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■久瀬太一/8月12日/24時10分
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■久瀬太一/8月12日/24時10分

2014-08-13 00:10
    久瀬視点
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    「夜分遅くに申し訳ありません」
     と、スマートフォンからファーブルの声が聞こえて、ソルたちが動いてくれたのだと確信した。
    「急な話で申し訳ありませんが、明日、ある人物と簡単なゲームをすることになりました。つきましてはそのゲームの立会人として、貴方にもいらしていただきたいのですが、いかがでしょう?」
     なんであれ受けるつもりではいたが、尋ね返す。
    「ゲームってのは?」
    「相手に謎を出していただいて、私が解答いたします。明日の21時からですので、20時過ぎにお迎えにあがります」
    「相手ってのは?」
     ファーブルは笑う。
    「さあ。ソル、と名乗ってらっしゃいましたが、心当たりはございますか?」
     もちろん、ある。
    「友達だよ」
     とオレは答える。
    「では、立会人の件はお受けいただけますね?」
    「どうかな」
     オレは考える。
    「いくつか条件がある」
    「貴方たちは条件ばかりだ」
    「仕方ないだろう? こっちはあんたに、部屋を荒らされているんだから」
    「みなさん誤解なさっているようですが、それは私ではありませんよ」
    「少なくともあんたの知り合いだ」
     ファーブルはため息のような音で笑ったが、なにも答えなかった。
    「条件というのは、なんですか?」
    「まず、オレの持ち物には触れない。心配しなくても危険なものは持ち込まない。これ以上、いろいろと持っていかれちまうのはごめんだ」
    「もちろんですよ。私はこれまで、人のポケットをあさるようなことはしたことがありません」
    「あんただけじゃない。あんたの知り合いもだ」
    「わかりました。明日の夜、久瀬さんの荷物には、指一本触れませんよ」
     ファーブルは嘘をつかないときいている。
     とりあえず、その言葉だけは信頼しようと決めた。
    「次に、あんたが持っているはずのスマートフォンは返してもらう」
    「ええ。それは、ソルさんともお約束しています」
    「いつ返してくれる?」
    「明日の夜には」
    「会ってすぐに?」
    「それはできません。私はこのスマートフォンで、ソルさんの問題にお答えしなければなりません。お互いの都合のよい時にお返しいたしますよ」
     ひっかかる言い回しだ。
     こいつの喋り方は粘着質で、嫌になる。
    「どうしてソルが、あんたとゲームをするんだ?」
    「互いに情報を賭けています。私が謎を解いたぶんだけ、ソルさんは私の質問に答える。解けなかったぶんだけ、私はソルさんの質問に答える」
     なるほど。
    「ソルからなにを聞き出したいんだ?」
    「それはお答えできません」
    「そういうなよ。予想はついている」
    「なんです?」
    「英雄の証の在り処」
     ファーブルは答えなかった。
     その沈黙が、不機嫌そうに聞こえて、たぶん正解だろうと思った。
    「わかった。迎えを待ってるよ」
     通話を切ろうとしたとき、ファーブルは言う。
    「ああ、そうだ。ソルさんから貴方宛てに、ひとつ問題をお預かりしております。この紳士のゲームに立ち会わせるにあたって、久瀬さんにもささやかな謎を出しておきたいそうですよ」
     ――ソルからオレへの問題?
    「なんだ?」
     ふ、とファーブルは笑った。
    「ゲームは明日です。謎かけは明日、ゲームが始まる時間にいたしましょう」
     ――こいつ。
     きっとそれは、ソルからオレへの暗号のようなものだ。ファーブルはそれを予想しているのだろう。
    「言わないと、立会人にはならない」
    「そうなれば明日のゲームは流れてしまうかもしれません。貴方にスマートフォンをお返しするのが、少し先になってしまいますが、それでも?」
     オレは舌打ちした。
    「それでは、明日、お迎えにあがります」
     そういってファーブルは、通話を切った。

           ※

     オレは八千代の部屋をノックする。
    「合言葉は?」
     と声が聞こえてきた。
    「決めてないよ、そんなもん」
     内側からドアが開く。
     オレは部屋の中に入り、八千代に言う。
    「ファーブルから連絡があった」
    「へぇ。少し意外だ」
     優秀な友達が頑張ってくれたんだ、とは言わないでおく。
    「明日、なにかゲームをするだとかで、オレを立会人にしたいそうだ」
    「ゲーム?」
    「ある人物と、情報を賭けているらしい」
    「なるほど」
     オレはデスクの前のチェアに、八千代はベッドに腰を下ろす。
    「意外に急速に、いろいろと動いているみたいだな」
     と八千代が言った。
    「準備は?」
     とオレは尋ねる。
    「できているよ。手に入れるのは簡単さ。問題は向こうに、それが知られていないかだ」
     ファーブルの手下たちは今も、オレたちの行動を監視しているはずだ。
    「うまくやったんだろう?」
    「もちろん」
    「どうしたんだ?」
    「ちょうど知人から電話があった。そいつに頼んで買ってきてもらった」
    「受け渡しは?」
    「ずいぶん気にするねぇ」
    「当たり前だ。命綱だからな」
    「万全だよ。ちょうどそいつは、この近くでレストランをやっていてね。オレはそこで、鞄を預けて、食事してきただけだ。帰りには鞄の中の荷物がひとつ増えている。そのあいだオレたちは、一言も会話を交わしていない」
    「わかったよ。信用しよう」
     店名さえ入っていない、無個性な茶色い紙袋をオレに向かって放り投げながら、八千代は言った。
    「荷物検査にひっかからなければいいけどね」
    「それは確認した」
     オレはファーブルとの会話を再現してみせる。
     笑って、彼は頷く。
    「ま、及第点だ。強硬派の動きについては?」
    「尋ねていないよ。妙に警戒させたくはない」
    「ああ。それでいい」
     紙袋の中身を確認して、オレは尋ねる。
    「オレとあんた、どっちが危ないと思う?」
    「さぁね」
     八千代は首を傾げる。
    「本来ファーブルは、オレの方に興味を持つはずだった」
     きっとその結果が、あのバスからみえた光景だろう。
    「なにもかもが想定通りにはいかないさ」
    「まったくだね」
     肩をすくめて、八千代は笑う。
    「ま、互いに、安全第一でいこう。無駄に血を流す必要はない」
     あんたには言われたくない、と心の中だけでオレは応えた。

    ――To be continued
    読者の反応

    ふらんつ≠さんそん @Blase_Flamme 2014-08-13 00:13:49
    「貴方たちは条件ばかりだ」  


    OMG @omg_red 2014-08-13 00:13:30
    あー、謎通らなかったか  


    子泣き少将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-13 00:13:57
    ちっあんにゃろう  


    いちこ@ソルティーライチ @ichiko_015 2014-08-13 00:20:11
    ファーブルさんやってくれましたなぁ…!!  


    煙@制作者派 @smoke_pop 2014-08-13 00:18:48
    さすがにファーブルも馬鹿じゃないですね。でもまぁスマホ所持者がファーブルなのはこれでやっと確定か。  


    クー@3D小説wiki管理人 @coo01 2014-08-13 00:16:17
    しかしこれは運営の想定を上回った可能性ある。  


    Sol Cosine charc 3 @char_c3 2014-08-13 00:18:27
    やっぱり八千代はなにかされそうだな  


    雑食人間@3D小説大阪現地愛媛遠征組 @zassyokuman 2014-08-13 00:19:27
    さぁて、何を準備したのか。久瀬くんの主人公力が試される。もうねよ、おやすみなさい。 





    ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
    お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(  @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
    なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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