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自炊代行を擁護する人って、ちょっと客観性に欠けている人が多いですよね。
先日、自炊代行業者が著作権法違反容疑で逮捕されました。で、それを伝える記事がこちらなんですが――
書籍「自炊」代行を逮捕 著作権法違反容疑
これを読んだ自炊代行擁護の人たちが、目くじらを立てて怒ったんですよね。
曰く――
「タイトルが恣意的。容疑は海賊版の販売であって自炊代行は関係ない」
「これは記者が自炊を貶めるために書いた」
「マスゴミ」
などなど……。
つまり彼らは、「悪徳な海賊版業者が、たまたま隠れ蓑で自炊代行をしていただけである。だから、この記事の書き方は自炊代行を不当に貶めるものだ」というわけです。
ところがこの後、その逮捕された人をネットで調べた村上福之さんの記事がアップされたんですが、それを読んでみると、状況証拠ではありますけれども、どうも初めは善良な自炊代行業者だった人が、経営が立ち行かなくなって海賊行為に手を出したらしいんですよね。つまり、追い詰められてやむなく(あるいは知らずに)犯罪に手を染めてしまった――そんな構図が見えてきたんです。
先日逮捕された自炊業者が香ばしくて色々思う。ネオヒルズ信者?
それで、最初の報道では目を三角にして怒っていた人たちも、そのタイトルが恣意的でもなんでもないと分かったので、シュンとさせられたのです。
しかし、ぼくから言わせると、今さらシュンとしたって遅いという感じです。こういう事態を招くだろうことは初めから分かっていたし、またこうした事態が起こることも、ほとんど予想の範囲内でした。
逆に、こうした事態を想定できなかった人というのは、想像力が足りないというか、ちょっと客観性に欠けると言えるのではないでしょうか?
例えば、自炊代行の擁護者として有名な佐藤秀峰さんは、以前にブログでこんなことを書いています。
「大沢在昌さんは、自炊代行が海賊版横行の温床になると考えているようですが、これは客観性に欠ける意見です。」
自炊代行について。 - 佐藤秀峰 日記 | 漫画 on Web
しかし、今回の事件で、客観性に欠けていたのは大沢在昌さんではなく、佐藤秀峰さんだったことがはっきりしてしまいましたね。
ここで、ちょっと考えてみてほしいんですけど、もしあなたが自炊代行業をしていたら、本当に違法行為に手を出さない自信がありますか?
例えば、あなたが自炊代行を始めたとする。
そこに、お客さんがやってきて、「『ONE PIECE』69巻分、全部自炊代行してください!」とお願いした。
するとあなたは、最初はせっせと真面目に自炊代行します。しかし、69巻分を自炊するというのはかなり大変でしょう。佐藤秀峰さんは、自炊の大変さをこんなふうに書いています。
「裁断機とスキャナを購入し、地道に1冊ずつ裁断してはスキャンし、PCに保存して、ファイルを管理し…。」
果たして、69冊を自炊するのにどれだけ時間がかかるでしょうか?
正確には分かりませんが、料金から逆算してみましょう。
自炊代行って、今は1冊100円くらいらしいですね。だから、1時間に10冊できたとすると、時給1000円になります。ただ、これではさすがに商売にならないから、業者なら、1時間で20冊くらいするのではないでしょうか。つまり時給2000円。そこから経費を取り除いたものが利益です。
そうなると、69冊だとだいたい「3時間半」かかるということになります。
で、それだけ時間をかけた自炊が終わって、あなたはようやく、そのPDFデータをお客さんに納品したとします。
ところで、その作ったPDFデータはどうしますか? 念のため保存……をしますよね?
今日び、データを保存することの大切さはITの専門家じゃなくたって分かりますから、万一メールが送られていなかったり、データが破損した時のためにも、残しておくのがむしろ常識であるとすら言えます。
さて、そうしてあなたは「万一のため」そのデータを保存していました。
ところが、次の日になってまた別のお客さんがやってきました。するとそのお客さんは、こんなことを言ったのです。
「『ONE PIECE』69巻分、全部自炊代行してください!」
なんと、昨日の客と全く同じ依頼内容でした。
そうしてそのお客さんは、自分が持ってきた『ONE PIECE』69巻分をあなたに預けていきました。ちなみに、自炊後の処理方法を聞いたところ「捨ててください」とのことでした。
するとあなたの手元には、まだ裁断していない『ONE PIECE』69冊と、それから昨日自炊したデータが残ることになります。ところが、そこで悪魔があなたの耳元で囁くのです。
「昨日のデータ、使い回ししちゃえよ」
先日、自炊代行業者が著作権法違反容疑で逮捕されました。で、それを伝える記事がこちらなんですが――
書籍「自炊」代行を逮捕 著作権法違反容疑
これを読んだ自炊代行擁護の人たちが、目くじらを立てて怒ったんですよね。
曰く――
「タイトルが恣意的。容疑は海賊版の販売であって自炊代行は関係ない」
「これは記者が自炊を貶めるために書いた」
「マスゴミ」
などなど……。
つまり彼らは、「悪徳な海賊版業者が、たまたま隠れ蓑で自炊代行をしていただけである。だから、この記事の書き方は自炊代行を不当に貶めるものだ」というわけです。
ところがこの後、その逮捕された人をネットで調べた村上福之さんの記事がアップされたんですが、それを読んでみると、状況証拠ではありますけれども、どうも初めは善良な自炊代行業者だった人が、経営が立ち行かなくなって海賊行為に手を出したらしいんですよね。つまり、追い詰められてやむなく(あるいは知らずに)犯罪に手を染めてしまった――そんな構図が見えてきたんです。
先日逮捕された自炊業者が香ばしくて色々思う。ネオヒルズ信者?
