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■久瀬太一/8月1日/24時05分
2014-08-02 00:05
バスは長いトンネルを走る。
とりあえずみたい未来は、明日のことだった。
明日、17時30分に、八千代という男に会う。彼を頭から信用する気にはなれない。少しでもヒントを手に入れておきたかった。
加えてその直後には、聖夜協会の食事会がある。それにはソルも参加するらしい。知りたい未来ばかりだ。
オレは、オレンジ色のライトが流れる窓の外を、じっとみつめる。
バスの中に、アナウンスが流れた。男性とも、女性ともつかない、無機質な声。
――次は青と紫の節、9番目の陰の日です。
「は?」
思わず、声が出る。なんて言った? 日付けじゃないのか?
バスが、トンネルを抜けて。
みえた景色に、オレは絶句した。
※
そこは、暗い石造りの通路だった。
昔映画でみた、イタリアかどこかの古い地下水道に似ている。水は溜まっていないが、そんな雰囲気だった。
ただし、巨大だ。
幅 -
■久瀬太一/8月1日/24時
2014-08-02 00:00
目を開いて、ここは夢の中なのだとわかった。
いつの間にかバス停にいた。
なにをすべきかは、もちろんわかっていた。
オレはベンチから立ち上がり、バスに乗り込む。
今日の乗客は2人だった。
きぐるみの少年ロケットと、ひとりの女性。髪の短い女性だ。このあいだバスに乗った時もいた。双子の片方――ビデオカメラを手にしている方だ。
最後尾の座席から、きぐるみがいう。
「よう。ちゃんと生きてたみたいだな」
オレはきぐるみに、「ああ」と応えて、髪の短い女性に声をかける。
「貴女が、リュミエール?」
リュミエール、あるいはグーテンベルク。そのふたりから話をきけ、とソルに言われていた。
こちらを見上げて、彼女は笑った。
「そう。私の名前がわかったのね」
「貴女は、聖夜協会の会員ですか?」
「昔はね。今は違う」
「聖夜協会のことを、教えてください」
だが、彼女は首を振る。
「それはで -
■佐倉みさき/8月1日/23時
2014-08-01 23:00
私は清潔なシーツにくるまっていたけれど、リビングからはノイマンがキーボードを叩く音が聞えていて落ち着かない。
彼女の仕事の締め切りは明日だ。聖夜協会から請け負ったという仕事がどうなろうと知ったことではなかったけれど、やはり人が働いている横で眠るのは気がひける。この数日の私の仕事といえば、何度かチャーハンを作ったことくらいだった。
眠れない夜は今後について考える。
ここに来てからずいぶん意識が薄らいでいるけれど、私だって誘拐事件の被害者だ。なんとか状況を打開する方法をみつけたいけれど、それはなかなか難しいことだった。
とにかく脱出すればいい、というわけではないらしい。
ただ脱出するだけであれば、その気になれば、今夜中にでもできそうだった。
私をこの部屋に縛りつけているのは、脱出したあとの不安だ。正体不明の聖夜協会員たちが紛れ込んでいる世界で、どう日常生活を送ればいいという -
■久瀬太一/8月1日/22時30分
2014-08-01 22:30
その電話がかかってきたのは、22時30分になるころだった。
スマートフォンのディスプレイには、見覚えのない番号が表示されていた。
応答のボタンを押すと、男の声が聞こえた。
「久瀬さんのお電話ですか?」
はい、とオレは答える。
笑い声が聞えたわけでもなかったが、電話の向こうで、男が笑ったような気がした。
「八千代と申します。何度もお電話、すみませんねぇ」
ようやくだ。オレはスマートフォンをにぎる手に力を込める。
「いえ。折り返させてしまってすみません。どうしてもお願いしたいことがあったものですから」
「へぇ。なんでしょう」
「聖夜協会の連絡名簿を拝見させていただきたいんです」
八千代は妙に大げさなアクセントで、「聖夜協会」と繰り返した。
「どうして、そんなものを?」
この男に、素直に事情を話す気にはなれなかった。
――こいつは聖夜協会員だ。
ドイルか、アカテ。そのど
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