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劣化する人:その19(1,703字)
2024-04-16 06:00110pt劣化する人が問題になるのは、格差社会の拡大につながるからだ。
ぼくは、今の最大の社会問題は「格差」だと考える。そしてぼくは、たいていの社会問題は容認できるが、格差についてだけは、なかなか容認できない。だから、これを是正するに越したことはない――と考えている。
そうして、ぼくを含めた今を生きる全ての人にとって、「格差是正に取り組むこと」こそ、最大の社会貢献だと考える。また、人は社会貢献をしないと生きていけない。だから、格差是正は、もはや現代を生きる人にとって「義務」といってもいいだろう。
そうなったとき、我々は何をすべきか? 格差是正の一番の方法は何か?
それは、格差上位の者が、格差下位の者に正道を「教える」ということである。まず、彼らの誤りを正してやることだ。
その際、知的能力のない人は、ほとんど問題がない。誤りを教えればその通り、改正してくれるからだ。
逆に問題となるのが「若いときには知 -
劣化する人:その18(1,691字)
2024-04-09 06:00110pt数年前、ぼくの知人の「劣化する人(劣化した人)」が本当に亡くなってしまった。死因は明らかにされなかったが、おそらく自殺だったと思う。そのときぼくは、その劣化した人が助かる道――自殺しなかった道――はなかったのかと考えてみた。
しかし、結論としては「なかった」というものになった。その人は自殺するしかなかった。なぜかというと、アドバイスを全く受け付けないからだ。自分を変えようとしない。
そういう「自分を変えない人」の最大の特徴は、「人当たりがソフト」ということだ。人から何かを言われても、やんわりといなすことができる。
だから人と衝突しない。おかげで、自分を変えることができないのだ。
皮肉なことに、コミュニケーション能力が高いゆえ、劣化してしまう。人当たりが良すぎて、自分の深刻な問題を誰もアドバイスしてくれなくなる。
そう考えると、「劣化する人」というのは概ね人当たりが良く、コミュニケーション能 -
劣化する人:その17(1,641字)
2024-04-02 06:00110pt格差社会が広がっている――というのはぼくだけが言っているわけではない。これはもはや多くの人の共通認識だ。
しかしその「原因」については、さまざまな意見が交錯している。それぞれがそれぞれのことを言い、誤ったものも多いが、そのうちのいくつかは首肯できる。
つまり、格差社会が広まった理由は一つだけではなく、複数あるということだ。それゆえ、この問題の解決は困難――というよりほぼ不可能といえよう。少なくとも、ぼく自身は不可能と思っている。
また、同時にこれは「むしろ解決すべきではない」とも思っている。なぜならぼくは、起こっていることにはたいていさまざまな意味があって、単純に否定することはできないと考えているからだ。
例えば少子化や戦争などについても、多くの人がその存在を否定するが、ぼく自信はこれらの正の側面もたくさん知っているので、むげに否定することはできない。
さらにいうと、一見「わざわい」にしか -
劣化する人:その16(1,607字)
2024-03-26 06:00110pt1インターネットができて、それが文字通り人間の関係(ネットワーク)に影響を与えた。リアルな関係と同等かそれ以上のつながりが、インターネット上に生まれたのだ。
そうして、インターネットの人間関係は流行し、発展した。その中でSNSが勃興し、隆盛を極めた。特に2010年代において、信じられないくらいに巨大化した。
ところが、2020年代に入ると徐々に凋落し始めた。そうして、頭の良い人はインターネットから離れるようになった。以前のリアルにしかネットワークのない暮らしに舞い戻った。
一方、インターネットにしかネットワークがない人は残った。そして、残念ながらそういう人はおしなべて頭が悪い。
リアルとSNSを上手に行き来する人は、2010年代にはよく見られた。そこで皆このモデルを志向したが、2020年代に無理だと分かった。SNSが、頭が悪い人が支配する世界になったからだ。
ぼく自身も、自分で意図したという -
劣化する人:その15(1,475字)
2024-03-19 06:00110ptChatGPTに大騒ぎしている人がいまだにいるが、実はもう無意識的に飽きられているのではないかと思う。最近気になるのはAIの描いた美人がみんな同じ顔であることだ。AIが発展したことによって、逆にAIができないことが見えてきた。
ネットの番組で「そこらの学校の先生や塾の講師よりChatGPTに聞いた方がなんでも知っているし安価だから教育は変わる」と話していた。しかしそれは違うと思う。そもそも教師や講師、あるいはChatGPTに教わらないと成長しない人間は、勉強に向いていない。だから勉強などしない方がいい。
勉強に向いているのは自分で調べ物ができる人間だ。今ならネットだが、昔だったら辞書だったし、図書館だった。柳瀬尚紀のエッセイに、電子辞書の楽しさを語ったものがある。電子辞書には項目の説明文に用いられている言葉にそれぞれリンクが張ってあって、ボタン一つで飛べる。するとついついその言葉の説明も読 -
劣化する人:その14(1,813字)
2024-03-12 06:00110pt劣化する人は「努力する人」である。では「努力する」とはどういうことか? あるいは「努力する人」とはどういう人か?
