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自宅であり仕事場。夫婦フードユニットの「理想の住まい」のつくり方(九品仏)|リノベストーリー
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自宅であり仕事場。夫婦フードユニットの「理想の住まい」のつくり方(九品仏)|リノベストーリー

2018-01-15 06:00
    東急大井町線の九品仏駅から歩いて数分。自由ヶ丘からも徒歩圏内にあるヴィンテージマンションをリノベーションして暮らすのは、井上豪希さん・桃子さんご夫婦だ。料理家の豪希さんとライフスタイルデザイナーの桃子さんがふたりではじめたフードユニット「てとてと」。その活動拠点も兼ねる、キッチンが主役のご自宅を訪ねてみた。

    てとてとは、どんなユニットなんですか?

    「てとてとは、『料理を通して場を創造するおもてなし夫婦ユニット』と僕たちは言っています。結婚後の2016年5月に結成して、この部屋に引っ越した2016年11月から活動が本格的になりました。

    僕は平日は会社員として地方のフードプロデュースなどに携わり、桃子は今年の夏に退職してフリーランスでデザイナーをしながら、てとてとの活動を平行して行っている感じです。この家にお客さまを招いて食事会や料理教室を開催したり、最近はアウトドアに場を移してキャンプ飯の会を企画したりもしています」(豪希さん)


    「付き合っていた時に豪希さんがつくってくれた料理が、ちょっと普通じゃなくて、ビックリしました! ハンバーグならソースが4種類付いてきたり、味のおいしさはもちろん盛り付けもとにかくきれいで、家ごはんの域を超えていたんです。これは自分たちだけで食べているのはもったいないと思って、友人を招いたホームパーティを開くようになったのがそもそものはじまりでした」(桃子さん)

    「僕は実家が飲食店を営んでいて、料理が生活の一部でした。レストランのようなきれいに盛り付けられた料理を、小さな頃から再現していた感じです。僕はてっきり、みんな家でそういった料理を食べていると長年思っていたんですよね……」(豪希さん)

    家をリノベーションしようと思ったきっかけは?

    「結婚前には賃貸物件で同棲をしていたんですが、結婚を機にもう少し広い所に引っ越そうということになりました。最初に考えていたのは賃貸マンションでしたが、いざ探してみると、どれも同じような“普通の物件”ばかりで、僕たちが考えている理想のライフスタイルが叶わなそうだなと思って……。

    住んでいた賃貸物件がリノベーション物件だったので、住まいに求めるクオリティも高かったし、広さを求めると家賃がだいぶ高くなってしまうこともネックでした」(豪希さん)

    「そこで賃貸ではなく購入という方向を視野に入れはじめました。『買うなら絶対リノベーションしたい!』と思っていたので、まずは目に付いたリノベーション会社に行って、話を聞いてみようということになったんです。

    何軒かまわって見積もりを出してもらったら、賃貸の家賃よりもローンの方が安いことがわかって。リノベーションの進め方についての基本的な話も聞いて見たら、購入してリノベーションしたほうが思い描く暮らしが叶いそうだねということになりました」(豪希さん)

    リノベーション会社と物件は、どうやって選んだんですか?

    「いちばんは担当者さんとの相性ですね。3つくらいリノベーション会社をあたったのですが、最終的にお願いしたリビタの方とは、最初の打ち合わせからフィーリングが合った気がしました。

    リビタは、プロジェクト毎に最適な設計士さんや職人さんをピックアップしてチーム編成する分業制をとっているので、各工程をその道のスペシャリストにお願いできる点もよかったです」(豪希さん)


    窓の外はガーデ二ングが楽しめる庭

    「物件は、最初は私の実家に近い横浜近辺で探しました。相場は安かったんですが、思うような物件がなかなか見つからなくて、リビタの方が大井町線沿いの物件を紹介してくれたんです。実際に歩いてみたら、のんびりした雰囲気が気に入って、大井町線沿線で探してみることにしました。

    このマンションは、広さと駅からの近さが決め手。都内ではめずらしい約30㎡の庭付きという点もポイントでしたね!」(桃子さん)

    タテ長のLDKという思い切った間取りはどう決まったんですか?


    初回打ち合わせに持参した、間取りイメージや好みのテイストをまとめたシート

    「僕たちも最初は、もっと普通の間取りになるだろうと考えてました(笑)。

    設計をお願いした建築士・松島潤平さんとの初回打ち合わせの時に、内装のイメージ画像をPintererstで集めてスクラップしたり、自分たちなりに考えた間取りをスケッチしたものをシートにして持参したんです。それでわかったのが、僕は和テイストが好きで、桃子は北欧テイストが好きで、好みがバラバラなこと……。

    ふたりの要望をすべて叶えるのは難しいので、ふたりともが好きなテイストの建築士さんを選ぶことにしました。建築士さんはリビタから数人ピックアップしてもらって、その中から選ばせてもらったんですけど、その中でも松島さんの建築に対するコンセプチュアルな考え方を取材の記事で読み、趣味もお人柄も合いそうな気がして……決め手は、もう直感です!」(豪希さん)

    「次の打ち合わせ時に提案してもらった3案のうちの1案が、現在の部屋のベースになっています。玄関から庭まで続く長いLDKなど、僕たちの想像をはるかに超えていて、見た瞬間『おおっ!』となりました。

    考えてもいない間取りだったので一瞬迷いましたが、生活するイメージもできたので、この案でいくことにしました」(豪希さん)

    具体的なプランはどのように進めましたか?

