「13日の金曜日」というコトで、ちょっとホラーな話題をお届けします。
たとえばホラー映画であれば、絶望の淵でもがき苦しむ登場人物を見て、そこへ追い込むモンスターを「恐ろしい」と感じることでしょう。
では敵キャラクターに立ち向かう、または逃げるプレイが多いテレビゲームでは、どういう演出があれば恐怖体験ができるのでしょうか?
もしも自分がゲーム・デザイナーやプロデューサーだったら? と仮定して、一緒にちょっと考えてみましょう。以下へ続きます。
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仕込みなのか、おふざけなのか...。懐かしのファミコン、またはスーパーファミコンの時代から子供たちの間で噂されていた、ゲームに出てくる怖い話というのはいろいろありましたよね。
たとえば、『えりかとさとるの夢冒険』に出てくるスタッフの恨みつらみ画面ですとか、『真・女神転生』の「すぐにけせ」ですとか、大人になった今でもネットで検索して見ては怖くなります。
翻って最近のゲームでも、『サイレントヒル』や『デッドスペース』などなど、いまいち昔の精神的にくる感じとは違うものの、恐ろしさを体験できるゲームは少なくありません。
ひとつ例を挙げてみますと、1作目の『バイオハザード』でもあったシーンですが、テレビゲームで遭遇する恐怖というのは、暗い雰囲気の中で突然モンスターがドアップになったり、ショッキングな音楽が流れたりと、ホラー映画に近い演出もあります。
ゲームが映画と違うのは、まず大人数が同じ館内に座って観るのではなく、独りでプレイをするとゲームに入り込める所、そしてインタラクティブなゲーム・デザインそのものが、プレイヤーの予想し得ない場所に恐怖を仕掛けてる所でしょうか。でもやっぱり、プレイヤーが頭のドコかで「これはゲームだから」と理性が保てるのも、またテレビゲームです。
プレイヤーを怖がらせる戦略
『デッドスペース』には、プレイヤーを怖がらせる仕掛けが盛り沢山です。広大な宇宙空間に浮かぶ船、USG Ishimuraの狭い艦内で、異形のエイリアンたちと戦うアイザック。その他のゾンビ・シューティング系ゲームと変わりはないのですが、SFにホラー要素を取り入れたこのゲームは、それだけでは終わりません。
アート・ディレクターのイアン・ミルハムさんいわく、例えばアバラ骨の中に居るかのような複雑なライティングが、『デッドスペース』を怖いゲームたらしめる大きな役割を担っているのだそうです。
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プレイヤーがホラーゲームの中でキャラを歩かせる時は、普通のシューティング・ゲームよりゆっくり進ませるんじゃないかと思います。と言うのも、敵キャラがドコから突然現れてビックリ怖い思いをするか予想もつかないので、ゲームの世界をより注意深く見ながら進まなくてはいけなくなるからです。
だからこそ、背景に映し出されるアバラ骨のイメージと、動きまわる影が怖さを増進させるのです。
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光と影の効果は、怖さを演出するのにうってつけの方法ですよね。一体なにが潜んでいるのか見えない影の中を進むのは、ゲームであっても勇気がいります。そんな中、通路の角を曲がると、ミュータント化しつつある人間が、狂ったように壁に自分の頭をガンガンぶつけている様を見たら、これはかなりエグいですよね。
最初は全体像が見えなくて何なのか判断できないのですが、よく見てみると、ドアから差すライトが、その身体からぶら下がる血肉を照らしているのを見つけた時は、ショッキングです。そして、突然その人が後ろにのけぞり、頭蓋骨が割れるんじゃないかという勢いで壁に頭を叩きつけまくり、鉛色の壁に真っ赤な血液をベットリ残して絶命します。単なるグロい形相をしたエイリアンより、人間としての尊厳が残っている分だけ、余計に狂気を感じるのではないでしょうか。
そしてミルハムさんは、こう続けます。
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ほとんどの場合において、恐怖こそが結果だったりします。
(ゲーム・デザイナーとしてプレイヤーに対して)まず最初に用意するのは、世界を与えて、そこで結論と現実にどんなことが起こるか、そして、それをゲームの下地にするのです。そうすると、何か恐ろしい事件が起こった時、プレイヤーはある意味その世界観を信じるようになります。
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『デッドスペース』開発チームが直面した大きなチャレンジは、プレイヤーが主人公と同じくらい非力だと信じ込ませることだったそうです。仮にアイザックが危険から逃げるコトも、敵のエイリアンを撃ち殺すコトも出来たとしてもです。
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私がデザイン・チームに言ったことのひとつは、「武器にファイナルファンタジーのような特殊効果を持たせないように」でした。だって、もしもそんなに非現実的で素晴らしいものを見てしまったら、すべての恐ろしい物事も吹き消されてしまいますよね。
