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  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第一話

    2023-05-04 15:10  
    著:古樹佳夜絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央★第二話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2115953-------------------------------------------◆第一話第一章「大江山よりの便り」下町の風情漂う商店街。最奥に不思議堂がある。
    ボーンボーンと
    真向かいの時計店の振り子時計が夕暮れ時を告げた。
    裏手の飲み屋から、ガヤガヤと酒呑たちの笑い声が
    聞こえてくる頃だが、そんなことなどお構いなしで、
    吽野は一心不乱に売れない冒険小説を執筆していた。
    吽野「裏の飲み屋、楽しそうだな……それに引き換え、俺は机に齧り付いて、何してんだろうねぇ……」
    吽野の集中は完全に切れてしまった。
    吽野「あ〜ダメだ……。阿文クン……」
    阿文「時計屋から聞こえただろう。今は五時」
    吽野「そうじゃなくてぇ、お茶ちょうだい
  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第二話

    2023-05-04 15:05  

    著:古樹佳夜
    絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央★第三話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2115955------------------------------------------第二話序章「次なる演目は」
    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆
    吽野「う〜〜〜ん……」
    吽野は文机に向かって、頭をガリガリと掻いていた。
    後ろから、心配した阿文が声をかける。
    阿文「先生、何を唸っているんだ。お腹でも壊したのか」
    吽野「お腹は壊してない。今ね、舞台の題材を思案中なんだ〜」
    阿文「ほう、舞台か」
    吽野「次回は二人芝居の予定だよ」
    阿文「二人だけ? 他の役者を呼んでも良さそうだが」
    吽野「予算の問題だよ。出演は俺と阿文クン」
    阿文「ええ、また僕も出るのか」
    吽野「不満げだね」
    阿文「うーん、本当に僕でいいのか? 僕は、演技に関しては
  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第三話

    2023-05-04 15:02  
    著:古樹佳夜絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央★第四話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2115964----------------------------------------------------
    第三話第一章 文豪の集い

    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆

    吽野「寝癖直んないな……ま。いっかぁ」

    吽野は前屈みになりながら

    右手で前髪をいじり、ぶつぶつ言っていた。

    阿文「おや、先生が鏡台の前で髪を整えている。まるで猫みたいだ」

    部屋に入ってきた阿文はくすくすと笑った。

    足元をすり抜けたノワールが、目を細めて、細く鳴いた。

    ノワール「ニャー〜」

    阿文「ははは。確かに、ノワールの言う通りだ。猫だったらあんな寝癖はつけてない」

    吽野「悪口が丸聞こえなんだけど」

    阿文「おっと、気づかれた」

  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第四話

    2023-05-04 15:00  
    著:古樹佳夜絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央
    ★第五話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2149215-----------------------------------------------------

    第四話序章「狛犬」

     

    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆

     

    その日、吽野は上機嫌で、阿文に話しかけた。

     

    吽野「阿文クン、春だね」

    阿文「ああ。そうだな」

     

    店内の片付けをしていた阿文は、

    手を止めることなく受け答えした。

     

    吽野「春といえば、なんの季節かわかるかな?」

    阿文「そうだな……うーん、桜の季節……かな?」

    吽野「それ! いやー俺たち気持ち通じ合っちゃってるよね〜」

    阿文「それはよくわからないが」

    吽野「あらそうなの?」

    阿文「そういえば、ちょうど今、裏手の神社は桜
  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第五話

    2023-05-04 14:00  


    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    吽野:浅沼晋太郎
    阿文:土田玲央
    -----------------------------------------------------
    ◆第五話 第一章「泥棒!」
    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆
    阿文 「先生、大変だ!」
    阿文が血相を変えて飛んでくるものだから、
    吽野は書き途中の草稿をくしゃくしゃと丸めて部屋の隅に放ってしまった。
    もっとも、原稿用紙の上に、落書いていたことを悟らせないためだ。
    吽野 「どうした? 3日前買い付けてきた呪いのマネキンが喋りでもした?」
    阿文 「あいつ喋るのか!?」
    吽野 「って噂だよ」
    阿文 「昼間ぶつぶつ聞こえるのはあいつだったのか……って!そうじゃない、それよりも大変なことが起きたんだ」
    吽野 「一体何が起きたの?」
    阿文 「不思議堂に泥棒が入った!」
    吽野 「なにぃ!」
    その一言で、吽野は文机をひっくり返す勢いで立ち上が
  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 特別編【顔のない男】

