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キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 8 (2)
2013-09-25 00:00「おれを、救う?」 久鬼が、つぶやく。 久鬼の眸に、さらに光が点る。「ああ……」 久鬼は、溜め息のような呼気を吐いた。 一度、二度、眸を閉じたり開いたりした。「夢を、見ていたようだ……」 視線を、周囲にめぐらせた。「長い、夢だ……」 腕を持ちあげる。 その腕を眺める。 左右の手を。 そして、指を。 指先を。 その眸が、自分の身体に移ってゆく。「夢じゃ、なかったのか……」 溜め息とともにつぶやく。「それとも、まだ、夢を見ているのか……」 月光の中に、久鬼は、白い腕を差し伸ばし、そして、「ずいぶん、楽しい夢だったような気がする……」 謡(うた)うように言った。「悪夢であったような気もするが、それはそれで、悦びに満ちたようなものであったような気もするのですよ、九十九……」 久鬼の視線が、九十九にもどった。「何故、救うのです?」 久鬼が言った。「何故、このぼくを、救わねばならないのです……」 ゆっ -
キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 7
2013-09-11 00:007
何故、宇名月典善(うなづきてんぜん)がここにいるのか。 龍王院弘(りゅおういんひろし)はそう思った。 自分の方が、かつての師、典善にそう問いたかった。 自分が、典善のもとから去ったのは、このままでは、いつか自分はこの師と闘うことになると考えたからだ。 言い出したのは、典善からだ。 出てゆけと言われたのだ。 このままじゃあ、おめえを殺しちまうかもしれないと、そういうことを言われたのではなかったか。 ちょうどよかった。 龍王院弘自身も、似たようなことを考えていたのだ。 闘ったら、どうなるか。 負けるとは思っていなかった。 しかし、勝てるとも思ってはいなかった。 だが、このまま一緒にいれば、ある時、ふいにその瞬間が来てしまうような気がした。 その結果、自分は典善を殺してしまうかもしれない。 逆に、自分が典善に殺されてしまうかもしれない。 そういう闘いになるであろうということはよくわかっ
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