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キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 3 (2)
2013-07-24 00:00どれだけ時間が過ぎたであろうか。
その時、銃声が聴こえた。
たあん……
という音。
近くはない。
しかし、それほど遠くというわけでもない。
だが、銃声とわかる。
間違いない。
そしてまた、
たあん、
たあん、
と、合わせて三発の銃声を、龍王院弘は聴いた。
どこかで、何かあったのか。
あの獣が、どこかで誰かを襲い、銃で撃たれたのか。
こんなところで、しかも夜に銃を持って歩く人間などいるであろうか。
これは、つまり、その銃の持ち主は、偶然に銃を所持していたのではないことになる。
銃を必要とするものの存在を意識していたからこそ、銃を持ってきたのであろう。
仮に、その人間が、あの獣に襲われて銃を発射したというのなら、一発ではしとめられなかったことになる。
三発――
その三発で、あの獣がしとめられたのか。
まさか――
銃で撃つといったって、あの獣のどこをね -
キマイラ鬼骨変 一章 獣王の贄(にえ) 2 (2)
2013-07-10 00:00あの時、自分の肉と心は、憎しみで満たされていた。
憎悪。
哀しみ。
絶望。
怒り。
そういうものに身も心も支配された時、訓練したことの何もかもを、自分は忘れ果てていた。
愛する妻――
久鬼千恵子。
そして、息子の麗(れい)。
妻の胎内にいる、子供。
それらの生命が、すでにこの世のものでないと思い込んでしまったのだ。
久鬼玄造が、彼らを連れ出したのだ。
日本へ――
その久鬼玄造を、自分は追った。
そして、彼らが死んだということを自分は知ったのだ。
いや、思い込んでしまったのだ。
そして、自分はキマイラ化し、台湾で殺戮(さつりく)を繰り返した。
九十九三蔵(つくもさんぞう)と猩猩(しょうじょう)によって、自分は捕えられ、自らを滅した。
しかし――
久鬼玄造や、麗が、そして千恵子の胎内にあった子が大吼鳳(おおとりこう)として日本で生きていることを自分は知っ
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