    2023-03-24 21:19  
    特別編『顔のない男』著:古樹佳夜
    絵:花篠本編生朗読のアーカイブは「令和5年1月記」の後編でご覧いただけます!吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央男:武内駿輔前半 https://www.nicovideo.jp/watch/so41780787後半 https://www.nicovideo.jp/watch/so41787628
    [本作に関する注意]---------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で
    複製、転載、配信、送信、譲渡(転売、オークションを含む)すること、
    あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。
    また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。
    -----------------------------------------------------
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  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 特別編【ブラックサンタの襲来】

    2023-01-06 18:10  
    特別編『ブラックサンタの襲来』著:古樹佳夜
    絵:花篠本編生朗読のアーカイブ公開中前半 https://www.nicovideo.jp/watch/so41579867後半 https://www.nicovideo.jp/watch/so41579908
    [本作に関する注意]---------------------------------
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  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 閑話『迷い家』

    2022-11-25 18:21  
    閑話『迷い家』著:古樹佳夜
    絵:花篠
    [本作に関する注意]---------------------------------
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    -----------------------------------------------------
    -----------------------------------------------------
    ◆◆◆◆◆民家◆◆◆◆◆
    紅葉に染まる静かな山の奥。
    ぽつんと、取り残されたように佇む古民家に、小さな人影が二つあった。
    ?? 「ねえ、誰か来たようだよ」
    ?? 「ふーん。次の訪問者は二人か」
    ?? 「まもなく日が落ち
  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第五話エピローグ『阿吽の絆』

    2022-10-30 17:58  
    第五話 エピローグ『阿吽の絆』著:古樹佳夜
    絵:花篠
    [本作に関する注意]---------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で
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    あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。
    また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。
    -----------------------------------------------------
    -----------------------------------------------------◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆

    存在が消えかかった阿文をなんとか救い出した吽野は
    神社で満月と別れた後、不思議堂に帰ってきたのだった。
    吽野「ただいま〜……。ようやく不思議堂に帰ってこられたね……って、う
  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第五話第五章(最終章)『満月』

