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記事 17件
  • 世界の伝統武術の実戦観は超リアリズム!巌流島と大武道はどうする?

    2016-04-12 12:00  
    今週のお題…………『大武道!  2号目を語ろう!』


    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)



    大武道2は、例によって玉石混合のメンバーが登場しているが、それが編集者の狙いであるかもしれないので、それについての批判はしてもしょうがない。
    従って、私が本書に取材を提案した、倉本成春先生、横山雅始先生、沈剛先生など、やる側の先生達と武術について、考察していこう。
     
    まず、お三方ともスタンスは異なるが、いずれも格闘技を超えた、ルール無用の武術を長く修行者されてきた先生達だ。
    その見識は深く、いずれの先生も私自身がそれぞれの分野で師と仰ぐ方々である。
    倉本先生は言うまでもなく、ルール無用の戦いを想定し、空手に囚われず、ありとあらゆる反則技を追求。対武器や対複数の戦いも想定し研究された為、そのノウハウは「ザ・プロテクト」という一般人向けの護身術の体系にまとめられた。「空手は突き
  • 巌流島では、なぜ伝統武術が活躍できたのか? その理由を考えると、これは歴史的な事件かもしれない

    2016-03-30 12:00  
    今週のお題…………『徹底検証「3・25巌流島、私はこう見た!」』


    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………水曜日担当


    今回の巌流島は、伝統武術の再発見、というテーマが良く見えた大会だったと思う。未知の格闘技が、その強さと魅力を発揮する場を提供する、という目的は想像以上に成功していたのではないか。
     
    これまで、異種の格闘技が闘う場として、何でもありルールや、総合ルールがその場としてふさわしいと考えられていた。
     
    しかし、実は寝技で決着のつく総合ルールは、極めて特殊な環境下における測定であり、しばしば、実際の実戦性とは異なる測定結果が出る。寝技同士の測定には適していても、異種の格闘技が競う場としては極めてふさわしくない、と私は主張してきた。
     
    その理論的背景はここでは繰り返さないが、簡単に言えば、世界の伝統武術には寝技はほとんどない。実際の戦闘をリアルに念頭
  • かつて、テレビには映すべきヒーローがいた! 視聴率50%超えのF.原田

    2016-03-15 12:00  
    今週のお題…………「格闘技とテレビ」


    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………火曜日担当

    出版界が不況だという声を良く聞くが、それ以上の苦境に立っているのが、テレビ業界かもしれない。地上波におけるフジテレビの凋落に象徴されるように、今、テレビマンは何を作ったら視聴率を取れるのか完全にわからなくなっている。これは、テレビマンの力量が落ちたというよりも、タダで見られる地上波の構造的な問題だと思う。
    ビデオリサーチができた62年からの歴代視聴率ベストテンを見ると、一般の番組の中に格闘技関係がいくつか入っている。まず、4位が力道山対デストロイヤー。そして5位と8位がファイティング原田の防衛戦。5位は黄金のバンタム、エデル・ジョフレとの防衛戦で63.7パーセント。8位はアラン・ラドキンとの防衛戦で60.4パーセントだ。
    力道山が、戦後、外人レスラーを空手チョップでなぎ倒し
  • やる側は常に新しいコンセプトに食いつく前衛層。巌流島は彼らを取り込めるか?

    2016-03-08 12:00  
    今週のお題…………「格闘技と専門誌マスコミ」


    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………火曜日担当


    先月、空手雑誌や本を出していた老舗、福昌堂がついに破産してしまった。格闘技マスコミが冬の時代に入った象徴のような事件である。私が元いた会社であり、その内実は関係者からよく聞いていたが、まあ、ここまでよく頑張ったな、というのが正直な感想で、私自身は読者が武術や格闘技の書籍離れをした現象とは全く捉えていない。むしろ、ようやく、「本物の武術本が売れる時期が来たな」とさえ思っている。
    私が『フルコンタクトKARATE』を作っていた80~90年代は、格闘技界も話題が豊富で、『格闘技通信』や、『ゴング格闘技』も元気な時代だった。とくに週刊誌も出していた版元は、速報力があり、『格通』も『ゴング』も大きな大会のあとは、数日で速報号を出し、売り上げを伸ばしていた。
    私のいた福昌堂は
  • 身体能力 vs 技! 蟷螂拳の瀬戸選手の試合は中国武術界も注目するテーマがある

    2016-02-29 12:00  
    今週のお題…………「3・25巌流島  私はここに注目する!!」


    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………月曜日担当


    武術界を潰すかもしれない核弾頭のような選手。それが瀬戸選手だ。
     
    今回の巌流島は、興味深いカードが目白押しである。未知なる強豪については、まだ考察のしようがないので、私が推薦した蟷螂拳の瀬戸信介選手について、その注目ポイントを書いてみたい。一般の人は私が蟷螂拳をやっているから、当然仲間であると思っている。無論、広い意味では仲間だし、私も瀬戸選手を応援していることは間違いない。しかし、中国武術界という狭い世界で見ると、瀬戸選手は、立場的に私の敵になるのだ。
     
    空手にも、型の選手と組手の選手がいる。それぞれ、専門に練習しているので、型の選手が組手試合において、組手専門の選手に勝つことはありえない。
     
    ところが、中国武術の場合はもうちょっと複雑だ
  • UFCの成功? そもそも私がUFCやPRIDEを見ない理由とは?

