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「東京にもあったんだ その④」
コメ4 草の根広告社 111ヶ月前
ランニングは旅先の風景を細部まで楽しむのにちょうど良い。時速40㎞の車だと早送りの映画みたいに通り過ぎてゆく景色も、時速5㎞程度の脚力ならちょうど良いスピードで見続けることができる。気になった場所があれば気軽に立ち止まって深く見つめることもできる。そんな理由で、旅先では可能な限り1日は自分の脚で走...
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「東京にもあったんだ その③」
コメ3 草の根広告社 111ヶ月前
自然は僕らに与えてもくれるし、呆気なく奪ってもゆく。美しさと残酷さが表裏一体であることを満天の星空の下、町中に響き渡った津波警報で改めて思い知らされた翌朝、僕らは素潜りを断念し、再び山へと向かった。
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「東京にもあったんだ その②」
コメ2 草の根広告社 111ヶ月前
何もないんじゃない。余計なものが何もないんだ。そのことがとても心地良かった。自分が普段どれだけ余計なものに囲まれて生きているかを改めて実感させられた。島民の方々にとっては足りないものもたくさんあるのかもしれないけれど。 そんなことを考えながら、雨上がりの青空の下、車を走らせた。曲がりくねった山...
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「海の向こうのアップルパイ」
コメ9 草の根広告社 112ヶ月前
日本、中でも東京ほど、世界中のありとあらゆる料理がかなりのクオリティで食べられる都市もない気がする。それは、日本が経済的に豊かだからという理由だけではないだろう。たとえば、ニューヨークに行ったことがある方なら分かると思う。世界経済の中心と言われるほどの大都市にもかかわらず、東京ほどたくさんの国...
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「子供には見えている」
コメ4 草の根広告社 112ヶ月前
無心になって走っていると、いつもの理屈っぽいアタマでは到底考えないような事柄について考え始めていることがある。たぶん、夢を見ているときと同じ感じなのかもしれない。先日も、久し振りに訪れた秋晴れの空の下、海沿いを走っていて、突然こんなことを思っていた。
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「bouteille à la mer(海の中の瓶)」
コメ4 草の根広告社 112ヶ月前
電話やメールと違って、いつどこの誰に届くのか分からない瓶詰めの手紙。いわゆる「message in a bottle」は1900年代に盛んだったそうだ。難破船の乗組員による航海日誌や、戦地で綴られた二度と帰れぬ故郷への手紙、また「自分という人間が生きていたこと」をいつか読んでくれるであろう誰かに向けて書かれたものなど...
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「海辺のライフワーク」
コメ4 草の根広告社 112ヶ月前
東京の青山通り沿いに年に数回訪れるスペイン料理店がある。「エル・カスティリャーノ」すなわち「Theスペイン語」と名付けられたその店は、かつては闘牛士を目指していたというガルシアさんが1977年にオープンした老舗レストランだ。スパニッシュギターの生演奏を聴きながら、伝統的な家庭料理を食べさせてくれる。働...
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「サーファーという生き方」
コメ4 草の根広告社 112ヶ月前
サーフィンを見ているのが好きだ。 山から海に向かってオフショアの風が吹いている日なんかは、ランニングコースの途中にあるローカルポイントで足を止め、時間があればいつまでも眺めている。 134号線沿いから相模湾を俯瞰できるその場所で、波と戯れるサーファーを見ていると、
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「海の見えるレストラン」
コメ5 草の根広告社 112ヶ月前
山間の高速を降り、畑のある里山を通って、海へと続くいつものトンネルを抜けると、134号線沿いには通り雨が降っていた。賑わっていた浜に人の姿はなく、灰色の海と空は地平線の境目もはっきりとしない。 立秋から2週間。夏の残り香を燃やし尽くすような残暑と、はっきりしない空模様の悲秋との間を振り子のように揺...
