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記事 26件
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第4部「県外」阻むもの vol.27「辺野古の呪縛」(琉球新報提供)

    2014-04-22 10:36  
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     辺野古の呪縛 民主党が政権交代を果たす2009年8月の衆院選から2カ月ほど前のある日。民主党政調会長の直嶋正行は党本部代表室にいた。米軍普天間飛行場の移設に関する党の方針を次期衆院選のマニフェスト(政権公約)にどう記すかを、代表の鳩山由紀夫に説明するためだ。後に民主党政権の外相となる幹事長岡田克也も同席している。麻生内閣の支持率が低迷し、07年参院選で第1党となった民主党の政権交代が現実味を帯びていた。 「政府間の取り決めというのは、やはり重たい」。直嶋は鳩山にこう言った。 普天間の名護市辺野古移設は自公政権が決めたものだが、政権交代を理由に手のひらを反すように日米合意への対応を変えるのは難しい、というのが直嶋の意見だった。直嶋はそうした考えを鳩山に伝え、言った。 「普天間移設についてはマニフェストに書きません」 民主党は岡田が代表を務めていた05年の衆院選マニフェストで、普天間移設に関して「在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、国外移転を目指す」と明記。さらに沖縄政策をまとめた08年の「沖縄ビジョン」にも同様の内容を盛り込んでいた。しかし09年マニフェストでは大きく後退し、「米軍再編の見直しで臨む」との文言にとどまった。 《ずいぶん弱腰になったな。だが沖縄ビジョンの内容が否定されたわけではない》 鳩山はそう考え、 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第3部揺らぐ「承認」 vol.26「世界の目」(琉球新報提供)

    2014-04-21 17:11  
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    世界の目 米アカデミー賞受賞の映画監督オリバー・ストーンと昨年夏に名護市辺野古を訪れた米アメリカン大教授のピーター・カズニックは、依頼先の反応の良さに驚いた。辺野古に日米両政府が計画している新たな基地の建設に対し、反対する声明文を発表しようと、世界的に著名な有識者らへ呼びかけ人として名を連ねることを依頼していた。 県知事仲井真弘多の昨年末の埋め立て承認を受けたものだったが、短期間で賛同者が次々と集まった。ことし1月8日、29人の呼び掛け人で声明を発表。その3週間後、呼び掛け人は103人にまで膨れ上がった。メンバーはノーベル平和賞、ピュリツァー賞、アカデミー賞受賞者らそうそうたる顔ぶれだ。 「私が話すと、ほとんど全員が喜んで即座に参加を表明した。多くの識者がこの(普天間)問題を知っているからなのだろう」。カズニックは話す。 名護市長選で辺野古移設反対の民意が示された直後に代替基地設計などの受注業者を募集するなど、安倍政権は強権的な姿勢を示している。沖縄の世論など意に介さないといった態度だが、カズニックは「われわれの次の行動はより活発になる」と強調。「世界中の人々が見ていることを認識させ、国際社会から圧力を与えることがわれわれの仕事だ」と力を込める。 声明発表後、識者らは 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第3部揺らぐ「承認」 vol.25「県幹部の声」(琉球新報提供)

    2014-04-18 10:24  
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    県幹部の声 「驚くべき立派な内容」「140万県民を代表して感謝」 県知事仲井真弘多が首相安倍晋三と官邸で会談した昨年12月25日。県のある部長は仲井真の発言や周囲の様子から、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立てを仲井真が承認すると悟っていた。 「もう絶望的だ。あそこまで議会で(県外移設と)発言して県民を期待させ、後処理をどうするのか分からない」。問題の先行きを案じる言葉がついて出た。 「承認を断り続ければ、国から訴訟を起こされ、厳しい結果になることは必至だ。承認せざるを得ない」。部長はそう考えたこともあったが、仲井真は昨年の6月県議会で埋め立ての可否について「政治的判断は否定、排除されない」と述べるなど、不承認への県民の期待を高めていた。だが最終盤で世論を逆なでするように承認に突き進んだ。その過程に、部長は失望を禁じ得なかった。 「知事は振興と基地は別に考えていたはずだが、 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第3部揺らぐ「承認」 vol.24「国に同調」(琉球新報提供)

