-
ツチヤの口車 第1378回 土屋賢二「第3回記者会見」
コメ0
週刊文春デジタル 4日前
本日はお集まりいただき、ありがとうございます。最初にわたしの紹介をさせていただきます。わたしは危機対処代行会社「サンドバッグ」を運営している多々木報大と申します。当テレビ会社の社長ではなく、その代理です。社長から全面的に委任を受けています。 えっ、本人じゃないといけない? 本人を出せという声が...
-
ツチヤの口車 第1377回 土屋賢二「話が進まない」
コメ0
週刊文春デジタル 2週間前
話がなかなか前へ進まない人がいる。その例を示す。★ 講師の七曲(ななまがり)です。今日お話しするのは魅力的な男についてです。こう言うと、魅力も金もないお前が語る資格があるのかと思う人もいるかもしれません。しかしその考えは間違いです。体重60キロの男が500キロのメスのワニについて語ることもできるし、...
-
ツチヤの口車 第1376回 土屋賢二「妻の本性」
コメ0
週刊文春デジタル 3週間前
自分はいったい何者なのか。認知症の妻に会うたびに根源的問いをつきつけられる。 妻はわたしを認識している。「つちやけんじだよ」と言うと、うなずき、食事の介助をしても素直に食べてくれる。しかし「お前の夫だよ。五十年前に結婚したんだよ」と言うと、激しく否定する。否定するにしても、なぜ激しく否定しなく...
-
ツチヤの口車 第1375回 土屋賢二「退職代行の時代」
コメ0
週刊文春デジタル 4週間前
退職代行会社に退職を代行してもらう時代になった。退職に限らず、風呂に入る、歯を抜く、手術を受ける、原稿を書く、反省するなど、ほとんどのことを代行してもらいたいものだ。 実際、会社の上司から「この三十ページの書類を五百部コピーしてくれ」と頼まれたら、断るのは難しい。せいぜい「そんなにたくさんです...
-
ツチヤの口車 第1374回 土屋賢二「うかつな男の正月」
コメ0
週刊文春デジタル 1ヶ月前
六十年前の正月、焦りに焦っていた。生まれて初めて東京で迎える正月だ。それまでは十二月のクリスマス前から成人式の後まで岡山に帰省していたが、この年は卒業論文を提出する年だ。一月中旬が締め切りで、一分遅れても受け付けてもらえない。 一行も文章を書いたことのない(作文は親に書いてもらっていた)有為の...
-
ツチヤの口車 第1373回 土屋賢二「新年の展望」
コメ0
週刊文春デジタル 1ヶ月前
新年にあたって、皆迄悠名氏に一年の展望を聞いた。――おめでとうございます「賀正! 挨拶はいらん。年賀状も出していない。単刀直入に頼む」――では早速うかがいますが、新年の……。「みなまで言うな。分かっとる。抱負だろ? 簡単だ。諦めの一言だ。失敗続きで、女性にフラれ、ボートも競馬もパチンコも宝くじも負け...
-
ツチヤの口車 第1372回 土屋賢二「三十年もつメガネ」
コメ0
週刊文春デジタル 1ヶ月前
メガネのつる(テンプルと言うらしい)が折れた。レンズと耳を連結する部分だ。なぜもう少し頑張ってくれないのか。わたしも若く見えるが八十歳だ。老い先短い。わたしの寿命が尽きるまでなぜ耐えられなかったのか。あとわずか三十年の辛抱じゃないか。 レンズが割れるとか、グシャッと潰れるとかならまだあきらめも...
-
ツチヤの口車 第1371回 土屋賢二「とんでもない回答者」
コメ0
週刊文春デジタル 1ヶ月前
【回答(1)】女性に結婚を申し込んで断られたとのこと、残念でした。「通りすがりの女性を見る目がイヤらしい」という理由ですから悔しいでしょう。当たっているだけに。それにしてもその女性があなたのいやらしさを見抜く眼力は驚きです。女性の九十八パーセントにしか見られません。 不当だと思うかもしれませんが、...
