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記事 32件
  • アーティストとして生きるには:その32(2,005字)

    2023-11-28 06:00  
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    今回で、この連載は最終回とする。
    ここまで連載を続けてきて出た「アーティストとして生きる」ということについての結論は、「動画投稿サイトの『地方移住ショート動画』を作る」ということになる。なんとも低俗な考えに見えるが、それこそがアートらしい、ということもできる。
    実際、「地方移住ショート動画」には、ここまで見てきた「アート」というものの本質が、高いレベルで内在している。その本質とは、以下の4つだ。
    1:貧困なイメージ×豊かな欲望
    2:困難さの顕在化
    3:新しい生き方の提示
    4:新しい表現方法の使用
    順に見ていきたい。
    まず、1の「貧困なイメージ×豊かな欲望」について。
    地方移住ショート動画の投稿者は、多くの場合でカップルである。そこには、率直に言って「性」の匂いが充満している。実に貧困なイメージではあるが、豊かな欲望(性欲)に満ちあふれている。
    つまり、地方に移住すれば「性への充実が図れる」

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  • アーティストとして生きるには:その31(1,723字)

    2023-11-21 06:00  
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    2020年代が、1920年代、1970年代と同じような「アートの時代」であるとするならば、2023年の今、それはすでに「始まっている」ということになる。だから、今現在の世の中を見回せば、そこに新しいアート作品はあるはずだ。
    ただし、それは一見アートに見えづらいだろう。なぜかといえば、アートというのはできた当初は「アート然」としていないからだ。むしろ「落書き然」としている。文字通り「バスキアの絵」のようなものだ。あるいは「ウォーホルの版画」のようなものである。
    それは最初、落書きにしか見えなかった。というより、落書きそのものだった。しかし時代を経て、後世の人がそこにアート性を見出した。そうして1920年代や1970年代が、後から振り返って「アートの時代だった」ということになるのだ。
    2020年代も、そのようなことになる可能性が高い。すなわち、今は落書きにしか見えないものが、後でアート作品だっ

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  • アーティストとして生きるには:その30(1,547字)

    2023-11-14 06:00  
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    今、地方に移住する若者が増えている。この現象は、これからのアートの方向性、あるいは価値をとらまえる上で、とても貴重な情報と考える。
    しかしこの「地方に移住する若者が増えている」という現象の本質は、なかなか見えにくく、とらまえづらいところがある。第一、世の中のほとんどの人は、まだ「人は大都市に集中している」と考えている。特に「若者はますます東京へ向かう」と考えている。
    ところが、今日、たまたまこんな記事をネットで見つけた。
    住んではいけない場所を開発している…千葉県郊外で建ち始めた「30坪2500万円の新築戸建て」の根本問題
    この記事の筆者は、長年「限界分譲地」を取材しているライターだ。「限界分譲地」とは、今では過疎化したかつての新興住宅街のことだ。
    高度経済成長期からバブル期にかけて、日本の地価が異常に高騰した。その結果、土地への投機熱が高まって、急ごしらえで安普請の住宅街が次々と僻地に建

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  • アーティストとして生きるには:その29(1,692字)

    2023-11-07 06:00  
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    1970年代、来るべき80年代の「大量消費社会」を予感しながら、若者たちは「新しい生き方」を模索していた。すると、その取り組みがやがて巨大なアートムーブメントになった。特に「イラスト」は、70年代アートシーンをリードした。それに、ファッションや音楽、マンガやアニメなどが追随して、独特の文化が生み出された。
    それより半世紀前の1920年代にも同様のムーブメントがあった。世界中を近代化の産物である工業製品が席巻したが、それらはどれもデザイン性の乏しい醜いものだった。
    そこで有志の若者たちが、「工業製品を美しくしよう」と立ち上がり、デザイン性を伴った工業製品の設計に取り組んだ。それらがバウハウスやアールデコ、あるいはカリフォルニアスタイルの誕生につながった。
    そうした新しいアートムーブメントの機運というものが、現在――2020年代にも感じられる。人々は、新しい世の中の到来を予感しながら、さまざま

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  • アーティストとして生きるには:その28(1,770字)

    2023-10-31 06:00  
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    今は「新しい生き方」が求められている。それは、一つには多くの人が、ほとんどの場合で「潜在的に」ではあるが、今の生き方に窮屈さを感じているからだ。
    それでいて、多くの人がそこから抜け出せていない。それは、まさに彼らが「潜在的に」窮屈さを感じていることが主な原因だが、たとえ「顕在的に」意識できたとしても、心のしがらみが強すぎて、なかなか一歩が踏み出せない。
    そのため、自分の代わりに一歩を踏み出してくれる誰かを求めている。誰かが一歩を踏み出してくれれば、自分もフォローしやすくなるからだ。ファーストペンギンやセカンドペンギンは難しいが、サード以降ならそう難しくはない。そのため、まずはファーストペンギンとして新しい生き方を提示、もしくは実践してくれるアーティストを求めているのである。
    そういう需要に対し、今から5年ほど前、西野亮廣氏や中田敦彦氏、DaiGo氏や田村淳氏、そして箕輪厚介氏など、インフル

