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2014年12月の記事 5件

新書刊行計画、キャラクターが世界を回す

新書刊行計画、キャラクターが世界を回す   キャラクターとは何か。 自分はこのキャラクターというものがなかなかわからず、今でもだが手探りで進んでもがいている。 しかし一筋の光明をもらったのが、ある先生の言葉だ。 その先生に藁をもつかむ思いで「キャラクターとは何か?」と訪ねた時、その先生はうなずいたのち間髪こう答えた。 「佇まい」だと。 自分がデビューの時はキャラクターを作る際に、誕生日や好きなものなど細かく書き出すようなアドヴァイスも受けた。今でいうとデータベースのようなものだろう。 萌えを中心に押し出す漫画では「アニメ」「ゲーム」というものをデータベースにキャラクターを召喚するという手法もあるだろう。これはむしろ読者との共犯意識などを呼び起こすのだろう。 自分が一度少年誌で仕事をしようとした時は(残念ながらぽしゃったが)「少年漫画らしい主人公」を望まれた。これもある種データ主義だ。 自分はこんな文章を書くくらいだから当然、理論や実証性、データを重視して書くタイプだと自分では思っている。 しかしこれまでの経験上、キャラクターは、少なくともキャラクターだけはデータ主義のように作るのは不可能だということだ。 こんなキャラクターが受けているからこんなキャラクターを作ればそこそこの成績を狙える、というのは一見正しい。 だがしかし、そんなキャラクターで作られた作品はおそらくいい成績を残すことはない。 「目は口ほどに物を言う」、というが、「手は口より正直」なのだ。 自分が産んでいないキャラクターは魅力的に描けない。いやむしろ自分が産んでいないと魅力を知らないと言っていい。 魅力を知らなければ、魅力的に描けないのは自明だ。 ここでいう魅力とは何かといえば冒頭である先生からいただいた「佇まい」という言葉だ。  

レイアウトとは何か<これからの漫画の描き方の話をしよう>

レイアウトとは何か<これからの漫画の描き方の話をしよう> 年末が差し迫り、年末進行を片付け、今年の作業もあともう少し。そんな大井昌和ですがみなさんこの師走をいかがお過ごしでしょうか! 我が事務所にはコミケの見本も届き、荷物も大古pに送ってもらい、あとは原稿を片付けるのみです!・・・いや違う!今月は単行本6冊連続刊行の締めくくり、「起動帝国オービタリア」4巻の発売が12月26日にあります!書店さんのメッセージペーパーもかなり頑張って描きましたので、とらのあなさん・書泉さん・zinさん・まんが王さん、にて配布していただけると思うのでどうぞよろしく! さて今回はいずれ書く書くと言っていた「レイアウトの話」です。 どうぞよろしく〜〜。 レイアウトとは何か。 これは背景を描く、背景描写を密にするという意味ではない。 かつて庵野秀明が宮崎駿の天才性を端的に記した言葉がある。 「宮さんはレイアウトの天才だから」 これは宮崎駿という天才を評した言葉であると同時に、宮崎のアニメを通してレイアウトというものを語っている言葉だ。 レイアウトとはもともと映画において、監督や演出の意図する構図を作るためにカメラの配置をするようなものであった。しかしアニメーションでこれを取り入れたのは高畑勲がアルプスの少女で宮崎にやらせたのが初めだという。 押井守もこのレイアウトというものを現場に入れるのに苦労したという。 今年の中頃ネット界でも漫画におけるレイアウトの話が一時期盛り上がった。これは確か大学の漫画研究会の子が先輩漫画家にレイアウトとは何か?と問うた話だった。その時はある作家が前述した背景の場面描写の機能を説明したことで終わったのが不満が残った。 ここでいうレイアウトとは小道具の配置や背景の緻密度ではない。 庵野の言葉でいうレイアウトがそのようなものであった場合、宮崎は背景画の天才というただの職人技術を評したことになってしまうからだ。 未熟ながら僕の漫画をここで資料に使う。僕のブロマガをとってくれている人にはご存知いただけていると思うが「おくさん」という作品の一部だ。 

