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【取材ノートの記憶】永木亮太(鹿島)「新天地での更なる飛躍へ」(4/4)
2016-04-18 19:10
「経験って大事だと思うんですよ」。15年のシーズン開幕を前に、永木はこんな話をしていた。J1とJ2で戦ってきた過去5シーズンの記憶が、「うん、ホントにそう思います」と彼を頷かせていた。
「大学生からプロになった時に、いろいろな方から『経験が大事だよ』って言われたんですけど、正直ピンと来なかったんです。でも、Jリーグで試合を重ねてきて、『あ、今ここにいるべきだ』ということが分かるようになってきた。それって経験を積んできたからで、気持ち的にも余裕が生まれるんです」
サッカーのゲームは、主導権が行き来しながら進んでいく。自分たちの時間帯に得点を奪い、相手の時間帯に失点をしないことが重要で、その手助けとなるのが経験だ。
「経験を持った選手なら、うまくいっていない時間帯をしのぐとか、悪い流れを変えるとか、そういうことができると思うんです。チームをいい方向へ導ける。テクニックだったり、走力だったり -
【取材ノートの記憶】永木亮太(鹿島)「新天地での更なる飛躍へ」(3/4)
2016-04-18 19:10
チームがJ1へ復帰した13年は、『湘勝輝点』の四文字が永木を表した。『ウイニングメーカー』と読まれた。キャプテンにも指名された背番号6は、まさに勝利を運ぶ存在でなければならない。
湘南と永木のJ1挑戦は、10年に続いて1年で終わりを告げてしまった。だが、出場停止を除くリーグ戦33試合に先発したキャプテンは、他クラブの関心を惹くタレントである。オフには正式なオファーが届くものの、永木は残留を選んだ。
「ホントにすごく悩みました。正直に言えば、違うチームでやってみようかなと思ったこともあったんですが……。残留を決めた中で一番大きかったのは、13年のシーズンにJ2へ落としてしまったことへの責任感と、もう一度このチームで自分が中心となって、1年でJ1へ上げたいという気持ちでした」
他クラブのオファーを退けたキャプテンは、14年のシーズンを『湘南乃魂』のキャッチフレーズとともに過ごした。12 -
【取材ノートの記憶】永木亮太(鹿島)「新天地での更なる飛躍へ」(2/4)
2016-04-18 19:10
口を突くのは課題ばかりである。ただ、表情に憂いはない。懸命さがにじむものの、充実感ものぞく。週末のたびに訪れる《未知との遭遇》が、この大学生を成長させている。
「チームが苦しい状態なので、とにかく勝利できるように貢献したい。試合で使ってもらえるなら、チームのためにすべてを出し切っていきたい」
ところが、反町監督のもとで11年ぶりのJ1リーグに挑んだ湘南は、わずか1シーズンでJ2へ降格してしまう。収穫を見付けるのが難しい中で、リーグ最終節に指揮官が語った言葉が印象的だった。
「今日頑張った選手を2人挙げろと言われたら、現役の高校生と大学生を選ばざるを得ない。それは次につながるもので、ポジティブに捉えていいところ」
ベテランの坂本紘司も、指揮官の肌触りに同意する。この日ピッチに立った高校生と大学生――遠藤航と永木らに触れた。
「若い選手が試合に出たのは、チームの財産になっていくと思う。 -
【取材ノートの記憶】永木亮太(鹿島)「新天地での更なる飛躍へ」(1/4)
2016-04-18 19:10サッカー専門誌の編集者時代から現在に至るまで、使ってきた取材ノートの数は90冊以上に上る。それらに残されたメモを頼りに、日本サッカー界のさまざまな時代をひも解いていく。第106回は2015シーズンをもって湘南ベルマーレから、鹿島アントラーズへの移籍を発表したMF永木亮太。湘南で主軸へと成長を遂げた男が、新天地での更なる飛躍を目指して動き出す。[Jリーグサッカーキング3月号掲載]
「よく走る選手だなあ」というのが第一印象だった。2010年7月25日の湘南ベルマーレ対FC東京戦で、永木亮太のプレーを初めて見た。
J1リーグデビューを飾ったばかりの22歳は、中央大学在学中のJFA・Jリーグ特別指定選手である。反町康治監督(当時)に聞くと、「チーム事情が苦しいからな。まあ、良くやってくれているよ」と言う。素っ気なく聞こえるコメントには、もちろん続きがあった。
「ボールを動かすことができるし、ボー -
【ゴールを決める異能GK】ロジェリオ・セニ…ゴール数は驚異の「131」歴史に名を刻んだ伝説のGK