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  • アーティストとして生きるには:その27(1,729字)

    2023-10-24 06:00  
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    みなさんは「ひとりキャンプ」についてどう思うだろうか? ぼくは、「ひとり」というのは比較的好きだが、「キャンプ」にはほとんど興味を抱いたことがない。それでも、数年前にヒロシ氏がひとりキャンプブームを巻き起こしたとき、そこに何か新しいものを感じた。そうして、率直に魅力を感じた。
    そこで今日は、なぜぼくが「ひとりキャンプ」に魅力を感じたのかについて考えてみたい。ただし、「魅力を感じた」といってもひとりキャンプをしたくなったわけではない。それを始めたヒロシ氏の心情や、それを支持する人々のありように魅力を感じたのだ。
    では、それはどんな魅力か? 結論からいうと「発明」の魅力である。もっというと、「アート」の魅力である。そこには、これまでの価値観を打破するアートのような、革新性が感じられたのだ。
    どういうことかというと、この世の「ひとり」が好きな人に、新たな可能性を拓いたのである。皆、それまでの「ひ

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  • アーティストとして生きるには:その26(1,802字)

    2023-10-17 06:00  
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    アートには、「未来をリードする」という役割がある。それは、アートが「新しいものの見方」を提示するからだ。それを見てインスパイアされた人々が、その「新しいものの見方」に則った何かを作る。そうして、未来が少しずつその「新しいものの見方」の方向性へと進むのだ。
    ところで、現代には大きく2つの「豊かな欲望」というものがある。それは、「自由になりたい」と「寂しさを埋めたい」である。
    このうち、「自由になりたい」はアートに結びついていない。なぜかというと、この欲望はあらかた満たされているため、必ずしもアートとして表現する必要がないからだ。つまり、「新しいものの見方」を提示する必要がない。
    一方、「寂しさを埋めたい」という欲望は満たされていない。そのため、大量のアートを生み出している。それは、寂しさを埋めるための「新しいものの見方」を、人々が欲してやまないからだ。
    人々は、その新しいものの見方を得ること

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  • アーティストとして生きるには:その25(1,955字)

    2023-10-10 06:00  
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    最もありがちな哲学的命題として「生きるとは何か?」というものがある。人類の長い歴史の中で、多くの人がこれにもっともらしい答えをしてきたけれども、そのうちの少なからずの人が「何でもない」と答えている。違う言い方をすると「『生きる』ということは存在していない」と答えている。つまり、「そもそも質問が無意味なのだ」と言っている。
    「生きる」とは虚である。幻である。空想上の概念だ。これはもうかなり前から科学的に立証されているが、しかし概念としては受け入れられていない。むしろ、近年ますます「生きる」ということの実存を信じる人が増えている。
    2500年前に、ソクラテスも孔子も仏陀も「『生きる』ということは存在しない」という趣旨のことを言った。しかしその言葉はほとんどの人に理解されず、従って否定されるのではなくスルーされた。聞き間違いかと思ってなかったことにされてきたのだ。
    植物は「生きる」などということ

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  • アーティストとして生きるには:その24(1,890字)

    2023-10-03 06:00  
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    これからの時代は「幸せ」が復権する。そこで、アーティストには何ができるか?
    アートの定義とは、「豊かな欲望×貧困なイメージ」だ。そこで、まずは「幸せ」に対して「豊かな欲望」を抱く必要があるだろう。単純に「幸せになりたい」と強く願うことだ。そのことが、これからのアーティストの第一条件となる。
    しかし、これはなかなか難しい。今の時代、「幸せになりたい」という人よりも、「自由になりたい」という人の方が多いからだ。ぼく自身も、「幸せになりたい」という気持ちはありつつも、今は「自由になりたい」という気持ちが勝っている。そのため、生活における大半の労力は「自由の創出」に割り振られている。
    しかしもちろん、幸せになりたい気持ちがゼロな訳ではない。おそらく無意識的には、復権する幸せへ価値を感じている。それがまだ意識できていないだけなのだ。
    それを意識するには、心の奥深いところに降りていく必要がある。自分の

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  • アーティストとして生きるには:その23(1,730字)

    2023-09-26 06:00  
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    これからおそらく20年をかけて、「幸せ」が再定義、いや再評価される時代が来る。なぜなら、今の時代は幸せがあまりにも阻害されているからだ。多くの人が、自由を尊重し過ぎている。その結果、自由の反対にある幸せを疎かにしているのだ。
    幸せが疎かにされている社会だから、人々は競争主義社会を容認している。また、ロシアのウクライナ侵攻もどこか他人事だし、なんならコロナ禍さえ粛々と受け入れた。この「粛々と受け入れる」というのが、自由を尊重しすぎた時代の最も主要な流儀かもしれない。
    今、人々は粛々と人間関係を解消していっている。こう書いているぼく自身が、なにしろ人間関係を希薄にさせている。一人の時間が圧倒的に増えた。
    まだ小さい子供がいてさえこうなのだから、独身の人にとってはなおさらだろう。近年、日本の単身世帯数は過去最高を更新し続け、2022年は1785万だった。この先、人口が減るにもかかわらず、なお増え

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