-
ツチヤの口車 第1370回 土屋賢二「誕生日の電話」
コメ0
週刊文春デジタル 2ヶ月前
歳をとると電話が怖くなる。だれかが死んだ、支払いが残っている、還付金が下りた、墓地を買えなどロクな電話がない。 だが今日は特別だ。わたしの誕生日だ。友人からお祝いの連絡があるはずだ。だが待てど暮らせど一向にかかってこない。 たぶん理由は、友人がいないからだろう。 どいつもこいつも礼儀知らずだと...
-
ツチヤの口車 第1369回 土屋賢二「身勝手な相談者2」
コメ0
週刊文春デジタル 2ヶ月前
事例(3) 誇り高い男になりたい。古来、日本には武士、ヨーロッパには騎士、少し違いますが、古代ギリシアには英雄が、誇り高い男として尊敬を集めていました。いまはどうでしょうか。大谷翔平選手にしか誇りをもつことができていません。 わたしは誇りをもとうにも、自慢できるところがなく、「ゴミ」「カス」と呼ば...
-
ツチヤの口車 第1368回 土屋賢二「身勝手な相談者」
コメ0
週刊文春デジタル 2ヶ月前
人生相談などで質問者に問題があることがある。事例(1) 夫のDVに苦しんでいます。命の危険さえ感じています。いまも夫は包丁を手にもっています。返り血を浴びないようにエプロンまでしています。家具や絨毯についた血を洗うためか、手は洗剤で泡だらけです。キッチンにいるから疑われまいとタカをくくって見せてい...
-
ツチヤの口車 第1367回 土屋賢二「妻の機嫌」
コメ0
週刊文春デジタル 2ヶ月前
妻が認知症で介護棟に移ってから四カ月になる。症状には波があり、一時、食事を拒否するようになった。施設の人から「ご主人の手からだったら食べるかもしれません」と言われて食事の介助をした。「食べる」ことは(1)口を開ける(2)噛む(3)呑み込む、の三段階からなる大仕事だ。その一つ一つを妻が成し遂げるのを...
-
ツチヤの口車 第1366回 土屋賢二「老後の楽しみ」
コメ0
週刊文春デジタル 3ヶ月前
歳を取ったとき楽しい毎日を過ごすために趣味をもて、と無責任きわまるアドバイスをする人がいる。わたしもその一人だった。 そもそもわたしは「楽しい」とは何かということも分かったためしがない。子どもが芋ほりや潮干狩りをした後感想を求められると「楽しかった」と言うし、わたしもそう言ったと思うが、苦痛で...
-
ツチヤの口車 第1365回 土屋賢二「元に戻らない」
コメ0
週刊文春デジタル 3ヶ月前
教え子から電話があった。「老人ホームに入ってらっしゃるんですか?」「そうなんだ。うらやましいか?」「いいえ、うらやましくありません」「うらやましがっても入居には年齢制限がある。七十歳になるのを待つことだ。君も死ななければ七十歳にはなれる」「入居したくないんです」「じゃ聞くが、自分は歳をとると思...
-
ツチヤの口車 第1364回 土屋賢二「老人の身の守り方」
コメ0
週刊文春デジタル 3ヶ月前
最近、高齢者への風当りが強くなっている。 物価が上がっているのに年金増額を叫ぶ声は聞こえない。逆に、高齢者の健康保険の自己負担率の引き上げが検討され、人材不足なのに老人を雇わず、その上、収入があれば年金を打ち切れという声さえある。死ぬまで払うと約束した年金を払わないなら詐欺ではないか。働く老人...
-
ツチヤの口車 第1363回 土屋賢二「熱が出た」
コメ0
週刊文春デジタル 3ヶ月前
わたしの文章は簡単に書いているように思われている。テレビでも見ながら片手にカップ麺をもってチャッチャッと書いていると思っている人が多いのではなかろうか。というのも、そうとしか思えないぐらい文章が幼稚だからだ。 しかし文才がないからこそ、大作家の何百倍も苦しんで書いているのだ。その事実をもっと考...
-
ツチヤの口車 第1362回 土屋賢二「ノーと言えない男」
コメ0
週刊文春デジタル 4ヶ月前
結婚に魅力を感じない女性が増えている。少子化の日本には問題だ。結婚評論家の曽野徹氏に聞いた。――結婚すると自由がなくなるからイヤだという意見が多いのですが。「その通り。事実、自由は貴重だ。歴史上、命をかけて自由を守った人もいた。だから結婚はもちろん、ルールで自由を奪うスポーツやゲームもやめ、道路...
