フランスの作家、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが書いた小説『星の王子さま』が、今年、誕生から70年目を迎えました。
それを記念したさまざまなスペシャルエディションが発売され、いつにも増して本屋さんの店頭は、愛らしい『星の王子さま』のイラストでにぎわっています。
この作品がニューヨークで初めて出版されたのが1943年の4月。フランスにお目見えしたのは、それから3年後の1946年で、終戦を待ってのタイミングでした。以来、世界各国260を超える言語に翻訳され、小説のジャンルでは世界で最も売れている作品となり、今でもフランスでは毎年40万部もコンスタントに売れ続けている、ほかに類を見ないベストセラーです。
パリには関連グッズを扱う専門店ができ、オフィシャルサイトやFacebookにはたくさんのファンが集い、日本ではミュージアムまで誕生するという、小説の垣根を越えた人気者。『星の王子さま』は70年経った今も、世界中の人々を魅了してやみません。
熱心なコレクターはもちろん、まだ『星の王子さま』を読んだことがない、という人にもおすすめのスペシャル・エディションをご紹介しましょう。
『Le Petit Prince』
(19,90ユーロ/出版社:Gallimard Jeunesse Musique)
オリジナル版小説に、名優ジェラール・フィリップが1954年に読み語りしたCDと1957年の記録映像をセットにした限定発売のコフレ。表紙はポール・ボネが手がけた発売時の装丁で貴重。
『Le Petit Prince』
(9,50ユーロ/出版社:Folio Junior)
ポケットサイズの本と星の王子さまのイラストが付いたポップアップカードのセット。手頃な価格でおみやげにもぴったり。
『La belle histoire du Petit Prince』
(29ユーロ/出版社:Gallimard)
金色の表紙が美しい豪華装丁版。小説とともに、作品が誕生するまでの道のりを200点ものイラストや、サン=テグジュペリに近しかった人々の証言などで見せる限定発売。
『Le Petit Prince/Naissance d'un prince』
(9,5ユーロ)
サン=テグジュペリが描いた水彩、パステル、クレヨン画などを集めた冊子と、小説のセット。眺めるだけで、星の王子さまの世界観にひたれる1冊。
ほかにも、視覚障害者のための本には、文字だけでなくオリジナルのイラストも点字で描かれ、この物語に無くてはならないサン=テグジュペリの絵も同時に楽しめる工夫がなされました。
個人的な話になりますが、私は新しい外国語を学ぶとき、必ずその国の『星の王子さま』を買って読むことにしていて、本棚には 英語やフランス語、スウェーデン語の王子さまが並んでいます。心に響くフレーズのひとつひとつが、どんな風に訳されているのか、発見する楽しみがあります。
原題の『Le Petit Prince』は直訳すると「小さな王子」。大人になり翻訳の仕事をするようになった今、これを『星の王子さま』と訳した内藤濯さんのセンスにしみじみ感動し、このタイトルも長年愛され続ける理由のひとつかもしれない、と思わずにはいられません。
(文/荻野雅代)