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「海辺のコーヒー店」
コメ5 草の根広告社 112ヶ月前
「アイスコーヒー飲みに行かない?」 そんな誘い文句とともに、太陽が傾きかけたのを確認し、僕らは走り始めた。いつもの134号線。ようやく吹き始めた涼風が夏の熱気を急速に冷ましてゆく。左手に海を感じながら、沈みゆく夕陽を追い掛けるように走ってゆく。 いつもはひとりで走っている道を、
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「いのちをつなぐ難しさ」
コメ4 草の根広告社 113ヶ月前
「食べる、愛する、家族を作る。そして守る。こうしていのちは今日も力強く輝いている。」 イギリスのBBC Earthが製作したドキュメンタリー映画『ライフ-いのちをつなぐ物語-』の冒頭の言葉だ。 生きとし生けるものすべてが本来大切にすべきものはこれなのだろう。これが限りある命の真実なのだろう。これこそが当た...
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「灼熱の小さな太陽」
コメ6 草の根広告社 113ヶ月前
とめどなく噴き出す汗が土の上に滴り落ちる。根が吸い上げた水分が茎や葉から気化し続けているせいで辺り一面がスチームサウナみたいだ。見上げた夏空には雲ひとつなく、太陽から逃れることができない。ふいに肌を焼くその光が8分前に放たれたものだという話を思い出した。つまり、たった今、太陽が燃え尽きたとしても...
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「いつかこの夕焼けを」
コメ4 草の根広告社 114ヶ月前
夏空を真っ青に染め上げていた太陽が、弧を描きながら地平線の向こうに遠のくにつれ、今度は茜色の絵の具を空に焼きつけるように塗り替えてゆく。空の青と混ざり合い、雲の白と混ざり合い、神懸かり的な色彩を滲ませながら、最後に海と霊峰富士を染め上げて、溶けてゆく。
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「風が強く吹いている場所で」
コメ9 草の根広告社 114ヶ月前
ひときわ強い風が吹いている場所がある。 横須賀市と葉山町の境目「長者ヶ埼」と呼ばれているその岬は、海に張り出した崖の向こうに沈む夕陽が美しい、静かな場所だ。しかし、湾曲した海岸線という独特な地形のせいで、そこにだけひときわ強い風が吹いている。 そして、現在の目に見える静けさに反して、目に見えぬ...
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「裸足になって歩くこと」
コメ5 草の根広告社 114ヶ月前
ビーチサンダルが嫌いな子供だった。 そもそも人前で裸足になるのが嫌だったのだ。友達のみならず、家族の前でも。はっきりした理由は分からない。けれど、とにかく裸足が嫌だった僕は、真夏でもソックスを履いていた。つまり、年中靴で過ごしていたわけだ。
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「定住か、漂泊か、」
コメ5 草の根広告社 114ヶ月前
都会で暮らしていた頃は、いつも「ここではないどこかを旅すること」に憧れていた。ところが、この海辺の町で暮らすようになってからというもの、そんな旅に対する強い欲求が嘘みたいに消えてしまった。
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「ミニマリズムと離婚について」
コメ13 草の根広告社 114ヶ月前
一番書きにくいことを書く。 それは、ここで「草の根広告社」をリスタートするときに決めたことのひとつだ。まがいなりにもお金を払って読んで頂くのだから、自分にとって身を切るようなこと、つまり、一番語りたくないことを書くのが筋だと思った。その言葉が誰かの人生に少しでも光を灯せれば嬉しいし、たとえ何の...
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「この波はどこから来るのか?」
コメ1 草の根広告社 114ヶ月前
波打ち際で寄せては返す波を見ているとき、そして、その波が足元を濡らしたとき、誰もが一度はこう考えるだろう。「この波はどこからやって来たんだろう?」 でも、その答えを知ろうとまではしないかもしれない。僕もそうだった。答えを知ったのは、この海辺の小さな町で暮らすようになった後のことだ。