-
ツチヤの口車 第1361回 土屋賢二「妻にとってわたしは何なのか」
コメ0
週刊文春デジタル 4ヶ月前
自分が何者なのか、どんな人間なのかは、自分の思い込みでは決まらない。「おれはナポレオンだ」と思い込んでも、ナポレオンになるわけではない。わたしが「イケメンであることしか取り柄がない男だ」と強く思い込んでも、まわりが認めようとしない。 自分が何者かを決めるのは、周囲の意見の方が多い。妻がわたしを...
-
ツチヤの口車 第1360回 土屋賢二「最も笑えた本、最も苦しんだ本、最も胸躍った本」
コメ0
週刊文春デジタル 4ヶ月前
未成年のSNS利用を制限する動きがあるらしい。判断力がないときは悪影響を受けるからだ。大賛成だ。判断力が未発達の四十歳未満と判断力の衰えた四十歳以上にも禁止すべきだ。 スマホでなく本を読んでいたころ、わたしが読んだ本のベストを紹介しよう。【最も笑えた本】わたしは娯楽一本槍だった。本に求めるのは面白...
-
ツチヤの口車 第1359回 土屋賢二「介護と女心」
コメ0
週刊文春デジタル 4ヶ月前
高齢化社会が到来した。老人が増えていることが日々実感される。老人しか見ない日さえある。老人ホームにいるためかもしれない。 今日も妻のいる介護棟に行った。老人ホームの一般棟に夫婦で入居していたが、妻の認知症が進んだのだ。 それまで一回の食事に二時間はかかるようになった。噛むにも呑み込むにも時間が...
-
ツチヤの口車 第1358回 土屋賢二「どう見られてきたか」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
わたしはどう見られてきたのか振り返ってみた。 蚊がどう見ているかは容易に想像がつく。「こいつの血は、色々検査に引っかかる低品質の血だが、ほかに隙のある人間が見当たらない。今はこれで我慢だ」 カラスにも大学近くで何度か頭を蹴られた。「危害を加えるようには見えないが、間違った考えをもたないよう、念...
-
ツチヤの口車 第1357回 土屋賢二「台風の説明が分からない」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
過去最強クラスの台風十号は、なかなか進路が定まらなかった。最強という部分を除けば、グズグズ進路が定まらないのは若いとき(から現在に至るまで)のわたしみたいだった。 進路が分からなかっただけではない。テレビでの説明がまた分からなかった。 説明というものは、不可解な現象を理解できるようにするものだ...
-
ツチヤの口車 第1356回 土屋賢二「岡山人の意地」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
十八歳で上京したとき、東京の情報はほとんどなかった。『東京だョおっ母さん』という歌謡曲で橋が二十本かかった川があることを知った程度だった。 店で「これなんぼでえ」と聞いても理解されず、「はよとらげんとめげてしまうが(早く片づけないと壊れてしまう)」と言えば不審そうな顔をされ、そのたびにバカにさ...
-
ツチヤの口車 第1355回 土屋賢二「老境の理想と現実」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
老境に入ると、心穏やかに過ごす平穏な毎日が待っている。下手をすると、そのまま成仏するかもしれない。そう思っていたが、とんでもない間違いだった。平穏どころか、心は千々に乱れ、動揺の連続だった。 まずパリオリンピックだ。日本の選手が勝つと、自分のことのように喜び、さまざまな思いが去来した。これまで...
-
ツチヤの口車 第1354回 土屋賢二「計画通りにいかない」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
旅行するとき、詳細な計画を作る人がいる。分刻みで計画を立てる人もいる。たとえばこうだ。 ○○寺に着いたら二十四分間拝観、その後すぐに△△行きのバスに乗って××の滝へ。滝を背景にして写真を撮る。十二分後、評判の蕎麦屋でざる蕎麦を食べるため、□□行きのバスに乗る。蕎麦を食べた後は徒歩十七分で温泉宿に着く。...
