-
■八千代雄吾/8月24日/19時30分
2014-08-24 19:30
「傷は?」
「問題ない」
「問題ないわけないんだがね」
「でも、問題ないんだ。不思議とね」
久瀬とそんなやりとりを交わしていたときだった。
道路脇からふいに、男が飛び出した。
どうしようもなくオレは、ブレーキを踏み込む。
ボンネットが男に触れる。その、数センチ手前で停まる。
その男はもちろん、ひと目でわかった。
――ニール?
どうして?
彼は不敵に笑って、ボンネットに右足をかける。
「よう、八千代」
と彼は言った。
さすがにアクセルは踏めなかった。
「久しぶりだね、ニール。悪いんだけど、ちょっと急いでるんだ」
「ああ。こっちも急ぎの用だ」
「なんなら、乗ってくかい?」
「残念だがな。お前らを車から引きずりおろすのが、オレの用でね」
もう2人、周囲には男たちが現れていた。片方が車のすぐ後ろに立っているせいで、バックもできない。
「どうする?」
と久瀬が言う。
「 -
■久瀬太一/8月24日/19時20分
2014-08-24 19:20
それは、窓から押し込まれてきた。 意外に大きな紙袋だった。「なんだよ、それ」 と八千代がいう。 オレはその紙袋を開く。 何通もの手紙が入っていた。 それから、スマートフォン。おそらく八千代のものだ。続いてキャンディ。これもきっと、八千代用だろう。
それから、もちろん、ヒーローバッヂが入っていた。 ちゃちで小さな円盤だった。
でも、なによりも価値のあるものだと知っていた。
それをつかんだ瞬間、ふいに。
視界が、あのバスの車内に切り替わった。
※
「よう」
ときぐるみがいう。
「よう」
とオレは答える。
「ヒーローバッヂは手に入ったか?」
「ああ」
オレはそっと、手を開く。
そこには、新品の、綺麗なヒーローバッヂがあった。
「本物か?」
思い出していた。
ヒーローバッヂ。それは、みさきがオレへのプレゼントとして用意したものだ。オレが知っているヒーロー -
■“久瀬太一”の乗る車から生中継
2014-08-24 18:46
http://live.nicovideo.jp/gate/lv190859549
OMG @omg_red 2014-08-24 19:10:24
着いた!
ゲコ@SOL @tuno17169264 2014-08-24 19:10:53
わたした!
子泣き大将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-24 19:10:59
入れた!入れたー!
悠梨@bellの音色は鳴り続く @pear84 2014-08-24 19:11:05
押し込んだwwwwwwwwwwwwwwwwwww
しろくろパンダ@3D小説wiki編集班 @Miraclekurami 2014-08-24 19:11:08
現地GJ!
DD十六夜仁/多重仁格@ノベルナ @lunaticvoice 2014-08-24 19:11:15
超一瞬www
かめ@kameaa -
■久瀬太一/8月24日/18時45分
2014-08-24 18:45
新幹線を下りて、八千代がレンタルしたのは、トヨタの高級そうな黒い車だった。品川のナンバー。頭2桁は共に6だった。後部座席の窓ガラスには、スモークが入っている。
オレはその助手席に腰を下ろす。
身を屈めると、刺し傷が痛んで、オレは顔をしかめた。身体をまともに動かせない。
「大丈夫か?」
と八千代がいう。
「もちろん」
とオレは答える。
なんとか背もたれに身体を預けて、言った。
「みさきに会う前に、ちょっと用がある」
「なんだ?」
「奇跡を貰いにいく」
「どういう意味だよ?」
オレだって知らない。でも、
「みんなが動けば、当たり前に奇跡だって起きるらしいぜ」
とオレは言った。
ソルたちが動いていることは、もうわかっている。
今だってスマートフォンが震え続けている。
きっとみんな、上手くいくはずだ。
わらび餅@天田の闇に溺れた @namakerol 2014 -
■久瀬太一/8月24日/18時30分
2014-08-24 18:30
ふいに、スマートフォンが震えた。
――ソルからだ。
ほとんど確信を持って、オレはスマートフォンを開く。
メールを開いた。
そこには、シンプルに、オレがもっとも欲しい情報が書かれていた。
※
みさきは君と星を見た公園にいる。バッヂを受け取ったあと向かって欲しい
しながわりんこ @yuzuyuzuyuzuppe 8月24日
@3d_bell まずは、いまどこにいるか聞いてみて!
