「FENDI-UN ART AUTRE ~フェンディ もうひとつのアート、クリエイションとイノベーションの軌跡~」は、まさにフェンディの核というべきファークリエイションに焦点をあてた美術展。世界に先駆けて、4月29日(月)まで上野の東京藝術大学大学美術館で開催されています。
「世界地図」、1978-79年秋冬
エレベーターで展示フロアに上がると、ローマの「フェンディ1号店」を実物大で模したファサードが出現。ここから、1900年代初頭から現在までにわたる"フェンディワールド"への旅がスタートします。まずは左右に大きなモニターを設置したイントロ室で、ブランドの歴史やデザインの変遷を紐解く映像を鑑賞。通路奥の豪奢なファーのカーテンをくぐり、メイン展示室へと進みます。
「FENDI - UN ART AUTRE」会場イメージ
この展示室の巨大空間には、きっと多くの方が驚くはずです。1点ずつ華麗なファー作品をおさめた、黄金に輝く円形モジュラー式ディスプレイ。中には「フェンディ」のイノベーションを象徴する、アイコン的なファー作品24点が展示されています。黒絨毯をしきつめたフロアには光のインスタレーションが設置され、刻々と変わる色合いが妖しく会場を照らし出しています。
カール・ラガーフェルドのスケッチ
「フェンディ」が登場するまで、毛皮は「重厚でごわごわした、高級なステータスシンボル」とみなされていました。しかし、創業者フェンディ夫妻の5人の娘たちと、1965年から加わったデザイナー、カール・ラガーフェルドの手で、ファーはかつてないモダンなアイテムへと変貌します。
「ビッグバン」、2013年春夏
薄く、軽く、流れるようなシルエット。カラーやスタイルの実験を繰り返し、その進化は決してとどまらない......。会場に並ぶ作品を見ていると、そのクリエイティビティに圧倒されます。
「カラーチャート」のタブレット、1988-89年秋冬
最後のセクションは、ファーアトリエ。こちらでは、なんとイタリアから「フェンディ」の技術者が来ていて、中央の加工台で細かな作業を実演してくれます。それだけでなく、英語や日本語で気さくに質問することも可能です。様々なファーの見本に触れることもでき、その官能的な手触りにうっとり。
会場にはイタリア伝統音楽とラウンジミュージックを融合させたサウンドが流れ、タッチスクリーンで作品について調べたり、関係者のインタビューを聞いたりと、視覚・触覚・聴覚をフル動員させてフェンディの世界観にひたることができます。
創業者のフェンディ夫妻は、娘たちによく「不可能なことはないということを覚えていなさい」と語っていたのだとか。ファッション界に革命をもたらしたフェンディのクリエイションを体感できる本展は、ラグジュアリーな非日常にトリップしたい方にぜひお勧めしたい美術展です。
「FENDI ‐ UN ART AUTRE
~フェンディ もうひとつのアート、クリエイションとイノベーションの軌跡~」会期:4月29日(月・祝)まで
会場:東京藝術大学大学美術館 展示室3・4(東京都台東区上野公園12-8)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(4月29日は開館)
観覧料:一般1,200円/高校・大学生700円(中学生以下無料)
(文/田邉愛理)