■ドイツ生まれの「価値観がぐらつく強烈な体験」イベント
完全な真っ暗闇のなかで、視覚以外の感覚をフル活用する体験プログラム「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。1989年にドイツで生まれたこのイベントは、現在までに世界30ヵ国で900万人が体験、東京でも1999年以降毎年開催され、約10万人がすでに体験しています。
特徴的なのは、数人のグループを組んで暗闇空間に入り、中では暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障害者)にサポートしてもらうこと。空間に入った瞬間は、何も見えないので、1歩踏み出すのも怖くて固まってしまうのですが、アテンドのかたに声をかけられ、ときに手を引いてもらったり、グループのメンバーどうしで声を掛け合うことで、しだいに視覚以外の感覚を使うことの面白さを実感できるようになります。
水の流れる音、土のにおい、葉っぱを踏む感覚、グラスを使って飲むという行為。ふだん当たり前にしていることが、とても新鮮に感じられ、発見があります。私自身も数年前に体験しましたが、闇の中では音や皮膚の感覚が鋭くなったことにびっくり。でも、それ以上に驚いたのは、ひとりでは怖くて動けないので、知らない人とでも協力し合おうという空気が自然とできあがったこと。
それと、視覚障害者のかたに手取り足とり助けられる、ということで、それまで漠然と「助ける側」「助けられる側」と考えていた関係性が完全に逆転したことのショック。最後に暗闇を出たところで、それまで自由自在に動いていたアテンドのかたが、実は目が見えていないんだ、ということに気づいたのは価値観がぐらつく強烈な体験でした。
■ビジネスに活かすためのワークショップも
ダイアログ・イン・ザ・ダークはビジネスの場でも注目されています。企業研修用の「ビジネスワークショップ」というプログラムもあるのだそう。
たしかに、「コミュニケーション能力」だとか、「お互いの価値を認めて信頼する」といった、ビジネスの現場で大切だとされていることって、ダイアログ・イン・ザ・ダークの体験から学べることと共通しています。
当たり前に思えていたことの価値を考え直すきっかけにもなるので、発想を変えて新しいアイディアを生み出す、なんてことが必要とされる仕事にも向いているかもしれません。
■真っ暗闇で飲むワインの味は?
体験の予約は公式サイトから。1回の体験は約90分で、そのシーズンによってテーマもあるようです。たとえば、今年の1月は真っ暗な中で今年の抱負を語りあい、色紙に墨で書き初めをする「お正月バージョン」、2月・3月は大切に想う人やモノ、思い出について暗闇で語り合う「ラブ・イン・ザ・ダーク」が開催されています。
また、通常の体験以外にイベントもあり、2月21日(木)には暗闇の中で数種類のワインをテイスティングする「ワイン・イン・ザ・ダーク」なる催しも。グラスの感触、注がれる音、ワインの香り。目に見えないからこそ味わえるものがありそうです。
----------------------------------------------
ダイアローグ・イン・ザ・ダーク [公式サイト]DIALOG IN THE DARK TOKYO
東京都渋谷区神宮前2-8-2 レーサムビルB1F
----------------------------------------------
(文/ミヤモトヒロミ)