フランス女性監督の新作を集めた特集上映『フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ』が3月30日から渋谷を皮切りにスタートします。初恋、男女のすれ違い、結婚生活の不和、家族とのふれあいといった身近なテーマを扱った作品は、共感できるポイントも多いのではないでしょうか。
3作品のうち、実際に観たのはこの『スカイラブ』1本ですが、すごく気に入りました。舞台は1979年のブルターニュ地方。祖母の誕生日に集った親戚たちが繰り広げる人生模様を主人公の少女の視点から描いています。
大家族が集っているだけで特別な事件は起きないのですが、小さなエピソードを積み重ねることで、最初はフツーに見えていた登場人物たちの超個性的なキャラクターが徐々に浮き彫りになってくる。その展開の巧さにぐいぐい引き込まれます。さりげなく出てくる少女の初恋のシーンも秀逸。
70年代の音楽やファッションとともに、当時の社会問題をイメージさせるエピソードを取り入れるなど、おしゃれでかつ社会的、というバランス感覚も絶妙。監督のジュリー・デルピーは『汚れた血』『恋人までの距離(ディスタンス)』など、女優としても活躍中ですが、2007年に『パリ、恋人たちの2日間』で監督デビュー。ぜひ今後も「監督かつ出演」の作品を撮り続けていただきたいです。
『スカイラブ』
監督・脚本:ジュリー・デルピー
出演:ジュリー・デルピー、ベルナデット・ラフォン
(c)Paolo Woods
ほか、2作品は簡単にご紹介。
真夏の南仏で燃え上がった2人の恋もヴァカンスの終わりとともに色あせてゆき......。監督自身が10代のころに体験した初恋をモチーフに描かれた、という青春映画『グッバイ・ファーストラブ』。別々の人生を歩み始めたはずなのに、気持ちが揺れ動く。そんな少女がオトナになっていく多感な時代をとらえた作品。
『グッバイ・ファーストラブ』 監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ 出演:ローラ・クレトン、セバスティアン・ウルゼンドフスキー
妊娠期間をシングルで過ごし情緒不安定な妻と、父親になることをなかなか受け入れられない夫とのすれ違いを描いた切ないラブストーリーは、監督の実体験をベースにしているのだそう。
主演は『わたしたちの宣戦布告』の主演、ヴァレリー・ドンゼッリとジェレミー・エルカイム。前作では強い絆で結ばれた夫婦を演じた2人が今回はどんな演技を見せるのかが気になります。
『ベルヴィル・トーキョー』
監督・脚本:エリーズ・ジラール
出演:ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイム
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『フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ』[公式サイト]
3月30日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて
3作品同時6週間限定ロードショー、他全国順次公開
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(文/ミヤモトヒロミ)
ミヤモトヒロミ | ブログライター・エディター。女性誌、女性向けWebメディアで映画やアート、カルチャー関連の記事を執筆。カフェグローブでは2007年よりブログ連載「ムービーハンター」で大人の女性のココロにささる映画評を手がける。