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80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト
斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 
今回のテーマは
対抗戦?交流戦?新日本vsNOAHから見えてくる2022年です!
 

■新日本プロレスの“ケニー・オメガ入国妨害事件”という陰謀論

■WWEvsAEW「水曜日テレビ戦争」の見方

■WWEペイジの伝記的映画『ファイティング・ファミリー』


AEWチャンピオンベルト盗難事件

■「ミスター・プロレス」ハーリー・レイスの偉大さを知ろう


■ウルティモ・ドラゴンの偉大なる功績を再検証する


■都市伝説的試合映像ブレット・ハートvsトム・マギー、ついに発掘される
 

【追悼・爆弾小僧】すべてはダイナマイト・キッドから始まった


■“怪物脳”に覚醒したケニー・オメガ


■怪物デイブ・メルツァーと『レスリング・オブザーバー』


■新日本プロレスのMSG侵攻は「WWE一強独裁」に何をもたらすのか


■怪物ブロック・レスナーを通して見えてくる「プロレスの作り方」


■追悼・マサ斎藤さん……献杯はカクテル「SAITO」で


■皇帝戦士ビッグバン・ベイダーよ、永遠に

■ジャイアント馬場夫人と親友サンマルチノ、2人の死――

■ベルトに届かず…されど「世界に届いた中邑真輔」のレッスルマニアを語ろう 

■ステファニー・マクマホン、幻想と現実の境界線がない生活

■ロンダ旋風、中邑&ASUKAダブル優勝!! ロイヤルランブル1万字総括

■アメリカンドリーム、ゴールダスト、コーディ……ローデス親子それぞれの物語

■ジェリコvsケニー実現で考える「アメリカから見たプロレスの国ニッポン」


■みんなが愛した美人マネージャー、エリザベス!

■職業は世界チャンピオン! リック・フレアー!!

■怪死、自殺、大事故……呪われた鉄の爪エリック一家の悲劇

■ミスターTからメイウェザーまで! WWEをメジャー化させたセレブリティマッチ

■WWEの最高傑作ジ・アンダーテイカー、リングを去る

■『1984年のUWF』はサイテーの本!
■伝説のプロレス番組『ギブUPまで待てない!!』 

■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男


■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑



――
2022年1月8日、横浜アリーナで開催される新日本プロレスとノアの対抗戦はアメリカではどんな反響でしょうか?

フミ
 反響はすごいです。WWEに飽きちゃっててAEWに拠り所を求めてるアメリカのマニア層からすると、新日本とノアのストリーミング配信に英語の実況解説がついたことで以前にも増して日本のPuroresuに対する注目度、関心が高まっているんですね。 でも、全カード発表となってフタを開けてみたらメインイベンタークラスのシングルマッチが実現しないということで……。

――あ、そこはアメリカのファンもちょっと肩透かしを食らった感じなんですね。

フミ
 そのあたりは「対抗戦か、交流戦か」という日本的な解釈にも関係してくると思うんです。発表された全カードを見ると若手以外はシングルマッチはなしで、タッグマッチや6人タッグ、10人タッグなどがズラリと並んでいますよね。

――
メインが10人タッグということには、ちょっとビックリしましたね。

フミ
 試合そのものの勝敗がついても、勝負としての白黒つかないこの感じをどう解釈したらいいのか。開催決定記者会見のときの武藤敬司のコメントは「殺伐とした対抗戦の時代じゃないだろう」というニュアンスのものだった。 闘魂三銃士や四天王と呼ばれた世代の中で唯一現役の武藤選手は、かつての対抗戦の雰囲気を知ってるプロレスラーですよね。

――
UWFインターナショナルとの全面対抗戦では新日本の大将でしたね。あの対抗戦に参加して今回も出場するのは武藤敬司に永田裕志、あと桜庭和志ですか。

フミ
 新日本vsUインターのとき永田選手と桜庭選手はまだ若手で第1試合のタッグマッチで戦いましたが、3人とも置かれた状況は当時と現在とではまったく違いますよね。

――
武藤さんと桜庭さんはノア側ですもんね。 信じられない。

フミ
 他に表現がないから今大会を「対抗戦」と銘打ってはいますが、はっきりと勝者と敗者をイメージさせるようなシングルマッチがカードにはなかったのは、もちろん武藤選手の意思が働いたわけではないでしょうけれど、結果的に対抗戦というよりは交流戦に近いものになった。 武藤選手のあの発言は今回の対抗戦をどう捉えるかの大きなヒントになりますが、それでも団体同士の対抗戦にはシングルマッチを期待するのがプロレスファンですよね。 今回発表された対抗戦のキービジュアルには新日本とノアの3選手が睨み合ってるものでした。鷹木信悟は中嶋勝彦と、棚橋弘至は武藤敬司と、オカダ・カズチカと清宮海斗が睨み合っている。これを見るかぎり、この選手たちのシングルマッチが実現することを想像させるものでしたよね。

――
ところがどのシングルマッチは実現せず……。

フミ
 棚橋弘至vs武藤敬司あたりがひとつの落とし所になるのかなと思ったらそれもなかった。 タッグ版のオールスター戦なのかなぁと思っちゃうところはありますよね。今回の1・8横浜アリーナが始まりで、今後も新日本とノアの対抗戦は続くんだろうという予想はできるんですけが。今大会は新日本ワールドでは生配信されませんし、テレビ朝日のワールドプロレスリングでも中継はされない。

――
サイバーファイトの『WRESTLE UNIVERSE』でも後日配信ですね。

フミ
 ビジネスにおける交渉事は「誰がボールを持ってるか?」という話になりますが、今回はこの対抗戦を生配信するABEMAがボールを持ってるように見えますね。これはABEMAプロデュースのイベントなんですよという明確なエビデンス。 かつては存在しなかったネット上の有料動画配信というまったく新しいビジネスモデルが成立していて、これからのプロレスは配信の時代なんですよということを伝えるものかもしれない。 

――
今回はABEMAがボールを持ってるからこそ白黒つけるまでには至らないと。

フミ
 白黒ついちゃったというケースとしては先ほどちょっとお話した1995年10月9日の新日本とUインターの全面対抗戦がありました。全面対抗戦で負け越して、武藤敬司vs高田延彦の大将戦のも落としたUインターは翌96年には団体が崩壊してしまったという歴史的事実がある。団体対抗戦というものは、そもそもおたがいの存亡を懸けた戦いでなければ成立しないのではないか? もちろん、ひとつの仮説ではありますが。

――
対抗戦にはそういう幻想はありますね。

フミ
 そこで次に考えるべきなのは、いまの時代はプロレスというジャンルのその成り立ちのような部分が昔よりもはるかにオープンに議論にされるようになっていて、プロレス用語として存在しない「勝ちブック」「負けブック」という誤った造語がネット上ではあたりまえに使われている現実があります。実際にプロレスラーや関係者はそんな言葉は使わないんですが、それでもネット世代にはプロレス用語として認知されている。
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