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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第7話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 74ヶ月前
……ところが、である。 そんなエリとの約束によって、ほんの僅かとはいえようやく前向きになりつつあった私の気分も、バイトを終えて帰宅したのと同時に送られてきた一通のメールのせいで、一気にぶち壊しにされてしまうのであった。『明日、演劇部の緊急ミーティングを行います。夕方五時に、必ずプレハブへと集合す...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第7話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 74ヶ月前
そして迎えた、その日の昼休み。 いつもならば、昼飯を買いに正門近くの購買部まで出向かなければいけないところだけど、この日の俺にはその必要がなかった。……後ろの席に座る同居人が、わざわざ早朝に起きて二人分の弁当を作ってくれたからである。 色々な意味でドキドキものな代物だけど、この二日間、家事に関す...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第7話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 74ヶ月前
音を立てないように恐る恐るドアを開けてみると、いきなりテンションの下がる物体を発見してしまった。 それは、見慣れない男物の靴であった。しかも、安月給の地方公務員にはおいそれと手を出すことができなさそうな、高級革靴である。 隠しもせず堂々と玄関に置かれてあるとは、俺もずいぶんなめられたもんだな、...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第7話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 74ヶ月前
……俺は一人、『レインボースターロード』に立っていた。 ここに来るのは、ずいぶん久しぶりのことであった。いや、実際の時間軸からみて、“久しぶり”という表現が適切なのかどうかはわからない。だけど、少なくとも俺の感覚からすると、この道を前回訪れたのは遠い過去であった。 現在時刻は、夜の八時四十五分。天...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説①『リヴァルディア』第7話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 74ヶ月前
今から約半年前。 正確に言えば、二月十一日。 ……鈴音は死んだ。 僕が住むこのアパートから歩いて十分程度の場所に、人知れずひっそりと建っている神社がある。いや、他の人は知っているのかもしれないが、少なくとも僕は足を踏み入れたことがない。とにかく、その神社の裏手にある草むらのような土地で、彼女は死...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第6話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
「あれあれぇ!?」 店内に、間の抜けた若い女性の声が響き渡った。 ――“店”というのは、関西国際空港に存在する飲食店、『スカイレストランテ』の事だ。そして、“女性”というのは、そこでバイトをしている女子大生、すなわち私の事である。「どうしたどうした? 何かあったんか?」 出勤早々に奇声を発した私に驚いて...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第6話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
亜尾道(あびみち)高校は、俺の住む永苺園から歩いて十五分くらいの場所――言い換えるならば、俺の住む河降市の北の端に位置する、小さな私立高校だ。 中途半端な発展しか遂げられなかった河降市の中でも、とりわけこの亜尾道高校の周辺は、緑が多い。具体的な立地環境を説明すると、丘とまではいかないもののちょっとし...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第6話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
さらに次の日。 いつもより少し早く民芸博物館に出勤した俺が自分の机で書類をまとめていると、突然背後から声が掛けられた。「おはよう、天野君! 夢の新婚生活を楽しんでるかい? 愛しのハニーのことを考えると、仕事もおぼつかないってやつだろ? ぬふふふふふ……」 振り向くまでもなかったね。こんなダサい言...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第6話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
「ああ、俺はそれで全然良いと思うで……」 月川早苗が俺に求めていたのは、いつもこの台詞だった。 言い換えるならば、『たぶん良いんちゃうかな』だとか、『なかなか良い感じやな』だとかいう曖昧な表現を、ひどく嫌う女でもあった。 それどころか彼女は、『すごく良いやん』という言葉ですら満足しなかった。何故な...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説①『リヴァルディア』第6話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
――という夢を見た。 なんてこった。自分がこんなに影響の受けやすい人間だったとは知らなかったね。あんな話を聞かされた直後だからって、ここまで露骨な夢を見るとはさ。どうせなら、次はぜひ美女だらけの楽園で過ごすみたいな内容のDVDを見せてもらいたいもんだ。それだったら心から影響を受けてやるよ。 そん...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第5話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
我が大学の学生食堂は、第四学舎の一階に存在していた。 なので、私はようやく屋上から開放されて、まるで天国を歩いているかのようなフワフワとした足取りでキャンパスを歩くといった幸福を享受する事が出来たのであった。 そして、化粧以外は食べる事くらいしか趣味のないエリと、犯人を当大学の女子大生と決め付...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第5話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
