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「二〇二〇年五月二十四日」
コメ0 草の根広告社 54ヶ月前
ビーチサンダルを履いて、海を散歩した。日曜の午前十一時。地元の顔見知りとその子供たちが数名、波打ち際で水遊びをしている程度の人出だ。熱くなり始めた砂の上を歩いて、波打ち際まで来る。さざ波が足首まで海を連れて来る。冷たい冬の記憶が足下から脳天へと駆け上って来る。五月とはいえ、本当に水が綺麗だ。浜...
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「名前も知らない花」
コメ0 草の根広告社 64ヶ月前
盛夏の小径を歩いていると色とりどりの花との思い掛けない出会いがある。庭先に薫るペチュニア。海沿いの窓辺を彩る月下美人。そして電柱の根元に咲く名も知らぬ小さな花々。そういう花々に目がいくようになったのは、娘と同じペースでゆっくりと歩くようになったからだと思う。
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「ピミエント・パドロン」
コメ0 草の根広告社 64ヶ月前
冷えた白ワインで乾いた喉を潤した僕らの前に、熱々のオリーブオイルで素揚げにされた細長いピーマンに粗塩を振ったものがカウンターに置かれた。それが僕とピミエント・パドロンの出会いだった。
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「絶望のキャベツスープ」
コメ1 草の根広告社 68ヶ月前
今、三浦半島を空撮したら陸地の大部分はキャベツで埋め尽くされているんじゃないだろうか。大部分とまでは言わなくても明らかに人口よりキャベツの方が多い。という季節の真っ只中に僕はいる。その上、今年は秋蒔きした春キャベツが暖冬で早く採れ始めてしまったので後から蒔いたものもあって、地元は例年以上に春キ...
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「ビーチクリーンと焚き火と音楽と」
コメ0 草の根広告社 73ヶ月前
ビーチクリーンと称する海でのゴミ拾いがイベント化したのはいつのことだったのだろう。少なくとも僕が「早乙女タイフーン」という連続ドラマの脚本を書いた2001年にはなかったと思う。夏の海のゴミ拾いがまだライフセーバーの専売特許だったあの頃には。
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「愛し愛されて生きるのさ」
コメ0 草の根広告社 74ヶ月前
愛するもののそばで寄り添うように生きることができたら人はそれだけで幸せなのだろうか。愛した分だけ相手にも愛されたい。そう思うのもまた人間ではないだろうか。けれども見返りを求めるのは本当の愛と言えるのだろうか。僕は――僕は見返りが欲しいと思ったどころか、見返りがあるなんて考えたこともなかった。少な...
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「平成最後の8月31日に」
コメ1 草の根広告社 75ヶ月前
8月31日の夏の海が一番好きだ。残暑の太陽の下で土用波と戯れるのもいいし、夕暮れに閑散とした寂しい浜辺で夏を連れ去ってゆく引き波を見送るのもいい。
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「海に吸い殻を捨てる人たちへ」
コメ2 草の根広告社 77ヶ月前
小学生の頃、「廊下を走っちゃダメ」とか「掃除をサボらないで」と高い声で注意する学級委員タイプの女の子が苦手だった。自分より先に生まれただけの人たちから一方的に押しつけられた正しさを疑うことなく鵜呑みにしている(ように見えた)彼女への嫌悪感だろうか。他人に干渉されたくないという怒りだろうか。今も自...
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「本という種を蒔く」
コメ2 草の根広告社 85ヶ月前
実を言うと他人に本や音楽を薦めることに抵抗があった。ひとつには自分を曝け出すのが恥ずかしいという思いが。もうひとつ自分には気がつけばベストセラーやヒット曲といった多くの人が好んでいるものとは違うものに強い共感を抱く傾向があると知った時点で、どうせ分かって貰えないだろうという諦めがあった。
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「海が好きなのは、海に集う人々が好きだからなのかもしれない」
コメ2 草の根広告社 86ヶ月前
鳶が旋回する空の下、小さな岬でコーヒーを飲んだ。降り注ぐ陽射しがまさしく秋麗と呼ぶにふさわしい日曜の午後だった。海へと続く芝生の上では娘が妻の手に掴まって歩く練習をしている。裸足で芝生の感触を味わうように歩を進めている。太陽の温もりを大地から感じているのだろう。気持ち良さそうに笑っている。
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「毎日700匹の犬や猫が税金で殺処分される一方、毎日犬だけで1600匹が売買されているこの日本という国」
コメ6 草の根広告社 100ヶ月前
僕は人生において犬や猫を始めとするペットの類を飼ったことが一度もない。物心ついた頃には近所に野良犬が一匹や二匹はうろついていて「噛まれると狂犬病になるよ」と脅されていた時代だった。実際野良犬に追い掛けられ怖い思いもした。飼育小屋の鶏が檻を破った野良犬に食べられた現場を目にしたこともある。だから...
