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キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 5
2013-08-28 00:005
それは、そこにいた。 上から、木洩れ陽(こもれび)のように注ぐ、青い月光の中だ。 幸いにも、こちらが風下(かざしも)だ。 音も、匂いも、向こうへは伝わりにくい。 草の中にうずくまり、一本の橅(ブナ)の幹に身体の一部を預けている巨大な獣。 グリズリーよりも、ホッキョクグマよりも、肉の量感のあるもの。 幾つもの翼がある。 何本もの腕や、脚が生え、それには獣毛が生えている。 獣毛が無く、鱗のある部分もあった。 鉤爪(かぎづめ)。 羽毛。 そして、幾つもの頭部。 口。 嘴(くちばし)に似たものもある。 蛇のようにゆるくのたうつ、腕とも脚ともつかぬもの。 ぐるるるるる…… るるるるるる…… チ、 チチチ、 チチチチチ…… 低く唸るような声。 囀(さえず)るような声。 そして、無数の口がたてる、荒い呼吸音。 普通、吸気の時は身体がふくらみ、呼気の -
キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 4 (3)
2013-08-14 00:00吐月―― かつて、本気で覚者になろうとした男だ。 高野山で修行をし、チベットに入ってカルサナク寺で、陳岳陵――つまり、久鬼玄造と出会っている。 「わたしはね、外法の中に、その手がかりがあるのだと、ずっと考えていた……」 カルサナク寺の地下で見た、アイヤッパンを中心とした『外法曼陀羅図』。 そこで見たのは、八番目、九番目、十番目のチャクラであった。 チャクラ――人体の背骨に沿って上から下まで並ぶ、力の発動部位である。 解剖学的には存在しない存在だ。 瑜伽(ヨーガ)においては、上から順に、次のように呼ばれている。 頭頂にあると言われている王冠(おうかん)のチャクラ、サハスラーラ。 眉間(みけん)のチャクラ、アジナー。 咽喉(のど)のチャクラ、ヴィシュッダ。 心臓のチャクラ、アナハタ。 臍(へそ)のチャクラ、マニプーラ。 脾臓(ひぞう)のチャクラ、スワディスターナ。
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