さて、いざ一緒に暮らし始めるとなれば、さしあたって、この無自覚エロ少女の寝る場所を確保する必要があった。……まさか、これからずっと雑魚寝させるって訳にもいかないからな。 やがて、いまだにおどおどしているアンバランスな髪型の共同生活者と一緒に、買い置きしておいたカップ麺とおにぎりというささやかな夕食...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第5話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
果たして次の日の朝、俺に用意されていた朝食は、アンパンとカレーパンと牛乳パックというメニューだった。昨夜の罪滅ぼしのつもりなのか、それともあてこすりなのかは知らないけど、あえてカレーパンを買ってきているところがなんとも憎いね。「アンパンだけでは、ちょっと物足りないかなと思いまして……」 殊勝にも...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第5話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
俺の心は踏みにじっても、約束を踏みにじったりはしない女性らしい。「……どうも、夜分遅く申し訳ございません。ちょっと用事が予想以上に長引きまして」 その日の夜十一時頃、俺のスマホの受話口から聞こえてきたのは、紛れもなく夕方に相対した脅迫眼鏡娘の声であった。「いや、気にせんでええよ。俺かって、三コー...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説①『リヴァルディア』第5話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
そして、目覚めた。 目覚めた理由が、冷房のタイマーが切れたせいなのか、それとも雷雨のせいなのかはわからなかった。要するに、部屋中には蒸し暑い空気が充満しており、外では激しい雨が雷を引き連れて大地に襲い掛かっていた。 もっと言えば、僕は現在時刻すら把握できなかった。窓の外を見る限り、少なくとも夜...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第4話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
そのまま眠れぬ夜を過ごした私が、次の朝――つまり、二月二十三日の朝に泉州大学へと出向いてみると、そこにエリの姿はなかった。 もちろん、いくら私達が幼馴染で、かつ同じ大学に通っているとはいえ、キャンパス内においても四六時中行動を共にしている訳ではない。しかし、少なくとも月曜日の一限に関しては、二人...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第4話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
誰かさんのせいで建てつけの悪くなったテーブルの前で、気まずそうな表情を浮かべながら正座する少女の証言によると――この自称未来っ娘の今朝からの行動は、以下のようなものだったらしい。 俺から借りた二千円を持って、まず彼女が向かったのは……なんと、市外にある地方競馬場だった。そんな場所をどうして知ってい...
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非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第4話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
翌朝、起床した俺をまず戸惑わせたのは、見慣れない周囲の風景であった。まぁ、新居に引っ越してきて初めての朝なんだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。 しかし、俺は戸惑いと同時に、何故か軽い興奮めいた感情も覚えていた。その正体が、新生活、もとい新婚生活に対する高揚感だと確信できたのは、瞼を擦り...
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非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第4話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
今から十年ほど前――すなわち、俺が小学五年生の頃。 詳しい日付まではちょっと忘れてしまったけど、気の早いセミが鳴いており、制服が汗でべとついていたのを覚えているから、たぶん七月中旬くらいだったと思う。 ……その日は、俺の人生における初体験が三つあった。 第一の初体験――それは『家出』だった。 もちろ...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説①『リヴァルディア』第4話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 77ヶ月前
外はすっかり赤くなっていた。 貧乏な画家には、きっとうってつけの風景だろう。もっとも、絵の具費用を優先して考える画家の展覧会なんて、たとえそれが初恋の相手だって行く気はしないけどさ。 『呪いのビデオ』とやらを鑑賞し終わった後、山岸はわざわざマンションの入り口まで僕を見送りに来てくれた。貴重な時...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第3話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
その後、まずプレハブに姿を表したのは、大学の警備員であった。エリにしては珍しく機転を利かせたようで、警察に連絡するついでに第二学舎の一階にある警備室にも立ち寄ったらしい。 ところが、このいかにもうだつの上がらなさそうな男性警備員は、ちっとも役に立たなかった。私達からほんの軽くだけ事情を聞いた後...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第3話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
――次の日の朝。午前七時半。 いつものごとく、スマホのアラームによって目覚めさせられた俺が、ただでさえ軋みまくるベッドをさらに軋ませて、ゆっくりと起き上がる。 ……いた。 昨晩に突然乱入してきた自称未来っ娘は、依然として俺の居住空間の中に存在していた。「あ……お、おはようございます、クリエイショナー」...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第3話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
