-
“α-Synodos” vol.247(2018/7/1) 特集:怠惰は罪なのか?
2018-06-29 14:52262pt〇はじめに
1. 井上智洋「BI導入に向けて――怠惰は一種のハンディキャップである」
2. 浅川雅己「知の巨人たち――マルクス」
3. 大西連「ある人々の日常と語られる言葉のギャップ」
4. 吉永明弘「学びなおしの5冊〈環境学〉」
〇はじめに
この文章を書いている6月29日になんと関東甲信地方で梅雨明けが宣言されました。6月中の梅雨明けは統計を取り始めて以来初とのことです。今年も暑くなるのでしょうね! 熱中症にはくれぐれもご注意ください。
さて、αシノドス247号のご案内です。最初の記事は、先日光文社新書から『AI時代の新・ベーシックインカム論』を出版した井上智洋氏へのインタビューです。BIという社会保障制度についていろいろと伺ったのですが、この制度の導入のカギは「怠惰」への社会的眼差しをどう転換させるかにあるかと思います。貧困というと怠惰と結びつけられ、道徳的な非難の眼差しに、とくにここ日本社会ではさらされる傾向が強いですが、こうした傾向をいかに解除していくか、こうした点も念頭におきながらぜひインタビューを読んでいただければと思います。
先日、ブレイディみかこさん、松尾匡さん、北田暁大さんの『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』を読んでいたら、英国でマルクスTシャツが流行ってるとブレイディさんが発言していました。マルクスのイラストと一緒に「I Told So」という文句がプリントされているそうです。資本主義は放っておくと格差を助長させていくばかりだということが実感されている中で、マルクス・リバイバルが起こっているのでしょう。では、マルクスとはいかなる思想を残した人物なのでしょうか? 今号で取り上げる「知の巨人」はマルクス。浅川雅己氏にご解説いただきました。
ついで、大西連氏に「大西さんが日々、反貧困活動をされている中で感じていることを書いてください」とお願いしました。いただいたエッセイは陳腐な表現になりますが、「人間模様」としか言いようのない情景が目に浮かぶものとなっています。一言で貧困と言っても、そこにいるのはこれまた陳腐ですが千差万別の人間です。「人々の日常は生臭く、愚かで、分別もなく、善悪の概念がないこともある。でも、それが私たちの「生」なのではないか。」こう語る大西氏の文章から、陳腐なイメージを打ち破るリアリティを感じていただければ幸いです。
最近、倫理学という学問が面白いなと感じています。前号で高レベル放射性廃棄物をめぐる世代間倫理についての論考を掲載しましたが、こうした具体的なトピックを通してみると、倫理学がとてもアクチュアリティをもった学問として浮かび上がってきます。今号の「学びなおしの5冊」では環境倫理学者の吉永明弘氏に「環境学」のブックリストをお願いしました。汚染問題・自然問題・アメニティ問題という三つの分野を扱う環境学へのガイドとしてどうぞご活用ください。
-
“α-Synodos” vol.246(2018/6/15)
2018-06-15 15:48262pt━━━━━━━━━
“α-Synodos”
vol.246(2018/6/15)
特集:「自己本位」で考える
━━━━━━━━━
○はじめに
1.福田充「危機管理学」とはどんな学問か
2.山本貴光「「自己本位」という漱石のエンジン」
3.寺本剛「高レベル放射性廃棄物と世代間倫理」
4.高田里惠子「ちゃんとアメリカの言うことを聞いたら「大学生の教育」はもっとよくなる」
5.絵:齋藤直子、文:岸政彦「沼から出てきたスワンプマン」
━━━━━━━━━
〇はじめに
いよいよ梅雨、という空模様の東京ですが、みなさまは元気にお過ごしでしょうか? ぼく(芹沢)はじめじめした湿気が苦手なので、夏が待ち遠しいです。昨今の夏は暑すぎて、それはそれで大変ですが。さて、「αシノドス」246号のご案内です。
最初の記事は新しい企画です。「新・学問のすすめ」と題して、これから最先端の学問をインタビュー形式でわかりやすく伝えていきたいと考えています。第一弾は「危機管理学」をご専門とする日本大学危機管理学部教授の福田充氏にお話を伺いました。
「安全保障」や「治安対策」という言葉自体に忌避意識を持つ方もいます。おそらくそこに権力の悪しき作動をかぎつけるからだと思うのですが、そしてそれは健全な批判意識の発露ですが、しかし、どうも法や制度が導入されるときに騒ぐだけ騒いで、あとは知らない、という態度が多すぎるように思います。しかし問題はその後、法や制度をどう「民主的」に運用するかです。「リベラルな危機管理、民主的な危機管理というアプローチがあるんだ」という福田氏の言葉にどうぞ耳を傾けてください。