それで、最初の報道では目を三角にして怒っていた人たちも、そのタイトルが恣意的でもなんでもないと分かったので、シュンとさせられたのです。
しかし、ぼくから言わせると、今さらシュンとしたって遅いという感じです。こういう事態を招くだろうことは初めから分かっていたし、またこうした事態が起こることも、ほとんど予想の範囲内でした。
逆に、こうした事態を想定できなかった人というのは、想像力が足りないというか、ちょっと客観性に欠けると言えるのではないでしょうか?
例えば、自炊代行の擁護者として有名な佐藤秀峰さんは、以前にブログでこんなことを書いています。
「大沢在昌さんは、自炊代行が海賊版横行の温床になると考えているようですが、これは客観性に欠ける意見です。」
自炊代行について。 - 佐藤秀峰 日記 | 漫画 on Web
しかし、今回の事件で、客観性に欠けていたのは大沢在昌さんではなく、佐藤秀峰さんだったことがはっきりしてしまいましたね。
ここで、ちょっと考えてみてほしいんですけど、もしあなたが自炊代行業をしていたら、本当に違法行為に手を出さない自信がありますか?
例えば、あなたが自炊代行を始めたとする。
そこに、お客さんがやってきて、「『ONE PIECE』69巻分、全部自炊代行してください!」とお願いした。
するとあなたは、最初はせっせと真面目に自炊代行します。しかし、69巻分を自炊するというのはかなり大変でしょう。佐藤秀峰さんは、自炊の大変さをこんなふうに書いています。
「裁断機とスキャナを購入し、地道に1冊ずつ裁断してはスキャンし、PCに保存して、ファイルを管理し…。」
果たして、69冊を自炊するのにどれだけ時間がかかるでしょうか?
正確には分かりませんが、料金から逆算してみましょう。
自炊代行って、今は1冊100円くらいらしいですね。だから、1時間に10冊できたとすると、時給1000円になります。ただ、これではさすがに商売にならないから、業者なら、1時間で20冊くらいするのではないでしょうか。つまり時給2000円。そこから経費を取り除いたものが利益です。
そうなると、69冊だとだいたい「3時間半」かかるということになります。
で、それだけ時間をかけた自炊が終わって、あなたはようやく、そのPDFデータをお客さんに納品したとします。
ところで、その作ったPDFデータはどうしますか? 念のため保存……をしますよね?
今日び、データを保存することの大切さはITの専門家じゃなくたって分かりますから、万一メールが送られていなかったり、データが破損した時のためにも、残しておくのがむしろ常識であるとすら言えます。
さて、そうしてあなたは「万一のため」そのデータを保存していました。
ところが、次の日になってまた別のお客さんがやってきました。するとそのお客さんは、こんなことを言ったのです。
「『ONE PIECE』69巻分、全部自炊代行してください!」
なんと、昨日の客と全く同じ依頼内容でした。
そうしてそのお客さんは、自分が持ってきた『ONE PIECE』69巻分をあなたに預けていきました。ちなみに、自炊後の処理方法を聞いたところ「捨ててください」とのことでした。
するとあなたの手元には、まだ裁断していない『ONE PIECE』69冊と、それから昨日自炊したデータが残ることになります。ところが、そこで悪魔があなたの耳元で囁くのです。
「昨日のデータ、使い回ししちゃえよ」
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人の内面と外面を釣り合わせるためには、intermediateのあるネットワークとそれが介在しないinner transmitによるネットワークは分けて考える必要があるということでしょうか。
岩崎夏海(著者)
>>1
それは分けて考えたうえで、やがて人間は自分の外面(理想)を想像し、それに内面をアクロバティックな方法で寄り添わせようとする、という性質もかんあんした方がいいと思います。