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「子育てと消費について考え始めた日。」
コメ6 草の根広告社 100ヶ月前
退院するときからチャイルドシートが必要だというので、個人的には最初で最後のつもりで子供にまつわるあれこれが揃っているという大型ショップに足を運んだ。 チャイルドシートを、と言っただけなのに、「他のものはまだ何も」と妻が口を滑らせた途端、店員さんがあれも必要ですよ、これも買っておいた方がいいです...
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「Simple menu」
コメ4 草の根広告社 101ヶ月前
毎日の献立って本当に大変だと思う。作るのもそうだけれど考えるのはなおのことだろう。スーパーの生鮮食品売り場に並ぶ色とりどりの野菜。ランク付けされた肉。世界中の魚。そこからその日必要な食材を選び取るだけでもひと苦労だ。何を作るのかも決めずに食べたいと思う食材だけを手当たり次第買った結果、使いそび...
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「草の根広告社はこの時代において誰に何を広告してゆくべきなのかを少しだけ真面目に考えてみた。」
コメ6 草の根広告社 102ヶ月前
消費はもう回復しないんじゃないだろうか。過ぎ去ったあの日々が二度と戻らないのと同じように。けれどそれが人間としての成熟にも思えたのは、単に「消費しない人々のお金の使い方」が賢く丁寧なものになっただけのような気がしたからだ。彼らは、消費はしないけれど、投資はしている。 投資というのはいわゆる金...
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「人間はもう終わりだ」
コメ4 草の根広告社 109ヶ月前
12月に入ってようやく里山の木々も紅く色づき始めた。海の向こうに見える富士山の冠雪も例年とは違って未だ薄化粧である。雨が多くて気温が下がらない。おかげで畑のほうれん草には思うように甘味が乗らない。根菜は根腐れする。スナップ豌豆は本格的な冬を迎える前に育ち過ぎてしまうと結果、春を待たずに枯れてし...
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「BEACH BENCH」
コメ3 草の根広告社 109ヶ月前
浜辺にぽつんと佇む彼に出逢ったのは、11月も半ばを過ぎたある午後のことだった。砂の上を漫然と歩いていたにもかかわらず、見過ごすことがなかったのは、決して動くことはないのに生き物のような体温を発していたからだと思う。その体温のようなものも彼を生んだ作者の意図であり、意志であり、メッセージだったの...
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「こどもとしょかん」
コメ10 草の根広告社 110ヶ月前
秋晴れの日曜日、いつもの海沿いをランニングしていた時のことだ。葉山の小径に差し掛かったところで、ある手書きの看板が目に止まった。「こどもとうしょかんオープン」
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「最大限の幸福を最小限の消費で獲得すること」
コメ9 草の根広告社 110ヶ月前
4年目の畑で自生してくれるようになったもののひとつにアップルミントがある。いや、自生と手放しで喜んでいいものかどうか。手入れを怠っているせいで、もはや雑草のように蔓延っているのである。摘んでも摘んでも伸びてくる。ここが空気が冷たくても昼間はあたたかな日射しに恵まれた気候だからだろうか。真冬でも緑...
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「海を見ながら飲むビールが好きだ。」
コメ6 草の根広告社 110ヶ月前
海を見ながら飲むビールが好きだ。それも自宅では缶ビールではなく、瓶ビールを好んで飲むようになった。さすがに自分で買ってくるには重過ぎるので近所の酒屋さんにケースごと配達して貰う。銘柄はハートランドの大瓶だったり、スーパードライの中瓶だったり。ひとりだとちょっと多いけれど、奥さんと二人で飲むには...
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「Buy Nothing Day(何も買わない日)」
コメ11 草の根広告社 110ヶ月前
ここ数日、原稿の締め切りに追われ、ひたすら自宅でパソコンに向かっている。数時間おきに強ばった身体をほぐすためにベランダで海を見ながら背伸びをするのと、1時間ほど日課のランニングをする以外は外に出ていない。そんなランニングの最中、ふとあることに気づいた。それはここ数日間、1円もお金を使っていないこ...
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「波と波が衝突するとき その2」
コメ6 草の根広告社 112ヶ月前
波と波が衝突するとき、果たしてどんなことが起きるのだろうか。 Aという波とBという波とが正対で衝突すると、そこに2つの波の力が合算されたCという高い波が立つ。その衝突によってA、Bの波は消滅してしまうと思うところだけれど、それぞれの波は力を落とすことなく、方向も変えることなく、またAという波とBという...
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「波と波が衝突するとき」
コメ1 草の根広告社 113ヶ月前
「東京が嫌でこっちに来たの?」 いつものお肉屋さんで唐突にそう訊かれた。「そういう仕事なら、東京に住んでた方が色々と楽なんじゃない?」 ご主人は僕が注文した豚バラ肉を少し厚めのしょうが焼き用に切り出しながらそう続けた。「それは確かに東京に住んでた方が移動は楽ですけど・・・」「最近ね、品川から越し...