つぎに最近、『文学問題(F+f)+』にて夏目漱石の文学論を分析した山本貴光氏に、「漱石と明治という時代」というテーマでご寄稿をお願いしました。漱石が生きたのは、「恰も一身にして二生を経るが如く一人にして両身あるが如し」といわれた時代、つまり価値観が従来とは一変した時代です。そうした時代に漱石が自らの思考の礎としたのは何だったのか? 「二生」以上の変転を要請される現代にあっても、漱石のスタンスは重要な指針となるはずです。
ついで環境倫理学を専門とする寺本剛氏に、「高レベル放射性廃棄物」をテーマにご寄稿いただきました。現代社会では原発が不可欠のものとされていますが、原発は10万年以上もの長期にわたって危険であり続ける放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」をともないます。つまり、たとえいま全原発の稼働を止めたとしても、われわれは10万年以上もの長期にわたる世代にこの負債を押し付けねばなりません。このような「世代間の不正」を環境倫理学はどう考えるのか、寺本氏にご解説いただきました。
そして「今月のポジだし」。今回はドイツ文学の研究者、高田里惠子氏に「ポジだし」をお願いしました。高田氏はぼくのもっとも好きな書き手のひとりで、主著の『文学部をめぐる病い―教養主義・ナチス・旧制高校』は本当に面白いので、ぜひ手に取ってみてください。今回の記事も、高田氏の「面白さ」の一端が、その文体からもわかるかと思います。αシノドスをお読みいただいている皆さんには、「読書の楽しみ」とその重要性は自明なものかと思いますが、これからの若者たちにどうその魅力を伝えていけばよいのか、大袈裟に言えばここには「文明の岐路」ともいうべきものがかかっていると思います。
最後に毎月連載、齋藤直子氏のイラストと岸政彦氏のエッセイによる「Yeah! めっちゃ平日」。いつも感情の「機微」に触れてくる岸氏の文章ですが、今回は爆笑しました。いつもハッピーな気持ちにさせてくれる齋藤氏のイラストともにお楽しみください! -
“α-Synodos” vol.245(2018/6/1) 特集:異なった存在への眼差し
2018-06-01 14:31262pt━━━━━━━━━
“α-Synodos”
vol.245(2018/6/1)
特集:異なった存在への眼差し
━━━━━━━━━
○はじめに
1.浅羽祐樹「だまされないための「コリアン・リテラシー」――あの国を理解する方法と態度」
2.稲葉振一郎「木庭顕――「排除なき現われの場」としての市民社会は可能なのか?」
3.佐藤麻理絵「イスラーム世界の「移動文化」」
4.森口舞「学びなおしの5冊〈カリブ〉」
━━━━━━━━━
〇はじめに
いつも「αシノドス」をお読みいただきありがとうございます。シノドスの芹沢一也です。「αシノドス」最新号をお届けします。今号もバラエティに富んだコンテンツとなりました。
最初の記事は、韓国政治をご専門とする浅羽祐樹氏へのインタビューです。慰安婦問題から北朝鮮の非核化にいたるまで、毎日のように韓国をめぐる報道に接しますが、どうも韓国報道に対するスタンスをつかみかねています。そこで浅羽氏に、韓国や日韓関係についての報道を読み解くためのイロハをお聞きしました。
ついで、連載企画「知の巨人」。今回は社会学者の稲葉振一郎氏にお願いしました。しかしさすが稲葉さん、直球は投げてきません。取り上げられたのは、ローマ法の専門家である木庭顕氏。ロック的な自由とスミス的な自由を越えた地平に展望される「「排除なき現われの場」としての市民社会」。このヴィジョンの導きと手として、木庭顕氏への熱い思いが語られています。
ハイブロウな議論が満載の「αシノドス」、一息つけるエッセイがあってもよいかと思い、ヨルダンをはじめとした中東諸国においてフィールドワークを行っている佐藤麻理絵氏に、イスラーム世界の息遣いが感じられるエッセイをお願いしました。「移動」する民が形作ってきたイスラーム世界にあって、現在、「移動」はどのように変容しているのか? ぜひイスラーム世界の「いま」を体感してください。
最後は、初学者のための「学びなおしの5冊」。ラテンアメリカ・カリブ政治をご専門とする森口舞氏に「カリブ」をテーマに推薦図書を選んでいただきました。「奴隷制や植民地という歴史、独立後の理想と現実、多国籍企業、貧しさ、アイデンティティ、そして社会主義体制の今」を教えてくれる書籍たち、ぜひ本記事をガイドに手に取ってみてください!
それでは、どうぞ「αシノドス」をお楽しみください!
1 / 1