2016-04-11 20:00GKを敵陣のゴール前まで上げるという行為は、大抵の場合、劣勢に立たされたチームのラストプレーの選択肢でしかない。だが、この男たちにとっては少し事情が違うようだ。ゴールに対して強いこだわりを持つ6人の守護神を紹介する。[ワールドサッカーキング3月号掲載]
最多得点記録への飽くなき探求を続けるリオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドにも、決して更新することができない記録が存在する。それは“GKとしての”歴代最多ゴール記録だ。
記録保持者は23年間にわたってサンパウロで活躍したロジェリオ・セニ。2006年8月、2-2で引き分けたクルゼイロ戦で2ゴールを挙げてホセ・ルイス・チラベルトが保持していた「62」を抜き、GKの歴代最多得点者となった。その後、更にゴールを重ねることになる守護神は「幸せだ。大きな節目だからね。GKとして実現できる数字だとは思っていなかった。歴史に刻まれると思う」と試合 -
ジダン新体制で何が変わったのか? いくつかの“変化”からレアル再建の可能性を探る(3/3)
2016-04-04 19:00シーズン前半戦、どこか閉塞感が漂っていたチームは指揮官の交代を機に、文字どおり生まれ変わった。チームを甦らせるために新監督は何をしたのだろうか? この数週間で見られたいくつかの変化を考察する。[ワールドサッカーキング3月号掲載]
■新監督に好意的なファンやメディア
ジダンの監督就任で変わったのはチームだけではない。地元ファンもまた、週末の試合を楽しみにしている。第12節のバルセロナ戦で0-4の大敗を喫して以降、今シーズンのホームゲームの観客動員数は右肩下がりで減少。第16節のラージョ・バジェカーノ戦では、スタジアムの収容率が73パーセントにまで落ち込んだ。しかし、デポルティーボ戦、ヒホン戦と、ジダン体制最初のホームゲーム2試合の平均収容率は84・25パーセントにまで急回復。いずれも注目度が低い格下相手の試合だったが、スタジアムは“ジダン・フィーバー”に沸くサポーターで埋め尽くされた。
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ジダン新体制で何が変わったのか? いくつかの“変化”からレアル再建の可能性を探る(2/3)
2016-04-04 19:00シーズン前半戦、どこか閉塞感が漂っていたチームは指揮官の交代を機に、文字どおり生まれ変わった。チームを甦らせるために新監督は何をしたのだろうか? この数週間で見られたいくつかの変化を考察する。[ワールドサッカーキング3月号掲載]
■“選手ありき”のチームマネジメント
では、「ジダン効果」はインチキなのかと言えばそうではない。ベニテス時代との最も大きな違いは、選手たちが戦う姿勢を示していることである。特に顕著なのが守備に対する姿勢だ。地元スポーツ紙『アス』は、デポルティーボ戦でのボール奪取回数が66回だったと紹介したが、これはベニテス時代の1試合平均54回を大きく上回っている。昨夏の監督就任時、「守備の改善」をメインテーマに掲げていたベニテスにとっては、皮肉な現象と言えるだろう。
更にモドリッチが「ベニテスには申し訳ないけど、監督交代は良かった」と告白したのを皮切りに、「ベニテスよりジダ -
ジダン新体制で何が変わったのか? いくつかの“変化”からレアル再建の可能性を探る(1/3)
2016-04-04 19:00シーズン前半戦、どこか閉塞感が漂っていたチームは指揮官の交代を機に、文字どおり生まれ変わった。チームを甦らせるために新監督は何をしたのだろうか?この数週間で見られたいくつかの変化を考察する。[ワールドサッカーキング3月号掲載]
■チームの方向転換のためジダンが放った“3つの矢”
ジネディーヌ・ジダンが新監督に就任して以降、レアル・マドリードは第19節のデポルティーボ戦(5-0)、第20節スポルティング・ヒホン戦(5-1)と2試合連続で圧勝を収めた。新生レアルがこれほど幸先の良いスタートを切るとは、監督交代を支持していた識者やファンでさえ予想していなかったことかもしれない。そうしたチームの変貌ぶりを、人々は“ジダン・エフェクト”と呼んだ。では、「ジダン効果」とは具体的にどのようなものなのだろうか。
まず変わったのは、チームの基本スタイルだ。よりゲームのイニシアチブを握るべく、ポゼッション
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