【ぶろまが】世界を描き始めた「テンプリズム」

【ぶろまが】世界を描き始めた「テンプリズム」 曽田正人とはどういう作家か。 少年チャンピオン、月刊マガジン、ビッグコミックスピリッツというメジャーな場所で「シャカリキ」「カペタ」「昴」を描いてヒットさせてきた、まっすぐな作家というイメージでしょう。 その作品の主人公たちは天才でありながら悩み努力し、勝利して行く王道の内容でありました。彼らはしかし、ある一定の場で勝利を得るものの、世界に出ることはありませんでした。 唯一「昴」は世界に羽ばたきました。が、作品中で最大にわくわくさせてくれたファーストコンタクトを描くことはありませんでした。 (ダンスでファーストコンタクトと言うのは実はありえるもので、「スターダンス」というファーストコンタクトSFの傑作も存在します) 「シャカリキ」は才能が頂点に達した主人公が世界に目を向けた瞬間に終わりました。「カペタ」はその競技の特性上、国の外での戦いまで視野にあるかとも思いましたが、「世界」を描くことがありませんでした。 そんな曽田正人が手がける新作が「テンプリズム」です。 これは一言で言えば、王道と言われるファンタジーです。これは小道具の一切までを「創作」しなければならない、つまり世界の一切を創作する非常に作家のエネルギーを使うジャンルです。 例えば、その世界の文明レベル。例えば生活習慣。例えば食べ物。例えば政治形態・・・。現代劇や時代劇では脳裏によぎらせる必要すらないものを考えるということです。 これはつまりはデザイン能力が非常に重要になってくるということです。 デザインとは狭義の意味でも「意匠」であり、広義の意味でも「計画」「設計」と言う意味も持ちます。 つまり世界をデザインする。 映画「スターウォーズ」が脚本や演出に粗があっても傑作である理由がこのデザインにあります。 ライトセーバー、ミレニアムファルコン号、ダースベーダー卿・・・それぞれがアイコンになる力を持つデザインでした。 漫画なども同じく、デザインに優れたファンタジーが傑作が残ります。 脚本はスキル=お勉強でカバーできるところも多々あります。演出が下手でもいいデザインを見てるだけで人は感心できます。 つまりデザインこそ「創作」すると言うことだとも言えます。 そして人間は文明が出来る遥か前から、月から人が降りてくる物語を「創作」したり、神が住まう山や神殿を「創作」してきました。 この創作をする動物であるところの人間だからこそ、文明を作り、世界を作って来れたのです。 世界を作らんと言う想像力にこそ、「創作」と言う言葉はふさわしい。 ひるがえって「テンプリズム」とはなにかといえば、それは曽田正人と言う王道の漫画を描いてきた人間の王道の漫画表現で描かれていると言うことです。 漫画の表現として曽田と言う作家は奇をてらわない。まっすぐに天才を描くことで天才と言うキャラの感情もまっすぐ読み取ることが出来たわけです。 しかしながら個々のデザインが優れた漫画や映画は表現もデザイン的=抽象的になることで世界観をより強化します。 つまりまっとうな演出と言うものから飛翔する場合が多々あります。 ファンタジーを読む快感のひとつに、異世界のそこにいるという感覚を得る、非日常の体感をするエンターテイメントでもあると言うことです。 前述したデザイン主体のファンタジーは実はこの体感と言うものが、そのデザインの高さによる語り口によって「体感」より「俯瞰」するに近いものになります。 そこで曽田正人は、凡人には理解できない「天才」の感覚を「体感」させることの出来る作家が、今度は天才がたどり着かなかった「世界」を「体感」させようとしているのが「テンプリズム」だと言えるのです。 だからこそひねること無く真っ正面にファンタジーを描く「テンプリズム」が素直に楽しいと思えるのです。  

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大井昌和とスタジオひまわり

大井昌和:現在原作含め連載7本の漫画家。代表作おくさん、ちいちゃんのおしながき。 スタジオひまわり:大井昌和創設の漫画製作事務所。

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