-
偽物の個人時代:その26(1,606字)
コメ1 ハックルベリーに会いに行く 10ヶ月前
ここまで連載を続けてきて、ようやく「偽物の個人時代」の出口が見えてきた。それは「真善美の復権」である。それに伴う「個々人における審美眼の養成」だ。これからの時代、あらゆる人にとって審美眼の養成が不可欠となるだろう。審美眼がないと、「本物の個人時代」はとても生きづらいものになるからだ。しかし今は、...
-
偽物の個人時代:その25(1,885字)
コメ2 ハックルベリーに会いに行く 10ヶ月前
これから来る「本物の個人時代」は、どのようなものになるだろうか?その前提として、まずは「世界中がフラットになる」ということがある。「フラット」とは、同じ言葉を話し、同じ食べ物を食べるという意味だ。これは、「昔の日本」と「今の日本」の違いを考えると理解しやすい。100年前、青森県民と鹿児島県民は違う言...
-
偽物の個人時代:その24(2,122字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 10ヶ月前
今が「偽物」の個人時代である大きな理由の一つとして、多くの人が「自動化された言葉」を使い、従って「自動化された個人主義」を生きている、ということがあるだろう。つまり、本人は「本物」の個人主義のつもりなのだが、それは単なる真似に過ぎないので、「偽物」の個人主義になってしまっている、ということである...
-
偽物の個人時代:その23(1,805字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 11ヶ月前
偽物の個人時代を抜け出すためには、「自動化された言葉」から脱却する必要がある。自分の言葉で話す必要がある。では、自分の言葉で話すにはどうすればいいか?それには、小津安二郎の映画を見るのがいいだろう。なぜなら小津映画の出演者たちは皆、自分の言葉で話すよう演技指導を受けているからだ。そうして彼らは、...
-
偽物の個人時代:その22(2,134字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 11ヶ月前
「自動化された言葉」を話す人は世の中に多い。というより、自動化された言葉から完全に自由な人はひとりもいないだろう。というのも、そもそも言葉というのは誰かが作ったものを借りているだけなので、それを使っているだけで、それこそ自動的に、借り先のニュアンスや意味合いを借りてくることになる。そうなると、自...
-
偽物の個人時代:その21(1,817字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 11ヶ月前
小津安二郎は、役者たちに自然な演技をしろ、と求めた。あるいは「普通にすればいい」と言った。「自分のままでいろ」と言った。それに対して杉村春子は、「そんな難しいことはない」と言った。自然に、普通に、自分のままでいることこそ、役者にとっては一番難しいことなのだ、と。これは、小津安二郎の映画に出ていた...
-
偽物の個人時代:その20(1,670字)
コメ1 ハックルベリーに会いに行く 11ヶ月前
今の若者には佐田啓二が必要だ。なぜかというと、そこには今の時代に必要な(あるいは欠けている)、一つの「立ち振る舞い」というものがあるからだ。ところで、佐田啓二は小津安二郎に多用された。また小津安二郎は、未来に対して鋭敏な感覚を持っていた。彼の作品群は、どれも作られてから60年以上経過するが、驚くほ...
-
偽物の個人時代:その19(1,817字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 11ヶ月前
ここまで「偽物の個人時代」について考えてきた。そこで分かったのは、それが「偽物」である最大の要因こそ、若者における「恋愛の不足」であるということだ。これはほとんどの人が理解できていないのだが、今、多くの若者が、恋愛不足と「それを自覚できないこと」に悩んでいる。というのも、今の若者はある種のマイン...
-
偽物の個人時代:その18(1,917字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 12ヶ月前
偽物の個人時代における最大の懸案は「恋愛」だろう。恋愛の問題を解決しないまま、個人時代を始めてしまった。だから、いつまで経っても恋愛が、問題の火種としてくすぶっている。人は、個人時代を求めている。それでいながら、恋愛も求めている。しかし、個人主義と両立できる恋愛の形が、今のところない。だから、多...
-
偽物の個人時代:その17(2,054字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 12ヶ月前
「恋愛」をめぐって、今の日本は混乱している。諸外国は詳しくは知らないが、先進国は概ね似たような状況にあるだろうと推測できる。例えばアメリカでは「インセル」が問題になっている。インセルとは、「involuntary(不本意)」と「celibate(禁欲)」を合せた言葉。つまり、「はからずも禁欲生活を強いられている者」...
-
偽物の個人時代:その16(1,515字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 12ヶ月前
恋愛は、何のために「ある」のか?生物学的に考えると「婚姻を促すため」という答えになりそうだ。もっというと「性交を促すため」だ。恋愛があるおかげで、性交に対して積極的になり、結果として子供が生まれ、子孫を残しやすくなる。子孫を残すことは遺伝子の究極の願いなので、これは理に適っている。実際、高齢化し...
-
偽物の個人時代:その15(1,948字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 12ヶ月前
ぼくはここ数年、YouTubeで「婚活チャンネル」を見るのが習慣になっている。婚活アドバイザーが出てきて、婚活に関するさまざまなアドバイスを提供するチャンネルだ。なぜこれを見ているのか、最初は分からなかった。ただ興味があったから見ていたのだが、最近になって「時代の変化を確かめているのだろうな」と思うよう...
-
偽物の個人時代:その14(1,702字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 13ヶ月前
これからの10年で、「偽物の個人社会」は暴走する。いや、その暴走はすでに始まっているといっていい。では、「暴走」とは具体的にどのような事象を指すのか?ぼくは、それが端的にあらわれているものに「婚活」があると考えている。また、その先の「家」さらに「子育て」が暴走している。つまり、夫婦や家族を巡る状況...
