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■久瀬太一/8月1日/24時05分
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■久瀬太一/8月1日/24時05分

2014-08-02 00:05
    久瀬視点
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     バスは長いトンネルを走る。
     とりあえずみたい未来は、明日のことだった。
     明日、17時30分に、八千代という男に会う。彼を頭から信用する気にはなれない。少しでもヒントを手に入れておきたかった。
     加えてその直後には、聖夜協会の食事会がある。それにはソルも参加するらしい。知りたい未来ばかりだ。
     オレは、オレンジ色のライトが流れる窓の外を、じっとみつめる。
     バスの中に、アナウンスが流れた。男性とも、女性ともつかない、無機質な声。
     ――次は青と紫の節、9番目の陰の日です。
    「は?」
     思わず、声が出る。なんて言った? 日付けじゃないのか?
     バスが、トンネルを抜けて。
     みえた景色に、オレは絶句した。

           ※

     そこは、暗い石造りの通路だった。
     昔映画でみた、イタリアかどこかの古い地下水道に似ている。水は溜まっていないが、そんな雰囲気だった。
     ただし、巨大だ。
     幅も広いし、天井も高い。
     オレがその通路に、つったっていた。
     ――オレ、なのか? 本当に?
     妙に仰々しい鎧を身につけている。なんだか現実味のない、青みがかった金属でできた鎧だった。腰にはやけに装飾が立派な剣をさしていた。
     でも、そんなことよりも、問題はオレの目の前にる「なにか」だった。
     オレは、それの名前を知っていた。でも口に出したくはなかった。そんな馬鹿な、と思った。
     それは巨大だ。間近で見上げると首が痛いほどに。
     緑色をしていて、全身が鱗に覆われている。その鱗は鋼鉄のように、硬く鈍く輝いている。顔つきは爬虫類に似ている。黄色がかった眼球。瞳孔は切れ目のように縦に長く、真っ黒だ。顔の半分ほどもある口はわずかに開き、隙間から尖った歯が覗いていた。でかい図体に反して、冗談みたいに小さな翼が、背中にちょこんとついていた。
     唾を飲む。
     それは。
     簡単に表現するなら、ドラゴンだった。
     巨大なドラゴンが、長い首を折り曲げて、オレを覗き込んでいた。
     ドラゴンは巨大な口を開いて叫ぶ。
     あまりに大きすぎる音は、よく聞えない。バスの窓ガラスがびりびりと振動する。殴り飛ばされたように、目の前のオレが尻餅をつく。それから這うように逃げ出す。
     ――と、前方に、ひとりの女性が立っていた。
     奇妙な女性だ。髪が青い。全身がほんのりと発光しているようにもみえた。そして、それ以上に、ほんのりと。
     彼女は透けているようでもあった。
     ――幽霊?
     そんな言葉が思い浮かぶ。通路の一方にはドラゴンがいて、もう一方には幽霊がいる。
     ――めちゃくちゃだ。
     思考を、放棄したくなるくらいに。
     でもとにかくオレは、ドラゴンから逃げる。
     青白く輝く幽霊は、右手のドアの向こうへと消えていく。
     オレはそのドアのノブをつかんだ。が、開かない。
     ――鍵がかかっている?
     オレは数度、ガンガンとドアノブを動かすが、やはりドアは開かない。気がつけば間近に、ドラゴンが迫っていた。
     そいつは雪崩のように、オレにのしかかって。
     オレは頭から巨大な口に飲み込まれ、へその辺りで噛み千切られ、まっぷたつになって死んだ。
     じゅるり、とそれが血をすする音が聞こえた。

    【BAD FLAG-?? 非現実】

           ※

     バスが再びトンネルに入っても、オレは口を開けなかった。
     相変わらず気楽な声で、
    「なかなか壮絶なラストだったな」
     ときぐるみが言った。
    「なんだよ、あれ」
    「知らないのか? ドラゴンだよドラゴン。最強モンスターだ」
    「オレが、ドラゴンに食い殺されるってのか?」
    「ソルがなんにもしなけりゃな」
    「ありえない」
    「どうして?」
     きぐるみは、当たり前だけど、表情をかえない。
     変わらずにたにたと笑っている。
    「未来がみえるバス、ソルからのメール、瞬間移動。これだけ揃ってんだ。どうしてドラゴンだけ嘘だと思うんだ?」
     言葉に、詰まった。
     まさか。本当にオレは、ドラゴンに食われるのか?
    「女の子を助けるんだろう? 生き残れよ、ヒーロー」
     次は終点、8月24日です。
     そう無機質な声がアナウンスをして、バスはトンネルを抜ける。
     なにか念を押すように、目の前で、またみさきが死んだ。

    ――To be continued
    読者の反応

    ミチル @michiru_5q 
    bad flag『非現実』? 


    つまようじ @tumayouzi 
    ドラゴン…ドラゴン??


    あいう @kazushi096aiu 
    RPGを持ってこさせよう(混乱)


    ドックしぃ @shixi_inuinu 
    青と紫の節、9番目の陰の日っていつだよ(゚ロ゚)


    よもぎ@3D小説参加中
    おい、おい…、おいっwwwwww  


    闇の隠居 @yamino_inkyo 
    なんぞこれwww  


    ほうな@bellアカ @houna_bell 
    わはははははw  


    「蓮霧は嘘吐きだ」と蓮霧は言った @renmu0309 
    ええええええええええええええええええええええええええええええ 


    あさって @sakuashita1 
    あえて言おう…
    は?


    えのき @enoki82 
    どうした


    土平 一人 @Doheikazunto 
    超展開すぎる! 


    稲刈ブリザードトゥミコロクル農村マン蒲田 @ahonoko 
    予告状のドラゴンって何かと思ったらこういう出方するのね 





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