    2014-04-17 18:39  
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    国に同調「政府が安全保障問題について緊張感を持ってやっている時に、辺野古の埋め立てにノーと言えるのか」-。県知事仲井真弘多は、与党県議らを前に口を開いた。 昨年12月27日、埋め立て承認の発表を前に仲井真が知事公舎に与党県議を集めた際の発言だ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設と、尖閣問題を背景とした防衛力強化の動きを絡めたものだった。県議の一人は「知事から聞いたことのない話だった」と驚いた。 それまでの仲井真は「尖閣があるから沖縄だけに(基地)を集中すべきだとという暴論はおかしい」などと、移設問題に絡めて沖縄の地理的優位性を強調する政府の説明にむしろ否定的な発言を重ねていた。だが気が置けない与党議員らの前で、埋め立て承認に関する率直な心境を吐露した際の説明は、政府の主張に同調するかのような内容だった。 仲井真は承認を拒んだ場合、その後の基地問題や振興策の「展望が開けない」との見解も示し、それまで否定してきた基地と振興のリンクを肯定するような発言もした。承認を断った場合に、振興計画などが 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第2部官僚の壁 vol.12 「地位協定改定」(琉球新報提供)

    2014-04-01 15:24  
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    地位協定改定米ワシントンのレストランで、2009年8月に開かれた日本の衆院選見通しに関する在米日本大使館職員による非公式の説明会は、米議会議員の秘書に唐突に呼び掛けられたものだった。 秘書らは同月末から米シンクタンクが主催する約1週間の日本視察に関する予定だった。東京や大阪、京都を訪れ、日米関係ほか日本の政治や経済、企業動向について学ぶ計画だった。 大使館職員はどこからか議員秘書らの訪日予定を聞きつけ、日本について説明したいと一人一人に電子メールで申し出た。 説明会では2人の大使館職員のうちの「先輩」が、政権の座に就く見通しとなっていた民主党がマニフェスト(政権公約)で在日米軍再編見直しを掲げていることに強い懸念を示し、日米地位協定の改定提起公約についても言及した。 「民主党は(地位協定改定で)本質的に夢を見ている」 こう断じた後に続ける。「(改定されれば)米国は世界中の国から再交渉を求められる。(米国は)日本との再交渉には応じないだろう」。日本側から、地位協定改定は実現し得ない課題のはずだと米秘書らに理解を求めた。 〈ワシントンでの日本大使館の役割は、仮に彼らの政府が望んでいない場合でも、ひたすら米国にこびへつらうことなのだ〉 参加者の一人はこう思った。日本に詳しくない米秘書らの間に、 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第2部官僚の壁 vol.11 「妨害の始まり」(琉球新報提供)

    2014-03-31 13:22  
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    妨害の始まり2009年8月の衆院選を約1カ月半後に控えた同年7月19日。民主党公認候補(当時)の玉城デニーの応援演説をするため、沖縄市民会館で登壇した党代表・鳩山由紀夫(当時)は、ホールを埋め尽くした聴衆を前に、県民の大きな期待を感じていた。熱気と高揚感が会場を包んでいた。米軍普天間飛行場の返還・移設問題について触れた。 「県民の気持ちが一つならば、最低でも県外の方向で、われわれも積極的に行動を起こさなければならない」。さらりと出た言葉だったが、県民の心をつかむには十分だった。 民主党が勢いを増す象徴的な場面だった。同党は衆院選で県内4選挙区中、玉城を含む公認2候補を当選させる。普天間移設の「最低でも県外」は、多くの国民から事実上の公約として捉えられた。 鳩山の発言から約1カ月後。衆院選を10日後に控えた8月20日早朝の米首都ワシントン。古典的なドーム型建築が特徴的な国会議事堂周辺レストランに、米民主、共和両党の議員秘書ら約10人が集まった。在米日本大使館の職員が呼び掛けた説明会に出席するためだ。米政府にも影響力がある民主党の著名なベテラン議員秘書らの顔が見える。秘書の中でも上級の「チーフ」も参加している。 大使館職員2人のうち「後輩」が、衆院選を前にした日本国内の政治情勢について一般的な説明を始めた。 政権を担っている自民党と野党の議席数、自民党のそれまでの政策、来る衆院選に関する国内メディアの世論調査状況と民主党勝利の予測、選挙後の与野党の議席見通しなどについて述べた。 秘書らは食事を取りながら聞き入った。今度は大使館の「先輩」が説明を代わった。 その内容は次期政権を担う民主党のマニフェスト(政権公約)に対する批判だった。 「We 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第1部米国の深層 vol.10 「海兵隊削減」(琉球新報提供)

