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キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 8 (6)
2013-10-23 00:00巫炎にとっては、あるいは、九十九や吐月は、敵側の人間と見られてもしかたのない関係にあった。 久鬼玄造(くきげんぞう)が、巫炎を保冷車の中に閉じ込め、九十九も吐月も、その久鬼玄造と一緒にこの現場に駆けつけているのである。 それにしても、どうして、巫炎はあの保冷車の中から抜け出すことができたのか。 それが、九十九には不思議であった。 おそらく、今、キマイラ化した久鬼の前に立っている僧衣の男が、巫炎を助けたのではないかと、九十九は思う。 しかし、それを訊ねている時間は、むろん、ない。 ツオギェルは、久鬼の前に立って、しきりと身振り手振りで、何やら話しかけているようであった。 ツオギェルの口が開く。 声は聴こえない。 久鬼の口が開く。 声は聴こえない。 久鬼は、もどかしそうに、身をよじる。 そして、久鬼は、時おり、九十九にも聴こえる高い声で叫ぶ。 それに対して、ツオギェルは、たびたび、自分の両手 -
キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 8 (4)
2013-10-09 00:00「九十九くん……」 吐月(とげつ)が、何ごとかを察したように、一歩、退がる。 吐月に声をかけてはいられない。 今やろうとしていることに、全神経、全細胞、それこそ髪の毛一本ずつまで、使って集中しなければならない。 肉体が、別のものに化してゆくようだ。 大地になる。 地球になる。 重力になる。“石”をやっていてよかった。 雲斎(うんさい)に言われて、円空山で、石を割ろうとした。 巨大な石だ。 とても割れそうになかった。 かわりに、九十九は、石を見つめた。 石を見つめながら、大地と対話し、己れ自身と対話をした。 あの体験が、今、自分がやっているこのことを可能にしているのだ。 全身を、熱い、高温の気の塊(かたま)りと化すこと。 しかも、わずかな時間――ふた呼吸で。 寸指波(すんしは)を全身で打つ――その感覚だ。 両足を開く。 腰を落とす。 両手を拳に握って、腕を両脇にたたむ。 これが、どの程度、今
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