この答えは、意外にも「頭が良い」というものだ。頭が良い人は努力する。逆に、頭が悪い人は努力しない。
なぜかというと、努力というのは「損して得取れ」という投資行動だからだ。それは長期的な利益を見込んでのことである。
そして、頭の良い人は長期的な視野に立てるが、頭が悪い人は短期的な視野にしか立てない。だから、努力ができない人はたいてい頭が悪い。逆に、努力する人はたいてい頭がいいのである。
しかしながら、その頭の良さが命取りになるというのが、なんとも皮肉な話だ。努力は、「長期的」には得なのだが、「超長期的」には、やっぱり損なのである。40歳以降にエフェクトしなくなるので、人生を狂わせてしまうことになるのだ。
劣化する人というのは、たいてい努力家だ。40歳までに努力を積み重ねてきた。だ -
劣化する人:その13(1,659字)
2024-03-05 06:00110pt『ギフト―僕がきみに残せるもの』というドキュメンタリー映画の中で、印象的なシーンがある。
ALSを患った元NFL選手のスティーブ・グリーソン氏は、選手時代に死をも恐れない勇敢なプレーで有名だった。球際に強く、猛スピードで突っ込んで行くのだ。特に、所属していたニューオリンズ・セインツの地元がハリケーンによる洪水に見舞われたとき、復興した最初の試合で劇的なパント・ブロックを決め、ファンに強烈な印象を残した。
グリーソン氏は、NFLの選手としては体が小さく、体力もいくらか劣っていた。しかしそれを類い希なる精神力でカバーした。ものすごい努力家だったし、それ以上に試合での集中力が凄まじかった。
特にパント・ブロックの名手として有名だった。パント・ブロックとは、相手のキッカーに頭から突っ込んで行って、蹴り出されるボールをブロックすることだ。渾身の力でキックする相手に対し、全速力で頭から突っ込んで行く。 -
劣化する人:その12(1,806字)
2024-02-27 06:00110pt「劣化」というのは、一つの老化現象でもあるといえよう。教育が機能するのは、体力がある40歳までだ。40歳以降に体力が衰えたとき、受けた教育が機能しなくなり、劣化するのである。
そう考えると、能力における「体力」は、きわめて重要な役割を担っているといえるし、40歳以降は、むしろそれに頼らないことが必要になるともいえるだろう。
ところで、「老化」や「体力の衰え」ということについて、ぼくに強烈なインパクトを与えたドキュメンタリー映画があった。それは『ギフト―僕がきみに残せるもの』だ。
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内容は、スティーブ・グリーソンという米アメフトNFLの一流選手だった人が、引退直後の34歳のときにALSと診断され、そこからの闘病生活を自分で自分を撮影しながら記録したものである。
自分で自分を撮影したのは、もし自分がALSで死にゆくなら、病気が分かった当時妻のお腹の -
劣化する人:その11(1,625字)
2024-02-20 06:00110ptイチローは面白い。彼は「劣化しない人」の典型であるが、同時に典型的な「意志の弱い人間」でもある。
これは、一般的なイメージとは真逆である。一般は、イチローほど「意思の強い人間」はいないと見ている。
ところが、実態は逆なのだ。イチローは意志が弱い。だからこそ、劣化から遠い立場にいる。その逆に、かつてオリックスで先輩だった門田博光は、意思の強い人間の象徴だ。彼は40歳を越えてもホームラン王を取るなど活躍したが、現役の時からアルコール中毒と糖尿病を患い、引退したときにはボロボロの体だった。その意味で、「劣化する人」ともいえよう。
こういう人は、努力でのし上がった。逆に劣化しない人は、努力ではのし上がらない。ところで、イチローはたゆまぬトレーニングを続けたことで有名だが、それは努力ではないのか?
実は、努力ではない。イチローのトレーニングは、趣味なのだ。もっというと、生きる目的である。イチローが一 -
劣化する人:その10(1,708字)
2024-02-13 06:00110ptケチな人は劣化しやすい。なぜなら「意志が強い」からだ。
意志が強いと、若いうちは成功する。しかしその反動が40歳以降に来るので、「劣化」したように見えるのだ。
逆に、意志の弱い人は劣化しない。最初から意志の弱さがハンデとしてあるため、天賦の才能がなければ成功できない。だから、40歳以降に活躍できなくても、「劣化した」とはならないのである。
こうしてみると、「劣化する人」の反対の「劣化しない人」というのは、「才能があるのに意志が弱い人」ということができるだろう。才能があるのに意志が弱い人は、若い頃からほどほどの努力で能力を発揮できる。だから、40歳を越えて教育効果が切れたり体力が衰えたりしても、才能だけでなんとかやっていけるのだ。
また、意思の強い人には隠された重大なハンデもある。それは、心が頑なになって「自信過剰」に陥りやすいということである。
なぜ自信過剰になるかというと、若い頃からちや
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