北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
【北島秀一】
中華そば 紅蘭@下松市「チャーシュー麺並」
九十九とんこつラーメン 恵比寿本店@恵比寿「◯究トマトチーズラーメン」
■クロスコラム
■告知/スケジュール
□編集後記
■巻頭コラム
「"出身者"が知らない事」山本剛志
いつも聞きながらツイッターで参加しているラジオ番組に、先日石神秀幸さんがゲスト出演してラーメントーク。ツイッター内ではいつもラジオを聞いている人達の中でラーメントークが盛り上がったが、その中の一人から気になる発言があった。
(1)「1986年まで22年間、和歌山市から電車で30分ほどかけた所に住んでいたが、和歌山ラーメンなんて言葉も存在も聞いた事がない」
(2)「いわゆる鶏ガラのあっさり中華そばならあった」
(3)「和歌山ラーメンがブレイクした頃、地元のラーメン本を読んだが、定義やルーツが曖昧だった」
この3つの意見で気付いた事が、それぞれにあった。
まずは(1)。和歌山ラーメンブームは、1998年に北島さんも出場した「TVチャンピオン 日本一うまいラーメン決定戦」で石神さんが推薦した「井出商店」が日本一になった所から火がついた。それまではメディアで話題になる事も少なかったし、実際その方も、和歌山市内で外食するといってもファストフード程度だったとの事。自分の学生時代を振り返ってもそうだった。"出身者"といっても、特にネットが発達する前だったり、子供の頃の情報のアンテナはかなり限られている。
続いて(2)の、「鶏ガラのあっさり中華そば」も認識が異なる。戦後すぐの時代から屋台で始まった和歌山の中華そばでは「醤油で煮た豚ガラ」が使われてきている。豚ガラをあっさり煮出したスープの「車庫前系」のラーメンを「鶏ガラ」と認識している可能性もある。ラーメンに詳しくない人にとって「澄んだ醤油味のスープ=鶏ガラ」という固定概念があるので、そう考えても不思議はない。ラーメン専門店以外の中華屋などでは鶏ガラメインのスープもあっただろう。
そして(3)の、「和歌山ラーメンブーム直後の地元のラーメン本」。これは私も読んでいるが、ブームが続く中で初めて取材に動いた地元メディアが、定義やルーツについては確定しきれなかった部分があったと思う。そして、和歌山ラーメンのルーツについては戦前の出来事ゆえ、それを明かしたくない人もいると聞いている。全てを発表できない事情もあったものと思われる。
ラーメンに関しては様々な情報が流れているが、流れたまま見えなくなってしまう情報も少なくない。特に歴史的なものは埋もれやすいので、今後自分がしっかりと調べなければいけない、と感じた出来事でもあった。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は4月20日、早稲田にオープンした新店『ラーメン巌哲』の「醤油」を三人が食べて、語ります。
「醤油」750円