……いやいや、待てよ。なんだ、この気まずい雰囲気は。 洋風の食事机を挟んで対面に座っている麻淋さんは、さっきからずっと顔を俯けっぱなしで、一向に俺との会話を始める気配を見せない。時折ペットボトルのお茶を飲んでは、スカートの端をいじっているだけで、むしろ構って欲しくなさそうなオーラすら放っている。 ...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第3話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
「……以上です」 唐突に前方から声が発せられた。それは、ちょっと舌っ足らずな幼い声であった。おかげで、俺は自分の意識が迷子になりつつあった事実を知る。「以上です……編集長」 余計だとしか思えない一言を付け足したその声の主が、室内の全ての窓を覆っていたカーテンを、次々と手際よく開いていった。 舞い散る...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説①『リヴァルディア』第3話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
そんなある日のことでした。 とつぜん、フィオーレのおやしきに、一人の旅人がおとずれました。 それは、プリマヴェーラという名の、旅人でした。プリマヴェーラは、一晩だけここで泊めてほしいとフィオーレにたのんできました。 たいくつだったフィオーレは、よろこんでプリマヴェーラをむかえいれました。そして...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第2話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
私こと濱本綾香と、エリこと溝端愛理は、大阪府の南部に生まれ育ち、同じく大阪府の南部にある『泉州大学』という名の小さな大学(よく考えてみれば矛盾した言葉だな)に通う一回生だ。私はもちろんの事、奇跡的にエリもストレートで合格したので、お互い十九歳である。 先述した通り、我々は幼稚園から現在の大学ま...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第2話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
俺の眼前では、全裸の美少女が土下座していた。 奇偶にも、彼女自身がテーブルを蹴飛ばしたことによって、狭い上に散らかりまくっている俺の部屋に、人間が土下座できるくらいのスペースが発生していた。……だからという訳では絶対ないんだろうけど、とにかく彼女は小柄な体をさらに縮こませて、なおかつ両膝と両手...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第2話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
結婚とは、これほど簡単なものなんだろうか? ……思わずそんな独り言を呟いてしまうほど、お見合い後の流れは極めてスムーズだった。鈴木家――つまり花嫁側の意向で、結納というよくわからない儀式や、結婚式、および披露宴の全てを行わないこととなったのも、結婚手続きのスピード化に拍車を掛けたのだろう。日頃の生...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第2話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
「……以上です」 唐突に前方から声が発せられた。それは、ちょっと舌っ足らずな幼い声であった。おかげで、俺は自分の意識が迷子になりつつあった事実を知る。「以上です……編集長」 余計だとしか思えない一言を付け足したその声の主が、室内の全ての窓を覆っていたカーテンを、次々と手際よく開いていった。 舞い散る...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説①『リヴァルディア』第2話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 78ヶ月前
その日は、朝から嫌な予感がしていた。 ……誤解されないようにあらかじめ言っておくと、僕はいわゆる『第六感』とやらの存在を信じていない。あんなものは、論理的思考が不得意な人間の逃げ口上にしか過ぎないだろう。 ついでに言えば、UFOや超能力の存在もまったく信じていない。人類が映像機器を発明した途端に...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第1話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 79ヶ月前
「……密室殺人事件に遭遇する事と、理想の男性に巡り会う事と、どっちが難しいんやろうなぁ?」 私の大親友であり、また幼稚園時代からの幼馴染でもある溝端愛理(みぞばたえり)は、視線をうろつかせながらそう呟いた。 ――エリの名誉の為に言っておくと、いくら大学の新入生歓迎コンパに喪服で出席してしまうくらい壮絶...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第1話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 79ヶ月前
玄関のドアを開けてみると、全裸の美少女が立っていた。 ――この夜、俺が遭遇した出来事を、無理やり一行でまとめると、つまりはそういうことになるんだろう。 なんてことのない、平凡な一日のはずだった。夏休みまでまだ十日以上はあるというのに、早くも浮ついた空気に支配されつつある我が高校を、一人寂しく後...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第1話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 79ヶ月前
なるほど、確かに彼女はかなりの美人であった。 ……しかし、同時にかなりの変人でもあった。 肩まで伸ばした艶っぽい黒髪に覆われているその顔は、とても俺に釣り合うとは思えないほど整っていたし、ピンクのフリルでコーティングされたそのドレスは、とても『お見合い』という儀式にふさわしいとは思えないほど強烈...
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【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第1話
コメ0 為五郎オリジナル小説&ブロマガ 79ヶ月前
――月川 早苗(つきかわ さなえ)は笑っていた。 シャギーの入った、肩を隠すにはやや短い長さの黒髪。 面積は大きいのに、鋭利さをも感じさせる瞳。 何かの方向を示すかのように、まっすぐ通った鼻筋。 シャープではあるものの、見る角度によっては幼い印象も受ける輪郭。 そして、空に向けてすらっと伸びるたお...