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なるほど、あまりにも現実と掛け離れて、キラキラと夢のようになってしまうと、興醒めしてゲームっぽくなってしまうって事ですね。
精神的な部分に攻撃してくるゲーム
他にも恐怖を感じるゲームと言えば、ホラー系ではありませんが『バットマン アーカム・アサイラム』も挙げられています。
これは私たちがよく知っている、正義のヒーローをストーリーに沿わせて遊ぶゲームですが、強靭な肉体とハイテクな武器を操る無敵の『バットマン』よりも、ゲーム内で出くわす敵キャラクターの「スケアクロウ」が結構怖いのです。
このカカシ男は、元々が心理学の教授だったというだけあって、人を恐怖に追い込む心理的な罠を使い、『バットマン』を弱らせる敵キャラクターとなっています。しかしこの対決は、『バットマン』の頭の中を弄ぶだけでなく、遊んでいるプレイヤーにも多少なりとも影響を及ぼす作りを心掛けていたのだそうです。
ゲーム・デザイナーのジェイミー・ウィットワースさんがおっしゃるには、
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私たちはスケアクロウが登場するステージでは、あたかもスケアクロウがすぐ隣で、プレイヤーをワシ掴みにしているかのような、安定した緊張感と無力感を演出したかったのです。
私たちはこのゲームを、一般的なスラッシャー映画で主人公が殺人鬼から隠れたり、パニックに襲われ安全地帯に逃げ出す時のようなシーンと比較して作りました。
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よくあるホラー映画に登場するシーンで、オツムの軽いお姉ちゃんが逃げ出して警察に電話するようなのと違い、プレイヤー自身が『バットマン』となるので、スケアクロウによって恐怖を植え付けられるヒーローの姿を目の当たりにすることになります。
そこでは雷光が閃くたび、今まで歩いていた長い廊下が傾くように感じられ、家具やゴミ箱が動き出し、古い本のページは宙を舞い始めます。少しずつ広間へ近付くにつれ、現実のかけらは崩れ落ち、幻聴や幻覚を見るようになり、真実ではあり得ない物事が浮かび上がってくるのです。
霊安室に置かれた死体袋の中には、遠い昔に死んだはずの両親が入っており、ブルース・ウェインに話しかけてきたり、後ろを振り向けば、これまで居た部屋の床が穴だらけの廃墟になっていたりします。幻覚症状はますます度を越し、ついには足場の脆い廃墟の影を伝い、巨大なスケアクロウに見つからないように歩を進めなければいけなくなるのです。
「スケアクロウが登場するまでに、プレイヤーが知っているはずの物理法則やらなんやらといった常識が、崩壊しかけるギリギリのトコロまで持っていくことを目指して作ったんです」とウィットワースさんは付け加えています。
『デッドスペース』もそうでしたが、通路のシーンでは逃げ場がありませんし、恐怖を演出するにはうってつけの場所なのでしょうね。
光による恐怖
テレビゲームの中で起こるホラー体験は、映画と違ってハッキリと認識できる感覚でもあり、同時に抽象的な感情に訴えかけることができます。ゲームでの恐ろしい体験は、プレイしながら視覚的にも感覚的にも味わえるのです。
もし開発者の戦略が成功すれば、プレイヤーたちにはずっと強い印象を忘れずにいてもらえるでしょう。どこかで電灯が消えた時に、頭の片隅に引っ掛かっていたかさぶたのような記憶がポロっと剥がれて、実生活でも恐ろしいことが起こらないか不安な気持ちになるかもしれません。
ゲーム・デベロッパーが、怖いゲームを作ろうとしたら...一番役に立つ開発ツールはその人自身の恐怖心なのでしょうね。
ミルハムさんは、「多くの恐怖は、次に何が起こるか判らない...というある種、終わりのない緊張にあります」ともおっしゃっています。
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何度か同じタイミングであからさまに怖いシーンを出し、しばらくしてそのタイミングを崩し、アレ? っと思わせた頃合いが怖がらせるタイミング。さらに相手を待たせて待たせて、待たせた挙句にまたギャー! っとやるワケです。
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なるほど、視聴者やプレイヤーを怖がらせるには、ある程度のセオリーがあるのですね。でも、まぁアメリカ流の恐怖はお化け屋敷系のビックリ・ホラーですが、日本のゲームは死んだ人間の怨念や呪い系ですからね。こっちも夜寝られなくなるほど恐ろしいDeathよ? ヒヒヒヒヒ...。
Photo by Thinkstock/Getty Images.
What Makes A Video Game Scary[Kotaku]
(岡本玄介)
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