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記事 24件
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第120回「老犬と過ごす幸せに満ちた日々」

    2024-04-18 05:00  
     犬は、犬というやつは。共に暮らし始めて数年たつが、自分の何倍もあるでっかい二足歩行の生き物を信頼し、愛し、共に生きようとしてくれるだなんてまるで奇跡みたいだな、と未だに新鮮に感動する。犬と共に歩く世界はひとりの時よりもずっと鮮やかで、きらきらと輝いて見える。あのつぶらな瞳に映る自分のことだけはどうしたって嫌いになれない。しっぽをぶんぶんふって走り寄る姿に毎度強烈な赦しを感じる。生きていていいんだ、と思える。
     だから、『老犬とつづ井』の帯にある「愛犬というのは愛が犬のかたちをしているという意味です。」という一文に赤べこのように頷いた。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第119回「これぞオタク女子の夢の住まい!」

    2024-04-04 05:00  
     付き合いの長い友人たちと飲むたびに、おばあちゃんになったら絶対に同じマンションに住もうな、という誓いを立てあっている。たとえ結婚していようとしていなかろうと、子どもがいようがいまいが、人生の最後は支え合って面白おかしく生きていこう、と。全員一人の空間が必要なタイプだからシェアハウスじゃなくて、一部屋一部屋が独立した同じマンションの方が気兼ねしなくていいかも……なんて希望まで。『同人女アパート建ててみた』はそんな私たちにとってまさに理想の住まい!というか、こんなのいつの世もどの世代の女にとってもロマンそのものでは? 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第118回「最愛の妻が遺したレシピがくれたもの」

    2024-03-21 05:00  
     思い出の味はいつだって、懐かしいあの頃の記憶を連れてきてくれる。祖父の作った甘いすき焼き、先輩の家に行けば必ず出してくれたちゃんぽん麺、友人考案の簡易版ホットチョコレート。たとえもう二度と会うことのできないその人たちの声や顔を思い出すのに、ずいぶん時間がかかるようになったとしても。『米蔵夫婦のレシピ帳』を読んでいるとあまりの羨ましさに胸が張り裂けそうになる。なんで私は、レシピを聞いておかなかったんだろうね。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第117回「社会への怒り×SFの衝撃的な展開!」

    2024-03-07 05:00  
     初めて痴漢されたのはたしか小学生。それから電車に乗るときは常に臨戦態勢だ。耳鼻科検診に来た医者の距離感に違和感を抱いていたら保健室の先生が顔を真っ青にして飛んできたことがあった。未だに男性の医者がちょっと怖い。条件の良い物件が一階で諦めたこともあった。でも男友達はその理由が最後までよく分からないみたいだった。いいよな、気にしないで生きていける性別の人は。その場に女性が自分ひとりだけでビクビクしたことも、大好きな趣味を「どうせ彼氏の影響でしょ?」って鼻で笑われたこともないんだろうなあ。いいなあ……いやちょっと待て、なんで?『ジーンブライド』を読んでいるとなんとなくモヤモヤしたままスルーしていたあれやこれやへの感情が新鮮に蘇ってくる。私たちはもっと怒っていいんだと鼓舞してくれる。これは怒りだ。不平等への、不自由への燃え尽きることのない新鮮な怒り。クソがよ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第116回「偶然生まれるアートな瞬間との邂逅」

    2024-02-22 05:00  
     平安時代なら引目、鉤鼻、おちょぼ口。18世紀のヨーロッパでは病的なほどの白肌と過剰な付けボクロ。美人の定義は時代によって変わると言われているけれど、「美しい」と感じるものもまた、知らず知らずのうちに自分の中に蓄積された“美しさ”の定義によって、ジャッジしているように思う。そう考えれば、『偶発的ルネッサンス少女』に描かれる偶発的に生まれる構図にときめき、心惹かれてしまうのも当然だ。だって、それが美しいものだとして教育されてきたのだから。
     弛まぬ努力によって得た外見と内面によってモテてモテてしかたのない男子高校生のリクトだったが、どこか満たされない毎日を送っていた。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第115回「『日本警察の父』を描く幕末コメディ」

    2024-02-08 05:00  
     あなたの幕末はどこから? 私は司馬遼太郎著『新選組血風録』から。時代の転換点、その混沌というべき大きなうねりの中で己が才能を開花させ、国や未来、あるいは自分や仲間のために命を燃やした人々の群れは、その信念に関わらずどうしたって魅力的だ。『だんドーン』はそんな幕末期の日本を舞台に、後に「日本警察の父」となる川路利良を主人公にした物語。描くのはアニメ化やドラマ化もされた警察マンガ『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』の作者・泰三子。つまりは「ハコヅメ エピソードゼロ」だ。そんなの、おもしろくないわけないじゃないか! 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第114回「“飯フレ”という理想的な関係性」

    2024-01-25 05:00  
     社会人になってから友達を作るのってなかなかに難しい。人見知りがゆえに、仕事をきっかけに出会う人とは仲良くなるまでにものすごい時間と労力がかかるタイプ。学生時代の友人たちとは仲が良くとも、生活スタイルや住む場所の違いからふらりと「今日飲み行かない?」と声をかけることはもうできない。会うなら一か月ほど前から予定を決めて、店も予約して……。でも、今日! 今日美味しいごはんを誰かと一緒に味わいたいんだよ! そんな気持ちになることが月に1、2回ある。だから『ただの飯(メ)フレです』で描かれる“飯フレ”はまさに私の理想だ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第113回「絵を売るため、真逆の二人がバディに」

    2024-01-10 05:00  
     絵や美術品は美術館で見るもの。そうずっと思っていたのに、先日友人宅に遊びに行ったら大きな油絵が飾ってあった。「個展で一目惚れして買っちゃったんだあ」と幸せそうに語る友人に、絵って買えるんだ!と当たり前と言えば当たり前のことに気づき、そして湧く疑問。その絵の値段ってどうやってつけるんだ……?『いつか死ぬなら絵を売ってから』は、そんな曖昧なアートの価値を誰がどうやって決めているのか、アートが大金に化けていく過程を詳らかにする新しいタイプの美術マンガだ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第112回「情熱溢れるデザイナーの真の顔は……」

    2023-12-21 05:00  
     才能があれば、情熱があれば、売れる。世界がそんな純粋で分かりやすいものならどんなによかったか。どのような世界にだってそれだけではない力学があることを私はもう知ってしまっているけれど、まさかファッション業界もそうだったなんて。『ファッション!!』を読めば、純粋にその華やかさにうっとりしていた頃にはもう戻れない。私の憧れているあの服も、あのブランドも、きっと茨の道を通ってここまでやってきた。
     服をこよなく愛するファッションオタクの開は、長年ファッションに関わる色々な仕事をしてきたものの、現在は漫画家の妻・桜子や子どもと共に暮らしていくため、テレビの電飾関係の仕事で生計を立てている。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第111回「漱石がJK !? 文豪への愛が溢れる転生譚」

    2023-12-07 05:00  
    『こころ』や『吾輩は猫である』『坊っちゃん』など、多くの作品が教科書に載り、たとえ作品を読んだことはなくとも、旧千円札の人として知らぬものなどいない明治の文豪・夏目漱石。そんな夏目漱石がもし生まれ変わって女子高生として生きていたとしたら? そんな夢のような思考実験を恐ろしい解像度で描いているのが『JK漱石』。その題名からライトな内容を想像し侮ることなかれ、重いほどに詰め込まれた文豪への愛に当てられ、読めば読むほど漱石のことを好きになること間違いなし。