    2022-10-22 17:50  
    200pt
    第五話第五章(最終章)『満月』著:古樹佳夜
    絵:花篠
    [本作に関する注意]------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信、譲渡(転売、オークションを含む)すること、あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。
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    ◆◆◆◆◆居酒屋◆◆◆◆◆
    吽野「おじさん、こっちに串3本」
    店主「はーい」
    宵の口。
    商店街の居酒屋のカウンター席に、吽野はぽつんと一人座り、
    ジョッキを片手に、一杯やっていた。
    普段であれば傍に阿文が並んでいて、
    マイペースに杯を傾けているというのに。
    吽野は小さくため息をついた。
    阿文は闇市から帰るなり、寝込んで起き上がる様子もない。
    吽野「……現世に神仏がとどまるのは、難しいもんだな」
    吽野は虚空に向かって呟いた。
    それは、主人のことでもあり、相方である阿文のことでもある。
    懐から銅鏡を取り出し、それをカウンターに置く。
    自然と主人と交わした会話が思い出された。
    主人曰く、この鏡は、闇市で出会った男が長らく所有していたと言う。
    それ故、この汚れた銅鏡を長く依代にするのは困難なのだ。
    ならば、この銅鏡を所有してた、あの男の正体とは――……
    質問を重ねたかったが、
    銅鏡を介しての交信は不安定で真相には未だ辿り着けていない。
    おまけに、心配事は他にもある。
    現在の阿文の依代には、しっかりとしたヒビが入っている。
    吽野(依代の替え時なんだ。こんなことは一度や二度ではなかったし)
    吽野はジョッキを傾けて、心配事を喉の奥に押しやろうとした。
    きっと近いうちに、主人の手で阿行像は再建される。
    そのための繋ぎを早く見つけないとならない。
    念の為、不思議堂店内を隅まで掘り返して、代わりを探したが
    阿文の器にちょうどいいものはなかった。
    布団に横になったまま、ぐったりする阿文を見て、焦りも覚えた。
    吽野「まあ、考えすぎても、仕方のないことだ……」
    先ほどまで作業をしていたので、
    身体中埃まみれでクタクタだった。
    ただでさえ、今日は大捕物だったのだ。
    店主「はい、串3本」
    吽野「ありがと」
    皿を受け取り、焼きたての鳥を頬張りながら、吽野は阿文を思った。
    おかゆを作って台所に置いてきたが、
    きっとあの様子では手はつけてないだろう。
    夕飯をさっさと済ませて家に帰ろう。
    3本目の串を頬張った時だった。
    ??「その鏡、しまっといた方がいいぞ」
    吽野「ん?」
    ??「嫌な気配がする」
    カウンターの隣から声がした。
    横を見れば、いつの間にやら座っていた真っ黒な服を着た大男がいた。
    男はこちらに視線もくれず、何をしているかと覗けば
    手元で一心不乱に焼き魚をほぐしている。
    嫌な気配と、この男は言った。
    主人曰く、この鏡は汚れがあるというから、言い当てられたことになる。
    吽野「わかるのか」
    ??「まあ……」
    妙に低い声だ。威圧感があって、重々しく腹に響く。
    顔から視線を落としていけば、
    黒いタートルネックから刺青がはみ出している。
    それから、耳たぶのあちこちを貫通している刺々しい銀のピアス。
    吽野は怯んで、ジョッキの酒を飲み干した。
    ??「警戒してるだろ」
    空のジョッキを握りしめていた吽野は、酒の代わりに
    ごくりと生唾を飲み込む。
    吽野「警戒しない方がおかしいでしょ」
    どう見てもカタギじゃない。
    男はじろりと睨んだので、吽野と視線がぶつかった。
    おかげで、その瞳が真っ青であることに気づかされる。
    整った鼻梁。髪は真っ黒で、長く伸ばしている。
    外国人だろうか。
    吽野「あんた何者?」
    ??「ただの通りすがり」
    酒のある店で、この手の輩に絡まれるなんて、
    面倒だし都合が悪い。
    なるべく平静を装って、刺激せず、
    やり過ごそうと、吽野は心に決めた。
    男はカウンターに何かを置いた。
    それは、くしゃくしゃになったレシートだった。
    ??「紙……これしかなかったわ。まあいいか。お兄さんペンある?」
    吽野「……万年筆なら」
    ??「貸して」
    吽野は袂に放り入れていたままの万年筆を男に手渡した。
    男は慣れた手つきで、紙に線を引いていく。
    吽野「それ、なに?」
    ??「おまじない。なんかあったら、駆けつけてやる」
    吽野「えー……電話番号かなにか?」
    ??「はは! まさか。そういうのは可愛い子にしかしない」
    ナンパなやつだな、と吽野は鼻で笑った。
    困った時にこいつに電話をかけたとして、
    ことが済んだら取り立てられて身ぐるみ剥がされてしまうのでは……。
    想像して、吽野は身震いした。
    吽野「ねえ、『なんかあったら』って、どんなこと?」
    ??「さてね。俺の勘だと、今夜中に起こると思うぜ」
    吽野「言い切る根拠は?」
    ?? ないよ。勘だっていってるっしょ」
    冗談を交えている間に、男はペンをカウンターに置いた。
    ??「俺の勘って、だいたい当たるんだよね」
    吽野「怖いこと言うなよ……」
    ??「はい、これ袂に入れといて」
    男が書いた線は交差して、格子模様になっていた。
    一体、なんの模様なのか。おまじないと言っていたが。
    裏を返すと、コンビニで煙草と水を買った会計が書いてあった。
    吽野の目には、ただの悪戯書きにしか見えない。
    ??「そんじゃね」
    男は立ち上がって、勘定を置いて去っていった。
    残された皿の焼き魚は、綺麗に骨だけになっていた。
    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆
    煌々と満月の照る丑三つ時だった。
    布団の上から雲ひとつない夜空をぼんやり眺める。
    吽野の目は冴えていた。
    相変わらず、阿文は起き上がってくる様子もない。
    静かで、けれども妙な胸騒ぎがする夜だった。
    先ほど居酒屋で声をかけてきた、
    あの男の声が耳にこだまする。
    ??(今夜中に起こると思うぜ)
    吽野は手に持っていた銅鏡を懐にしまい、
    ムクリと起き上がった。
    そして、足音を立てぬよう、静かに立ち上がり
    阿文が寝ている寝室まで歩んでいく。
    吽野の部屋と隣接しているので、数歩の距離だ。
    襖の前に立つと、部屋の中からかすかな唸り声がする。