-
ツチヤの口車 第1353回 土屋賢二「勉強禁止の喫茶店」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
少し遠出して見つけた喫茶店でくつろいでいると、驚いたことに、勉強を始めた青年にウェイトレスが「すみません。ここは勉強禁止です」と言った。 温厚なわたしも腹が立った。ウェイトレスに言う。「若者はこれからの日本を背負って立つんだ。ここで勉強したことが将来の日本を救うことにつながるかもしれない。目先...
-
ツチヤの口車 第1352回 土屋賢二「座ると寿命が縮む」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
一時間座り続けていると、寿命が二十二分縮むという。 これをテレビで見たとき、驚いた。それ以来、できるだけ寝転ぶようにしている。 ふだん運動している人もしていない人もリスクは同じだという。運動してなくてよかった。 三十分に一度は立った方がよいというが、もし本当なら、長時間座りっぱなしの棋士には注...
-
ツチヤの口車 第遅筆にも理由がある 第1351回 土屋賢二「遅筆にも理由がある」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
大作家の中にはことばを一つ考えるのに一日かける人もいるが、わたしも同じタイプだ。わたしの文章を子どもが書くような文章だと思う人がいるかもしれないが、子どもはことばを見つけるのに一日かけたりしない。太っ腹なのだ。 わたしが遅筆なのは、表現を思いつけない上に、思いついた表現のうち、どれが一番適切な...
-
ツチヤの口車 第1350回 土屋賢二「ことばの力をあなどるな」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
ニュースを見て後悔した。小遣いの増額はとっくの昔にあきらめていたが、ロマンス詐欺犯は舌先三寸で何千万円も振り込ませる。ある被害女性は「出かけるね」とラインを送ったところ、「外は寒いから風邪をひかないように暖かくして出かけてね」という返事が来て心をつかまれたという。 心にもないことば一つとバカに...
-
ツチヤの口車 第1349回 土屋賢二「本と脂肪と有価証券」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
教え子に電話した。「急用じゃないからね。心配しないように。わたしは変わりない。残念ながら」「残念です。失礼します」「ちょっと待て、実は家の中を徹底的に片づけようと思ってるんだ」「終活ですか」「終活でも就活でもトンカツでもない。広々とした部屋で暮らしたいんだ」「それなら徹底的に断捨離するミニマリ...
-
ツチヤの口車 第1348回 土屋賢二「可能性が花開くとき」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
大学に入学したときほど可能性に満ちた時期はない。まさに可能性のかたまりだ。受験のために封印してきた無数の可能性が、いまかいまかと花開くのを待っているのだ。 入学後、最初に夢をつぶしたのは、テニスだった。毎日コートにローラーをかけさせられた上、大学の周りを一周させられ、土手を上り下りさせられた。...
-
ツチヤの口車 第1347回 土屋賢二「カスハラ撲滅法」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
客が店員に横暴にふるまうカスハラが横行している。カスハラ撲滅に取り組む粕腹退治氏に話を聞いた。――活動の内容は? 怒りを鎮めるアンガーマネージメントの普及とかですか?「手ぬるすぎるだろう。カスハラをする連中がそんなセラピーを受けるはずがない。怒りの根を断つのだ」――そんなことができるんですか?「原...
-
ツチヤの口車 第1346回 土屋賢二「免許返納を進める方法」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
高齢ドライバーの暴走事故が後をたたない。免許返納促進に取り組んでいる替瀬麺挙氏に話を聞いた。――免許返納運動を始めたきっかけは何ですか?「痛ましい事故が多すぎる。子どもたちが教えられた通りに手をあげて渡っているところに車が突っ込んでくるのだ。運転する高齢者はたいてい助かり、子どもが犠牲になる。船...
-
ツチヤの口車 第1345回 土屋賢二「失敗しないダイエット」
コメ0
週刊文春デジタル 5ヶ月前
これまでさまざまなダイエット法が発表され、そのたびにダイエットに失敗する人の数が増えてきた。 だがダイエットに悩んでいる人々に朗報だ。このたびわたしは必ず成功するダイエット理論を開発した。もう悩むことはない。 わたしはダイエットを始めて二十年以上になる。 こう言うと笑う人がいるが、笑う人の特徴...