    2016-02-23 12:00  
    今週のお題…………「なぜUFCは成功したのか?」


    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………火曜日担当



    私がなぜPRIDEもUFCも見ないのか?それには深い訳がある。
     
    「UFCはなぜ成功したのか?」と聞かれても私は見たこともないし、興行に携わったわけでもないので答えようがない。PRIDEの時に書いたとおりだ。しかし、こう書くと、私が格闘技に興味がなかったり、熱心でないから見ない、と思われるかもしれない。別に他人からそう思われても全然構わないのだが、どうせなら、「格闘技情報を発信するという行為に潜む危険性」や「内包する功罪」という点を考察した方が、UFCの考察なんかより、よっぽど巌流島にとって有益だろう。
     
     
    昔から日本人は喧嘩になると組み合う。喧嘩のことを「取っ組み合い」というくらいだから、伝統的にそうなのだろう。よく、日本人は鋸を引いて斬るが、西洋人
  • 力道山vs木村政彦の試合こそ、歴史に残る喧嘩術・兵法試合の典型だった!

    2016-02-16 12:00  
    今週のお題…………「なぜPRIDEは成功したか?」

    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………火曜日担当


    PRIDEはなぜ成功したか?と私に聞かれても分かる訳がない。そもそもPRIDEはヒクソン以外見たことないし、あとは興味も無い。興行に携わった訳でも無い。バリトゥードの回に、開発側の立場からの原稿は既にかいたので、それと同じである。
     
    一度開発したものを、企業は様々な民生用デザインや販売戦略を立てて顧客にアピールするだろうがそんなものは、開発側は口を出すことでは無い。それと同じである。という訳でPRIDEの話しは終わり。
     
    そんなことより木村政彦である。「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」という本をようやく読み終えた。この本には、開発側にとっては、PRIDEの分析なんかより、巌流島にとってはもっと重要な格闘技に対するキーコンセプトが隠されている。
     
  • 柔道創始者・嘉納治五郎も、グレイシー柔術を見たら頭を抱えるはずである!

    2016-02-09 12:00  
    今週のお題…………「なぜグレイシー柔術は衝撃だったのか?」

    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………火曜日担当



    グレイシーの名が日本に伝わったのは1994年の第1回UFC以後だろう。金網の中で素手で殴りあうその残酷なルールの衝撃性と共に、痩せたホイスが優勝した驚き。確か格闘技マスコミは、皆この大会を表紙にし、特集にしていた。
    もちろん、私の雑誌を除いて。私はそんなことより、下突きの打ち方に興味があったので、確か大山倍達の下突きの写真を表紙にしていた。
    翌年、大道塾の市原がこの大会に挑み、ホイスに敗れたが、それも当初から私が予見した通りだ。私はこのルールでは打撃が不利なので勝てない。しかし、寝技の得意な柔道家ならホイスには勝てる、と記事に書いたが、後半の予想も後年、吉田対ホイス戦で証明された。
    私もある意味、アルティメット大会には衝撃を受けたが、それはこんな大会
  • K-1誕生の1年前に、K-1ルールの大会が開かれていたことをキミは知っているか!?

    2016-02-02 12:00  
    今週のお題…………「なぜK-1は成功したのか?」

    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………火曜日担当



    K-1というルールを採用し、リングの上で空手家たちがグローブ着用で高額の賞金を奪い合うワンデー・トーナメント。そんな大会が、92年1月12日、綾瀬の東京武道館で開催された。
    写真は、93年1月31日に行われた第2回の大会で、私が制作したパンフだが、その扉に書かれたK-1ルールの説明には、「K-1とは、今日考え得るカラテルールの中で、最も制約が少なく、最も打撃の発展を促進させる、グローブを着用することによって初めて可能になった、完全フルコンタクトスタイルの空手ルールをいう」と明記されている。
    石井館長のk-1は、93年4月からだが、その1年以上前に、新空手の神村栄一代表は、K-1ルールのトーワ杯カラテジャパントーナメントと言う、空手界に衝撃を与える大会を開催して
  • KOされても試合は終わらない。ミャンマーラウェイ、我々はまだ世界を知らない!

    2016-01-27 12:00  
    今週のお題…………「3・25巌流島イベントで見たい試合 」
    文◎山田英司(『BUDO-RA BOOKS』編集長)……………水曜日担当



    どの民族の伝統武術にも、民族性と地域性、そして歴史性がが必ず反映されている。私が武術をよく言語に例えるのも、その構造がよく似ているからだ。ローカルな武術が方言だとしたら、ルールを設けた格闘技ルールは共通語みたいなものだ。それが、日本における方言と標準語程度ならいいが、広い中国なら、言葉が通じない。
    ローカルな武術が、現行の格闘技ルールに対応できるかどうかも、同じような偶然性に左右される。従って、格闘技ルールでの勝敗により、武術の優越性を語ることは、本来あまり意味がない。このことを理解した上で、巌流島マッチに期待したいのは、武術のローカル性を生かした闘いである。何ども言うように、ルールが浸透すれば、勝ちやすい闘いが限定され、選手が皆同じ動きになる。
    それ