    2014-03-29 10:00  
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    海兵隊削減 10月21日。米ワシントンでの講演で、海兵隊の配置計画を担当する少将マッケンジーが危機感を吐露した。国防長官ヘーゲルが海兵隊を現在の約19万5千人から最小15万人まで減らす可能性に言及したことについてだ。「15万人なら危険なほど小さな力になる」 ヘーゲル発言に先立つ6月、海兵隊は自ら18万人4千人にまで削減すると説明していた。だがこの日マッケンジーは「15万人」には反対する一方、国防総省の事務方が検討している17万4千人案を受け入れる考えを示した。 国防費削減に伴う米軍の兵員削減計画に基づく海兵隊への圧力がさらに強まり、踏み込まざるを得なかった形だ。 米政府関係者は海兵隊は15万9千人にまで減らす選択肢もあるとしている。最終方針は決まっていないが、大幅な削減案が実施されれば、在沖海兵隊の再編にも大きく影響する可能性がある。 普天間飛行場の県外・国外移設を求める多くの県民にとって、海外基地の検証を含む海兵隊の削減・再編の流れは大きな好機だ。だが日本国内では政府が沖縄に「辺野古が嫌なら固定化」と二者択一で移設容認を迫り、米国内でくすぶる移設計画の「プランB」(代替案)の可能性をかき消している。  10月、日米のシンクタンクなどが 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第1部米国の深層 vol.9 「海兵隊の影響力」(琉球新報提供)

    2014-03-28 13:53  
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    海兵隊の影響力 少し古いが、米海兵隊の政治力を象徴する話がある。 1989年、海兵隊への導入を目指していた開発段階の垂直離着陸輸送機オスプレイの初飛行があった。だがオスプレイは91年、92年に合計死者7人、負傷者2人を数える墜落事故を立て続けに起こす。ヘリコプターと固定翼機の機能を併せ持つ複雑な構造のオスプレイは安全性に疑問がもたれていた。そして、開発費は高額だった。 当時のブッシュ(父)政権の国防長官、ディック・チェイニーはそれらの理由から開発を中止しようとした。 これに対し開発を維持したい海兵隊側は「都合の悪い情報は報告するな」と試験飛行部隊に支持し、計画続行のロビー活動を大展開する。これらが功を奏し、米政府・議会も一緒になった「軍産複合体」は開発の継続を決めた。 チェイニーは繰り返しオスプレイの計画中止を試みるが 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第1部米国の深層 vol.8 「共同体構想の背景」(琉球新報提供)

    2014-03-27 09:52  
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    共同体構想の背景 米側が敏感に反応し、「米国外し」と強い不信を抱いた首相鳩山由紀夫の「東アジア共同体」構想とは、どんな考えだったのか。 首相就任から13年前の1996年。旧民主党を設立した鳩山は同年11月、月刊誌「文芸春秋」に「民主党 私の政権構想」との題で寄稿する。 当時、沖縄県が打ち出していた、2015年までに全ての米軍基地を返還させる基地返還アクションプログラムと、跡地利用を中心に沖縄を東アジアの交易・交通拠点にする国際都市形成構想に触れた上で、こう述べた。 「沖縄の米軍基地が返ってくることを可能にするようなアジアの紛争防止・信頼醸成の多国間安保対話システムをどう作り上げていくか」 「活力にあふれ、ますます緊密に結び付きつつあるアジア・太平洋全体を、日本が生きていく基本的な生活空間と捉えて、国連、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、東アジア、東南アジア諸国連合(ASEAN)および北東アジアすなわち環日本海という重層的な多国間地域外交をこれまで以上に重視」 後の東アジア共同体につながる考えには沖縄が大きく関係していた。「常時駐留なき安保」の持論も背景に、2009年8月の衆院選で鳩山の口から普天間飛行場の「最低でも県外」発言が飛び出す。 だが鳩山の「東アジア」構想は 
  • 日米廻り舞台 検証フテンマ             第1部米国の深層 vol.7 「圧力の裏側」(琉球新報提供)

    2014-03-26 10:45  
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    圧力の裏側米国防長官ロバート・ゲーツの態度は、明らかに日本政府へ圧力をかけようというものだった。日本の民主党政権が誕生してから約1ヶ月後の2009年10月20日、外務省で外相岡田克也と向き合ったゲーツは、報道陣の冒頭撮影が終わる前に、いきなり本題を切り出した。 「われわれは米軍再編の実施を約束している」 会談の約35分間、笑顔は一切なかった。「現行案は日米が長い時間をかけてさまざまな選択肢(オプション)を検討した結果、唯一実現可能なものだ」「日米合意に従い、米軍再編の着実な実施が必要だ。できるだけ早期に結論を出してほしい」。普天間飛行場を名護市辺野古へ移設する日米合意案履行を迫る言葉を繰り返した。 翌21日の首相鳩山由紀夫、防衛相北沢俊美との会談でもゲーツは現行計画の早期履行を要求する。さらには会談後の記者会見で、