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記事 9件
  • ■久瀬太一/8月11日/24時

    2014-08-12 00:00  




     2本の電話をかけた。
     まずは父親に。佐倉家に何人の子供がいたのか確認しておいて欲しい、とソルに言われていた。
     父もやはり、佐倉家の子供はみさきとちえりしか知らないようだった。ついでに聖夜協会についても尋ねてみたけれど、父の時代のそれは平和的で、ただ楽しげで、なにも影のない集まりにきこえた。
     次にオレは、ちえりに電話をかけた。
    「毎年、ホテルでクリスマスパーティをやっていただろ?」
     とオレは尋ねる。
    「12年前のクリスマスパーティ、覚えてるか?」
     ちえりは答えた。
    「最後のクリスマスパーティですね」
     そうなるのか。
    「その年、なにか特別なことがあったか?」
     ちえりはしばらく沈黙していた。おそらく、古い記憶を思い返しているのだろう。
    「いえ。特には」
     とちえりは答えた。
    「オレはその年、パーティに出ていないよな?」
    「はい」
     オレの記憶と一致する。
    「どうして翌年か

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  • ■誰かとのメール/8月11日

    2014-08-11 22:00  



    ねこくん@bell長崎支店コラ班猫神雅 @kun_inu 2014-08-11 22:00:37
    ハイ電波ーー!!  
    ナンジュリツカ@(有)ギルベルト・警備員 @nandina_citrus 2014-08-11 22:01:48
    電波きたぁああああああ!!!  
    子泣き少将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-11 22:01:50
    いよいよか  
    少年(ベルくん) @3d_bell 2014-08-11 22:03:51
    あ、電波きてるみたいです!
    みなさん、どんなメールを送りましょう?
    ナンジュリツカ@(有)ギルベルト・警備員 @nandina_citrus 2014-08-11 22:06:00
    メール、あさってさんのを編集したのでいいんですよね。  
    闇の隠居 @yamino_inkyo 2014-08-11 22:05:18
    @sol_3d あ

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  • ■佐倉みさき/8月11日/12時25分

    2014-08-11 12:25  




     ――違う。
     白いスクリーンに流れたエピソードは、きっと確かにニールのものだったけれど、タイムラインのストーリーとは結末の部分がまったく違う。
     私がみたのは愛想笑いなんて少しも関係しないエピソードだった。
     ただ暴力的で、傲慢な、今のニールに繋がる物語。
     目をひらいて、私は彼に視線をむけた。
     空調のよく効いた店内で、ニールは額に汗を浮かべて、頭を抱えてうつむいていた。眉間には深い皴が刻まれている。なにか悪夢にうなされているようでもあった。
     ノイマンが困ったような声を出す。
    「一体、どうしたっていうのよ?」
     ニールはうつむいたまま、低い声でつぶやく。
    「嘘だ」
     嘘。なにが。
     ニールがゆっくりと立ち上がる。
     そのままふらふらと、どこかに歩いていく。
     その姿は深い傷を負った獣を想像させた。誰の目にも触れないところに身をひそめ、誰にも知られないまま息を引き取っていくよう

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  • ■どこにだっていける男の視点

    2014-08-11 12:20  
    1


     15年前のオレは、どこにでもいるような中学生だった。そこそこ勉強ができて、愛想笑いが得意だった。
     オレと同じ人間なんていない。そう叫びたくなる。でもきっとオレと同じような中学生はこの世界中にいて、オレと同じように苛立ちながら、オレと同じようにいろんなことを諦めている。きっと、そういうことなんだと思う。
           ※
     親父はそれなりに金を持っていたから、世間的には不自由のない裕福な家庭にみえただろう。いかにも最近の金持ち風のスタイリッシュな家に住み、美味いものの感激を忘れるくらいに美味いものを食い、いちいちブランドの名前がついた服を着ていた。
     うちの家に足りないものがあるとすれば、それは母親くらいなものだった。彼女が家を出たのは、オレがまだ小学校を卒業する前のことだ。母はオレを引き取りたがっていたと聞いている。でももちろん親父はそれを許さなかったし、結局オレは、強い主張もなく

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  • ■佐倉みさき/8月11日/12時18分

    2014-08-11 12:18  




    1→22→40→38
    男は革靴に象徴される安定した人生に反発する→彼はスニーカーを履いていけるような冒険を求めていた→しかし大切なスニーカーを捨てられてしまう→彼は自分が鳥の籠と同じだと諦め愛想笑いしか浮かべられなくなった
    とか?
           ※
     意外だった。
     きっと、今回のエピソードの「ある男」とは、ニールだ。
     タイムラインに現れたそのエピソードは、まったく彼らしくはなかった。悲しいけれど一般的な、現実的な挫折の物語に思えた。それは今のニールにはつながらない。なのに。
     白いスクリーンに、文字が走った。
     ――条件を達成しました。
     ――リュミエールの光景、起動します。
     これで正解なのか。
     これが、正解なのか。
     事情を呑み込めないまま、私はその「光景」を眺める。