少年(ベルくん) @3d_bell 8月24日
このメールを送ったら返信がありました! @yuzuyuzuyuzuppe
【久瀬さんからの返信】
もうすぐ、東京につく。
そこからは車で移動する予定だ。
あいう @aiu_096 8月24日
@3d_bell
ベル君久瀬君に
12年前のクリスマス
君はどこにいた
って送ってほしい
後昨日の夜私が送った奴もでき -
■謎まとめ/8月24日/URL謎・パスワード謎
2014-08-24 18:29
※ここには読者が解き明かした謎の内容が記されています。自らの手で謎を解き明かしたいという方は、この記事を読み飛ばして次ヘ進んでください。
《読み飛ばす》
よーさん:潜 @yoh_53
白黒サーガ更新きました!!
aranagi@静岡ソル @arng_sol
シロクロ最新版 http://neumann.2-d.jp/sksaga/SK/
まぁや @maaaya1011
“@4koma_memories: しばらく現実を離れます。 悪魔の居場所を捜している者だけと面会する予定。 ――ノイマン”
きうり @yuzuhakusai
ノイマンがしゃべったぞ!
chronos @chronos9603
シロクロサーガ 悪魔の居場所のヒントだそうです http://twitter.com/chronos9603/status/503451790264655872/photo/1
アディルカ -
■佐倉みさき/8月24日/16時45分
2014-08-24 16:45
12年前。
私がまた会いたいと願って、だから彼は来てくれたんだ。
私が強引に、彼の運命を捻じ曲げて、彼に血を流させたんだ。
――どうして、忘れていたんだろう?
あの夜。
私は、パーティ会場を抜け出した。
ピアノの発表会の前に、前の年に彼と一緒に、星を見上げた場所にいこうと思った。
魔法のかかったキーホルダーを握りしめて走る。心を落ち着けるために。私ひとりでも、上手くピアノをひけるように。
――本当に?
違う。
私は、彼に救われたかった。
また彼に優しい言葉をかけて欲しかった。
でもパーティ会場に彼はいなかった。
だから、彼の姿を捜して。夜道をひとり走って、そして。
あってはならないタイミングで、彼は来てくれた。
甲高いブレーキの音が聞こえた。ふたつのライトが目の前まで迫っていた。
そのとき、彼はふいに現れて、笑って。
私の背中に思い切りビンタする -
■久瀬太一/8月24日/16時15分
2014-08-24 16:15
新幹線の座席に座って、少しだけまどろんでいた。
まだ意識がはっきりとしない。
身体が上手く動かない。
目を閉じる。
気がつけばまた、隣にはあのきぐるみがいる。
※
「制作者が望んでいるのは、たったひとつの証明だ」
ときぐるみが言った。
「それは夢みたいな証明だ。本来なら目にみえないもの、きっとどこにも存在しなかったもの」
オレは頷く。
「つまり、ハッピーエンドか」
昨日、雪が言っていた。
――この物語にはバッドエンドしか存在しない。
だからそれを、無理やりに、強引に、生み出さなければいけない。
「ヒーローバッヂを手に入れろ」
ときぐるみが言った。
「お前は誰にも、悪魔にも負けない、本物のヒーローになるんだ」
窓の外に、また知らない光景がみえる。
※
そこには、オレがいた。
黒い車の助手席に座っているようだった。
その車は道路 -
■佐倉みさき/8月24日/16時
2014-08-24 16:00
絶対に、また会おう。
と、自分でそう言ったことで、思い出しつつあった。
同じことを、あの夜の私も望んでいた。
だから広いパーティ会場で、私は彼の姿を探した。
去年のお礼を言いたかった。お返しのプレゼントを手渡したかった。いや、そんなことよりも単純に、また彼に会いたかった。
なのに彼はみつからなかった。
――どうして?
私は、悲しくて、不安で。相変わらず臆病で。
その年も私は、ピアノの演奏をすることになっていた。
どうにか心を落ちつけたくて、私は――
※
「私が悪いんだ」
と声がきこえた。
小さな女の子が、ベッドの上で膝をかかえている。
「みんな、私が悪いんだ」
それは、私だ。
まだ幼かったころの私だ。
幼い私はほとんど無表情で、うつむいている。
声をかけることができなかった。
「私が悪いんだ」
と、また彼女が言った。
胸の中で、そ -
■久瀬太一/8月24日/15時45分
2014-08-24 15:45
バスはまだ走り続けていた。
なにもない、まっ白な景色の中を、ひたすらに。
「ここはどこなんだ?」
とオレは尋ねる。
「まだどこでもない」
ときぐるみは答える。
「そろそろオレは、目を覚まさないといけない」
「どうして?」
「みさきのところにいかなくちゃ」
「でもさ、君が間に合ったとして、本当に彼女を救えるのかな?」
わからない。でも。
理由なんてどうでもいい。そんなもの、適当に後から見繕えばいい。
彼女は強がっているけれど、意外と弱虫なんだ。今も震えているかもしれない。あのキーホルダーには魔法がかかっているんだ。彼女には絶対に、悲しいことは起こっちゃいけない。
魔法なんて嘘だ。そんなもの存在しない。だからオレが、その嘘を本当にしないといけない。
「わからないけど、オレがいかなきゃいけないんだよ」
オレは彼女が撃たれることを知っている。
さっき知った。それがすべて
2 / 4