたり、告知活動を行ったりして、そこで興味を持ってくれたサイクリストの方達に、物件の魅力を知ってもらうためのダイレクトな宣伝活動をする必要があったんです。
その分かなりの手間はかかりますが、イベントを行えば確実な反響を感じられるだけでなく、趣味を通してどんどんコミュニティは広がっていくし、会社の宣伝にもなるので、いろいろ役に立つことは多いんですよ。
でも、なによりルブリカントの存在がサイクリストの方達に伝わっていくのが嬉しいんですよね。
趣味を通して理想の物件にたどり着く。言われてみればとてもシンプルな考えですが、これが今までになかった不動産紹介の仕方であり、探し方でもある。
そういえば、自分が住んでいる家をどんな会社が作ったかなんて、知ろうとしたことすら無かったかもしれません。
住む+α。ライフスタイルに寄り添った物件を目指して
最後にこれだけは、と谷野さん。
ここまでのお話だと、すでに自転車を楽しんでいる方向けだと思われてしまうかもしれませんが、これから始めたいと思っている方も大歓迎です。それをサポートできるのもルブリカントの強みですから。
内見の時にお話しできれば、初めは自転車をお貸しすることもできますし、自分にあった自転車選びの相談にも乗れますよ。
正直に言うなら、同じ広さのワンルームマンションより家賃相場は高めに感じましたが、その分得られる自転車の知識や築かれるコミュニティの魅力、利便性、独自の体験が間違いなくあると、谷野さんのお話を通して伝わってきました。
普通の賃貸マンションだと隣の部屋に住んでいる人と会話もしたことがない、なんてことも往々にしてありますが、共通の趣味という一本の軸が入ることで、そこに強い繋がりが生まれていくこともある。
家にいる時間が増えてきた分、自宅を拠点に趣味を全開で楽しめる暮らしがしたい! と考える人は増えていくはずです。ルブリカントはそんなニーズを住むことで叶えてくれる新しい賃貸住宅のかたちなのだと思います。
これからの物件選びの新しい可能性を感じる、なんとも新鮮な取材になりました。
LUBRICANT(ルブリカント)公式サイト
長谷工不動産 LIVWIZ
Photographed by You Noguchi
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