    みお@3D小説はまだまだ続く @akituki_mio 2014-08-11 12:19:18

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  • ■佐倉みさき/8月11日/12時13分

    2014-08-11 12:13  
    1





    38
    結局その男は愛想笑いしかできなくなった

           ※
     38番。困ったような顔で、笑みを浮かべる男性のイラスト。
     まぶたの裏側で、光がはじけたような気がした。
     ――愛想笑い?
     それは、少なくともニールには、似合わない言葉だった。
     きっと彼がもっとも嫌うもののひとつだろう、と思った。
     なのにまぶたの裏側には、諦めたような表情で愛想笑いを浮かべる青年がいた。
     はっきりとわかる。
     確かに、彼はニールだ。
     ニールが真面目ぶったスーツを着て、愛想笑いを浮かべていた。
     似合わない、とは不思議と思わない。
     なぜだかしっくりきた。それはきっと彼自身が、愛想笑いに馴染んでいるようにみえたからだろう。
     今のニールとはまったく違う彼。
     なのに妙に、現実的な彼。
     私は目をひらく。
     斜め向かいのニールに視線を向ける。
     彼は額を右手で抑えて、苦しげに口元を歪めていた

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  • ■佐倉みさき/8月11日/12時04分

    2014-08-11 12:04  




    1→22→40→。離婚した両親。父親のもとで暮らした男は父が用意した革靴が嫌いだった。男はクリスマスに母親から履き潰すための靴を買ってもらったが、なかなか履けずに隠していた。しかし、通いの家政婦に見つかり捨てられてしまう。までは分かっている。
           ※
     はやい!
     ――どうして、わかるんだろう?
     私は不思議だった。
     1番。22番。40番。
     革靴の「安定」とスニーカーの「冒険」は、なにか繋がりそうだなと思うけれど、40番にはまったく発想がいかなかった。
     けれどスマートフォンの向こうの人たちは、このエピソードを正確に知っているようだ。
     目を閉じる。
     するとスクリーンには、鮮明な映像が映っていた。
           ※
     映像の中にいるのは、ある少年だ。
     知らない少年。中学生か高校生か、それくらいだと思う。
     その少年は、なんだかふてくされているように、顔をしかめてい

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  • ■佐倉みさき/8月11日/12時

    2014-08-11 12:00  




     まぶたの裏側には、やはり白いスクリーンが映っていた。
     だが、そのスクリーンに表示される文字さえ、これまでとは違っていた。
     ――これが、最後の儀式です。
     明朝体の、綺麗な、温度を感じさせない文字が流れていく。
     ――このエピソードは、彼のものではありません。
     彼。久瀬くん?
     久瀬くんではないの?
     ――これはある男のエピソードです。ですがこのエピソードはすでに失われています。その男自身さえ忘れており、通常は思い出すことがありません。
     どういうことだ。
     ある男って、だれだ。
     誰も知らないエピソードを、どうやって思い出せというんだ。
     ――これは書き換えられた記憶を、それでもみつけだすための儀式です。
     と、スクリーンの上の文字は言った。
     ――彼の真実をみつけだしてください。3枚目までの物語は、すでに「描写」されています。必要なのは、結末だけです。
           ※

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  • ■佐倉みさき/8月11日/11時50分

    2014-08-11 11:50  




     鹿児島での私たちは、いままでとは雰囲気が違っていた。
     まずひとつに、ニールがいつも以上に、機嫌が悪そうだったこと。
    「こんな街の、どこに行けってんだ?」
     と彼はなかばケンカ腰に言った。
     ふたつ目はノイマンの返答だ。
    「どこにも行かなくていいわよ」
    「ああん?」
    「うるさいわね、ニール」
    「どういうことだよ?」
    「知らないわよ。鹿児島には現地めぐりのリストが存在しないの」
    「ならどうしてこんなところまで来たんだよ?」
    「さあね。上から言われただけよ。貴方も同じでしょ」
     なんだかぎすぎすした雰囲気のまま、私たちは鹿児島駅から路面電車でほんの数駅だけ移動した。
           ※
     路面電車を降りてすぐ、私たちはこぢんまりとした建物の2階にあるカフェに入る。
     床も壁も白い、さっぱりとした店内だ。窓には青や緑、オレンジの色がついたガラスがはまっていて、趣味の良いイラストみたいにお

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