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■佐倉みさき/8月14日/20時
2014-08-14 20:00
スマートフォンをテーブルの上において、ノイマンは小さなため息を漏らした。
「みつからないんですか?」
と私は尋ねる。ニールのことだ。
鹿児島の、あのカフェで姿を消してから、彼の行方はしれない。ノイマンは定期的に電話をかけているようだけど繋がらない。
「だめね。面倒なタイミングで消えないでほしいわ」
とノイマンは言った。
「面倒なタイミング?」
「そろそろ家に帰りたいもの。でも私のマンションの住所は強硬派にも割れてるみたいだから」
その辺りのフォローはニールの仕事だったんだのよ、とノイマンは言う。
なるほど。あまりそんな感じがしないから、しばしば忘れそうになるけれど、ノイマンは穏健派のスイマで、ニールは強硬派のスイマだった。彼がいなくなると、ノイマンも少し困るのだろう。
一方でニールのことが、純粋に心配でもあった。基本的に、私には誘拐犯に同情するような心理はないけれど、
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