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ビュロ菊だより 第三号「菊地成孔の一週間」自己更新、そして隔離可能性とサーキットの両立を目指して〜
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ビュロ菊だより 第三号「菊地成孔の一週間」自己更新、そして隔離可能性とサーキットの両立を目指して〜

2012-10-31 11:00
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 「菊地成孔の一週間〜自己更新、そして隔離可能性とサーキットの両立を目指して〜」

 

 
 

 
 

 
 
 10月24日(水曜)

 

 
 
 初回の日記を改めて一気に読み直すや否や(厳密には3分の1ぐらい読み進んだところで)、量が多すぎはしないだろうかという強い疑念が生じる。自己更新を目指すという、高邁な目的意識に憑き動かされていたとはいえ尚、これでは早稲田の男子学生しか食いきれないのではないか?

 

 
 
 厳密には如何なる筆者も自分が書いた文章を完全に客観的に読み返す事は出来ない。そして「長過ぎる」という声は、クレームとしても助言としてもひとつもないのである。これはいったい何を意味するのだろうか。

 

 
 
 筆者としての僕の、大まかな理想像は

 

 
 
1)       一気に通読できて

 
2)       退屈や眼精疲労などによって読快度が落ちる事無く

 
3)       週に3〜4回読み返したくなる

 

 
 
 といったもので、しかしこれは、前述の食事のポーションのアナロジーと全く同じで極めて難しい。

 

 
 
 早稲田の男子学生にとっての大盛り定食は、ヨガの行者の一週間分の食事量に匹敵し、どんどん増えてゆくギガ数は、2030年には白米だけでも10キログラムに達するという。同年には原発が無くなるというのに、大丈夫なのだろうか?「ビュロ菊だより」の購読層が早稲田大学出身者、もしくは通学者に集中していないかどうか、すぐさまリサーチしないといけない。

 

 
 
 とか何とか、非常に重要のようでもあり、完全にどうでも良いようでもある話(っていうかそもそも、この日記コンテンツのマストではないと言われているのである・笑)を弄んでいたら、急激に寒気がし、咽喉痛が襲ってきた。

 

 
 
 あれ?おっかしいなあ。風邪は先々週にひいた。複合的な疲労の錯綜を緩ませようとして、自然に風邪はひくようになっているのである。今は風邪をひくタイミングじゃないぞ?

 

 
 
 う。そういえば、凄い咳をしている生徒が何人もいたけれども。そしてなんかこの、最初から気管支のあたりがむずむずする感じは、体をほぐす、ナチュラルな風邪の感じじゃない。そして、なーんか懐かしいんだけど。てか明日から、っちゅうか数時間後にはペペのサーキットが始まるんだけど(笑&滝汗)。集合前に医者に寄るとなると(笑&滝汗2)。

 

 
 

 
 

 
 
 10月25日(木曜)

 

 
 

 
 
 2時間だけ仮眠をとって内科医に行くが、まだ発熱も7度前後だし、喉も腫れていないし、と、抗生物質なしの、軽めの風邪薬セットが一週間分出る。これは正しい処置だ。

 

 
 
 「あのうワタシ、5年前にですね、マイコプラズマ肺炎やってまして、その時の兆しと凄く似てるんですよ。その時も最初、普通の風邪薬が出て」と言うが、医師は一瞬、心気症の患者(ちょっとした兆しを死病と考えたがる強迫症。著名な患者にウッディ・アレン、大槻ケンヂとその父、等々)を見る蔑視線にならぬように心を配った後、「そうですか、でも現状ではチェックできないんで、とりあえずこれ飲んで、症状かわったらすぐ来てくださいね」と言って微笑んだ。お手本とも言える正しい処置である。

 

 
 
 こんなときに限ってコンビニの雑誌に「マイコプラズマ肺炎が大流行中」とある。マイルスの命を奪ったとは言わないが、晩年の「病弱マイルス」の命を何度かは脅かした病気である。詳しくは検索して頂きたい。細菌の繁殖による肺炎である。

 

 
 
 僕は2007年にこれを罹患し、人生が変わった。何せ小学校5年から実に34年にわたった喫煙依存が苦もなく治ったのだ。そして入れ替わりに、これまた突如として(未だに理由はよくわからない)、何の苦もなく飲酒がどこまでも可能になったのである。ゴロワーズからブルゴーニュへ。今でも「え?タバコやめたのええええええ酒飲むの菊地!!」と驚く旧友が絶えない所以だ。

 

 
 
 まあ良い。まあ良い。演奏には絶対に影響は出ない。いや、出る。良い影響が。と心中で唱えながら新幹線に乗り、名古屋ブルーノートに着き、いつものようにサーキットが始まった。いつもと違うのは、メンバーと食事を一緒にしない事、メンバーと握手をなるべくしないこと、ハグやディープキスを絶対にしない事、セックスは死んでもしない事(洒落が通じない奴を相手にする必要は無い。とよく言われるのだが、念のため。ハグまでが実際です)だ。

 

 
 

 
 
 演奏は本当にすばらしい物になった。文章と筆者の関係と同じで、演奏家は原理的に、自分の演奏を客観的には聴けない(録音物は再生品であり、演奏そのものではない)。なのでこれは幻想である。幻想だが、虚妄や社交辞令やお約束ではない、真剣にそう幻想しているのだから仕方が無い(後日、マイコプラズマ肺炎のままサーキットしていた事をステージで白状すると、「やっぱり、音の張りがなかったですね」とかいった、これみよがしのメールがいくつか届いたが、マジ勘弁。どう考えても最高っしょとかいった話以前にこれは、人の心に「やっぱりな〜」と言いたい。という欲望があって、事実関係は関係ない。という事の現れだろう。「実はもう、このバンドやりたくないと思ってやってたんですよ今日」と言ったとする(嘘で)、絶対に「最初から気づいてました」というメールが来る。ぜんぜん上手くいっている大好きな彼女に「いきなりですが別れてください」と(嘘で)言ったら、「ええ?何で?」と「やっぱりね」の確率はほぼ同じな筈だ。まあ何でも良い。演奏が悪くなったと感じたら、即メンバーを変えるか、演目を変えるか、バンド自体を無くしてしまう。第一に自分がもたない。

 

 
 
 客席からのヴァイブスは演奏家が客観視できるもののひとつだ。名古屋ブルーノートで「客筋が悪くなったな」と思った事は、どのバンドでも一度も無い。ラジオによってビギナーが増えたのは、野鳥の会のように計測できたが、何らかのフラグメントがフックになってビギナーになった人々はほとんど同じ反応をする。驚愕するのである。

 

 
 
 終演後、ホテルの地下にある居酒屋で打ち上げになった。絶対に行くべきではないのだが行ってしまう(俺の馬鹿。凄く馬鹿)。マッコリのロックを飲みながら第一ヴァイオリンの吉田君の異常な可愛さ(「吉田君、吉田君って何が好きなの?」「菊地さん僕は揚げ物が好きなんですよ。なんで、妻に唐揚げばっかり頼んじゃいますねやっぱり」「トンカツは?」「あ!あれもすごく旨いです」)、第二ヴァイオリンのお姉様とヴィオラのお姉様と一緒に楽しんでいる間も、どんどん菌が繁殖してゆくのが解る。

 
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