    「箱のありかたを考えてから、中をつくっていった感じです。提案してもらったプランを元に、まずは部屋の印象を左右する一面の壁収納、プライベートスペースとLDKの分け方、仕事場にもなるキッチンのサイズや仕様、床、天井など大枠を決め、それから細かい部分を考えていきました。

    松島さんは例え予算にハマらなくても、イイと思ったことは提案してくれる方だったので、選択肢を知って選ぶことができましたね。床の無垢材は値段が上がってしまうのでこの幅は採用しないそうなんですが、これが合うということで提案してくれました。私たちは松島さんのことを『神』と呼んでいたほど、彼のテイストや提案が好きでしたね(笑)」(桃子さん)


    「僕たちのこだわりとして、まず最初に伝えたのは『和のような洋のような空間』『人を呼べる広いリビング』『料理教室ができる大きなキッチン』『便利なパントリー』。それと、ふたりの好みのテイストです。

    テイストに関しては、精神的な要素をピックアップしてプランに落とし込んでくれました。例えば僕は欄間が好きだと話をしたら、『隣の部屋の音が聞こえて、見えなくても人の気配を感じられる』という要素を、有孔ボードを使うことで表現してくれたり。棚や壁は横と縦のラインを揃えることで、整然とした和を感じさせたり」(豪希さん)



    壁を隔て、洗面所、バスルーム、ベッドルーム、パントリーなどが並ぶ

    「壁や棚の木材も特徴的で、ラワン材という通常は見えないところに使う安価な木材を使っています。棚板の厚さが薄くて、シャープな印象に仕上がりました。

    ラワン材を知り尽くした家具職人集団・イノウエインダストリィズによるもので、彼らだからできたことだと思います。LDKを分ける壁やキッチンなど、通常なら工務店さんにお願いするような箇所も、イノウエインダストリィズさんにお願いしています。家具の中に住んでいるようなイメージですね」(豪希さん)

    リノベーションでいちばん大変だったことは?


    「時間がない中で、細かいことを決めなければいけないことですね。スイッチの場所とか、コンセントの位置とか、ゴミ箱を置く場所のサイズとか、打ち合わせのたびに宿題が出るので、シミュレーションしたりネットで調べたりして、決めていきました。

    それと、プランを進めるうちにどんどんこだわりが出てきて、当初の予算よりもだいぶコストが上がってしまいました。リノベーション費用は1,000万円ほどで考えていたんですが、かなり上振れしてしまいました。それでも、人が集まるLDKはこだわる分、ベッドルームやバスルームなどの住空間はなるべく抑えるなど調整しました」(桃子さん)

    リノベーション検討中の人へ、アドバイスをお願いします

    「『やりきれ、妥協はするな』ですね(笑)。

    予算の関係で妥協してしまったり、忙しくて細部を適当に決めてしまうこともあるかと思いますが、そういう部分って住みはじめるとやはり気になってしまうと思うんです。どんな選択肢があるのか調査して、選ぶことが大切かと。

    それと、施工工事中も頻繁に見に行ったほうがいいですね。剥きだしのまま使用する予定の天井に、工事中の印や文字が残っていたりしたので、気になったところはその都度工務店の方に伝えて、調整をしてもらいました」(豪希さん)

    はじめてのリノベーション、どうでしたか?

    「とても楽しかったです! それも関わってくれた人たちのおかげで、どれが欠けてもこの空間は実現しなかったはずです。家づくりは正解や基準がない分、関わる人にどれだけ自分たちのことをわかってもらえるかが、とても重要だと思います」(桃子さん)

    編集部ノート
    この家に住みはじめて1年、活動のベースができたことで、てとてとの活動も本格化。たくさんの人が集う場となり、たった1年とは思えないほど部屋を使い倒した感がある、と話すふたり。取材時にいただいたランチは、さすがプロの味、見た目も器も美しく、そして本当においしかった。ここでどんな“料理と人の出会い”が生まれていくのか、これからも楽しみだ。

    お気に入りのアイテムや暮らしのアイデアは「みんなの部屋」にて
    食事会は年に100回。夫婦フードユニットのもてなし空間(九品仏)|みんなの部屋

    Photographed by Kenya Chiba

    RSSブログ情報:https://www.roomie.jp/2018/01/407852/
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