-
偽物の個人時代:その13(1,683字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 13ヶ月前
団塊ジュニアは今、急速に自信を失い始めている。きっかけは「子供たち」だ。自分たちの子供世代であるα世代を見て、長年保持してきた強固な自信が揺らぎかけているのだ。しかしながら、それはまだ表面化していない。つまり、意識できていない。彼らはまだ、意識の上では自信がある。しかし、深層の無意識のところで、自...
-
偽物の個人時代:その12(1,769字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 13ヶ月前
2020年代は偽物の個人時代が花盛りだ。その中心はいうまでもなく「団塊ジュニア」である。特にネットに跋扈して日がな何かを燃やし続けている団塊ジュニアたちだ。今、ジャニーズ事務所が大炎上しているが、その火つけ役の中心にいるのが団塊ジュニアである。性加害被害者の中心的なメンバーが団塊ジュニアだし、ジャニ...
-
偽物の個人時代:その11(1,793字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 13ヶ月前
団塊ジュニアの親である団塊世代は、バブル崩壊で大きく挫折した経験を持ち、また「子育ても上手くいかなかった」という感慨を持っているので、自信を失っている。だから、就職や結婚をしない団塊ジュニアには強く出られないケースが多かった。また、団塊ジュニアはその逆に、最近まで自信を持っている人が多かった。そ...
-
偽物の個人時代:その10(1,763字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 14ヶ月前
今の時代の流行哲学は、「人生を楽しく、賢く生きる」というものだ。そして、それを第一に実践しているのが今の若者である。今の20代だ。Z世代からα世代にかけてである。そして、そんな若者を指示・肯定・絶賛している大人たちがいる。それは、今や大人の中の最大ボリュームともいえる「団塊ジュニア」だ。団塊ジュニア...
-
偽物の個人時代:その9(1,721字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 14ヶ月前
団塊ジュニアの多くは、「自分は特別な存在」と思って育った。親からそう教えられたからだ。それで、その考えを補強してくれる『世界に一つだけの花』が好きになった。そういう人が多かったから、この歌は大ヒットした。しかし、この歌の末路が今、どういうふうになっているかは誰もが知るところであろう。作詞・作曲の...
-
偽物の個人時代:その8(1,779字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 14ヶ月前
今の時代の「新しい哲学」を考えてみたい。新しい哲学のベースとなる、新しく進行している「社会の価値観」は、「メリトクラシー」と、それと合わせ鏡の「教育限界説」だ。今、能力主義社会は加速する一方だし、平行して「教育が機能しない」という考えも徐々に広まりつつある。これの面白いのは、ほとんどの人が意識し...
-
偽物の個人時代:その7(1,795字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 14ヶ月前
「哲学」というのは、学問ではあるが、歴史の中で「発展」するというよりは「変化」するものだ。文学にも近いが、必ずしも新しければ素晴らしいというわけではない。普通、学問というと化学や物理、あるいは数学などのように、昔に比べ今の方が各段の進歩をしたものと思いがちだ。しかしこと哲学に限ると、この公式は全...
-
偽物の個人時代:その6(1,482字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 14ヶ月前
これから世の中は、どんどん個人主義になっていく。個人でいることをだいじにする人が増えてくる。そのとき、一番大きく変わるのは「住環境」だ。家族で住む、あるいはカップル(夫婦)で住むという形態が廃れ、一人暮らしが増えてくる。1人の自由な暮らし(生き方)を選択する人が増えてくる。その際、多くの人が住む場...
-
偽物の個人時代:その5(1,681字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 15ヶ月前
これから20年後に「本物の個人主義時代」が来る。その前触れとして今、「偽物の個人主義時代」が到来していて、その主要な舞台はネット――特にSNSとなっている。しかし今、SNSは社会にさまざまな問題を巻き起こしている。特に問題となっているのはキャンセルカルチャーで、これは最初は有名人が標的だったが、今となって...
-
偽物の個人時代:その4(1,744字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 15ヶ月前
2020年代は「偽物の個人主義時代」で、それは1920年代の「偽物の自由競争時代」、1970年代の「偽物の情報化時代」と似ている。どちらも先に偽物の時代が到来し、本物が到来するのはその20年後だ。しかし、社会や人々の熱量でいえば、本物の時代より偽物の時代の方が大きい。なぜかというと、価値観が確定していない分だ...
-
偽物の個人時代:その3(1,565字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 15ヶ月前
今の「個人社会」は偽物だ。どう偽物かというと、バーチャル空間でだけ個人主義が確立しながら、リアル空間ではそれが確立していないことだ。そのため、リアル空間で個人主義が確立すれば、それは本物の個人主義になったといえよう。では、100年前の「偽物社会」はどうだったか?100年前は偽物の「自由競争社会」だった...
-
偽物の個人時代:その2(1,696字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 16ヶ月前
20年後に到来する「本物の個人時代」。それは、結論からいえば「家族と会社が解体される社会」である。そして、政治も解体される。まず政党がなくなる。それ以前に間接民主主義が廃止され、直線民主主義になる。だから、必然的に「政治家」もいらなくなるのだ。そう考えると、今の世の中はまだまだ「個人社会」とはいえ...
-
偽物の個人時代:その1(1,642字)
コメ0 ハックルベリーに会いに行く 16ヶ月前
2020年代は「偽物の個人時代」だ。そのことを強く伝えたいと思ったので、今回から連載として書いていく。2020年代を読み解くことは、これからを生きる上できわめて重要になるであろう。今、大きな船が沈みかけている。その船には多くの人が乗っている。いち早く脱出しなければ死んでしまう。しかし実際は脱出が難しいの...